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「愛国」二題~山口二郎氏「愛国の作法」と鈴木邦男氏「愛国心スピーチ」

 今晩(2017年3月20日)配信した「メルマガ金原No.2757」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「愛国」二題~山口二郎氏「愛国の作法」と鈴木邦男氏「愛国心スピーチ」

 2月9日の朝日新聞による第一報からまだ一月半も経っていないとは信じられないくらい、めまぐるしい展開を見せる「森友学園」問題については、比較的早い段階の2月17日に私もメルマガ(ブログ)で取り上げたものの、その後、2月26日に続報を1本書いただけで、ほぼお手上げ状態となり、ただ注意深く情勢を見守っているだけという、かなり受け身のスタンスになってしまっており、「これでいいんだろうか?」という疑問が頭をもたげたりもします。
 
 問題の本質(の一つ)は、政治や行政という公的な領域で貫徹されるべき「正義」があまりにも蔑ろにされているという(極めて強い疑い)だろうと思います。従って、学校法人森友学園が運営する塚本幼稚園において、園児に教育勅語を暗唱させるというような「愛国教育」が行われていたことや、森友学園の周辺にいわゆる「愛国者」の群れがぞろぞろ出没していること自体は、もしかすると「本筋」ではないのかもしれません。
 さはさりながら、この機会に、括弧付きの「愛国」のうさんくささを、広く国民が共有することに何程か効果があるのなら、それもまた有意義ではないかと思い、今日は、「愛国」二題をお届けすることにしました。
 
 まずはじめは、昨日(3月19日)の東京新聞「本音のコラム」に掲載された山口二郎法政大学教授(政治学、立憲デモクラシーの会共同代表)による「愛国の作法」です。
 この記事自体は、東京新聞のWEB版では公開されていませんが、もともと山口二郎さんが、ご自身のtwitterで連載(連投というのでしょうか?)したものをまとめたもの、というか、始めからコラムに掲載することを前提にtwitterに連投したのでしょう。
 
愛国の作法1(2017年3月4日)
文科省は学校の道徳で愛国心の教育をするそう。我が国の最高指導者の行状から愛国の作法を導き出せば、こんなことになろうか。
愛国の作法1 自分は愛国者であることを目いっぱい大声で叫びましょう。愛国心の証(し)は日の丸を振りかざし、君が代を歌えばよろしい。教育勅語の暗唱はさらに効果的です。」
→最後の一文は、コラム掲載時に「教育勅語を暗唱できれば愛国心は優等です。」と修正されました。もちろん、「道徳」の教科化を踏まえた変更であることは言うまでもありません。
 
愛国の作法2(2017年3月4日)
「愛国の作法2 自分が純粋で過激な愛国者であることを示せば、周りの人間はみな愛国心に感動し、あなたの望む無理難題を聞いてくれるかもしれません。お父さん、お母さんに小遣いを上げてほしいという時も、自分は愛国者だと大声で言えば効果覿面。何しろ国有地をただ同然でもらった愛国者もいるくらい。」
 
愛国の作法3(2017年3月4日)
「愛国の作法3 愛国者は機を見るに敏でなければなりません。同じ愛国仲間でも、やばそうな奴が愛国をネタに変なことをしていると気づいたら、さっさと裏切り、知らん顔をしましょう。愛国者に節操は不要です。あいつは真の愛国心がわかっていないとうそぶくのも、保身には効果的です。」
 
愛国の作法4(2017年3月4日)
「愛国の作法4 愛国者はなにより自分を愛する人です。愛国教育に熱心な文科省の高級官僚も、法を無視して、退職後の天下りを確保するために組織的に動いていたくらいですから。自分の私利私欲を追求するときにも、愛国だと言えばだれも邪魔しません。(愛国心とはなんと効果的な魔除けでしょう。)」
→括弧した部分はコラム掲載時に削除されました。
 
「愛国の作法5 愛国者は強い者の心中を忖度(そんたく)し、気に入られるよう行動します。政治家の無理難題を実現した財務省の官僚こそ、愛国者の鑑(かがみ)です。」
 
 「愛国の作法」といえば、姜尚中さんが2006年に朝日新書から刊行した著書のタイトルを思い出しますので、それと区別するために、山口二郎さんが書かれたコラムのタイトルは、「愛国の作法2017」とすべきかもしれません(と、私が勝手に変更する訳にもいきませんが)。
 
 そして、「愛国」二題のもう1つは、やはり昨日(3月19日)行われた「『森友10万人デモ』安倍退陣に追い込もう! 緊急集会クライマックス」(国会正門前)での、鈴木邦男さん(一水会最高顧問)によるスピーチです。
 動画はいくつかありますが、比較的音声が聴き取りやすいものを2種類ご紹介します。
 
 
 
