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憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

中川五郎さんは問いかける~“ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか”

 今晩(2015年1月2日)配信した「メルマガ金原No.1958」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
中川五郎さんは問いかける~“ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか”

 私のブログのカテゴリーをご覧いただくと、「憲法」「原発」「政治」「平和」などとともに、「音楽」「映画」「文学」などが並んでいることに気がつかれると思います。
 また、ブログタイトルの下には「憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します。」と書いてあります。
 今日は、その「音楽」についての話題です。
 
 毎年、年末年始に行われる大阪の「釜ヶ崎越冬闘争」も、今回が数えて45回目となるそうです。
 第45回の企画書というのか呼びかけ文というのか、第45回釜ヶ崎越冬闘争実行委員会代表渡邉充春氏名義の文章が、レイバーネット日本サイトに掲載されています。
  
 このうち、「音楽」カテゴリーに関係する部分を引用します。
 
(引用開始)
◎越冬(えっとう)ステージライブ◎ 12/30~1/3
 ステージでは越冬(えっとう)闘争(とうそう)に理解(りかい)・共感(きょうかん)した約(やく)40(40)組(くみ)のアーティストが出演(しゅつえん)します。演歌(えんか)、フォーク、ロック、ブルース、ボサノバ、ラップ、民謡(みんよう)、三(さん)線(しん)、エイサー、空手(からて)の演(えん)武(ぶ)と色(いろ)とりどりの唄(うた)・演奏(えんそう)、
パフォーマンスが繰り広げ(くりひろげ)られます。詳しく(くわしく)はステージスケジュールをご覧(ごらん)下さい(ください)。
 またステージでは日頃(ひごろ)釜ヶ崎(かまがさき)で活動(かつどう)している団体(だんたい)・個人(こじん)からのアピールもあります。釜ヶ崎(かまがさき)を暮らす(くらす)上(うえ)で大切(たいせつ)な情報(じょうほう)なので耳(みみ)を傾けて(かたむけて)下さい(ください)。
(引用終わり)
 
 12月30日から1月3日まで、三角公園特設ステージで繰り広げられるライブの内、大晦日12月31日に行われたライブの模様がIWJ大阪によって中継され、アーカイブ映像が視聴できるようになっていますので、是非皆さまにご紹介しようと思い立ったという次第です。
 
 
 とはいえ、映像は4本に別れており、トータル5時間以上になるライブを全編パソコンの前で視聴するのは正直しんどいかもしれませんので、上記「呼びかけ文」に掲載されていた12月31日のプログラムを転記しておきますので、視聴の目安にしてください。
 
12:00 くすもとひろこ(唄)
12:25 いおり&コマイナーズ
12:50 フルーツサークル(唄)
13:15 アート・にっこり・センター(唄)
13:40 調整
14:00 難波屋たけちゃん、河栄=KOEI、サルハシ(フォーク)
14:30 レイバーZ(踊りと唄)
 以上、映像1/4
15:00 釜凹バンド(唄)
16:00 アカリトバリ
(唄と民謡)
16:30 調整
16:50 中川五郎(フォーク)
 以上 映像2/4(中川さんの2曲目途中まで)
17:20 アピール
 以上、映像3/4
※時刻はあくまで事前の「予定」ですから、おおよその目安にしてください・
 
 以上のとおり、ライブは映像1/4と映像2/4に収録されたのですが、トリの中川五郎さんの2曲目で切れてしまっていたため、あらためて中川五郎さんのステージ(とアピール)を完全収録した録画(映像4/4)が再配信されました。
 ということで、実は私も完全視聴したのは映像4/4だけで、それ以外の3本は、申し訳ないのですが、まだあちこちつまみ食い的に覗いてみただけです。
 
 私は、これまで何度かメルマガ&ブログで中川五郎さんに言及してきましたが、特定の楽曲をフューチャーしたのは以下の2回だったと思います。
 
2012年8月22日(2013年2月11日に再配信)
中川五郎さんの新しい“We Sall Oercome”=『大きな壁が崩れる』
2012年9月25日(2013年2月3日に再配信)
『一台のリヤカーが立ち向かう』~彼は3.11前から3.11後を歌っていた~

