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日本はガザ攻撃に加担する国になるのか?

 

 今晩(2014年7月12日)配信した「メルマガ金原No.1784」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日本はガザ攻撃に加担する国になるのか?
 
 7月8日から始まったイスラエル軍によるガザ空爆による犠牲者は日に日に増加の一途をたどり、今日(7月12日)18時54分にNHKが配信したニュースは、「ガザの保健当局によりますと、この5日間で空爆による死者は114人となり、けがをした人も900人に上っています」と伝えています。
 
NHKニュース 7月12日 18時54分
ガザ空爆の死者100人超 増える市民の犠牲。
 
 イスラエル軍によるガザ攻撃といえば、2008年末から2009年1月にかけて行なわれた大規模に地上軍を投入した侵攻が思い出され、1月足らずの間に殺害されたパレスチナ人は、多くの子供を含む1300人以上に達したと言われています。
 今回も、イスラエル軍による地上兵力の投入が世界中から懸念されています。
 イスラエルによる空爆を阻止しようとする世界各国の世論のたかまりは認められるものの、少々の国際的非難などで方針を変えるような国ではないですからね、イスラエルは。
 
 しかし、上に引用したNHKニュースの映像にしてもそうですし、毎日新聞(大治朋子エルサレム支局長)朝日新聞(山尾有紀恵記者)も、それぞれ女性記者がガザ現地に入って記事を送り続けており、近年の日本の大手マスメディアによる戦争報道としては、よく頑張ってくれている方だと思います。
 特に、毎日の大治朋子氏の書いた記事は、今後も要注目だと思います。
 ちなみに、ネットでざっと調べた範囲では、読売はエルサレム支局から、産経はカイロ支局からの記事ばかり、日本経済新聞は共同通信配信記事の利用でした。
 
毎日新聞 2014年07月11日 21時17分(最終更新 07月12日 18時11分)
ガザ:「被害、女性と子供ばかり」…ハマス幹部は地下潜伏(ガザ市・大治朋子)
 
 なお、昨日(7月11日)、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが、以下の声明を発表しましたので、一部を引用してご紹介します。
 
【声明】ヒューマンライツ・ナウはガザにおける 民間人に対する攻撃の即時停止を要請する
(抜粋引用開始)
 東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、イスラエルハマスの間で深刻化する武力紛争に深刻な懸念を表明する。とりわけ、ヒューマンライツ・ナウは、イスラエル軍のガザにおける無辜の市民に対する無差別攻撃を強く非難する。
 「境界防衛」(Protective Edge)作戦が開始されてから、女性や子どもを含む多数の無
辜の民間人が殺害されたと報告されている。この作戦は、イスラエルの10代の少年三名の殺害とこれに対する報復とみられるパレスチナの10代の少年への殺害後にハマスのロケット砲撃が増加したことに伴い、ロケット砲撃をやめさせるために開始されたとされる。しかし、作戦の結果は、一人の死者も出ていない砲撃に対し均衡性を著しく欠いている。
(略)
 イスラエル軍による攻撃の対象にはガザの民間人居住地域も含まれており、パレスチナ
闘員のみに限定して攻撃をすることはほぼ不可能である。国際人道法に基づき、民間人は保護されなければならず、攻撃対象とされてはならない。ヒューマンライツ・ナウは、こうした国
際法への違反は戦争犯罪等の国際犯罪に該当することを警告する。
 国際社会はガザの無辜の市民を保護する責任を負う。2008年から2009年にかけてのガ
ザ攻撃(Operation Cast Lead)に関して、ゴールドストーン調査団の勧告にも関わらず、何らの正義と説明責任の追及はなされず、イスラエルの重大な人権侵害に対する不処罰を国際社会は容認してきた。こうした状況はイスラエル軍によるパレスチナ市民への犯罪行為が繰り返されることを助けてきた。国際社会は今こそ、事態の悪化とこれ以上の民間人の犠牲を
防ぐために行動しなければならない。
 ヒューマンライツ・ナウは、紛争のすべての当事者に対し、いかなる軍事行動も即時停止す
るよう求める。とりわけ、イスラエル政府に対し、民間人・民用物攻撃を含むすべての国際人権・人道法違反行為を直ちに停止するよう求める。さらに、イスラエル政府に対し、ガザ地上戦をはじめとする軍事行動のいかなる拡大もしないよう求める。
(略)
(引用終わり)
 
 なお、わが国を代表する中東ウォッチャーの1人である高橋和夫放送大学教授が、2012年11月の紛争終結時、及び今回の空爆について行ったコメントを、以下のリンク先で読むとができます。
 
2012年11月28日 
ガザの軍事的な意味(高橋和夫
 
2014年7月11日
イスラエルハマス>エスカレートする報復合戦 今後どうなるのか?
 