2017年3月19日【森友10万人デモ】(森薫)(1時間57分)

鈴木邦男さんのスピーチは36分~48分、制服向上委員会の歌は49分~1時間02分です。
 
 最初は、鈴木さんのスピーチ全文文字起こしに挑戦しようかと思ったのですが、時間の都合と、とても完全に聴き取れる自信がなく断念しました。
 そこで、IWJのダイジェスト動画に収録された鈴木さんのスピーチの一部のみ、以下のとおり文字起こししてみました。これだけでも、なかなか感銘深く読んでいただけるのではないかと思います。
 
愛国心というのはね、全部『自己申告』なんですよ。僕も今まで、『俺は愛国者だ』というのは、1万人以上の人に会ってますよ。でも、ほとんどが全部インチキですね。だって、自分で(愛国心があると)言うんですからね。それと、愛国心を言う人には『愛』はありません。本当に愛国心がある、日本が好きだというならば、この時代が好きだ、この人たちが好きだ、自分はそれに影響されて頑張っていこうというのなら、心の中で思ってればいいわけでしょう?それをわざわざ、『俺は愛国者だ』、『俺は愛国者だ』と言ったら、大体、『でも、あいつは違うんだ』と、誰かを批判するために言いますよね。でまた、他国を攻撃するために使いますよね。だから、NOや反対のために言うならば、それはもう愛国心じゃないだろう。」
三島由紀夫は1970年に自決しましたけれど、その2年前に、実は朝日新聞に、愛国心について文章を書いている。それを僕も読みました。『愛国心という言葉は嫌いだ』と書いてあるんですよ。『これ(愛国心という言葉)は官製のにおいがする。国家が押しつけてる。自分だけが日本からぽっと抜け出して、なんか犬か陶器を愛するように愛してる。そういう思い上がりの心がある。さらに、愛というのは普遍的なもののはずなのに、国境で区切られている愛なんてあるのか』とあって、すごいなと。」
「でも三島由紀夫はね、多分、1968年の人に対して言ったんじゃないんですよ。今の我々に対して言ったんですよ。」
 
 鈴木さんのマガジン9での連載のタイトルは「鈴木邦男の愛国問答」であり、岩波ブックレットから『〈愛国心〉に気をつけろ!』(2016年6月刊)という著作も出されていますので、さらに詳しく鈴木さんの意見を知りたい方は、それらをご参照ください。

※参考サイト
マガジン9「鈴木邦男の愛国問答」バックナンバー
岩波ブックレット『〈愛国心〉に気をつけろ!』


 「愛国」二題、いかがだったでしょうか?
 2015年3月に改訂された「小学校学習指導要領 第3章 道徳」では、その教科の内容を以下のように定めています。
 
(抜粋引用開始)
〔第3学年及び第4学年〕
主として自分自身に関すること。
(1) 自分でできることは自分でやり,よく考えて行動し,節度のある生活をする。
(2) 自分でやろうと決めたことは,粘り強くやり遂げる。
(3) 正しいと判断したことは,勇気をもって行う。
(4) 過ちは素直に改め,正直に明るい心で元気よく生活する。
(5) 自分の特徴に気付き,よい所を伸ばす。
主として他の人とのかかわりに関すること。
(1) 礼儀の大切さを知り,だれに対しても真心をもって接する。
(2) 相手のことを思いやり,進んで親切にする。
(3) 友達と互いに理解し,信頼し,助け合う。
(4) 生活を支えている人々や高齢者に,尊敬と感謝の気持ちをもって接する。
主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。
(1) 生命の尊さを感じ取り,生命あるものを大切にする。
(2) 自然のすばらしさや不思議さに感動し,自然や動植物を大切にする。
(3) 美しいものや気高いものに感動する心をもつ。
主として集団や社会とのかかわりに関すること。
(1) 約束や社会のきまりを守り,公徳心をもつ。
(2) 働くことの大切さを知り,進んでみんなのために働く。
(3) 父母,祖父母を敬愛し,家族みんなで協力し合って楽しい家庭をつくる。
(4) 先生や学校の人々を敬愛し,みんなで協力し合って楽しい学級をつくる。
(5) 郷土の伝統と文化を大切にし,郷土を愛する心をもつ。
(6) 我が国の伝統と文化に親しみ,国を愛する心をもつ
とともに,外国の人々や文化に関心をもつ。
(引用終わり)
 
 来年から、この学習指導要領に基づいて教科化された「道徳」が生徒に教えられるのですが、その中には、しっかりと「国を愛する心をもつ」ことも含まれています。
 瑞穂の國記念小學院の開校はとりあえず頓挫しましたが、全国全ての小学校の生徒たちにこの学習指導要領が適用されるということで、私たちも、「愛国心」に無関心でいるわけにはいきません。