 
 そして、今日皆さんにご紹介しようと思う曲は・・・、実はタイトルが判らないのです。
 ただ単に、ボブ・ディランBob Dylan)の30年前の『ライセンス・トゥ・キル(License To Kill)』という曲の替え歌ということしか判りません。
 大晦日の三角公園のステージで、中川さんは5曲歌ったのですが、この「替え歌」は4曲目(IWJの映像4/4の21分から曲前のトーク、23分から演奏が始まります)に歌われました。
 私が、特にこの曲を皆さんに広く知っていただきたいと考えた理由を理解していただくために、曲前のトークと併せ、歌詞を転記します(文字遣いは金原の責任によるものです)。
 
(トーク)
 僕は大阪の寝屋川市っていうところで生まれたんですけども、1970年くらいからはずっと東京に住んでいて。それで、東京の渋谷というところで、年末からお正月にかけて、渋谷区内にある3つの公園を鍵をかけて閉鎖して、そこに泊まっているホームレスの人たちを閉め出して、そこの公園でいつも行われている炊き出しをさせないようにということで、渋谷の区がそういう、公園をブロックアウトするっていうとんでもないことをやったんですけども。それで、眠る場所がなくなる人たち、食事も出来ない人たちがたくさんでてきて。でも、そういうことを区の人間たちは何一つ考えていなくて。でもお役人というのは、そういう区の、区で働く人から、総理大臣まで、そういう人たちは国民の1人1人の税金で自分たちはお金を貰って、そして国民のために尽くすという、それが自分たちの役目だし。特に一番困ってる人を、一番弱い人のために自分たちが何かをするっていうのが僕はお役人というか、そういうみんなのお金を貰って仕事をする人の役割だと思うのに。今の世の中、何かどこかで勘違いっていうか、自分たちの方が偉いんだっていうか、自分たちが世の中を全部仕切っていて、弱い人のこととか、困ってる人のことなんて全然考えなくて、自分さえ良ければいいっていう風な、そういう今の首相が一番象徴的ですけども(「そーだ」の声と拍手)。何かそういう流れになっているような気がして。でも悲しいことにそういう首相を選んだのは僕ら1人1人の国民かもしれないんですけども(「選んでないぞー」との声あり)。そういう男を引きずる下ろすには、やっぱり僕ら1人1人が声をあげて、力を合わせれば、そういう男を、やりたい放題やることから止めさせられると思って、この歌を歌いたいと思います。
 
(歌詞 ボブ・ディラン『ライセンス・トゥ・キル』の替え歌)
 
男は思う 大き過ぎる力を手に入れて 
何でも出来るし 何でも変えられる
反対の声はただの騒音 抗議に傾ける耳はなく
名もない持たざる人々の思いが重なる
ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか
 
男は臆病 気が小さくて心は狭い
おごりたかぶり やたらといばり散らす
凄みきかせてにらみつけても 自分の小ささがばれるだけ
名もない持たざる人々の思いが重なる
ああ どうすれば男の目をさまさせられるのか
 
男は告げる やがて戦争になれば
前線に行かない若者は死刑だと
自分は椅子に座って高みの見物
弾が飛んでくれば 真っ先に逃げ出す
名もない持たざる人々の思いが重なる
ああ どうすれば男の減らず口を閉じさせられるのか
 
天才と呼ばれ エリートと呼ばれ 男は階段を駆け上がった
でもどこかでなくしたんだ 一番大切なものを
 
男の耳は聞きたいことだけを聞き
男の目は真実をねじ曲げる
男の口は醜くゆがみ 
男の鼻はピノキオのように高い
名もない持たざる人々の思いが重なる
ああ どうすれば男の鼻をへし折ってやれるのか
 
天才と呼ばれ エリートと呼ばれ 男は階段を駆け上がった
でもどこかでなくしたんだ 一番一番一番一番大事なものを
 
男の耳は聞きたいことだけを聞き
男の目は真実をねじ曲げる
男の口は醜くゆがみ 
男の鼻はピノキオのように高い
名もない持たざる人々の思いが重なる
ああ どうすれば男の減らず口を閉じさせられるのか
ああ どうすれば男の鼻をへし折ってやれるのか
ああ どうすれば男の目をさまさせられるのか
ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか
ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか
 
