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ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2014-2015」(第1稿)

 今晩(2015年3月25日)配信した「メルマガ金原No.2039」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2014-2015」(第1稿)
 
 昨年の1月30日のメルマガ(ブログ)で、「ある地域9条の会の総会議案書『情勢分析』パート(第1稿)」という記事を書いていました。
 帰宅が遅くなり、他にストックもなかったため、「毎日配信」を維持するための窮余の一策として、「総会議案書」の内、私が分担執筆していた「情勢分析」のパート(の第1稿)を配信したのでした。
 例年より2か月近く遅い5月初旬に総会を開くことになっているくだんの地域9条の会ですが、今年も「総会議案書」は役員が分担して執筆することになっており、またしても「情勢分析」のパートは私の担当となりました。
 とりあえず書いた第1稿をそのままメルマガ(ブログ)に流用するのは、やや安直のそしりを免れないという気がしないこともないのですが、皆様のご叱正を得て、より良いものに出来ればと思います。 
 
 
         ある地域9条の会 総会議案書
 
(情勢分析)
1 2014年7月1日に行われた2つの「閣議決定
 2014年7月1日、安倍晋三自公連立政権は、長年にわたって歴代内閣が維持してきた、日本国憲法の下では集団的自衛権は行使できないという政府解釈を覆し、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは」(新3要件)「憲法上許容される」との新たな閣議決定(国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)を行った。
 日本弁護士連合会をはじめとする様々な団体、国民各層からの強い反対を無視し、憲法違反の閣議決定を強行したことは、特定秘密保護法の強行可決、新たな国家安全保障会議の設置(2013年12月)、武器輸出3原則を防衛装備移転3原則に転換する武器輸出の解禁(2014年4月)等の一連の軍事体制整備の流れの中における一つの大きな節目であった。
 また、同じ7月1日に行われたもう1つの閣議決定にも注目しなければならない。それは、沖縄県名護市のキャンプシュワブ沖水域について、日米地位協定第2条に基づく施設及び区域の共同使用、使用条件変更及び追加提供についての決定であり、具体的には、辺野古沖の立ち入り禁止水域を大幅に拡大するというものであって、国による埋立工事強行のための布石であった。
 前者の閣議決定について、米国のヘーゲル国防長官(当時)が直ちに「歓迎する」とのコメントを発表したことから明らかなように、7月1日の2つの「閣議決定」は一対のものとして理解する必要がある。
 安倍政権が推進しようとしている「軍事国家化」路線が、何から何まで米国と利害が一致しているとは言いきれないが、少なくとも、米国の利益に適う限りにおいて、同国の支持が得られることを前提に、現政権による政策決定がなされていると考える必要がある。
 
2 明文改憲に向けた動向
 2014年11月21日、任期を2年以上残して安倍首相は衆議院を解散した。政権は経済政策を前面に打ち出し、連立与党である自民公明両党で2/3を超える議席を獲得した。
 この選挙では、政権を補完する極右政党・次世代の党がほぼ壊滅する一方、日本共産党が8議席から21議席に躍進するという期待を持てる一面もあったとはいえ、最も重要なことは、衆議院改憲を発議するために必要な2/3超の議席を連立与党が保持する状態が、最長で2018年12月まで続くことになったということだろう。
 現に、総選挙終了直後から、安倍首相やその周辺は、2016年7月の参議院選挙後の憲法改正発議を具体的な政治日程の問題として公言するに至っている。
 集団的自衛権行使容認問題との関係で解釈改憲に目を奪われているうちに、明文改憲に向けた準備が着々と進んでいたことに気がつく。
 2014年6月には、「日本国憲法の改正手続に関する法律」が改正され、具体的な国民投票の実施への障害が取り除かれた。
 また、国政の動きと並行して、日本会議が中心となって憲法「改正」に向けた機運を醸成するため、地方議会に対して憲法改正促進意見書を採択するよう求める請願が組織的に行われ、自民党本部もこの動きと連携して意見書採択を推進しており、既に多くの地方議会において、早急な憲法改正発議を国会に求める意見書が採択されている。 
 和歌山県議会においても、法律家等4団体等、多くの県民・団体からの申し入れを無視し、2014年9月26日、自民党などの賛成多数によって「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」を採択するに至っている。
 さらに、2014年10月には、改憲派が結集して「美しい日本の憲法をつくる国民の会」を結成し、「美しい日本の憲法をつくる1,000万人賛同者」を目標に、署名集めを強力に推進している。同会が集めた署名簿は、来たるべき憲法改正国民投票の際には、強力な国民投票運動のツールとなることが見込まれている。
 
3 戦争立法の具体化と辺野古埋立工事の強行
 自衛のための措置としての実力行使のための新3要件を定めた7.1閣議決定を具体化するための法案が、2015年5月中旬にも国会に一括上程されると言われている。
 いまだ具体的な法案の中身は明らかとなっていないが、与党協議の結果、3月中に「具体的な方向性」が合意に至り、自衛隊法、武力攻撃事態法等の改正案の他、自衛隊の海外派遣恒久法案等が提案されるものと予想される。
 政府・与党は、会期末(6月24日)までの時間が短かいため、会期を大幅に延長してでも、現在開会中の通常国会(第189回国会)での成立を図ろうとすると思われる。
 また国は、沖縄県名護市辺野古沿岸において、2013年12月の仲井真弘多知事(当時)による公有水面埋立免許承認に基づくボーリング調査を強行し、反対する住民らとこれを強権的に制圧しようとする海上保安庁との衝突が繰り返されるという憂慮すべき事態が続いている。
 さらに、今夏にも、埋立本体工事を開始すると防衛相が明言する中、翁長雄志知事が3月23日に至り、沖縄防衛局に対し、ボーリング調査などの海上作業を停止するよう指示するという新たな局面を迎えている。
   
