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放送予告「記憶する歌~科学者が詠う三十一文字の世界~」(2018年8月26日@毎日放送・映像’18)~永田和宏氏「言葉の危機が時代の危機だ」

 2018年8月19日配信(予定)のメルマガ金原No.3244を転載します。
 
放送予告「記憶する歌~科学者が詠う三十一文字の世界~」(2018年8月26日@毎日放送・映像’18)~永田和宏氏「言葉の危機が時代の危機だ」
 
 京都産業大学教授、京都大学名誉教授の永田和宏氏といえば、著名な細胞生物学者であり、昨年、「世界のタンパク質研究をリードする国際組織「The Protein Society」から、2017年度の“Hans Neurath Award(ハンス・ノイラート科学賞)”を受賞」(京都産業大学ホームページより)されたということは、知っている方は知っているでしょうが、正直申し上げて、私は全然知りませんでした。
 
 同賞受賞を機に、朝日新聞が行ったインタビューがネット版で読めます。
 
朝日新聞デジタル 2017年9月6日22時17分
生命の営み担うたんぱく質研究 永田和宏
 
 永田先生は、長らく放送大学客員教授も務めておられたようですが、そもそも、自然科学分野の科目は受講対象として考えたことがなく、専任教員でさえ、すぐに名前が思い浮かぶのが天文学海部宣男先生(元教授)くらいですから、ましてや客員教授のお名前など全然知りませんでした。
 
 また、永田さんは、「宮中歌会始や朝日歌壇の選者を務めるなど歌人としても知られる」(前掲朝日新聞デジタル)ということですが、文学の中でも、短歌は私の得意科目ではなく、明治以降の歌人で、個人歌集を購入して読んだことがあるのは、与謝野晶子石川啄木くらいであり、ましてや現代歌人といわれても、名前も浮かんでこないありさまです。俵万智さんくらいは知ってますけど、買ったことがあるのは小説『トリアングル』だけですから。
 ということで、著名な歌人永田和宏氏の作品も、全然読んだことがないのは申し訳ない次第です。
 
 以上のとおり、2つの異なる分野で、非常に大きな業績を積み重ねてこられた方であるにもかかわらず、私とは全く無縁であった永田和宏さん(永田先生に限らず、そういう人はいくらでもいますが)のことを調べてみる気になったのは、毎日放送のドキュメンタリー映像’18の次回放送予定を目にしたからです。
 次回、8月26日(日)深夜に放送される番組の案内を引用します。
 
2018年8月27日(月)午前1時35分~
記憶する歌 ~科学者が詠う三十一文字の世界~
(番組案内から引用開始)
「50年前に作った歌を読み返すと、その時に感じた風のにおいまでリアルに感じなおすことができる」。そう語りかけるのは、京都に住む細胞生物学者の永田和宏さん。歌人でもある。京大生の頃から歌を詠む。妻は歌人河野裕子さん。夫婦で歌を詠んできたが、人生の伴侶、裕子さんを8年前に乳がんで失い、孤独感を深めていった。
 
あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない
 
その後、歌を支えに少しずつ落ち着きを取り戻してゆく永田さん。この春、自宅の庭では裕子さんのために植えた山桜が、初めて花を咲かせた。短歌は花鳥諷詠を詠うだけでなく、時事問題を扱う社会詠と呼ばれる歌もある。永田さんはいう。危機に遭遇して世に放たれた歌は、その後の歴史の濾過に耐えうるのだと。
永田さんにも変化が生じた。ここ数年、自らも社会の在り様を詠うようになった。ことばがいま危機を迎えている。ことばが意図的に無力化されている。国会での言葉の捻じ曲げ、言い換え、改ざん。全てがことばの問題につながり、ことばの意味の破壊だ、と危機感を募らせる。
 
不時着と言い換へられて海さむし言葉の危機が時代の危機だ
 
永田さんに初期の肺がんが見つかり、その摘出手術を受けることになった。31文字が記憶するその歌は、過去といま、そして未来へ結ばれてゆくという人生とことばの危機を詠う。
(引用終わり)
 
 毎日放送の番組案内が引用した一首が、社会詠として優れた作かはともかくとして、「言葉の危機が時代の危機だ」ということに異論のある人は少ないのでは、と私は思います。
 毎日放送を視聴できるエリアは限られているとは思いますが、是非、多くの方に視聴していただければと思います。 

枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第4回~モリカケ問題が招くモラルの崩壊

 2018年8月17日配信(予定)のメルマガ金原No.3242を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第4回~モリカケ問題が招くモラルの崩壊
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
2018年8月13日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
2018年8月14日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
 
 去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)で行われた枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介、今日は第4回、いよいよ「モリカケ問題」の登場です。ただ、「モリカケ問題」だけでは何だか迫力がないな、ということで考えたタイトルが「モリカケ問題が招くモラルの崩壊」です。
 「モリカケ問題」から派生した「公文書改ざん問題」にも力を入れて言及していることは言うまでもありません。
 こういう政権が、「道徳」教科化を強力に推進しているのですから、悪い冗談としか思えません。
 
 おそらく、この連載もあと3回で完結できそうです。私のブログに付き合っていただけた方は(枝野代表の演説を読破したということですから)、安倍晋三内閣が「不信任」に値する理由を、十分以上に整理して理解することができたはずです。
 もうあと少しです。頑張って読み切りましょう。
 
 なお、いつものように、「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第4回~モリカケ問題が招くモラルの崩壊
 
第3回から続く
 
 四番目に、政治と社会のモラルを崩壊させる、いわゆるモリカケ問題等にも触れておかなければならないと思います。
 まず、このモリカケ問題には、第一に、約九億円の国有地が八億円ほど値引きして売られようとしていたという問題があるという本質を忘れてはならないというふうに思います。まさに、国民の皆さんからは、常に税金の使い道について厳しい声が上がっています。そうした状況の中で国有地が八億円もダンピングされたとすれば、その分の税金が食い物にされたのと意味は一緒です。
 本来であれば……(発言する者あり)黙らせていただけますか。
 
○議長(大島理森君) 続けてください。
 
枝野幸男君(続) 黙らせていただけますか。議長、不適切発言に対しては指導していただきたいと思います。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 御静粛に。御静粛に。
 どうぞ続けてください。
 