 優れた楽曲に注釈を施すことほど無粋なことはありませんが、一応一言二言述べてみます。
 この歌詞の「男」が、安倍晋三内閣総理大臣を念頭に置いて書かれたものであることは、中川さん自身のトークからも明らかですが、忠実にその実像を写しとったものではありません。第1連の「反対の声はただの騒音」や第3連の「前線に行かない若者は死刑」などは、石破茂氏のエピソードを参考にした可能性が高いと思いますし、安倍氏が「天才と呼ばれ」たなどという話は寡聞にして一度も聞いたことがありません(真逆の噂ならいくらでも流布していますが)。
 従って、あくまで今現に最高権力者の地位にある特定の個人ということではなく、今もこれからもあり得る権力者と「名もない持たざる人々」とのディスコミュニケーションをテーマとした曲なのだと思います。
 楽曲の最後でリフレインされる「ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか」という問いかけは、ほとんど絶望的でありつつ、その中で何としても一筋の光明を見出そうという呼びかけだと私は受け取りました。
 
 この曲(正式な曲名が判らないと不便だなあ)についての情報をあと2つご紹介しておきます。
 
 2014年2月24日にYouTubeで公開されたこの曲の演奏が聴けます。ソニーからのCD再発売に合わせてボブ・ディランの訳詞の見直しを行ったエピソードとともに、この曲の成り立ちを中川さんが語っています。
 


 もう一つ、2014年9月25日に、大阪キー局・関西TVの夕方のワイド情報番組「スーパーニュースアンカー」で、中川五郎さんの特集(10分以上!)が放映されました。題して「“反戦”フォークに戻った男」。そして、その番組の中で特にフューチャーされていたのが「男は思う 大き過ぎる力を手に入れて~」の曲だったのです。もっとも、番組の中のテロップには『ライセンス・トゥ・キル』となっていましたが(テロップに作詞作曲:ピート・シーガーと誤記されていたのはご愛敬でした)。
 この番組の主要部分を文字起こししたバックナンバーが関西TVのホームページにアップされています。
 なお、中川さんのFacebookに、番組への感謝とともに、誤解を招く部分につての訂正が行われていましたのでご参考までに。
 
 ところで、昨年、『空が青いから白を選んだのです 奈良少年刑務所詩集』からセレクトした詩に、中川五郎さんやよしだよしこさんなどが曲を付けたCDが発売されて話題を呼びましたが、三角公園ライブでも、1曲目と3曲目にその詩集の中の詩に中川さんが曲をつけた作品が歌われました。いずれも、とても心に染みる曲だと思いました。

  
 
 
 
 
 そして、最後はやはり『大きな壁が崩れる』。この曲を一緒に歌うといつも元気が湧いてきます。
 ただし、まだまだみんなが歌詞をそらんじているところまで行くには時間がかかりそうですね。何度も聴いて歌っている私でも、原詩の方がすっと口をついて出てきますもの。経験年数が段違いだから仕方ないかな。
 
 なお、以下に掲載した写真は、2013年6月29(日)、和歌山市浜の宮海水浴場前にあったカフェ&雑貨屋「あわたま」で行われたライブの前に、店の前のテラスで中川さんと一緒に撮影した記念写真です(「あわたま」は惜しまれつつ昨年閉店し、店主の高橋さん一家は祝島に移住されました)。
 Facebookにこの写真を投稿した際に付けた私のコメントを最後に引用しておきます。
 
6月29日「あわたま」にて「6月29日(土)「あわたま」でのライブ開始前、お店の前のテラスにて、中川五郎さん(中央)、西郷章さん(左)と一緒に記念撮影(撮影:高橋泉さん)。中川さんは、やや風邪気味とお見受けし、必ずしも万全の体調ではなかったはずですが、午後8時から2時間弱、アンコール曲を含めて全15曲、ノンストップで、かつ全力で歌い通されました。初めて中川さんの曲を深夜放送のラジオで聴いた中学3年生の時以来の宿願をようやく果たせた思いで大感激です。ありがとうございました。是非また和歌山に歌いに来てください!」