4 もう1つの焦点「戦後70年談話」(安倍首相の歴史認識問題)
 安倍政権の大きな特徴は、米国に従属する諸政策の推進という歴代政権の延長線上で理解できる側面と、そこから逸脱し、米国からも懸念される国家主義的側面の両面を兼ね備えていることだろう。
 もちろん、前者の面においても、安倍政権でなければなし得なかった憲法無視、民意無視の強権発動の数々があるとはいえ、集団的自衛権行使容認にしても、辺野古新基地建設にしても、憲法9条明文改憲にしても、従来から米国の知日派と言われる勢力から強く求められ続けてきた課題であった(3次にわたるアーミテージ・レポートなど)。
 他方、安倍首相を支える国内支持基盤の重要な一翼を担うのが国家主義イデオロギーを掲げる極右勢力であって、これらは、必ずしも米国及びその利益代弁者らと利害が一致している訳ではない。その矛盾が露呈したのが、2013年12月26日の安倍首相靖国神社参拝に際しての米国の「失望した」との表明であった。
 この矛盾は本質的なものであり、根本的な解消はあり得ないと思われるが、とりあえず当面は、安倍晋三首相が
今年の8月に発表すると見られている戦後70年談話(安倍談話)が国際的な関心の焦点となっている。
 これについては、4月~5月の連休中に予定されている安倍首相訪米時に行われるのではと言われている米議会における演説が実現すれば、その内容によって、8月の談話がおおよそ予想できることになると思われる。
 いずれにせよ、一面において、この歴史認識問題が安倍政権最大のアキレス腱であることを心にとどめ、注目を怠らないことが肝要である。
 
5 危機に立ち向かうための展望と課題
 以上の危機に立ち向かう展望を持つために必要となるいくつかの視点を提示したい。なお、具体的な行動提起は、後のセクションで語られるはずである。
① 沖縄は、今や日本の民主主義の最前線である。沖縄では、1月の名護市長選挙、9月の同市議会議員選挙、11月の知事選挙、12月の衆議院議員総選挙(沖縄1区~4区)という2014年中に行われた全ての選挙において、辺野古新基地建設反対派が勝利をおさめるいう結果を出し続けた。それにもかかわらず、安倍政権は沖縄の「民意」を一顧だにせず、県民から信任を得て当選した翁長雄志知事からの面会の申込みさえ拒絶するという非礼で子供じみた対応に終止している。沖縄の闘いを「わがこと」として連帯する姿勢が全ての日本国民に求められている。
② 2015年3月22日、東京の日比谷野外音楽堂や国会周辺で行われた「安倍政権NO!0322大行動~民主主義を取り戻せ!~」は、原発集団的自衛権憲法、沖縄米軍基地、秘密保護法、TPP、消費税増税社会保障、雇用・労働問題、農業・農協改革など、様々なイシューに取り組んできた団体やグループが連帯して開催したものであり、「反動の総合デパート」である安倍政権に立ち向かうためには、それぞれの政策についての反対運動の担い手が結集することの必要性を示す重要な企画であった。
③ 2015年2月、「戦争をさせない1000人委員会」、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」の3団体が、新たに「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」(略称:「総がかり行動実行委員会」)を発足させた。この動きは、従来の党派を超えた運動の広がり・共闘が是非とも必要という問題意識が具体化したものと評価できる。これを何とか地方レベルでも実現する必要がある。ただ、この次には、「穏健な保守層」とどのように連帯できるのかというかねてからの課題が待ったなしで待ち構えている。
④ 本通常国会公職選挙法が改正され、選挙権年齢が満18歳に引き下げられることは確実であり、来夏の参議院議員選挙から、18歳、19歳の若者たちが投票権を行使することになる。従来から高齢者に偏りがちであった各地の「9条の会」にとって、このような若年層にいかに働きかけるのかということが焦眉の課題となっている。
 

(付記)
 現在の憲法を取り巻く情勢を、鋭くかつ分かりやすく解説してくれる第一人者は渡辺治さん(九条の会・事務局、一橋大学名誉教授)だと思います。私自身、非常に参考にさせていただいています。
 以前のメルマガ(ブログ)でご紹介した( 「戦争立法」に備えるための学習会~IWJの貴重なアーカイブで学ぶ/2015年3月14日)3月5日に京都市で行った講演は、既にIWJ会員でないと視聴できなくなっていますので、その代わりとして、以下の動画をご紹介しておきます。2015年2月25日「戦争する国づくりストップ2.25院内集会」(主催:憲法共同セン­ター)での講演です。
 
 また、基本的に同じような内容ですが、より短い時間でレクチャーしているのが、3月14日に開催された「九条の会全国討論集会」です(47分~1時間16分)。