枝野幸男君(続) ミズタ議員、黙っていていただけますか。
 この八億円もの値引きがどうしてされようとしていたのか。
 財務省の皆さんは、それには批判もあるかもしれませんが、国民の皆さんから、納めるべき税金は一円とも間違いなく、落ちなく納めていただくために努力をされています。国有財産などを売るに当たっては、一円でも高く売るために努力をされています。
 私は、そうした財務省の基本的な姿勢は、それは、少しでも税金を安くしてほしい、少しでも安く国有財産を手にしたいという皆さんには残念なことであるかもしれませんけれども、正しい姿勢だと思っていますが、その財務省がなぜ八億円も値引きを認めようとしたのか、一旦は認めたのかという、これは深刻な問題であります。こんなことが日常茶飯に起きたとしたら、まさに我が国の財政は、どんなに国民から税金をいただいても回るはずがありません。
 したがって、なぜこんなことが起こったのか、その原因、本質を明確にすること、そしてそのことに基づいて再発防止策をとること。原因もわかっていないのに、全貌も解明されていないのに、再発防止を打てるはずがありません。
 後で述べる改ざん問題なども含めて、責任を痛感していますとか、真摯な反省とか、再発防止とか、言葉だけは躍っていますが、全貌解明の妨害をし続けてきているのは誰なんですか。全貌解明に抵抗しているのは誰なんですか。全貌解明に協力をしない政府・与党の姿勢こそが、まさに税金の無駄遣いを生み出すうみそのものではありませんか。
 そもそも、これだけでも問題なのでありますが、第二に申し上げなければならないのは、安倍総理昭恵夫人が、夫人付の公務員である谷査恵子氏を通じて行政に問い合わせるという関与をしていました。このことは既に明らかになっています。このことだけで大問題じゃないですか。
 ほかに、こんなおかしな値引きをしたことについての合理的な説明が一切なされていない以上は、このことが影響を与えていたという以外、現状では推認しようがないじゃないですか。
 安倍総理は、関係していたら総理も議員もやめるという発言をされました。この発言があろうとなかろうと、この事実をもってしてだけでも、まさに権力の公私混同の問題として深刻な問題であることは明らかであります。にもかかわらず、昭恵夫人も谷氏も、国会はおろか、記者会見などの場も含めて全く説明をしておられません。
 財務省が改ざん、隠蔽してきた文書の多くを、この国会で野党の協力によって公開にまで持ち込むことができました。野党各党が粘り強く追及してきた成果であると思っていますが、そもそも、本来であれば総理や政府自身あるいは自民党が積極的に真相解明に努力すべきであると思いますが、全くそうした姿勢は一貫して示されませんでした。
 そして、非常にわかりやすいのは、関連する文書の多くがようやく野党の追及に応じて出てきましたが、なぜか昭恵夫人や谷査恵子氏が関与していたとされる時期の文書だけ、いまだに出てきておりません。
 更に言うと、びっくりしましたが、これは共産党さんが指摘をされました、最高裁まで争ってでも公開はしないとされる打合せ文書が出てきました。こうした文書が本物でないという否定もできていません。本物かどうかわからないというか、答えないという状況であります。まあ、本物だから否定できないんですよね。
 最高裁まで争ってでも公開しないというそんな姿勢、まさに総理が指導力を発揮して、公開できるものは全部公開しろと言うべきじゃないですか。こんな姿勢で、自分の配偶者は関与していないと幾ら言い張ったって、誰も信用しないのは当たり前のことじゃないですか。
 モリカケ問題に関連しては三つ目、加計学園問題であります。
 国家戦略特区に至るプロセス、獣医学部の設置認可に至るプロセス、まさに行政の中立性、公平性を損ないかねない疑惑であります。これに全く真摯に対応していないどころか、真実に目を向けぬ姿勢がもはや明確であります。
 何度も指摘をされていますが、改めて申し上げたいと思います。
 公開された愛媛県の文書、平成二十七年の三月付の文書には、三月三日の打合せ会において加計学園のした報告が記載をされています。二月二十五日に加計理事長が総理と面談し、いいねと言われた。公文書であるのかどうかということはいろいろな議論がありますが、愛媛県の地域政策課がつくり保管していた文書において、加計理事長が総理と面談し、いいねと言われたということが明確に書かれているところであります。
 すごいのは、加計理事長などが、事務局長がその場の雰囲気で作り話をしたと釈明をされたことであります。愛媛県の一連の記録と照らし合わせれば、明らかにこの加計理事長の説明は矛盾をしており、この理事長の、雰囲気で作り話をしたという釈明こそが虚偽であるのは明らかであります。
 一つには、当該その三月の文書の冒頭に何と書いてあったか。「加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申出があり、」というのが冒頭の記載です。
 つまり、この会合そのものが、打合せ結果、安倍総理との面談結果を報告したいという申出に基づいてこの会合がセットされているんですから、その場の思いつきで安倍総理との会談の話がしゃべられたわけではないというのは記録上明々白々じゃないですか。これだけでも加計学園は大うそつきだということがはっきりしています。
 一つだけではなんなので。
 愛媛県の公表文書、一つ前の文書は二月付の文書です。その二月付の文書にはどう書いてあったか。理事長が安倍総理と面談する動きもあると明記されているんです。
 二月の会合で、理事長が安倍総理と面談する動きもあるという報告をし、三月の会合は、理事長と安倍総理との面談結果等を報告したいとの申出でセットされ、そこでいいねと言われたと報告をした、これが全部、記録上明確に残っているんです。これが作り話、あり得ないですね。
 まだあります。
 この三月付の文書、柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があったとの加計学園からの報告が記載をされています。そして、次の文書で、資料提出指示を受けて、柳瀬秘書官と加計学園が協議の日程を調整しているとの加計学園からの報告内容が記載をされていて、実際にこの流れの中で、いわゆる問題となっている柳瀬秘書官との面談が実現をされているわけでありまして、総理と加計理事長との面談からこの一連の流れが進んでいるということは記録上はっきりとしているんじゃないでしょうか。
 そもそも、学校の設立認可という公権力の行使、行政行為の選択に当たって、こうした形で政治家が関与をしていたとすれば、そのこと自体大きな問題でありますが、県や市も多額の金をこの加計学園に出していますが、学校を設立されてしまった以上は、ここには毎年、私学助成金という形で国費も出ていくんです。
 獣医学部のような実験などを多々行う学部が、私学助成金の中で、経営が回っていくというのは、これは現実的にあり得ません。学校が存続する限り、私学助成金がない限りは経営は成り立たない。これもまた税金の使われ方、使い方の問題であり、しかも、愛媛県今治市だけではない、国費の問題でもあるんです。
 安倍総理は、国家戦略特区のワーキンググループのプロセスに瑕疵がないことを繰り返し強調していますが、全くピント外れの言いわけだと言わざるを得ません。
 仮にワーキンググループの手続本体には瑕疵がなかったとしても、総理との関係を背景にして総理秘書官から特別な指導助言を受けていれば、行政の中立性、公平性を損ねるものになります。あるいは、国家戦略特区としての正式な申請の前段階のプロセスであったとしても、それこそ加計理事長の言いわけのように、総理の名をかたって県や市をだますなどという決定的な瑕疵があるならば、設立認可そのものに瑕疵があると言わざるを得ません。
 そもそも、申し上げたいんですが、この柳瀬秘書官というのは、私も経済産業大臣をやらせていただいたので存じ上げていますが、経済産業省から総理秘書官に出ていらっしゃるんですよね。
 この国家戦略特区は、その結果、学校の設立の問題という意味では文部科学省に影響する話です、獣医師さんという話では農林水産省に影響する話でありますが、内閣府の所管であります。私立の大学の学部を設置する、しかも一次産業系の学部を設置するということについて、そもそも柳瀬秘書官は知見もなければ所掌したこともないんです。何で柳瀬秘書官が関与して指導助言をしているのか。それはまさに総理秘書官だからにほかならないじゃないですか。
 総理秘書官が関与しているから、内閣府を始め各省庁はそれをそんたくするなり、私は事実上の指示が出ていたと思っていますが、それは断定はしません。
 しかしながら、まさに、なぜ所掌ではない経済産業省出身の秘書官が関与をしていたのかということ一点をもって、まさに官邸としての影響力を行使させようとしていたということは、これだけで私は明々白々だというふうに思いますけれども。
 これらだけでも内閣が三回ぐらい吹っ飛んでもおかしくないんですが、この問題は、更に言うと、このまま放置をすればとんでもないことになる、そういう問題であります。
 総理のような権力者と友人であるなら、あるいは権力者の配偶者に取り入ることができれば、行政的に有利に取り計らってくれるかもしれないという認識を世の中に生じさせているということであります。行政の中立性、公平さに対する信頼が、急激、著しく、今、劣化をしています。こうした状況を放置したら、見逃したら何が起こるか。有利に取り計らってもらおうとして、権力に取り入る、すり寄る人間が増加をします。
 その一方で、そうした機会はつくろうと思ってもとてもできないよねと、多くの皆さんはそう考えるでありましょう。そうした皆さんは、どうせ一部の人だけがいい思いをするのでしょうという意識に陥り、モラルとモチベーションが低下することになります。これは、まさに日本社会を崩壊させる危機です。
 したがって、多くの国民の皆さんに、ああ、やはり行政は中立公正なんだという納得感を得させなければ社会のモラルを崩壊させる、その責任は、こうした疑念を生じさせた安倍総理にあるということは間違いないじゃないですか。
 森友、加計学園問題に関連をして、五番目に指摘をしなければならないのは、これ単独でも七つのうちの一項目立てたいぐらいの話でありますが、この真相解明を妨害するような、そうしたプロセスの中で出てきた公文書の改ざん問題であります。
 これは、行政の末端のごくごく一部の数人が個人的な不祥事を隠すために文書を改ざんしたなどという、過去にも残念ながら時々生じている不祥事とは全く本質的には違っています。公文書の改ざんを、しかも国会との関係で、中央官庁の中枢部が大がかりに実施をしたというところが本質的な問題です。
 国会から求められている資料提供や報告を求められている案件について、公文書を改ざんしたということはどういうことか。国会をだましたということであり、国会を通じて国民をだましたということにほかなりません。
 この問題は、与党の皆さんも、そうだと言わないとおかしいんですよ。だまされたのは皆さんも一緒なんです。その本質的な意味を理解されていないことに、今の自民党の劣化が象徴されていると私は思います。
 行政が国会に改ざんしたうその文書を出したら、国会は成り立ちません。本来であれば、後で申し上げますが、国会の内外で虚偽答弁が繰り返されていて、それ自体も問題です。でも、残念ながら、過去も国会などで事実と違う答弁がなされたりということはありました。
 だから、国会では、特に野党は、文書を出せということに力を注いできているんです。さすがに公文書は正しいことが書いてあるはずだ、だから、残っているはずの文書は何なのか、それを探り出し、それを公開させることによって、口先ではごまかそうとしても真実を突きとめる。そのことのために努力をしてきたし、そのことによって成果も上がってきているんです。
 にもかかわらず、その国会に出す文書を改ざんする、国会をだますために改ざんするなどということを認めてしまったら、国会をだますんですから、与党の部会をだますかもしれませんよ。与党の部会にも、うそを書いた文書を出してくるかもしれませんよ。そうした状況を許すということを、本当に危機感を持っていらっしゃらない与党議員の皆さんを、私は大変残念に思います。
 こんなとんでもない改ざんが行われたにもかかわらず、残念ながら、誰も刑事責任を問われていません。検察審査会に国会議員は介入することはできませんが、検察審査会に期待をしたいというふうに申し上げるにとどめておきたいというふうに思っております。
 加えて、最も重い処分が停職三カ月。後で話が出てきますが、外務省で停職九カ月の方が相前後して生じました。そっちはよっぽど重かったんですね、これよりも、三倍なんですからねということを後で申し上げたいと思いますが、国会をだますようなことをして停職三カ月。それぐらいの停職で済むということで、こういうことをやっていいんですねと認めているようなものじゃないですか。
 いや、あえて言えば、主観的意図はわかりませんが、まさに、経緯からすれば、安倍総理を守るために改ざんをしたと受け取られても仕方がないようなプロセスなのははっきりしているわけですから、総理を守るためだったら、こんなとんでもないことをしてもこんな軽い処分で済むんだ。ここでもモラルハザードを生じさせるんじゃないでしょうか。
 佐川前国税庁長官は理財局長当時にこうしためちゃくちゃな改ざんを行っていた中心にいたのは、これはもう政府としても認めているわけです。その方を、野党の指摘、こんな人、していいんですかという指摘を払いのけて適材適所と国税庁長官にしたのは、安倍総理です。
 確かに財務大臣かもしれませんが、後で申し上げるとおり、今や、幹部公務員の人事は一元化をして、総理自身、適材適所と繰り返しておられました。いまだに適材適所とおっしゃっているようなんですが、信じられません。総理のために、停職処分も恐れず、公文書を改ざんして国会をだますような人は、総理にとっては適材適所なのかもしれませんね。
 公文書が信用できないということになれば、これは国会としても、役所が出してくる文書を、いつも、改ざんされているかもしれないという疑念の目を持ちながら、審議、議論しなければなりません。
 そして、多くの一般の国民の皆さんの国民生活だって、役所から来る公文書は正しいものだという前提でほとんどの国民の皆さんは暮らしています。役所から、例えば納税の通知書が来れば、自分で一々計算し直してみて、自分の税額が合っているかどうかなんて調べる人は余りいません。役所からあなたの年金額は幾らですという通知が来れば、年金何とか便というのをつくって過去の支払いの実績がチェックできるようにはなっていますが、毎回毎回きちっとチェックする人はそういらっしゃいません。
 役所は、そうはいったって、役所のつくる文書は正しいんだという信頼関係のもとに社会というのは成り立っています。この公文書改ざんを、このままで、臭い物にふたをしてしまったのでは、この社会全体の公文書に対する信頼が揺らいだ状況を放置するということにほかなりません。これも、社会そのものを壊してしまうことにつながっていくと私は強く危惧をしているところであります。
 公文書に対する扱いは、財務省にとどまりません。後に防衛省自衛隊の日報問題についても述べさせていただく予定になっておりますが、そもそも、よらしむべし、知らしむべからずという、江戸時代以来、あるいはもっと古いかもしれません、まさに我が国の間違った意識が残ってしまっているのではないでしょうか。
 先ほど申しましたとおり、私は、明治維新以前の、西欧近代文明が入ってくるより前からの日本の歴史と伝統の中には、再評価すべきもの、しっかりと引き継ぎ、それを現代社会に合わせて応用をして生かすべきものが多々あると思っています。
 しかしながら、まさにこのよらしむべき、知らしむべからずという意識を、行政にかかわる人間、それは政治家も含めてですが、わずかなりとも持っていてはいけないと私は思います。そうした意識を持っているのではと疑わざるを得ない、大本営発表にもつながったようなこうした意識を払拭させる責任は総理にあるにもかかわらず、総理自身がうみのうみになっているという状況では、とても内閣を信任することはできません。
 森友、加計問題についての六点目は、森友学園は、理事長は学園の経営から退かれました。加計学園の加計理事長は今も理事長のままでおられます。
 全く矛盾に満ちた、まさに出任せとも言っていい説明を繰り返し、逆に、百歩譲って、もしこの加計理事長の言っていることが本当だとすれば、総理の、腹心の友という日本語、余り私は聞いたことないんですが、相当親しい御友人がトップである法人が、総理の名をかたって、かたったわけですからね、愛媛県今治市に対しては、しかも勝手にかたって、獣医学部の設置を有利に進めようとしたことになるわけですね。
 総理との御友人だったのは事務局長じゃありませんね。事務局長が言ったと、百歩譲って言ったとしても、総理と加計理事長が御友人だったことを奇貨としてやっているわけですね。
 何らの責任も感じる姿勢も示さず、説明責任を全く果たしていない。もう記者会見はやらないなんて言っているわけですよ。こんな方が、教育機関のトップをやらせていいんですか。
 この認可過程に決定的な問題がありました。ありましたが、学校として現にでき上がってしまい、そこに学んでいる学生さんたちがいらっしゃいます。そうした現実を踏まえるならば、やるべきことは、加計理事長は、加計学園の少なくとも獣医学部の経営から手を引かれ、第三者に経営権を移譲すべきであると思いますし、友人であるならば、安倍総理はそれを促す責任があると私は思います。そうでなければ、こんないいかげんな、無責任な人間が教育機関のトップをやっているという、教育におけるモラルの崩壊につながっていくと私は思います。
 民間に口出すなとかとやじっている人がいますから、私の話をちゃんと聞いてくださいね。総理、友人として促すべきだと私は申し上げました。それが日本の社会の秩序、モラルを維持すべき責任を持っている日本の政治のリーダーとしての、御友人に対する真摯な姿勢ではないでしょうか、皆さん。
 まあ、総理のおっしゃる友人というのは、同じような高い志を持って、違う道だけれども頑張っていこうねというのを私は友人というものの定義だと思っていますが、一緒に楽しくゴルフをやるというのがお友達なのかなと思いますので、しようがないのかもしれませんね。
 モリカケ問題の七番目の問題点、これは、検察捜査への介入の疑惑まで生じているということです。
 大阪航空局作成とされる文書、これもこの国会の中で指摘がされました。官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れているが、刑事処分が五月二十五日夜という話はなくなりそうでと、調査することすら否定しています。
 検察庁法十四条は、法務大臣は、個々の事件の取調べ又は処分については、検事総長のみを指揮することができると明記をしています。法務大臣ですら検事総長のみを指揮することができるんですから、法務省の役人や、ましてや法務省以外の行政機関の役人が検察に関して関与することがあってはならないのは、この検察庁法十四条が前提としていることです。
 指揮権発動以外の手続で、官邸を含めた行政機関が法務省を通じて個別事件の捜査に関連して巻きを入れていれば、明らかに検察庁法に違反した、捜査への不当介入であります。
 当該文書は、行政の当事者でなければ到底つくれない内容になっており、怪文書では到底ありません。そもそも、昨年のモリカケ問題発覚以来、怪文書と最初称していた文書が実は本物だったことの繰り返しではないですか。財務省会計検査院、これだけでも問題です。検察捜査にまで官邸が影響力を行使して行政をゆがめているとの疑念をこのまま放置したのでは、この国は何物も信用できない国になってしまう。法治国家とは到底言えない状況になってしまいます。
 私は、現時点で、この文書が本物だったと言うつもりはありません。しかし、政府みずから積極的に調査をして、真実を明らかにする必要があります。巻きを入れた事実があったのかなかったのか、しっかりと調査をすべきでありますが、その調査すら放棄をして開き直っている姿勢は、到底許しがたいものがあります。
 以上申し上げてきたとおり、一連の森友学園問題、加計学園問題は、いわゆるスキャンダルではありません。行政の公平性、廉潔性を損ね、放置をすればモラルハザードを招く社会と国家の危機であります。
 今なお多くの国民が総理や政府などの説明に納得できないという状況であります。このこと自体が危機であります。丁寧な説明、うみを出し切ると繰り返しましたが、実態は逃げ回る一方であります。
 確かに、我々に対しては、いつまでモリカケばかりやっているのだという声があります。そもそも、ばかりでないというのは客観的な事実として申し上げておきたいと思いますが、同時に、モリカケ問題の追及は、真相解明まで、どんな声があっても諦めずにやり続けます。
 総理は、いずれ時間がたてば多くの国民が忘れてくれると思っているかもしれません。そもそも昨年秋の総選挙がモリカケ隠しの意図があったのではないかという声もありますが、何度解散されようと、どれぐらい時間がたとうと、真相解明がなされない限り、このことを追及していくのは、行政の中立性、国会答弁や公文書に関する信頼性を守るための野党としての責務であると考えています。
 総理を始めとして政府・与党が真相解明のために積極的に対応すれば、そもそもこんな大きな問題になっていなかったかもしれません。安倍昭恵夫人、谷査恵子氏、加計理事長、愛媛県知事、再度の佐川氏など、後ろめたいことがないならば、与党から積極的に国会での招致などを求めるのが当たり前じゃないですか。行政の内部文書と思われるような文書が明らかになったら、積極的に調査し、報告すべきではないですか。後ろめたいと思っているからやらないんでしょう。
 そもそも、公文書も、総理を始めとする行政による国会での説明も信用ができない、中立性、公平性に信用ができないという状況では、内政、外交とも、まともに進むはずはないじゃないですか。国会などでさまざまな答弁を引き出し、政府の認識を明らかにしても、後になって、発言が、文書の内容が簡単にひっくり返されたのでは、論争自体が意味がないじゃないですか。多くの国民の皆さんが政府に対する信用、信頼を持っていない中で、強力な政策推進ができるはずがないじゃないですか。
 私たちは、全貌解明に至るまで追及を続けることをここで申し上げるとともに、与党の皆さんに対しては、国会は、明後日、通常国会は再延長はありませんので閉会をしますが、臨時国会を開き、あるいは、臨時国会を開かなくても閉会中審査でも、幾らでも、先ほど申し上げました関係者を、国会に来て説明をしていただくことはできますので、ぜひ、しっかりと国民の信頼を取り戻す、本気でうみを出し切る姿勢を示していただきたいと、この場をかりて強く求めておきたいと思います。
 
(第5回に続く)

「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会」と沖縄県民の意思

 2018年8月16日配信(予定)のメルマガ金原No.3241を転載します。
 
「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会」と沖縄県民の意思
 
 期せずして、3日前の8月8日に亡くなった翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事の追悼大会の感を呈することになった「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会」(主催:辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)が、8月11日(土)午前11時から、那覇市の奥武山(おうのやま)陸上競技場で開催されました。
 私は、主催者発表で7万人という、その数字自体には注目しませんでしたが、会場全体を取り巻く雰囲気、ひいては会場外をも含めた沖縄県民の意思が奈辺にあるのか?を知りたいと思いました。もっとも、その場に足を運んだ訳でもない者が、動画や報道を見たり読んだりするだけで、そんなことが分かるはずはありませんけどね。
 
 私がこのようなことを考えるのは、今年の2月4日に投開票が行われた名護市長選挙で現職の稲嶺進氏が惜しくも落選された2か月近く前の2017年12月11日、キャパ1075席の名護市民会館大ホールで開催されたNDシンポジウ「「辺野古が唯一の選択肢」に立ち向かう-安全保障・経済の観点から-」の中継動画を見ながら、その4年前の名護市長選挙直前に、ほとんど準備期間もない中で開催されたNDシンポジウでの熱気溢れる(たくさんの立ち見も出た)状況とのあまりの違いに不吉な予感を覚えた、ということがあったからです(NDシンポジウ「「辺野古が唯一の選択肢」に立ち向かう-安全保障・経済の観点から-」(2017年12月11日@名護市)を視聴する/2018年1月3日)。
 
 演題での登壇者の発言を追っているだけでは、なかなか会場の雰囲気は分からないのですが、それでもまずは大会全体を収録した動画を探すべきでしょう。
 ということで、複数の動画が見つかりましたが、著作権をクリアしているのか?につき確信が持てないものを落としていったら、残ったのは日本共産党チャンネルでした。
 
辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会(1時間10分)
冒頭~ 司会 崎山律子
0分~ 開会のあいさつ 親川盛一共同代表
2分~ 故翁長知事に捧げる黙祷
4分~ 故翁長雄志知事最後の言葉 御子息翁長雄治(たけはる)氏
10分~ 主催者代表あいさつ 高良鉄美共同代表
16分~ メッセージボード 山本隆司事務局長
20分~ 開催地代表あいさつ 城間幹子那覇市
24分~ 出席者紹介(国会議員・県議会議員・市町村長)
26分~ 現地活動報告 山城博治現地闘争部長
29分~ 連帯のあいさつ 政策集団新しい風にふぁぶし 金城徹共同代表
33分~ 連帯のあいさつ 金秀グループ 山城敦子金秀興産代表取締役社長
37分~ 琉球大学名誉教授東清二さんからのメッセージ
41分~ 総がかり行動実行委員会より 福山真劫共同代表
46分~ 県知事職務代理者あいさつ 沖縄県知事職務代理者 謝花喜一郎副知事
55分~ 決議文提案 玉城愛共同代表
1時間01分~ カンパ呼掛けとメッセージボード 山本隆司事務局長
1時間04分~ がんばろう 高里鈴代共同代表
1時間06分~ 閉会のあいさつ 稲嶺進共同代表 
 