 最後に、イスラエルによるガザ攻撃でどうしても日本人が想起すべきことは、安倍自民公明連立政権が今年の4月1日、従来の「武器輸出三原則」をかなぐり捨て、新たに「防衛装備移転三原則」を制定し、原則、武器輸出を解禁したことです。
 
防衛省自衛隊ホームページ 
防衛装備移転三原則について
 
 その上、5月には、安倍首相は、来日したネタニヤフ・イスラエル首相との「共同声明」を発表しましたが、その本文冒頭には、以下のような文章が並んでいました。
 
日本・イスラエル間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000038473.pdf
(引用開始)
 双方は,首脳・閣僚級及び高級事務レベルの交流活性化を確認した。今般,安全保障に関する初の首脳級対話を実施したことを受け,双方は,安倍総理の早期のイスラエル問の機会に第二回会合を実施することへの期待を表明した。
 双方は,日本の国家安全保障局とイスラエル国家安全保障会議間の意見交換の開
始を歓迎し,イスラエルで次回会合を実施することを確認した。
 双方は,サイバーセキュリティに関する協力の必要性を確認し,両国の関係機関間で対
話を行うことへの期待を表明した。
 双方は,両国の防衛協力の重要性を確認し,閣僚級を含む両国の防衛当局間の交流
拡大で一致した。双方は,自衛隊幹部のイスラエル訪問で一致した。
(引用終わり)
 
 さらに、この「共同声明」の中で、「双方は,自由,民主主義,人権,法の支配といった普遍的価値の重要性を確認し,また,アジア太平洋地域及び中東地域における平和と安定に向け,対話と協力を強化していくことを確認した」とあるのを読めば、これはほとんどブラックジョークではないか?と思わざるを得ません。
 
 武器輸出を解禁し、イスラエルとの軍事交流を親密化するということが何を意味するのか、既に4月1日の時点で、ジャーナリストの志葉玲さんは、以下のように警告していました。
 
2014年4月1日8時30分 志葉玲(フリージャーナリスト)
戦場ジャーナリストが問う「武器輸出三原則」撤廃の行方-「死の商人」化する安倍政権
(抜粋引用開始) 
(略)日本が他国へ武器・兵器及び関連技術の輸出することを原則禁止してきた「武器輸出三原則」。安倍政権は、この「武器輸出三原則」を廃し、新たに「防衛装備移転三原則」案を、早ければ本日1日にも閣議決定する見通しだ。それは、これまでの武器・兵器及び関連技術の輸出を「原則全面禁止」としてきた従来の立場と、全く真逆の方向に舵を切り、米国やイスラエルへの武器・兵器の輸出や技術協力を解禁し、これらの国々が今後も行うだろう戦争犯罪に、日本も積極的に加担するということを意味する。
(略)
 この間、中東の戦争を取材してきた私から言わせれば、イスラエルは世界でも最も国連や国際人道法を軽視した紛争当事国の一つだろう。現代において、戦争だからと言って何をしても良い訳ではなく、守るべき「ルール」がある。例えば、非戦闘員である民間人を攻撃してはならない、とジュネーブ諸条約等には定められているのだ。だが、こうした「ルール」など
ないかのように振る舞うのがイスラエルだ。動画を観てもらえればわかるように、私の取材中にレバノン首都ベイルートで停戦発効間際に高層住宅8棟が爆撃され、帰還してきた人々が死傷するなど、民間人の被害は相次いだ。
 2008年末から2009年のガザ侵攻「鋳られた鉛」作戦も酷かった。ガザ中心部のシファ病院でインタビューした女性は「国連の避難所にいたところにイスラエル軍空爆され、気がついたら自分の足がなくなっていた」という。国連事務所の倉庫も攻撃された。中には医薬品が保管されていたのだが、全部焼けてしまっていた。ガザ侵攻の時だけでなく、レバノン侵攻時にも国連施設は攻撃されているなど、イスラエル軍にとっては国連施設への攻撃すらタブーではないようだ。「鋳られた鉛」作戦では、ジュネーブ条約で禁止されている医療関係者への攻撃も行われた。救急車も爆撃され、破壊された。
 イスラエルは2012年11月にも、ガザへ激しい空爆を行った。この時は、地元テレビ局「アル・クドゥス」の事務所が空爆され、7人が負傷、中には片足を失う大怪我をした者もいる。攻撃を受けたのは「アル・クドゥス」だけではない。やはり地元テレビ局である「アル・アクサ」の事務所も攻撃され、3人が負傷した。さらに、FOXやMBCなど国際メディアにも、イスラエル軍退去を要求していた。「イスラエルは、自分たちがガザで何をやっているのか報じられるのを嫌い、ジャーナリストを攻撃したのでしょう」。負傷した現地カメラマンの一人、ムハンマド・ムーサさんはそう断言していた。
 つまり、武器輸出三原則を廃し、米国と兵器の共同開発を行い、その兵器がイスラエル渡るということは、これまでに述べてきた戦争犯罪を肯定し、加担するということに他ならない。
(略)
 武器輸出三原則をめぐる問題は、それ自体だけではなく、今の日本のあり方を根本から問うている。人々の命よりも、一部の企業や自らの利権を優先する「死の商人」ぶり。そして、憲法や国会を軽視し、まるで独裁国家のように安倍首相そのものが「法」だと言わんばかりの傲慢さ。今回の武器輸出三原則撤廃のみならず、集団的自衛権の行使や、原発再稼働・輸出などにおいても、安倍政権の異常さは際立っている。単に、安全保障政策やエネルギー政策の問題にとどまらず、日本の民主主義そのものを破壊しかねない。首相といえど憲法に従い、尊重する義務があるという大原則を理解しない安倍首相に、為政者たる資格はない。 
(引用終わり)
 