土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、
辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会決議
(引用開始)
 国は、8月17日からの辺野古地先への埋め立て土砂投入を沖縄県へ通知した。現在行われている環境アセスを無視した数々の違法工事は、仲井真前知事が退任の4日前に承認した追加申請によるものである。沖縄県は、沖縄防衛局に対し、再三にわたり工事実施前の事前協議を行うことを求めてきたが、沖縄防衛局はこれを無視し十分な説明を行うことなく、沖縄県民の民意を踏みにじり、環境破壊につながる違法工事を強行し続けている。
 7月27日、翁長沖縄県知事は「埋立て承認撤回」を表明し、8月9日に聴聞を開始した。ただちに国は埋立て工事を中止し、新基地建設計画を断念すべきである。
 私たちは安倍政権と沖縄防衛局に対し強い怒りを持って抗議する。私たちは豊かな生物多様性を誇る辺野古・大浦湾の美ら海に新たな基地を造らせない。沖縄県民の命とくらし、沖縄の地方自治と日本の民主主義と平和を守るためこの不条理に対し全力で抗い続ける。
 今県民大会において、以下、決議し、日米両政府に対し、強く抗議し要求する。
                                       記
1.ジュゴンやウミガメなどの生きていくための豊かな海草藻場や希少なサンゴ類の生息環境を破壊する土砂投入計画を直ちに撤回すること。
2.大浦湾側には活断層の疑いがあり、その付近の海底には、超軟弱地盤が存在する。辺野古新基地の立地条件は成り立っていない。建設計画を直ちに白紙撤回すること。
3.沖縄高専、久辺小・中学校、集落は、米国の安全基準である高さ制限に抵触している。児童生徒と住民の生命と財産を脅かす新基地建設を直ちに断念すること。
4.欠陥機オスプレイ配備を撤回し、米軍普天間基地を即時閉鎖・撤去すること。
5.欠陥機オスプレイの国内における飛行を直ちに全面禁止すること。
 
宛先
沖縄及び北方対策担当大臣
米国大統領
駐日米国大使
         2018年8月11日
         辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議
(引用終わり)
 
 台風14号の接近により、とりわけ30分経過した「連帯のあいさつ」が始まる頃から風雨が強まり、ステージ上の方々がずぶ濡れになる様子が動画で視聴できますが、はるかに多くの陸上競技場のグラウンドに集まった市民が、みなずぶ濡れになりながら、最後まで大会に参加し続けたはずです。
 そのような、参加者の様子が分かる動画はないものか、と探しているのですが、普通こういう大会にビデオカメラを持って行った方は、登壇者をそっちのけにして、会場の参加者ばかり撮影する人はあまりいないですよね。
 
 その中で、OurPlanet-TVのダイジェスト動画冒頭で、会場全体の風景をパンしながら撮影した映像が見られます。開会後も、続々と会場には参加者が詰めかけたそうですから、これも会場の雰囲気を知る一助にはなりますね。
 
辺野古は今】遺志継ぎ「基地反対」~県民大会(19分)
 
 また、labornetTVの冒頭では、会場に入ろうとする参加者の姿がちらっと写りますし、最後の方では、閉会前のメッセージボードを掲げる会場内の様子が写ります。
 
辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会に7万人(7分)
 
 もう1つ、いつまで視聴できるか分かりませんが、共同ニュースのYouTubeチャンネルでは、メッセージボードの他に、みんなで手を繋いだ「がんばろう」の映像が見られます。
 
県民大会で翁長氏悼む 沖縄、辺野古移設反対訴え(2分)
 
 昨年12月11日、名護市民会館大ホールの会場風景から受けた寒々とした印象は、この8月11日の県民大会からは感じられませんでした。明らかに状況(つまり沖縄県民の意思)には変化が見られると思います。
 その変化は、結果として、翁長知事が自らの生命を賭して購ったものですが。
 9月13日告示、30日投開票の沖縄県知事選挙の行方は、沖縄だけではなく、今後の日本の針路にも重大な影響を及ぼすことになるでしょう。

平成最後の「全国戦没者追悼式」~安倍内閣総理大臣「式辞」と天皇陛下「おことば」を読む

 2018年8月15日配信(予定)のメルマガ金原No.3240を転載します。
 
平成最後の「全国戦没者追悼式」~安倍内閣総理大臣「式辞」と天皇陛下「おことば」を読む
 
日本経済新聞(WEB版)  2018/8/15 9:42 (2018/8/15 13:04更新)
平成最後の「終戦の日」 不戦の誓い刻んだ30年 
(抜粋引用開始)
 戦後73年目の8月15日は平成最後の「終戦の日」となった。天皇陛下は皇后さまとともに日本武道館(東京・千代田)で開かれた全国戦没者追悼式に出席。在位中最後の終戦の日のお言葉を述べられた。時代の変わり目、戦争体験者の減少と高齢化で記憶の継承は難しい課題となっている。追悼の祈りには不戦の誓いを次世代へつなぐという強い願いが込められた。
 正午の黙とうに続いて、陛下は「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」と振り返り、今年も先の大戦への「深い反省」に言及。世界の平和を祈念された。
(略)
 式典は午前11時50分すぎに始まり、国歌斉唱の後、安倍晋三首相は式辞で「今日の平和と繁栄が、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れません」と哀悼の意を表明。「戦争の惨禍を、二度と繰り返さない。歴史と謙虚に向き合い、この誓いを貫いてまいります」と話した。
 アジア諸国への加害責任については6年連続で言及しなかった。
(引用終わり)
 
 今年も巡ってきた8月15日、私がこれから書こうとすることは、上に引用した日本経済新聞WEB版執筆者と問題関心を共有するものであり、この記事をやや詳細に敷衍するものになるでしょう。
 
 巻末リストをご覧いただければお分かりのとおり、私は、2014年から4年連続で、8月15日には全国戦没者追悼式を取り上げ、天皇陛下「おことば」と安倍首相「式辞」を分析してきました。
 特に、一昨年は、2回目の首相就任以来貫徹されてきた“安倍3原則”を確認し、昨年は、践祚以来の29回に及ぶ天皇陛下「おことば」の全てを跡付けるという、いわば総仕上げをしてしまいましたので、おそらく今年も同じことを確認するのだろうという予想は十分についていたものの、さすがに「平成最後の全国戦没者追悼式」となれば、取り上げない訳にはいかないだろうと思います。
 
 まず、式典の公式動画はないか?と探してみたのですが、政府インターネットテレビには首相式辞しかアップされていませんでした。
 そこで、とりあえず、「THE PAGE(ザ・ページ)」チャンネルの動画を借用しておきます。
 
73回目の終戦の日 平成最後の「全国戦没者追悼式」(2018年8月15日)(1時間16分)
23分~ 安倍晋三内閣総理大臣 式辞
30分~ 天皇陛下 おことば
 
 以下に、今年の内閣総理大臣「式辞」と天皇陛下「おことば」を全文引用し、それぞれについて簡単なコメントを付しておきます。
 
平成30年8月15日
平成三十年 全国戦没者追悼式式辞
(引用開始)
 天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、戦没者のご遺族、各界代表、多数のご列席を得て、全国戦没者追悼式を、ここに挙行いたします。
 苛烈を極めた先の大戦において、祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭い、あるいは戦後、遠い異郷の地で亡くなった御霊、いまその御前(おんまえ)にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。
 今日の平和と繁栄が、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧(ささ)げます。
 未(いま)だ帰還を果たしていない多くのご遺骨のことも、脳裡(のうり)から離れることはありません。一日も早くふるさとに戻られるよう、全力を尽くしてまいります。
 戦後、我が国は、平和を重んじる国として、ただ、ひたすらに歩んでまいりました。世界をより良い場とするため、力を尽くしてまいりました。
 戦争の惨禍を、二度と繰り返さない。歴史と謙虚に向き合い、どのような世にあっても、この決然たる誓いを貫いてまいります。争いの温床となる様々な課題に真摯に取り組み、万人が心豊かに暮らせる世の中を実現する、そのことに、不断の努力を重ねてまいります。今を生きる世代、明日を生きる世代のために、国の未来を切り拓いてまいります。
 終わりに、いま一度、戦没者の御霊に平安を、ご遺族の皆様にはご多幸を、心よりお祈りし、式辞といたします。
     平成30年8月15日
(引用終わり)
 
[コメント]
 安倍首相「式辞」の特色について、日本経済新聞は「アジア諸国への加害責任については6年連続で言及しなかった。」というとても端的な表現でまとめており、まことにその通りなのですが、私は、その点も含め、“安倍3原則”として整理していますので、2016年8月15日のブログ「全国戦没者追悼式で今年も貫徹された“安倍3原則”(付・天皇陛下「おことば」を読む)」から引用しておきます。
 
(引用開始)
 結局、言っていることは2013年以来変わっていません。
 先に述べた安倍「式辞」の3大特徴、すなわち、
① アジア諸国民に対する加害についての反省と哀悼の意は絶対に表明しない。
② 「不戦の誓い」も述べない。
③ 戦没者の犠牲の上に“平和と繁栄”があることを強調しながら、“平和と繁栄”をもたらしたものが「国民のたゆまぬ努力」であるとは言わない。
については、完璧に昨年までの「式辞」を踏襲しています。今やこれを「安倍3原則」と名付けても良いでしょう。
(引用終わり)
 
 どうでしょうか、毎年措辞は少しずつ変更しつつ、基本スタンスは不変です。結局、6年目の今年も“安倍3原則”を変更する必要はありませんでした。このような「式辞」を来年も読み上げるつもりなのでしょうかね?
 
 それでは、次に天皇陛下「おことば」です。
 
全国戦没者追悼式での「おことば」
平成30年8月15日(水)(日本武道館
(引用開始)
 本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来既に73年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。
 戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
(引用終わり)
 
[コメント]
 昨年の8月15日、私は「全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること」を書き、今上陛下による8月15日の「おことば」を全3期に分類できると指摘しました。その結論部分を再説します。
 
(引用開始)
第1期 平成元年~平成6年
 昭和天皇が「全国戦没者追悼式」で読み上げていた「おことば」が見つからないかと思って探しているのですが、まだ見つけられていません。けれども、即位直後からいきなり内容を変えるとは思いにくいので、この第1期の文章は、前代を基本的に踏襲しているような気がします(確言できませんけど)。
第2期 平成7年~平成26年
 村山富市内閣が成立して1年以上が経過した平成7年の「全国戦没者追悼式」で、初めて第3節に、「歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民とともに」という言葉が挿入され、以後、これが踏襲されています。
第3期 平成27年~平成29年
 政権に復帰した安倍晋三内閣と皇室の対立が外信でも(だからこそ?)報道される中、いわゆる安保法制審議中の平成27年の「おことば」には、異例とも言える表現が盛り込まれました。
 とりわけ特徴的なのは第2節であり、「終戦以来既に70年,戦争による荒廃からの復興,発展に向け払われた国民のたゆみない努力と,平和の存続を切望する国民の意識に支えられ,我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という,この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき,感慨は誠に尽きることがありません。」に、今上天皇の平和への思いが凝縮していると見るべきでしょう。
 残念ながら、第2節におけるこの表現は、翌年からまた元に戻ってしまいましたが、同じく平成27年「おことば」から第3節に付加された「さきの大戦に対する深い反省と共に」という部分のうち、「深い反省とともに」は生き残り、平成28年、29年の「おことば」に引き継がれています。
(引用終わり)
 
 今年読み上げられた最後の「おことば」も、第3期の流れの中にあり、ほとんど昨年(平成29年)のものを踏襲しています。ただ、よく読み比べてみると、2箇所変更がありました。そのうち、「戦争の惨禍が再び繰り返されない」が「繰り返されぬ」となったのは単なる語調の問題ですが、第3節の冒頭に「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」を付加したのには、それなりの思いがあってのことだろうと思います。私は、平成27年8月15日(あの「安保法制」法案が国会で審議されているただ中でした)の異例の「おことば」で述べられ、翌年から繰り返されることのなかった「戦争による荒廃からの復興,発展に向け払われた国民のたゆみない努力と,平和の存続を切望する国民の意識に支えられ,我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。」を(分かる者は分かってくれるだろうと)凝縮した表現が「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」なのではないか、と思います。
 安倍首相が常に言挙げする「今日の平和と繁栄が、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものである」というまやかしの論理に対峙する天皇陛下「おことば」の思想については、「「日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告)」(2014年1月14日)というブログに詳しく書きましたので、ご参照いただけると幸いです。
 
 さて、今上天皇による全国戦没者追悼式「おことば」も、今年の30回目が最後となります。昨年は、退席時に動きが止まり(日テレニュース24参照)、
今年も、「おことば」を述べられた後、皇后陛下の助言によってようやく席に戻る様子が
見られるなど、年齢的な衰えは隠しようがなく、「退位やむなし」との思いを持たざるを得ません。
 来年4月の譲位により、内閣と皇室の関係に変化が訪れるかは定かではないし、私自身の皇室に向き合う気持ちが今と同様かについても正直自信がありません。
 ただ、「平成」という時代(30年間)を思い出す時、今上天皇の存在を抜きにした時代認識はあり得ないだろうとは思います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「全国戦没者追悼式」関連)
2014年1月14日
日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告)
※「全国戦没者追悼式」ではありませんが、十分「関連」がありますので。
2014年8月15日
“コピペ”でなければ良いというものではない~全国戦没者追悼式での安倍晋三首相の式辞を聴いて
2014年8月18日
続 “コピペ”でなければ良いというものではない~“平和と繁栄”はいかにして築かれたのか
2015年8月15日
全国戦没者追悼式総理大臣「式辞」から安倍談話を読み返す(付・同追悼式での天皇陛下「おことば」について)
2016年8月15日
全国戦没者追悼式で今年も貫徹された“安倍3原則”(付・天皇陛下「おことば」を読む)
2017年8月15日
全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること

枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した

 2018年8月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3239を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
2018年8月13日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
 
 去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)で行われた枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介も、今日で第3回目を迎えました。
 この部分の冒頭における枝野代表の「安倍内閣を信任できない三つ目の理由は、アベノミクスの行き詰まり、限界の露呈であります。」を要約して、「アベノミクスは限界を露呈した」としておきました。
 
 このブログのために読み直してみて、安倍内閣不信任の7つの主要な理由のうち、比較的地味な印象を受けるアベノミクス批判を行うこの部分に、枝野代表は相当に力を入れているという印象を受けました。
 2016年の衆議院総選挙(つまり立憲民主党結党)からそれほど間の無い頃、枝野代表に対するインタビューを視聴したか読んだかした際、「次に政権交代の現実的なチャンスが巡ってくるのは、アベノミクスが崩壊した後だろう」という趣旨の発言を枝野氏が行っていたということを記憶しています。私は、「枝野氏は、政党を率いるほどの政治家として、当然持たなければならない現実認識力を持っている」と感心したものでした。
 
 7月20日の演説での「アベノミクスは限界を露呈した」という部分においても、アベノミクスに対抗する経済政策の旗を立て(他の野党の賛同も得られる)、来たるべき政権交代に備えようという意気込みが感じられる、と言っては過褒でしょうか。
 
 なお、いつものように、「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第3回~アベノミクスは限界を露呈した
 
第2回から続く
 
 安倍内閣を信任できない三つ目の理由は、アベノミクスの行き詰まり、限界の露呈であります。
 そのアベノミクスの結果として生じたさまざまな副作用のみが、ますます顕著なものとなっています。このままでは、国民生活と、そして日本社会の分断によって、社会そのものを崩壊に至らせかねないぎりぎりのところに来ていると思っています。
 確かに、アベノミクスの成果なのかどうかは別として、株価あるいは輸出企業を中心とした企業収益にはよい数字も見られていますが、実質賃金や個人消費には全くつながっていません。アベノミクスが始まって五年半になっています。もはや、まだ始めたばかりだから結果にはつながりませんという言いわけが許される時期ではありません。
 そもそも、経済を活性化させることで税収をふやし、財政再建を実現すると称していた財政再建目標は、五年たっても全く実現できず、五年先送りをした。どういうことだかわかりますか。五年やって成果が上がらず、五年先送りをした。成果がゼロだから、これまでの期間と同じ期間が必要なんですよね。半分進んでいるなら、二年半で済みますよね。全く進んでいないということです。
 二%の物価上昇目標、それは一義的な責任は日銀かもしれませんが、この物価上昇目標は、当初、二年程度とおっしゃっていました。今、何年でしょうか。五年半です。六度の先送りです。もはや、この目標自体が達成できなかった、失敗だったというのが当然じゃないでしょうか。
 あえて申し上げますが、徹底した金融緩和、円安を目的としていたとは言えないにしても、そのことによる円安。財政出動。確かに、かつては正しい経済刺激策だったと私は思います。今回も、輸出企業の収益増など、一定の部分的な成果は上がっていることを認めます。
 しかし、先ほど申しましたとおり、そもそも、こうした手法が通用するこの百五十年間の状況と、我が国の置かれている状況が、根本的に変化をしているのではないか、そのことが問われているのではないでしょうか。だから、本来効果が上がるはずの金融緩和をとことんアクセルを踏み、財政出動にとことんアクセルを踏んでも、個人消費や実質賃金という、国民生活をよりよくするという経済政策の本来の目的にはつながらないところでとまっているのではないでしょうか。
 私は、政治的な言い方としては、こうした金融緩和などによるアベノミクス、いわば強い者、豊かな者をより強く豊かにする政策であるという言い方をしてきました。御異論はあるかもしれませんが、結果的に、大きな輸出企業などを中心として、強い者がより強く、豊かな者がより豊かになったというのは、先ほど来部分的な成果として挙げたものの言いかえとして、決して間違ってはいないと思います。
 これもあえて申し上げます。
 そのこと自体は、ある時期までは私は正しかったと思います。日本の戦後復興、高度成長の時代、日本が貧しかった時代は、まさに貧しい日本が豊かになるためには、海外に物を売ってお金を稼がなければ豊かになれませんでした。海外に物を売って豊かになる。しかし、貧しい国ですから、高品質、高性能、あるいは新製品の開発、そうしたところで、時の先進国、主にアメリカでありましたが、そうした国と互角に競争できるような力はまだまだありませんでした。
 したがって、安い労働力を武器として、安いものをたくさんつくる。安いからたくさん売れる。そうしたことによって、世界にメード・イン・ジャパンを売り、そのことによって得た利益によって国内を豊かにしていく。
 したがって、まず、国内を豊かにする前に、輸出によって稼ぐために輸出企業を育てる。輸出企業が育つために何をやっていくのかというところに経済運営の力を注力する。
 私は、自民党がまともだった時代のこうした政策というのは決して間違っていなかった、時代に合致をしていたと思っています。問題は、特にバブル崩壊以降の我が国の状況がこうしたやり方の通用している時代状況にあるのか、世界経済の状況にあるのかということだというふうに思っています。
 実は、多くの皆さん、勘違いをされているんじゃないかと思いますが、バブル崩壊以降の日本経済の低迷、これは、部分的な数字はよくなったと自民党の皆さんが幾らおっしゃっても、実質経済成長率などの数字を見れば、バブル崩壊以降、一貫して、せいぜい一%前後の低成長が続いている。バブル崩壊前は平均をすると四、五%の経済成長をしていたところから、大きく我が国の成長力が落ちた。これは否定のできない、そして、これは民主党政権の時代も含めて、この三十年近くの間、一貫している我が国の状況であります。こうした状況の原因が外需にある、輸出にあると勘違いをしているんじゃないでしょうか。
 確かに、日本を代表する輸出企業は、そして輸出産業は、新興諸国の追い上げ、グローバル化の進展などによって、大変厳しい競争環境の中に置かれています。実際、その結果として、日本を代表する輸出企業が経営危機に陥るなどというニュースが年に何社も出てくるというような状況もあります。「サザエさん」のスポンサーがかわったのは大変残念です。
 問題は、では、輸出産業全体がこの三十年近く経済成長していないのかということです。
 実は、バブル崩壊の前と後で、日本の輸出に関しての成長力はほとんど下がっていません。大変厳しい経済環境のもとでありますが、日本の輸出企業、輸出産業は、この競争の中でも実は着実な経済成長を遂げているんです。
 もちろん、こうした経済成長を遂げてきた背景には、我が国のそうした企業を支援する、バックアップするという政策の支えがあったことも否定はしません。しかしながら、厳しい環境の中でもバブル崩壊前と比べて大差ない成長を遂げている輸出産業に、もっと頑張って成長して国内を引っ張れといっても、それは無理な相談なんです。今の成長力をどう維持していくのかということが、この厳しい環境の中、三十年頑張ってきた日本の輸出産業と輸出企業に対して、政府のできることなのではないでしょうか。
 本当にやらなければならないのは、実は、バブルの前と後で大きく変わったのは、個人消費が大きく落ち込み、落ち込んだままであるということであります。個人消費がふえない限り日本の経済の安定的な成長が実現できないのは、もう自明の理であると私は考えます。
 問題は、この三十年近くの間進めてきた政策が、個人消費を着実にふやしていくという観点から見たときにどういう意味を持ってきたのかということであります。
 例えば、労働法制、今回の高度プロフェッショナル制度も問題でありますが、実は、この三十年の間に派遣法が逐次改悪をされて、学校を卒業して就職をするというのは、私は今五十四歳ですが、私が学校を卒業する時代には正社員になるというのは当たり前のことでありましたが、今、若い人たち、必ずしも、超一流大学を卒業される方は別かもしれませんが、正社員になれたら、よかったね、正社員じゃないけれども、就職があって、まあまあしようがないね、こういう実態があるということを皆さん御存じでしょうか。
 そして、非正規の方が異様に数が多かった、いわゆるロストジェネレーションと言われる世代の皆さんは、仕事をしながらのオン・ザ・ジョブ・トレーニングの機会にも恵まれることなく、今なお非正規で低収入という状況の中で年を重ねておられます。
 我が国は、ただでさえ少子化、人口減少の中にあります。人口が減少すれば、もちろん、一人当たりの消費量をふやすということで個人消費の全体量をふやしていくということは可能ではありますけれども、しかし、まさに消費者の数が減れば消費がマイナスの方向に向かう、そういう大きな要素となることは間違いありません。
 そうした構造の中で、政治がやらなければならないことは何なんでしょう。実は、やらなければならない第一のことは、格差の是正であります。格差の是正は、今やらなければならない経済政策です。景気対策です。
 日本では、当たり前の経済についての大原則、その中で、なぜかどなたもおっしゃらない、ほとんどの方はおっしゃらない大原則があります。それは、金持ちほど金を使わないという大原則です。
 これは、例えば価格は需要と供給のバランスで決まるのと同じように、経済の大原則です。消費性向という、手にした所得の中でどれぐらいが消費に回るのかという比率、これは所得が大きいほど低くなる、これは経済の大原則です。したがって、格差が拡大をすれば消費が落ち込むのは、経済のイロハのイです。その中で、結果的かもしれませんが、強い者、豊かな者をより強くする、そうした政策の結果として、格差が拡大し、固定化をしてしまっている、その結果として消費が拡大をしない、これが今の日本の置かれている状況であります。
 格差の是正は、貧しい人たちが気の毒だからというだけではありません。格差を是正し、低所得の人たちの賃金、所得を底上げすれば、低所得であれば、消費性向はほぼ一〇〇%です。したがって、この人たちの手にした所得、収入は、ほぼ全額が消費に回ります。しかも、低所得、低賃金ですから、こうした方が、例えば、海外のブランド品を買うとか、海外旅行に行くとか、海外に投資をするとか、そうしたところにお金が使われる比率は、どう考えてもほとんどありません。国内におけるまさに内需の拡大に直接つながる、それが、所得の低い人たちの所得を底上げする政策の持っている、経済政策としての意味であります。
 したがって、いかに格差を拡大させずに、そして格差を是正していくのか、所得の低い人たちから中間の人たちの所得をどう底上げしていくのか、このことが、国内における消費を拡大させる、日本経済を立ち直らせる王道であると私は考えます。
 あえてつけ加えれば、労働法制などを、むしろ規制を強化することによって、働いた賃金に応じて、所得を得る、そうしたことがすきっと回っていく社会をつくっていかなければなりません。
 例えば、我が国では、トラック運送などに携わるドライバーの方が大変な人手不足です。低賃金で人手不足です。後で申し上げる介護や保育の皆さんと同様です。おかしいんです。先ほど申しました、価格は需要と供給のバランスで決まるんです。それが、資本主義社会であるならば大原則です。人手不足であるのに低賃金というのは、マーケットがどこかでゆがんでいるからです。そのゆがみを正すのは政治の役割です。
 低賃金であるならば、賃金が上がる、そのことによって、賃金が高いなら、重労働かもしれないけれども頑張ってやろう、そういう方がふえて、市場は機能して、必要な人員が確保されることにつながるんですが、残念ながら、例えば今回の長時間労働を規制する働かせ方改悪法案の中の数少ない改善部分である長時間労働の規制も、低賃金、重労働、長時間労働であるトラックドライバーの皆さんなどに対する部分については、先送りをされてしまいました。
 もちろん、どんな産業に携わっている皆さんでも、過労死、過労自死などに至れば、先ほど申しましたとおり、家族を含めて大変、残された人たちに大きな傷を残しますし、何よりも御本人がやりきれないものでありますが、交通事故などにつながれば、それ以外の方々にも影響が及ぶような仕事の人たちの長時間労働規制を後回しにせざるを得ない。それだけこうした人たちの人手不足が、低賃金を背景に行われているこの市場のメカニズムのゆがみを正すことこそが、実は格差の是正につながり、低賃金の人たちの賃金の底上げにつながり、経済、消費の拡大につながっていくということを申し上げたいと思います。
 更に申し上げると、経済、消費をふやすために、あと二つ大事なことがあります。一つは高齢者の老後であります。
 今の日本の高齢者の皆さんは、まさに日本の右肩上がりの高度成長をつくってくださった世代の皆さんです。もちろん、同じ世代だからといって、皆が同じような生活環境にいるわけではありません。高齢者でも、貯蓄もなく、大変厳しい生活をされている方も少なからずいらっしゃいます。そして、人によって、持っていらっしゃる資産の規模には大きな違いはあるでしょう。しかしながら、まさに老後のためにこつこつお金をためよう、そしてそのことが可能であった高度成長をつくってこられた世代の皆さんですから、実は、日本の高齢者の皆さんは、老後のために蓄えた貯蓄が、それぞれに若干ずつでも持っていらっしゃる方がほとんどです。
 問題は、こうしたお金が老後になってもほとんど使われていないという現実であります。あの世に預金通帳は持っていけない、講演会などでは、よく高齢者の皆さんに向かってこう言うと、笑っていただきます。皆さん、わかっておられます。にもかかわらず、老後のためにと思って蓄えたお金が老後になって使えない。なぜでしょうか。それは、元気なうちはいいけれども、病気や、あるいは介護が必要な状況になったときに、せめてわずかな預貯金でも残しておかないと心配だという意識に、多くの高齢者の皆さんが陥ってしまっているからであります。その結果、一千五百兆を超えるとも言われている国民金融資産、そのうちの多くの部分を占めている高齢者の皆さんの貯蓄が消費に回りません。
 こうした皆さんの貯蓄が、全部を一気に使ってくださいと言っても、やはり将来不安が一気になくなるわけではありません。例えば、今持っている貯蓄の半分を二十年かけて使いませんかと。それだけでも数兆円単位の消費の拡大に確実につながります。御本人にとっても、自分が若いころ稼いでためてきたお金で充実した老後を過ごすことができる、そして、お金を使っていただくことによって現役世代の経済が回っていく、一石二鳥です。それができないのは、介護のサービスが不足をしていること、年金や医療などを含めた老後の不安が大きいからです。老後の安心を高めることこそが経済政策です。景気対策です。
 子供を持たないという選択をされたり、子供を持ちたいと思いながら持てなかった人たちに対する心ない発言が、残念ながら自民党議員の方々から何度となく繰り返されました。子供を産むか産まないかという選択は、まさに自己決定です。それぞれのカップルがみずから決めることです。あるいは、持ちたくても持てなかった人たちもたくさんいらっしゃいます。
 その一方で、持ちたいと希望する人たちが希望をかなえることができて、そうすれば、必ず我が国の出生率は大きく高まります。子供の数はふえます。そのことは、結果として消費をふやし、経済を活性化させることにつながります。
 したがって、産む、産まないの選択を迫るのではなくて、産みたいと希望しながらそれをできていない人たちを、どうやってその希望をかなえていただけるのか、そのことこそが政治のやっていくべき役割だと思います。
 なぜ、産み育てたいと希望する人たちがそのことを実現できないのか。まさに、子育てと教育と雇用の、この三つの大きな問題があるからにほかなりません。
 一つは、保育所の不足に代表される子育て支援が不足であること。そして、教育の問題。
 教育、かつて、私の時代も、奨学金をもらって頑張っているんだね、あの人はねという同級生もいましたが、非常に数が限られていました。しかし、今や奨学金をもらわないと進学できないという人たちの比率は圧倒的に高まっています。
 私は国立大学の出身ですが、某私立大学を受けたいと言ったら、学費は最低限出せるけれども、なかなか、いろいろなことを含めて、全体の大学時代の金は出せないねと言われて、国立大学を選択しました。その当時と比べて国立大学の授業料はべらぼうに上がってしまっていて、国立なら行かせられるけれどもというような、そうした状況ではなくなってしまっています。
 こうしたことなどを背景にして、せっかく子供を産み育てるならばちゃんとした教育を受けさせたい、子育て支援は不十分、教育には金がかかる、産み育てたいと思っても断念している、あるいは二人、三人、産み育てたいけれども一人で断念をしている人たちが山ほどいらっしゃいます。そうした人たちが安心して子供を産み育てることができるようにする、まさに教育の格差の是正や保育所の増設は景気対策、経済対策です。
 失われた世代、ロストジェネレーションという言葉を先ほど申しましたが、そうした象徴的な世代の皆さんに限らず、若い人たちの間には、例えば、結婚し、家庭を持ち、子供を産み育てたいという希望すら持てないような低所得、不安定な働き方を余儀なくされている人たちが山ほどいます。そうした人たちが安定的な仕事を得、そして安定的な収入を得ることができたときには、その中の一定比率の人たちは、家族を持ち、そして子供を産み育てたいという希望を持つことができ、そこにつながっていくでありましょう。
 結果的に消費を拡大させることにつながる、少子化に歯どめをかける、希望する人たちにその希望をかなえていただけることを実現するためには、まさにこうした子育てや教育や雇用の政策を打つことこそが景気対策、経済対策であるという時代に入っているのです。
 立憲民主党は、こうした観点から、景気対策として、保育士の賃金の底上げを、そして介護職員の賃金の底上げを急いで行うということを提起し続けてきています。他の野党の皆さんにも御協力をいただき、共同して国会に法案も提出をさせていただいています。
 これは、一義的には景気対策という側面を持っている経済政策です。確かに、こうした長期的な財源を必要とする政策のためには安定財源が必要だという理屈はわからないわけではありません。しかし、景気対策として効果があるならば、建設国債は、財政規律のある意味別枠という扱いでばんばん発行されています。今や、いわゆる従来型大型公共事業と比べてこうした社会保障関連の投資の方が経済波及効果が大きい、それこそそういうデータも存在をしている時代に入っています。
 経済波及効果の大きい、しかも、我が国が今直面している消費不況をどう脱却するか、老後の安定、そして子育ての支援、そして、そこに携わっている所得の低い人たちの所得の底上げにつながる介護職員や保育士への賃金の底上げという政策は、ここに集中的に財源を投資するということこそが、まさに、どこに向けて景気対策を進めていくのかという象徴的な姿であり、少なくとも、カジノを進めるよりは百万歩経済に効果のある政策だと私は確信をいたしております。
 所得の低い人、所得の不安定な人たちの所得を下支えすることは景気対策、経済対策という側面があるということを申し上げましたが、そうした側面もあわせて、特に地方の活性化のための経済政策としてこの国に必要なのは、一次産業に従事する人たちの所得の安定を図ることであるというふうに思います。
 それぞれの地方において、地域の社会と経済を支えているのは一次産業に従事する皆さんです。その人たちの比率はかなり低下をしている地域はあるかもしれませんが、しかし、基幹となる産業として一次産業がしっかりと回っていく、そこで仕事をしている人たちが地域の中心を担って、あるいは消費を促していく中心を担っていく、こうしたことが必要な地域が日本じゅうの圧倒的に広い面積を占めているというふうに思っています。
 米作農家の経営安定に大きく貢献してきた米の直接支払い制度について、安倍政権は平成三十年産米から廃止をしました。我々が推進した農業の戸別所得補償制度は、それに先立って廃止をされています。
 一次産業の中においては、市況やあるいは天候によって大きな利益を上げる年もありますが、逆に、そうした状況によって翌年の再生産も不可能なぐらい所得が得られないときもあります。どんな年でも最低限、翌年の再生産が可能な安定的な一次産業の経営を担っていただく、そのためにいわゆる所得補償制度をとることは、先進国の農業政策などにおいては今や常識となっています。
 私たちは、これはまさに農業を守る、食の安全を守る、緑を守ると同時に、まさに、特に過疎地域などにおける経済を回していく最低限の前提条件として必要なことだと思っていますが、安倍政権はこれに逆行する政策を今のようにとっているわけです。
 そもそも、卸売市場法改正を始め農政関連改革法を成立させましたが、農業を他産業と同一視し、目先の経済効率のみを過度に追求するのみで、多面的機能を評価し維持するための方向性に逆行をしています。
 いわゆる土地改良予算は一方で大幅に伸びており、安倍農政は、小規模農家、つまり地域社会を経済の面も含めて支えている人たちを切り捨てる一方で、従来型の農業土木を推進している。誰のための農政なのかと申し上げたいし、まさに土地改良などの農業土木はいつまで継続するかわからないわけです。
 それぞれの地域において、これから長期にわたってそこに暮らし続ける、住み続ける、営みを続ける、そのためには、一次産業で最低限食べて再生産をしていけるという基盤を整えなければ、過疎地域に暮らす人たちはいなくなります。
 安倍政権は、こうした、暮らしを、社会を下から支えて押し上げるという、今我が国がとらなければならない経済政策の方向とは逆行し、強い者をより強くする、豊かな者をより豊かにする、そうすれば世の中全体がそこに引っ張られてよくなる、あるいは豊かさが滴り落ちるという、全く時代おくれになった政策に拘泥をし、社会の分断と貧困を招き、そして、思ったとおりの経済の安定的な成長をもたらすことができないという結果をもたらしています。逆行しているのは明確です。
 例えば、この国会でも、生活保護費の母子加算を縮小しました。私は、この国会の一番最初の本会議でこの点について指摘をしましたら、六割の人はふえるんだという答弁にとどまりました。まさに安倍政権の姿勢を私は象徴していると思います。
 確かに、母子加算等については、六割の方がふえるというのは客観的な事実です。その方はふえるんだから結構なことです。しかし、六割はふえるというのは、四割は減るということを認めていらっしゃるわけです。せめて、四割は減るけれども、こういう人たちだから減っても大丈夫なんだという説明をしなければ、この四割を切り捨てていることにほかならないじゃないですか。
 保育所の数をふやすことも、努力をしているとおっしゃっていますが、おっしゃっているだけで、保育士の賃金増による待機児童対策よりも無償化を優先する政策をいまだに推進をしています。
 確かに、無償化が実現できるなら結構なことです。我々も将来の方向として目指したいと思っています。しかしながら、限られた財源とおっしゃっているのは、いつも政府・与党じゃないですか。限られた財源を無償化に回すことが本当に合理的なんですか。
 今、何よりも手を差し伸べなければならないのは、保育所に入りたいと思っているのに入れていない人。その人たちに保育所を提供することこそが、無償化よりも優先度は圧倒的に高いんじゃないですか。
 しかも、現在の保育料の仕組みも、所得に応じて段階をつけていますから、実は、無償化されて一番恩恵を受けるのは、高額の所得を得ていながら保育所に子供を預けることができている人たちです。私は、その人たちも、財源があるならば、無償で安心してお子さんを預けていただける、そこを目指すべきだと思いますが、優先順位は、所得が低いのに保育所にも入れないような、そちらの人たちを救うことなのは当たり前じゃないですか。
 こんなちぐはぐなことをやっておいて、先ほど来、やっているじゃないかというやじが飛んでいますけれども、やっているんですか。やっていないじゃないですか。逆行しているじゃないですか。
 税だってそうです。これは低所得者ではありませんが、一部の中堅層の給与所得者を狙い撃ちする控除の見直しをしたのは誰ですか。国際観光旅客税なども含めて、取りやすいところから取るという税制の改悪を進め、例えば金融所得課税などは先送りをしているじゃないですか。
 強い者、豊かな者には優しく、厳しい環境にある人たちには厳しく。それは、繰り返しますが、そうした皆さんが気の毒だからにとどまりません。こうした皆さんの所得を底上げして消費をしていただかない限り、従来型の経済政策を幾ら打っても、消費が伸びない限り、我が国の安定的な経済の再生はあり得ません。
 経済についてはあと三十分ぐらい話したいことがあるんですが、最後に安倍総理の典型的な勘違いを申し上げて、次のテーマに移りたいと思います。
 一月三十一日の参議院予算委員会安倍総理は、国民生活の困窮化の一例としてエンゲル係数の上昇が見られることを質問され、物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれていると場違いな答弁をされています。
 こんな認識なんですから、所得の低い人たちの所得を底上げしなければ景気を回復させることはできないという今の社会において、日本経済を立ち直らせることは到底できないということを最後に強く指摘をしておきたいと思います。
 