 もう1つ、「防衛装備移転三原則」とイスラエルに関して、気になるニュースがありました。
 
2014年3月14日12時17分 共同通信 
イスラエルへの武器輸出可能 新原則案で政府見解
(引用開始)
 政府は14日、武器輸出三原則を全面的に見直す新たな原則案で、中東紛争へ関与する可能性が指摘されるイスラエルへの武器や関連技術の輸出は可能となるとの見解を示した。自民党本部で開かれた安全保障関連部会の合同会議で政府担当者が「イスラエルは(禁輸対象国に)入らないだろう」と述べた。
 新原則案では「紛争当事国」へ輸出を禁じている。政府担当者は紛争当事国の定義について「武力攻撃が発生し、国際の平和や安全を維持、回復するため、国連安全保障理事会取っている措置の対象国」と説明。「湾岸戦争時のイラクなどを念頭にしている」とも指摘した。
(引用終わり)
 
 4月1日に制定された「防衛装備移転三原則」において、上記共同通信の記事で言及された「紛争当事国」がどう定義されたかを確認しておきましょう。
 
(引用開始)
1 移転を禁止する場合の明確化
 次に掲げる場合は、防衛装備の海外移転を認めないこととする。
① 当該移転が我が国の締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合、
② 当該移転が国際連合安全保障理事会の決議に基づく義務に違反する場合、又は
③ 紛争当事国(武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国をいう。)への移転となる場合
(引用終わり)
 
 なるほど、これは共同通信が書いているとおり、イスラエルは「紛争当事国」になりそうもあませんね。
 ②は、国連の決議によって武器の輸出が禁止されている国のこと(例えば北朝鮮)。③は、クウェートに侵攻した際のイラクなどを想定、ということでしょう。
 第一、イスラエルがいかに非道な行為に及ぼうと、国連安保理で拒否権を持つアメリカが後ろ盾となっている限り、イスラエルが②や③に該当することなど金輪際ないでしょう。
 
 イスラエルによるガザ攻撃に何らの声もあげず、事実上イスラエルを支持するに等しい態度をとることも「加担」の一種に違いありませんが、武器輸出を解禁するということは、いずれ、イスラエルによる攻撃の対象となって殺されていく子どもたちの死に、日本が直接「加担」することを(少なくとも今でもその可能性があることを)、国民として容認するということなのです。しかも、武器輸出によって潤う企業の利益に奉仕するという目的のために。
 ・・・というようなことを認識している国民がどれだけいるでしょうか?
 安倍自民公明連立政権(今後は、正確に「自民公明連立政権」と書くことにしました)の罪深さを、1人でも多くの国民に認識してもらえるよう、様々に訴え方を工夫していかねばと思います。
 

(付録)
『丸々赤ちゃん』 
作詞作曲:ピート・シーガーデヴィッド・バーンズ 日本語詞:中川五郎 演奏:中川五郎