(第4回に続く)

枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称

 2018年8月13日配信(予定)のメルマガ金原No.3238を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第2回~カジノ強行と「保守」の僭称
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
2018年8月12日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
 
 昨日(8月12日)の第1回「高度プロフェッショナル制度の強行」に引き続き、去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)での枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介です。今日の第2回は、「カジノ強行と『保守』の僭称」と名付けてみました。
 安倍首相率いる自民党は「保守」ではない、自分こそ保守本流だ、ということは、かねてからの枝野代表の主張ですが、それを国会の場で全面展開する機会がやって来た、ということでしょうか、この部分には非常に力が入っています。
 なお、8月6日の岩上安身さんによるインタビューの中で枝野氏自身が認めておられたように(ハイライト動画ではカットされていたかもしれません)、持統天皇による「すごろく禁止令」を引用してカジノ合法化反対の論拠としたのは、日本共産党が最初であったようです。議員立法によるカジノ解禁推進法案の審議に際し、2016年12月2日の衆議院内閣委員会では清水忠史議員が(毎日新聞参照)、
同月8日の参議院内閣委員会では大門実紀史議員が(しんぶん赤旗参照)、
それぞれ論陣を張っています。ちなみに、出典は「日本書紀」だそうです。日本共産党スタッフの調査能力の高さがしのばれるエピソードです。
 枝野代表は、「国民民主党・無所属クラブ、無所属の会日本共産党自由党社会民主党市民連合及び立憲民主党・市民クラブを代表し、安倍内閣不信任決議案について、提案の趣旨を説明」したのですから、共産党からも別に文句が出る心配はなかった訳です。 
 それから、連載の各回に「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)を、冒頭でご紹介しておきます。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 
(備考)衆議院の正式な用語に従えば、本稿のタイトルは「枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明」ではなく、「趣旨弁明」となるのですが(冒頭の大島議長の発言など参照)、一般の用法との乖離がはなはだしく、誤解を招きかねないと判断し、「趣旨説明」と言い換えています。
 

枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案趣旨説明:第2回「カジノ強行と『保守』の僭称」
 
第1回から続く
 
 不信任に値する二つ目の大きな理由は、カジノを強行したことであります。
 七世紀末、我が国は持統天皇の時代ですが、すごろく禁止令が発令されました。以来、我が国は、千年を超える期間、賭博は違法であるという法制度のもとで歴史と伝統を積み重ねてきました。例外は、公営ギャンブルという、財源確保のためにやむなく行われた非営利目的の特別なものだけであります。
 カジノの収益で経済成長を目指す。そもそも、千年以上にわたって違法とされてきたものを使って利益を上げて、そして経済を成長させる、そのこと自体がみっともない政策ではないですか。
 持統天皇以来の歴史を一顧だにもせず、こんなばかげた制度を強行する人たちに、保守と名乗ってほしくはありません。
 保守と称する皆さんは、保守とは何かとわかって自分たちを保守と名乗っていらっしゃるんですか。
 保守という概念は、フランス革命を契機に発生した政治概念です。フランス革命における急進過激な変革に対して、これはやり過ぎだという立場から保守という概念が発生しました。
 そして、保守の本質は何か。それは、人間とは不完全な存在であるという謙虚な人間観であります。
 人間は、全ての人間が不完全なものであるから、どんな政治家がどんないい政治をやろうとしても、完璧な政治が行われることはあり得ない、常に政治は、社会は未完成、不完全なものである。それが、人間は不完全なものであるという謙虚な姿勢に基づく保守の一丁目一番地です。
 このこと自体で、今の自民党安倍政権が保守ではないというのは明確であるというふうに思いますが、こうした謙虚な人間観に基づき、今生きている私たちの判断だけでは間違えることがある、したがって、人類が長年にわたって積み重ねてきた歴史の積み重ねというものに謙虚に向き合い、人類がその中で積み重ねてきた英知というものを生かしながら、それを改善していくに当たっても、間違っているのではないかという常に謙虚な姿勢を持ち、そして、みずからを省みながら、一歩ずつ世の中をよくしていく、これが保守という概念の本質であります。
 保守反動という日本語がありますけれども、そもそも反動では保守はありません。今も不完全な社会である、しかし過去においても理想的な時代はあり得なかった、未来においても理想は実現できない、でも、今あるものをちょっとずつでもよくしていこう、これが保守ですから、保守と反動は相対立する概念であります。
 一方で、穏健保守という日本語もあり得ません。なぜならば、保守とはもともと穏健なものであります。反対意見を封殺し、自分が正しい道を信じて邁進する、まさに保守思想が否定をした、フランス革命の急進的な思想であります。したがって、保守とはそもそも穏健なものであり、穏健でない保守が保守を名乗るのは自己矛盾であります。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 御静粛に。
 
枝野幸男君(続) そもそも、今のような保守概念からすれば、日本における保守とは何を大事にしなければならないのか。
 明治維新以来の百五十年も確かに日本の歴史であります。しかし、日本の歴史は、文字に残っているものだけでも千五百年を超える歴史を持っています。明治維新以降の歴史だけを見て、それが日本の歴史と伝統だと勘違いしている人たちが、特にこの辺には多いんじゃないですか。だから、持統天皇以来の日本の歴史と伝統も知らないで、カジノだなんという、我が国の伝統に反するばかげたことを進めているんじゃないですか。
 そもそもが、我が国の歴史と伝統を考えたときに、明治維新というのは、それまで千五百年近くにわたって、少なくとも文字に残る歴史だけでも積み重ねられてきた我が国の歴史が、西欧近代化文明の流入によって急激に変更を余儀なくされた、その結果として、それまで積み重ねられた歴史と伝統が大きく変更させられた百五十年であります。
 今我が国が直面をしている時代認識は、明治維新以来百五十年間歩んできた、この歩みというものが大きな転換点を迎えている、私は、今の日本はそういう状況にあると思っています。
 イギリスにおいて産業革命が起こって以来始まった近代化の歩み、これは、規格大量生産によって経済を急激に発展させる、そのことによって、私たちも、物質的に豊かな文明の中で暮らしてくることができました。私は、これまでの歩みは、世界史的においても日本史においても、それはさまざまな、その間に問題のある時代というのはあったにしても、大きな人類の前進であったというふうに思っています。
 しかし、今、先進国が、特に我が国は、第二次世界大戦以降、日中、日米戦争以降、急激な近代化、つまり経済成長したがゆえに、その壁に最も早く急激に直面をしていますけれども、先進国が共通して大きな壁にぶつかっている。それは、従来の規格大量生産によって安いものをたくさん、いいものをつくれば、そのことによって経済は発展し、そのことによって一人一人の暮らしがよくなっていくという、これが現実に機能しなくなっている、そういう時代に入っている。だからこそ、社会の格差、分断というものが、日本だけではありません、先進国共通して深刻な問題になっています。
 そのときに、日本の歴史と伝統を大事にするのであれば、こうした近代欧米文明、産業革命以来の規格大量生産型の文明が入ってくる前からある我が国の歴史と伝統こそをもう一度見詰め直す、それこそが私は真っ当な保守のあり方だというふうに思います。
 もちろん、人権意識、そのことによる男女平等を始めとして、あるいは先ほど申し上げました労働法制もそうかもしれません、さまざまなものが欧米から流入したことによって進化をしたものもたくさんあります。それをもとに戻せというのではありません。しかし、それまで積み重ねてきた我が国の社会のあり方のよい部分を、そうした人権問題などについての意識が大きく前進をした中でどう取り入れて、それを生かして、今先進国が共通して直面している壁にどう立ち向かっていくのか。私は、本来の保守のとるべき道はそういう道であるというふうに思っています。
 ちなみに、きょうは五党一会派を代表しての趣旨説明をさせていただいておりますが、趣旨説明の担当者ということでお許しをいただいて、立憲主義について一言述べさせていただきたいと思います。
 立憲主義というのは、言うまでもなく、権力も自由ではあり得ない、どんな権力も憲法というルールに基づいて運用されなければならない、そういう考え方であり、近代社会の大前提であります。
 そして、その憲法とは何なのか。まさにこれこそ、歴史と、そしてさまざまなその中での苦難の中から先人たちが積み重ねてきた社会の大前提となるべきルール、権力が従わなければならないルール、さまざまな苦難の歴史を乗り越えて先人たちが積み重ねてきたルールが結集されている、それが憲法であります。
 だからこそ、多くの国において、憲法を変える手続においては、今生きている有権者の半分だけでは簡単には変えられないという仕組みを多くの国で採用しているのは、まさに憲法というのは、歴史に基づいた人類の英知の積み重ねの結集であり、それによってどんな権力も拘束されなければならない、こういう考え方に立っているからにほかなりません。
 まさに、立憲主義とは保守思想そのものであります。積み重ねられてきた先人たちの知恵というものに基づいて、それを動かすときには、急進的な理想に邁進をするのではなくて、今あるところからより改善、一歩ずつ改善していくにはどうしたらいいのかを考える。まさに、立憲主義保守主義も同じ考え方である。
 私は、であるので、私こそが保守本流であるということを、自信を持って、日ごろから皆様方にお訴えをさせていただいているところであります。
 こうした保守……(発言する者あり)いいですか、しゃべって。こうした保守の本質を全く勉強せずに自称保守を名乗っている人たちを相手にしてもしようがないんですが。
 各論だけを申し上げても、カジノ法案はギャンブル依存症をふやす。ギャンブル依存症は、まさにこれに陥った当人だけの問題ではありません。家族や地域社会を含めて、多くの人たちがそのことによって社会的、経済的に大きなダメージを受けます。カジノの収益で経済成長する側面が百歩譲って存在するとしても、カジノ依存症による社会的、経済的なマイナスの方が圧倒的に大きいと言わざるを得ません。
 しかも、今強行されようとしているこのカジノ法案は、カジノ事業者が金を貸せる、とんでもない貸金業法の事実上の例外まで盛り込んでいます。まさに、ギャンブル依存症になろうとしている人たちに金を貸しまくって、ますますギャンブル依存症、ギャンブルによる多重債務につながっていく仕組みではありませんか。
 外資に対する規制も十分ではありません。残念ながらと言うべきか、当然のことながら、我が国ではカジノ事業の運営をした経験はありません。どう考えても、外資規制を十分に行わなければ、カジノ運営の経験、ノウハウの高い人たちが資本流入という形をもってこの事業による収益をかすめ取っていくのは目に見えているじゃないですか。日本人がギャンブルで損をした金で海外のカジノ業者を潤わせる、まさに国を売るようなことではないですか。
 私は、裏づけのないことで直截な批判をしようと思いませんが、しかしながら、安倍総理トランプ大統領との会合の席に、アメリカを代表するようなカジノ業者の方が御一緒していたというようなことも伝えられています。まさに、アメリカに我が国を売るための法律を今強行しているんだと言われても仕方がないんじゃないでしょうか。
 大体、カジノのために日本に来る外国人観光客がいる、あるいは、そのことによって外国人観光客を集めなければ外国人観光客が来てくれない、そんなに日本は情けない国なんですか、保守と称している皆さん。
 我が国には、特に世界の多くの国々の皆さんから見れば、そうした皆さんとは違った歴史、風土、文化あるいは生活様式、そして自然、我が国にはさまざまな、観光資源として魅力あるものがあります。まだまだそうしたものが世界の皆さんに十分に伝えられていない部分も山ほどあります。あるいは、受入れの体制が十分でないために、魅力ある観光資源を持ちながら外国人観光客がなかなか来ていただけていないところも少なからずあります。
 まさにやるべきは、そうした観光資源をいかに魅力的なものとして世界に売り出し、そして、まさに日本本来のよさを見ていただくために日本に来ていただく、これこそ、日本の歴史と伝統を大事にする人たちの立場の意見ではないかと私は思うんですけれども。
 いずれにしても、災害復旧の中心を担うべき国土交通大臣が災害対応よりも優先させて急がなければならない法案でないのははっきりとしています。今からでも遅くはありません。まだ参議院の本会議は開かれていません。今からでも考え直して、一旦立ちどまり、まずは国土交通大臣を中心に災害復旧に、この間、カジノにうつつを抜かしていたことの反省も含めて、全力を挙げていただいて、仕切り直しをされるべきであるということを強く申し上げたいと思います。
 
(第3回に続く)

枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行

 2018年8月12日配信(予定)のメルマガ金原No.3237を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:第1回~高度プロフェッショナル制度の強行
 
 昨日(8月11日)、第1回をお送りするつもりだった、去る7月20日、衆議院本会議(第196回国会)での枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ演説(内閣不信任決議案趣旨説明)のご紹介ですが、イントロが長くなり過ぎて、「予告編」だけで終わってしまいました。
 
2018年8月11日
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
 
 今日から、不定期で2時間43分に及ぶ演説を、衆議院会議録からの引用でご紹介しようと思うのですが、何回の連載になるかは不明です。今のところ、「七項目、不信任の理由があります。」という枝野代表の冒頭の言葉に従い、7回分載を考えていますが、それでも1回当たりの分量が相当な長さになるでしょうし、項目ごとの多寡も結構ありそうですから、「やってみないと分からない」というのが正直なところです。
 
 私としては、この連載を行うことによって、枝野代表による演説をしっかりと熟読できることを楽しみにしています。
 なお、各回のタイトルは、内容に基づき、金原において適宜付したものであることをお断りします。
 ちなみに、第1回は「高度プロフェッショナル制度の強行」としましたが、その点に言及する前に、かなりの時間を割いて、「赤坂自民亭」に象徴される、平成30年7月豪雨災害への政府の対応の不十分さ・不適切さが指摘されています。
 
 それから、今後の連載にあたり、各回とも、「予告編」でご紹介した、会議録、インターネット審議中継(動画)、演説をそのまま刊行した単行本、IWJ動画(岩上安身氏による枝野代表インタビュー)は、冒頭でご紹介しておくことにします。
 
【会議録】
第196回国会 衆議院 本会議 第45号(平成30年7月20日(金曜日))
 
【動画】
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
【単行本】
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
【インタビュー動画】
「憲政史上最悪の国会」にした、安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
ハイライト動画(5分26秒)
※IWJ会員登録
 

 
平成三十年七月二十日 午後一時 本会議
 
○本日の会議に付した案件
 安倍内閣不信任決議案(辻元清美君外六名提出)
 裁判所の人的・物的充実に関する請願外四百六十九請願
 国家基本政策委員会及び懲罰委員会を除く内閣委員会外十四常任委員会及び災害対策特別委員会外八特別委員会並びに憲法審査会において、各委員会及び憲法審査会から申出のあった案件について閉会中審査するの件(議長発議)
 
午後一時二分開議
 
○議長(大島理森君) これより会議を開きます。
田野瀬太道君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 辻元清美君外六名提出、安倍内閣不信任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。
  ―――――――――――――
○議長(大島理森君) 安倍内閣不信任決議案を議題といたします。
 提出者の趣旨弁明を許します。枝野幸男君。
 
 〔枝野幸男君登壇〕
枝野幸男君 立憲民主党代表の枝野幸男です。
 まず冒頭、さきの大阪北部地震及び今般の豪雨災害でお亡くなりになられた方々に改めて衷心から哀悼の意を表します。また、被災された全ての皆さんに心からお見舞いを申し上げます。
 発災以来、消防、警察、海上保安庁自衛隊、そして自治体職員や消防団の皆さんなど、さらには各地からボランティアの皆さんが被災地にお入りをいただき、猛暑の中、被災者の皆さんのために御尽力をいただいています。そうした皆さんに、この場をかりて、心からの敬意と感謝の意を表したいと思います。
 こうした被災地の皆さんは、猛暑の中で、今なお行方不明の方の捜索、そして復旧に向けた御努力をされていますが、連日続く猛暑は、もはや自然災害と言ってもおかしくないと思います。学校での活動中に亡くなられた小学生を始めとして、熱中症などで猛暑の結果亡くなられた皆様方にも心から哀悼の意を表する次第であります。
 これより、私は、国民民主党・無所属クラブ、無所属の会日本共産党自由党社会民主党市民連合及び立憲民主党・市民クラブを代表し、安倍内閣不信任決議案について、提案の趣旨を説明いたします。(拍手)
 まず、決議案の案文を朗読します。
 
 本院は、安倍内閣を信任せず。
 右決議する。
 〔拍手〕
 
 この後、順次述べさせていただきますが、安倍内閣が不信任に値する理由は枚挙にいとまがありません。大きくくくっても七項目、不信任の理由があります。
 ただ、今回、不信任案の提出には若干のちゅうちょの思いがありました。それは、豪雨災害などへの対応が現在進行形であるという現状にあるからであります。
 私どもは、野党五党一会派、一致をいたしまして、七月九日の午後、総理大臣宛ての申入れを官房長官へとお伝えをいたしました。
 その申入れは、この七月豪雨災害について、最大級の災害であること、救命救助を待っておられる方も多い状況であり、天候によっては更に事態が深刻化する可能性があること、全国各地に被害が及んでいること、こうした事情を挙げまして、行政府、立法府が一体となって取り組む体制を整えることは当然であるといたしまして、政府に対し、この災害対応を最優先に取り組むべきであり、防災担当大臣や国土交通大臣など関係大臣は災害対応に全力で取り組むよう申入れをさせていただきました。同時に、野党としても、可能な限り協力をさせていただく旨も伝達をさせていただきました。
 特に、災害対応の中心を担う国土交通省国土交通大臣は、いわゆるカジノ法案の所掌であります。初動以来大変な御尽力をいただいている消防を所管し、そして、被災地の自治体の皆さんは連日不休の対応に当たっておられる、その自治体を支援するのは総務大臣でありますが、総務大臣選挙制度を所管しています。
 カジノ法案も、参議院選挙制度についても、今急いで決定をしなければならない案件では到底ありません。我々は両案とも廃案にすべきであるというのが本来の主張ではありますが、せめて継続審議にして、災害対応がある程度の見通しが立った段階で臨時国会を開けば、幾らでも、政府・与党の立場に立ったとしても間に合う法案であります。
 にもかかわらず、災害対応を放り出して、この二つの法案審議を優先させたのは何なのか。よほど臨時国会を開くのが嫌なんでしょうか。それとも、総裁選挙の日程の方が大事なのでしょうか。私どもはそう受け取らざるを得ません。
 我々野党は、会期末で時間のない中ではありましたが、義援金に対する差押えを禁止するための特例法は、昨日のこの衆議院本会議で、与野党一致協力して成案を得て可決をいたしました。やるべきことは急いでやる、そのことに協力をしてきているところであります。
 カジノやお手盛り選挙制度をやるぐらいであるならば、例えば、野党各党はことしの三月に被災者生活再建支援法と災害弔慰金支給法の一部改正案を国会に提出をしていますが、たなざらしにした上に、この災害の裏側で国会を開いていながらこうした法案の審議に応じていないのは与党であります。
 災害時における大臣の役割は大きなものがあります。
 緊急な災害時においては、まさにさまざま、前例にないこと、前例の少ないこと、さまざまなことが生じてきます。行政の皆さんだけでは、前例を超えて対応する決断をすることにはなかなか困難があるのが実態であります。だからこそ、災害などの緊急時においては、前例主義にとらわれず、政治責任を持つ政治家がしっかりと役割を果たしていく体制が求められています。
 いわゆる赤坂自民亭と言われる問題は、まだ特別警報が出ていなかったなどの言いわけをされている方もいるようでありますが、自衛隊の対応なども動き始めているような状況で、一議員の皆さんがされていたのではありません、指揮すべき立場である総理や防衛大臣官房副長官まで参加し、しかも、その後、反省の姿勢が全く示されていません。
 あえて申し上げますが、一部に、同じような時期に開催された立憲民主党議員の会合を同一視して批判する向きもあります。しかし、緊急時に執行権限を持ち、判断をし、指揮すべき総理や防衛大臣官房副長官の責任は、野党議員と一緒なんですか。あるいは、野党議員にそうした判断、決断をさせていただけるのですか。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 趣旨弁明を続けてください。
 
枝野幸男君(続) 黙らせてください。
 
○議長(大島理森君) 続けてください。
 
枝野幸男君(続) 黙らせてください、議長。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 御静粛に。
 どうぞ続けてください。
 
枝野幸男君(続) ちなみに申し上げますが、指摘されている我が党の会合は、議員や政治家の内輪の懇親ではありません。外部の方が参加する会であり、例えば、私も参加いたしましたが、挨拶だけで短時間で退席しております。議員が集まって盛り上がっていたとツイッターされているような会合とは、趣旨も内容も全く異なっております。
 それだけではありません。明らかに、この災害に対する対応の初動は大幅におくれています。
 七月五日午後二時ごろ、気象庁は異例の記者会見を行っております。そこから六十六時間、八府県に特別警報が発令されるという前例のない事態となり、避難勧告の対象が二十三府県、二百六十四万人に達し、死者・行方不明者の報告も多々入っていた七日の午前零時を起点としても丸一日以上経過した八日の午前八時まで、非常災害対策本部が設置されておりません。空白の六十六時間という指摘もなされています。赤坂自民亭の問題もあわせ、初動のおくれを指摘されてもやむを得ない状況ではないですか。
 まだまだ、まだまだ緊急対応の状況が現地では続いています。したがって、詳細な検証は落ちついてから厳しくさせていただきたいと思いますが、少なくとも、こうした批判に対して謙虚な姿勢が全く見られないというのは、深刻な問題ではないでしょうか。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 御静粛に。
 
枝野幸男君(続) こうした初動についての指摘を受ける中で、カジノや恣意的な選挙制度の改悪を災害対応に優先をさせた、その一点をもっても不信任に値すると考えます。むしろ、この災害対応を加速させるためにも安倍内閣は不信任すべきである、そういう思いの中で、今回、内閣不信任決議案を提出させていただきました。(発言する者あり)
 
○議長(大島理森君) 御静粛に。
 
枝野幸男君(続) それでは、ここから大きく七つ、安倍内閣の不信任に値すべき事項についてお話をさせていただきたいと思います。
 まず第一は、過労死をふやすことになる、国民の命を危機にさらす、高度プロフェッショナル制度を強行したことであります。
 この問題の本質は、労働時間規制が及ばない労働者をつくるというところにあります。
 そもそも、近代労働法制というのはどこから始まったのか。それは、一日八時間労働が原則であるという、その原則を法定し、しっかりと守らせる、これこそが、労働法制の世界における、近代社会としての大前提であります。
 高度プロフェッショナル制度は、さまざまな言い方をしていますが、この近代国家においては大前提である、労働者の労働時間はしっかりと把握、管理し、一日八時間労働が原則である、八時間を労働に、八時間を睡眠に、そして残り八時間をそれぞれの自由な時間に、これこそが人間らしく生きるための最低限のベースであるというのが近代社会の大前提である、この制度の外側に置く労働者をつくるというのが、この高度プロフェッショナル制度の本質であります。結果的に長時間労働させ放題になる。
 我々は当初残業ゼロ法案と言っておりましたが、もっとわかりやすく言えば、定額働かせ放題の制度である。
 携帯電話やスマートフォンであれば、定額使い放題は大変便利な制度であります。しかし、まさに使い放題だからこそ、どれぐらい使っているかということを気にせずに使えるから、定額使い放題制度は情報通信の世界で大変広く広まり、利用者にとっても便利な仕組みとなっています。
 これを労働の分野、人間の働くという分野に持ち込もうというのが、この高度プロフェッショナル制度の本質、実態であります。どんな言いわけをしても、どんな説明をしても、いや、私も、使用者の立場であるならば、支払う賃金が同じ金額ならば、できるだけ多くの課題をその人間に負荷して、できるだけ長い時間を働いていただいて、できるだけ大きな成果を上げていただこうとするのはむしろ当然のことであり、いや応なく長時間労働につながるということは誰がどう見ても明らかな、問題のある制度であります。
 しかも、労働時間管理自体を、従来の労働と違って、しっかりとした管理をしないという仕組みになっています。
 したがって、長時間労働の結果、過労死などの残念な事態が生じた場合、現在の仕組みのもとでも、実際の労働時間を立証する、そのことによって過労死であったことを立証する、これは、こうした問題に直面せざるを得なくなった遺族の皆さん、それを支えている弁護士さんにとっては、現状でも大変困難な実は案件であります。
 にもかかわらず、そもそも労働時間管理自体を原則取っ払ってしまう高度プロフェッショナル制度のもとで長時間労働による過労死が生じても、それを、過労死である、長時間労働の結果であると証明するということは甚だ困難になってしまいます。しかも、自己管理による自己責任であるという、まあ最近お得意の論法で、労災などの認定を受けられないなどという結果にもつながりかねません。明らかに、過労死、過労自死促進法であることは論をまちません。
 安倍総理は、かつて、過労死を防ぐ法律をつくろうというときには、過労死の遺族の皆さんとお会いになり、お話をされました。二度と過労死を出さないという決意を示されました。そうした皆さんが、この法案は問題である、自分たちのような、同じようなつらい思いをする、亡くなってしまった人は戻ってこない、そうした人たちをふやしてしまう法案だという強い危機感を持って、もう一度総理に直接話を聞いてもらいたいということを一顧だにもせず強行したこの姿勢は何なんですか。
 褒めてもらえそうな都合のいいときだけ顔を出すけれども、厳しい指摘を受けそうなときには逃げる、まさにひきょう者のやり方ではないでしょうか。
 そもそも、高度プロフェッショナル制度には、さまざまなうそが前提になって議論が進められたという大問題があります。
 そもそも、この制度は、一千七十五万円以上の年収のある人にしか適用されない、ほとんどの労働者には関係ないんだという前振りのもとに議論が進められました。しかし、野党各党の国会における審議を通じて、そもそも法律には金額の明記がないこと、これは読めばわかる話ですが、この一千七十五万円という金額の算定の中にはさまざまな諸手当も含まれる解釈が成り立つこと、そして、何よりも問題なのは、審議の途中から、いずれこれは引き下げていくんだということが、各界各層、議員の中からも出てきているという話であります。
 うそという意味では、指摘をしなきゃならないのは、不適切データの問題であります。
 総理御自身が、不適切、むしろ捏造と言ってもいいデータに基づいて、裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者より短いというデータもある、誰が言ったのではありません、総理御自身がおっしゃったんです。撤回をし、厚労省のデータが悪いので俺は責任がないと、例によっての責任逃れをおっしゃっていますが、実は、撤回をした後にも、更に二百件以上の不適切データが発見をされています。衆議院の委員会採決の当日の朝にも新たな不適切データが発見されたということはこの場で何度も指摘をされているところでありますが、にもかかわらず、審議強行し、採決を強行しました。
 事実に基づかない誤ったデータに基づいて議論を進める、こんなことも、近代国家ではあり得ないことであります。
 行政の内部におけるいきさつはいろいろあるのかもしれませんが、総理自身が、裁量労働制高度プロフェッショナル制度などの、いわゆる残業代を残業時間に応じて支払うというわけではない制度を導入するに当たって、この誤ったデータを引用して正当化する発言をしていた以上は、この法案の前提の事実が事実でなかったということでありますから、当然のことながら、今度は正しいデータをとり、そのデータをしっかりと分析した上で議論をし直すのが当たり前のことじゃないですか。
 安倍総理は、あるいは政府の皆さんは、この高度プロフェッショナル制度についてニーズがあるのかと問われ、やりたくない企業や労働者はやらなくていいんだ、希望している人もいるんだという答弁をされました。
 しかしながら、労働者側のニーズを示す客観的な根拠はありませんでした。ヒアリングは十名程度の事後的なアリバイづくりのようなものにとどまっています。しょせんは企業側の論理に基づく一方的な制度の導入であるということは、既に議論を通じて明らかになっています。
 しかも、企業側が導入を求めたとき、残念ながら、今の日本の社会風土、職場風土の中で、本当にこれを拒否できる労働者がどれぐらいいると思っていらっしゃるのでしょうか。残念ながら、会社側から強く求められれば、本人は嫌であっても受け入れざるを得ないというのが現在の現実の日本の職場風土であるということを、総理も厚生労働大臣も御存じないんでしょうか。希望をしない人は制度をとらなければいいという言いわけは全く説明になっていません。
 今回の労働法制は、長時間労働の是正という大義のもとに行われました。残念ながら野党各党の強い反対を押し切って成立した後も、長時間労働の是正というこの大義を、総理以下、掲げておられますが、労働者側のニーズもなく、長時間労働につながる高度プロフェッショナル制度を推進するのは、看板に偽りありと言わざるを得ません。
 失われた命は戻りません。過労死、過労自死で家族を失われた皆さんからの悲鳴とも言っていいような声は、野党の同僚議員が、この本会議場でも、全ての議員の皆さんに向かってお伝えをさせていただいた。私も目頭が熱くなりました。この高度プロフェッショナル制度長時間労働余儀なくされ、命を失う方が出たときに、誰がどう責任をとるんですか。
 私たちは、残念ながらこの国会で形式的にこの高度プロフェッショナル制度は成立をしてしまいましたが、人の命にかかわる問題です、決して諦めることはありません。一日も早く衆参両院で高度プロフェッショナル制度に反対する勢力が過半数をとり、一日も早くこの制度を廃止する決意を皆さんに申し伝えたいと思います。
 また、この制度が形式的に当分続く間も、我々はさまざまな皆さんと連携をしながら、実際にこの制度を導入する企業が生じないように厳しくウオッチをし、もしそうしたものが見つかった場合には国会内外で厳しく指摘をしていく、そのための監視活動を全力を挙げて取り組んでいくことをこの場で申し上げたいと思っています。
 
(第2回に続く)

枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか

 2018年8月11日配信(予定)のメルマガ金原No.3236を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の安倍内閣不信任決議案趣旨説明(2018年7月20日)を会議録で読む:予告編~なぜ会議録が重要なのか
 
 去る8月5日に配信したブログ「国会パブリックビューイング第1回シンポジウム「『国会を、取り戻す。』-国会可視化が政治を変える-」(2018年8月3日)を視聴する」でご紹介した「国会パブリックビューイング」は、「現実の国会の審議の様子を街角で上映することで」、「甚だしく不誠実で民主的議論の精神にもとる行為への抑止効果を発揮していくことを目指」すとしています。
 つまり、映像(動画)を主要コンテンツとして活用しようという取組なのですが、映像を文字化したコンテンツも、「国会可視化」の有力なツールであることはもちろんなので、おそらく、そちらも重視していこうとされているのではないかと思います。
 というのは、国会パブリックビューイング公式Twitterに、昨日(8月10日)、次のような投稿がなされていたからです。
 
5:05 PM - 10 Aug 2018
国会インターネット審議中継などを、自動文字起こしする方法をまとめました。
自動文字起こしの様子は、こちらの動画をご参照ください。
1.Googleアカウント、2.GoogleChrome、3.簡単なPC設定、で、パソコンで再生される音声が、自動的にWordファイルに仕上がります。
枝野幸男 内閣不信任決議案弁明(途中まで)をgoogleドキュメント+音声入力で自動文字起こししてみた。(1時間18分)
文字起こしファイルはこちら→
 
5:05 PM - 10 Aug 2018
WindowsPCで自動文字起こしをするための設定方法は、こちらのファイルをご参照ください。
この内容は近日中に、#国会パブリックビューイングwikiにも掲載します。
 
 さて、国会パブリックビューイングでも、国会文字起こしの見本として使われた、7月20日、第196回国会・衆議院本会議での枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分に及ぶ内閣不信任決議案趣旨説明ですが、実際に、公式の会議録が公開されるよりも早く、有志による文字化が行われてネットで拡散された上、フジサンケイグループの扶桑社が緊急出版するに至りました。
 
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」
解説 上西充子、田中信一郎
2018年8月9日 扶桑社刊
 
 ただ、緊急出版と前後して、衆議院のホームページに、7月20日本会議の会議録が公開されました。
 
第196回国会 衆議院本会議 第45回(平成30年7月20日(金曜日)) 会議録
 
 本になったものを読む、というのも悪くはないと思いますし、インターネットなど無縁な生活を送っている人々に、国会でどのようなことが議論されているのかを伝えるために、とても意義ある緊急出版だとは思いますが、とりあえず「読んでみよう」という方には、この公式会議録をお薦めします。
 
 もちろん、衆議院インターネット審議中継によって、2時間43分の演説そもものを視聴することもできます。
 
衆議院インターネット審議中継⇒2018年7月20日⇒本会議
※発言者一覧から、「枝野幸男(立憲民主党・市民クラブ)」(開始時刻13時04分/所要時間2時間43分)を選択してください。
 
 ところで、国会の会議録については、日本国憲法第57条2項が、「両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。」と定めており、衆議院規則では、公表及び頒布の方法は官報によるとされ(第206条、第207条)、参議院の場合にもそれに準ずる方法によっているようですが、現在、最も一般的な「公表」「頒布」に相当する方法は、インターネットによる公開でしょう。
 このように、会議録の「保存」「公表」「頒布」を憲法が国会両議院に義務付けたのは、国会審議の状況を国民にありのまま開示することが、民主主義の基盤を支える前提として必須であり、そして、正確な記録を残すことにより、後世からの検証に耐え得るようにする必要があるからでしょう。
 
 些末なことですが、枝野代表に対する不規則発言(野次)に対し、枝野氏は大島理議長に対し、再三制止を要請したものの、それでも不規則発言を止めなかった議員に対し、一度だけ壇上から「ミズタ議員、黙っていていただけますか。」と発言したことが会議録に記載されています。この議員は、実際は自民党杉田水脈(すぎた・みお)議員であったようで、おそらく枝野氏の単純な言い間違いであったと思いますが、ネトウヨが大喜びして批判の記事を垂れ流していました。けれども、公開された会議録には、間違った「ミズタ議員」のまま掲載されていました。
 衆議院規則第203条は、「演説した議員は、会議録配付の日の翌日の午後五時までに、その字句の訂正を求めることができる。但し、演説の趣旨を変更することはできない。」とありますので、枝野代表は訂正の申立てをしなかったということでしょう。間違いに気付かなかったのか、気付いたけれど、訂正の申立てをすべき内容ではないと判断したのか分かりませんけれど(多分後者だろうと思いますが)。
 
 以上の「言い間違い」を会議録で確認した私は、以下の有名な「事件」を思い出さずにはいられませんでした。
 本会議ではなく、委員会会議録のことですが、2016年5月16日の衆議院予算委員会(第190回国会)において、山尾志桜里委員(民進党・無所属クラブ)からの質問に答えた安倍晋三内閣総理大臣が、「議会についてはですね、私は立法府立法府の長であります。」と明確に述べていたにもかかわらず、後に公表された会議録では、「議会については、私は行政府の長であります。」と書き換えられるという「事件」があったことを皆さんはご記憶でしょうか。実は、衆議院規則には、参議院規則と異なり、委員会会議録の作成にあたり、本会議に関する条項を引用するという規定が置かれていないため、いまひとつ判然としないのですが(先例によって処理されているのでしょう)、多分、参議院と同様、「発言した議員は、会議録配付の日の翌日の午後五時までに発言の訂正を求めることができる。但し、訂正は字句に限るものとし、発言の趣旨を変更することができない。国務大臣内閣官房副長官副大臣大臣政務官、政府特別補佐人その他会議において発言した者について、また、同様とする。」(参議院規則第158条、第59条)という扱いなのだと推測します。
 それにしても、これが単純な「字句訂正」である訳がありません。「立法府立法府」を「行政府」と「訂正」しながら、その直前の「議会については(ですね)」を残したため、「議会については、私は行政府の長であります。」という、いよいよ訳の分からぬ文章になっています。これは「趣旨の変更」そのものでしょう。
 要するに、あの時の答弁は、「議院内閣制」のイロハを淡々とでも、紋切り型でもいいので、述べておけば済む話であったのに、それが出来なかったということであって、なぜ出来なかったのかについて、国民の1人1人が判断するためには、このような「訂正」を許してはだめでしょう。ということで、私は、かかる歴史の改ざんが許せず、記録にとどめるべくブログを書いたのでした(「私は立法府立法府の長」は「私は行政府の長」と書き換えられた~国会会議録を考える/2016年6月9日)。
 
 実は、7月20日の枝野幸男立憲民主党代表による2時間43分の演説を、とても一度には紹介しきれませんので、会議録から何回かに分けて掲載する第1回にしようと思って書き始めたのですが、イントロだけで思わぬ長さになってしまいました。
 従って、会議録からの引用は次回以降ということにして、今日のところは「予告編」だけで終了とします。
 
 「予告編」の最後に、8月6日に行われた枝野幸男代表へのIWJの岩上安身氏によるインタビュー動画をご紹介しておきます。約50分の全編動画はIWJ会員(1か月間は一般会員でも視聴可、それを過ぎるとサポート会員のみ)でないと視られませんが、5分余りのハイライト動画は視られますのでご紹介しておきます。是非、IWJ会員登録をご検討ください。
 
「憲政史上最悪の国会」にした、 安倍政権「7つの大罪」を斬る!岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー 2018.8.6
 
ハイライト動画(5分26秒)

関良基氏(拓殖大学教授)が語る「明治維新の正体」(2018年8月8日)~「長州レジーム」とは何か?

 2018年8月10日配信(予定)のメルマガ金原No.3235を転載します。
 
関良基氏(拓殖大学教授)が語る「明治維新の正体」(2018年8月8日)~「長州レジーム」とは何か?
 
 今年(2018年)は、いわゆる「明治維新」(1868年)から150年目ということで、「明治150年」の盛り上がりが・・・あるんですかね?
 今から50年前の1968年、私は中学校2年生でしたけど、それなりに世間では「明治100年」が話題になっていたように思うのですが。
 
 試みに、「明治150年」でGoogle検索をかけてみて最初にヒットするのは以下のサイトです。
 
明治150年(内閣官房「明治150年」関連施策推進室)
(引用開始)
明治150年とは
平成30年(2018年)は、明治元年(1868年)から起算して満150年の年に当たります。この「明治150年」をきっかけとして、明治以降の歩みを次世代に遺すことや、明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは、大変重要なことです。このため、政府においては、こうした基本的な考え方を踏まえ、「明治150年」に関連する施策に積極的に取り組んでいます。
(引用終わり)
 
 長州にルーツを持つ安倍政権から、「明治以降の歩みを次世代に遺すこと」や「明治の精神に学び、日本の強みを再認識すること」が「大変重要なことです」と言われても、「明治より前は日本ではないのか?」とか、「明治以降の『日本の弱み』や『日本の失敗』を再認識しなくて良いのか?」という突っ込みが即座に口をついて出てきます。
 まあ、世間が「明治150年」でそれほど盛り上がっているように思えないのは、また別の事情があるのかもしれませんが。
 
 さて、そういう「うさんくささ」を何となく感じていた方に、是非視聴をお薦めしたい講演動画があります。
 去る8月8日(水)に、大阪市の「エルおおさか」で開かれた、戦争あかん!ロックアクションが主催する関良基(せき・よしき)さん(拓殖大学教授)による講演「目からウロコ! 明治維新の正体 150年キャンペーンのうそ」(関さんのパワポ表題には「明治維新の正体」としか書かれていませんでしたが)が、IWJによって中継され、Twitcasting録画だからでしょうか、講演部分だけですが(質疑応答部分はなし)、全編無料で視聴できます(1時間33分)。
 
目からウロコ!明治維新の正体 150年キャンペーンのうそ ―講師:関良基さん(拓殖大学教授)2018.8.8
 
 概要、どんな講演かについては、主催者ホームページに掲載された開催予告記事(チラシをそのまま転記したもののようです)を引用することで、ご理解いただけるのではないかと思います。
 
(引用開始)
 攘夷を叫んでいた人たちが、なぜ急に開国?歴史本を何度読み返しても、その意味が分らない。でも、長洲も薩摩も土佐も、明治維新という歴史的偉業をはたした英雄たちを生み出した藩であることは間違いない…。そんな漠然とした「かっこいいイメージ」を明治維新に対して持っている人が、日本では大半なのではないでしょうか。
 いま、この明治維新観に大きな疑問を投げかける声が次々と上がっています。
 西郷隆盛吉田松陰高杉晋作、阪本龍馬…。NHK大河ドラマで何度も取り上げられ、いままさに「西郷どん」が放映中の、彼らは本当に日本を開国に導いた「英雄」だったのか?
 江戸の末期、現法(注:現行?)憲法に通じる先進的な憲法構想を徳川、薩摩、越前に建白しながら、テロによって薩摩に抹殺され、その後歴史的にも抹殺され続けた赤松小三郎に注目し、明治維新の意味を問い直しておられる関良基さんをお招きして、お話を伺います。
 英雄扱いされてるけど、松陰って本当はどうなん…?西郷って本当はどうなん…?
 そんな、もや~っとしたギモンを抱いている皆さん。目からウロコのこの講演会にぜひお越し下さい。
(引用終わり)
 
 何しろ時間が限られており、後半は相当に端折らざるを得なくなったので、分かりにくいところもありますが、虚心に関教授の講演に身を委ねてみることでしょう。
 主催者が言うとおり、きっと「目からウロコ」の部分があるだろうと思います。もちろん、全てに得心という訳にはいかないでしょうし(正直、私にしてもそうです)、それが当然ですけどね。
 
 私は、「下関戦争」敗戦後の長州の対英従属路線への大転換と、「第二次世界大戦」敗戦後の日本の対米従属路線への大転換が、「長州レジーム」という一貫した外交姿勢(?とは言われなかったかもしれませんが)の流れであるという指摘に、思わず膝を打ちました。
 あと、吉田松陰の思想を「元祖ポチズム」と名付けたのはIWJの岩上安身さんだという紹介がありましたが、このような視点も「長州レジーム」と同様、「明治150年」を考える上で、大いに参考となる考え方だと思いました。
 
 「長州レジーム」ならざる別の「近代日本」があり得たのではないか?というのは魅力的な想像ですが、一種の「歴史のIF」である以上、全ての人が絶対的な確信を共有する訳にはいきません。
 けれども、もう何十年も前に、司馬遼太郎さんの『龍馬がゆく』『翔ぶが如く』『世に棲む日々』『花神』などの作品に読みふけりながら、かすかに感じていた違和感の正体の一面に触れ得たという思いは確実にありました。
 
 ところで、関良基先生の現職は、拓殖大学政経学部教授ということで、講演の中身とイメージが一致しないが?と思われる方もおられるでしょうが、清水雅彦先生と日本体育大学という組合せもありますし、私たちが先入観にとらわれ過ぎているのかもしれませんね。
 
 参考までに、拓殖大学の教員紹介ページで関先生の経歴等を調べてみました。この種の教員紹介ページはどんな大学にもありますが、拓殖大学の教員(講義)の紹介ページはかなり充実している部類に入るという印象を受けました。
 
拓殖大学 教員紹介
関 良基[SEKI Yoshiki]
(引用開始)
所属 政経学部  職名 教授
担当科目 自然環境と人間生活、環境と生態系、アカデミック・スキル、環境政策A、環境政策B、基礎外書講読A、基礎外書講読B ほか
最終学歴 京都大学院農学研究科博士課程修了(2000年3月)
学位 博士(農学)(京都大学2002年)
学位論文 フィリピンの商業伐採跡地における林野の住民管理に関する研究
職歴   
2000年4月 早稲田大学アジア太平洋研究センター 助手(~2003年3月)
2004年4月 (財)地球環境戦略研究機関(IGES) 客員研究員
2010年4月 拓殖大学政経学部 准教授
主な所属学会・協会等
日本森林学会、林業経済学会、環境経済政策学会
主な研究分野・研究課題・研究活動
 森林と人との関わりを現場で調査し、森林の保全と再生の方策について研究してきました。おもにフィリピンや中国など海外の事例を研究対象としてきました。
 近年は、社会的共通資本の視座から、日本の公共事業のあり方を見直そうと「ダムから緑のダムへ」の政策転換の研究、また自由貿易が環境に与える負のインパクトの研究などを通してTPP問題などにも取り組んできました。
自己紹介・学生へのメッセージ
 グローバルな資本主義システムは格差の拡大や環境破壊などの問題を生み出し、行き詰りを見せています。2015年にはパリ協定が採択され、世界は持続可能な未来への確かな一歩も踏み出しました。しかし、日本および世界には解決せねばならない問題が山積しています。学生時代は人生の中でももっとも自由に使える時間が多いです。ゼミなどの場で活発な討議を行い、地球をフィールドにして学んでいって下さい。
(引用終わり)
 
 以上のとおり、関氏は、京大農学部のご出身で、森林、環境等を中心に研究してこられた方のようで、そういえば、最近も水道民営化問題などで発言されているのは、そういう流れによるものでしょう。
 
 それでは、「明治維新の正体」などの日本近代史にも研究の領域を拡げられたのは何故か?ということですが、よく分からぬながら、関氏が2016年に刊行された単著『赤松小三郎ともう一つの明治維新 テロに葬られた立憲主義の夢』(作品社)で取り上げられた赤松小三郎と同じ、信州上田のご出身であり、赤松小三郎研究が、次から次へと拡がり、ということなのかもしれません。
 
 ちなみに、「上田市マルチメディア情報センター」が運営する「赤松小三郎」というサイトには、豊富な資料が集積されていますので、関先生が講演の中で言及された「建白書」の画像なども見る(読む)ことができます。
 
 最後に、IWJに登場した関良基教授の動画一覧をご紹介しておきます。今回の大阪での講演動画は別として、会員登録(1カ月以上経過しているとサポート会員登録)をしないと全編が視聴できませんが、15分程度のイントロ動画はYouTubeで視聴できますので、是非視聴してみてください。
 
IWJ タグ:関良基
 
【イントロ】食い物にされる水道民営化・ダム・治水――国富を売り渡す安倍政権の水政策の裏を暴く!岩上安身による拓殖大学准教授・関良基氏インタビュー 2017.4.25
 
【イントロ】「長州レジーム」から日本を取り戻す! 歴史から消された思想家・赤松小三郎の「近代立憲主義構想」を葬った明治維新の闇~岩上安身による拓殖大学・関良基准教授 2017.6.6
 
問題だらけの治水事業!西日本豪雨被害は天災ではなく人災!? 大都市圏を豪雨が襲うリスクに迫る! 岩上安身による拓殖大・関良基教授+ジャーナリスト・まさのあつこ氏インタビュー 2018.7.21

追悼・翁長雄志知事~(再配信)菅原文太さんからのメッセージ 沖縄へ、そして日本へ

 2018年8月9日配信(予定)のメルマガ金原No.3234を転載します。
 
追悼・翁長雄志知事~(再配信)菅原文太さんからのメッセージ 沖縄へ、そして日本へ
 
 膵がんの治療を続けていた沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、昨日(8月8日)逝去されたとの報は、沖縄県民のみならず、多くの日本国民を悲嘆の底に突き落としました。
 つい先日(7月27日)、記者会見を行い、名護市辺野古の新基地建設のために仲井眞前知事が行った埋立承認を撤回する意向を表明されたばかりでしたので(翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋立承認の撤回に向けた意向を表明しました(2018年7月27日)/2018年7月27日)、衝撃も大きなものがあります。
 県民との約束を生命のある限り守ろうとされた翁長氏に対し、心から敬意と哀悼の意を表します。
 
 自ら信ずることのために、正しい意味で「生命をかけた」人として、翁長知事とともに思い出すのが菅原文太さんです。
 4年前の11月1日、沖縄県知事選挙に立候補した翁長雄志氏を応援するため、病身を押して沖縄入りし、心のこもったスピーチをされた菅原文太さんは、それから4週間も経たぬ11月28日、転移性肝がんによる肝不全のために逝去されたのでした。
  妻の菅原文子さんが公表されたコメントに、「祖霊の一人となった今も、生者とともにあって、これら(注:無農薬有機農業を広めることと、日本が再び戦争をしないという願いが立ち枯れ、荒野に戻ってしまわないよう、共に声を上げること)を願い続けているだろうと思います。」とあったのが思い出されます。
 沖縄の風土が、沖縄に住む人々のものであることを願い続けた菅原文太さんと翁長雄志さんのお二人が、ともに「祖霊」となって沖縄と日本を見守り続けてくださることを信じて、4年前に配信した記事「菅原文太さんからのメッセージ 沖縄へ、そして日本へ」を再配信することにしました。
 以下の再配信記事の中で、「オナガ雄志 うまんちゅ 1万人大集会」での菅原文太さんのスピーチ動画とその書き起こしをご紹介していますが、その集会での翁長雄志候補による決意表明の動画もご紹介しておきます。翁長さんは、ここで表明した「決意」を、この4年弱でいかに実行してきたかということは私たちが見てきたことであり、これを後の世に正しく伝える責務があります。
 
オナガ雄志決意表明(17分36秒)
※2014年11月1日、那覇市営奥武山野球場での「オナガ雄志 うまんちゅ 1万人大集会」にて。
 
(参考サイト)
追悼 翁長知事が果たせなかった妻との約束「万策尽きたら夫婦で一緒に…」
週刊朝日増刊「朝日ジャーナル 2016年7月7日号」より再録。
 
慰霊の日「沖縄全戦没者追悼式」(1時間01分)
※2018年6月23日、沖縄県糸満市摩文仁で行われた「沖縄全戦没者追悼式」。翁長知事の挨拶は25分~31分です。 
 

 2014年11月3日に配信した以下の記事を再配信します。
 
菅原文太さんからのメッセージ 沖縄へ、そして日本へ ※追記あり
 
 去る11月1日(土)15時から、那覇市営奥武山野球場沖縄セルラースタジアム那覇)において、沖縄県知事選挙立候補者・翁長雄志(おなが・たけし)候補を支援する「ひやみかち うまんちゅの会」が主催する「オナガ雄志 うまんちゅ 1万人大集会」が開催されました。
 主催者発表の参加者数はあえて書きません。どこでもそうかもしれませんが、沖縄では、特に主催者発表と実数との懸隔が激しい傾向があるようなので、以下にご紹介するIWJ沖縄による中継映像でご確認ください。
 
2014/11/01【沖縄県知事選】「裏切りもんのヤマモリならぬナカイマ、弾はまだ一発残っとるがよ」文太兄い凄む!~翁長雄志 うまんちゅ 1万人大集会
 
(当日進行)
4分~ 開会
5分~ 登壇者入場
 開会あいさつ 浦崎唯昭氏(沖縄県議会議員)
18分~ 応援スピーチ
 呉屋守将氏(選対本部長、金秀グループ会長)
 宮城篤実氏(ひやみかちうまんちゅの会会長、前沖縄県嘉手納町長)
 稲嶺進氏(沖縄県名護市長)
 新里米吉氏(沖縄県議会議員)
 奥平一夫氏(沖縄県議会議員)
 城間俊安氏(南風原町長)
 金城徹氏(那覇市議会議員)
 大城紀夫氏(連合沖縄会長)
 平良識子氏(ひやみかちうまんちゅの会青年局、那覇市議会議員)
1時間13分~ 県議会・那覇市議会補欠選挙予定候補紹介
1時間15分~ ゲストスピーチ 菅原文太氏(俳優)
1時間29分~ 決意表明 城間幹子氏(那覇市副市長、那覇市長選挙立候補予定者)
1時間37分~ 決意表明 翁長雄志氏(前那覇市長、沖縄知事選挙候補)
1時間55分~ 行動提起
1時間58分~ 後援会会長あいさつ
2時間 0分~ がんばろう三唱
 
(注 2018年8月9日)
 今は、IWJ会員(一般会員でよいのですが)でないと、この2時間に達する全編動画は視聴できません。是非会員登録をお願いしたいのですが、
各登壇者の発言を個別にアップした動画が翁長雄志YouTubeチャンネル(4年前の知事選のために開設)で視聴できます。
 
 以下に、IWJが文字起こししてくれた菅原文太(すがわら・ぶんた)さんの応援スピーチを引用します。なお、勝手ながら金原において再校正しましたので、かなり厳密な再現になっているのではないかと思います。
 分量の割には長い時間がかかっているのは、年齢ということもあるかもしれませんが、スピーチ原稿に目を落としつつ、発言する時はしっかりと聴衆の方に目を向けて訴えられているからでもあります。
 マスコミ的に注目を集めたのは「仲井眞さん、弾はまだ一発残っとるがよ。」という決め台詞だったかもしれませんが、そのスピーチ全体が、沖縄の皆さんの心に直接届く誠実さにあふれたものだったと思います。
 それはまた、「最も危険な政権」を許している日本国民全体に向けられたメッセージでもあります。
 
(引用開始)
こんにちは。
沖縄は、何度来ても気持ちがいいね。(拍手)
カートに乗って、楽をさしてもらったけど、80過ぎたんで、さっきの2人みたいに走れないよ。(笑いと拍手)
30年前なら、あの倍くらいのスピードで走ったけどね。(笑いと拍手)
 
今日は、自分から立候補して、ピッチャー交代、知事交代、ということで押し掛けてきました。(拍手)
 
プロでない私が言うんだから、あてになるのかならないのかは分かりませんけど、政治の役割はふたつあります。ひとつは、国民を飢えさせないこと、安全な食べ物を食べさせること。(拍手)
 
もう一つは、これが最も大事です。絶対に戦争をしないこと!(大きな拍手)
私が小学校の頃、戦国(軍国)少年でした。小学校、なんでゲートルを巻いて、戦闘帽を被って、竹槍持たされたのか、今振り返ると、本当に笑止千万です。もう二度と、ああいう経験は子どもたちに、子どもたちだけじゃない、大学生も雨のなかを、大勢の将来大事な大学生が戦地へ運ばれて、半数が帰ってこなかった。
 
今の政府と、本土の政府ですよ、仲井眞知事は、まさに戦争が起きること、戦争をすることを前提に、沖縄を考えていた。
前知事は、今、最も危険な政権と手を結んだ。(拍手)
沖縄の人々を裏切り、公約を反故にして、辺野古を売り渡した。(そうだ!の声と拍手)
 
古い映画だけど、『仁義なき戦い』に、(拍手)その流れに言うと、『仁義なき戦い』の裏切り者の山守(やまもり)、覚えてらっしゃらない方もいるかな?(覚えてるよー!の声)
憶えてるかー(拍手)。
映画の最後で、「山守さん、弾はまだ残っとるがよ。一発残っとるがよ。」というセリフをぶつけた。
その伝でいくと、「仲井眞さん、弾はまだ一発残っとるがよ。」(大きな拍手)
と、ぶつけてやりたい。(拍手)
 
沖縄の風土も、本土の風土も、海も山も空気も風も、すべて国家のものではありません。(大きな拍手)
そこに住んでいる人たちのものです。(拍手)
辺野古もしかり!
勝手に他国へ売り飛ばさないでくれ。(大きな拍手)
 
まあそうは言っても、アメリカにも、良心厚い人々はいます。中国にもいる。韓国にもいる。(拍手)その良心ある人々は、国が違え、同じ人間だ。(拍手)
みな、手を結び合おうよ。(拍手)
 
翁長さんは、きっと、そのことを、実行してくれると信じてる。(大きな拍手)
今日来てるみなさんも、そのことを、肝に銘じて実行してください。(拍手)
それができない人は、沖縄から、日本から、去ってもらおう。(大きな拍手)
 
はなはだ短いけど、終わり(拍手)
(引用終わり)
 
翁長雄志公式チャンネルの映像「菅原文太氏のスペシャルゲストあいさつ」(11分12秒)
 
追記 2014年12月1日)
 菅原文太さんが11月28日午前3時、転移性肝がんによる肝不全のため、東京都内の病院で亡くなられていたことが12月1日に一斉に報道されました。満81歳。11月30日にすでに福岡県・太宰府天満宮祖霊殿にて家族葬が執り行われたとのことです。
 以下に、奥様・菅原文子さんが発表されたコメントをご紹介するとともに、心より哀悼の意を表します。
<妻・菅原文子さんのコメント全文>
 七年前に膀胱がんを発症して以来、以前の人生とは違う学びの時間を持ち「朝に道を聞かば、夕に死すとも可なり」の心境で日々を過ごしてきたと察しております。
 「落花は枝に還らず」と申しますが、小さな種を蒔いて去りました。一つは、先進諸国に比べて格段に生産量の少ない無農薬有機農業を広めること。もう一粒の種は、日本が再び戦争をしないという願いが立ち枯れ、荒野に戻ってしまわないよう、共に声を上げることでした。すでに祖霊の一人となった今も、生者とともにあって、これらを願い続けているだろうと思います。
 恩義ある方々に、何の別れも告げずに旅立ちましたことを、ここにお詫び申し上げます。
(引用終わり)
※引用はシネマトゥデイより。 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年1月10日
稲嶺進名護市長に送った菅原文太さんの応援メッセージ(辺野古をめぐる言葉に耳を澄まそう 2)