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福島第一原発事故・東京電力勝俣恒久元会長ら3名に対する刑事裁判(業務上過失致死傷被告事件)始まる

 今晩(2017年7月1日)配信した「メルマガ金原No.2860」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
福島第一原発事故東京電力勝俣恒久元会長ら3名に対する刑事裁判(業務上過失致死傷被告事件)始まる

 今日(7月1日)午後2時から、今春開校したばかりの和歌山市立伏虎(ふっこ)義務教育学校(小・中一貫校)で開催された和歌山市家庭教育支援条例制定記念講演会~大人が変われば 子供も変わる~に参加した後事務所に向かい、そのレポートを書かねばと思いながら、「なかなかまとめるのが難しい」とパソコンの前で頭を抱えているところに、三重県津市の珍道世直(ちんどう・ときなお)さんから、珍道さんが提起していた安保法制違憲確認等請求事件(「等」の中には国賠請求を含む)についての最高裁(第一小法廷)の決定(6月29日付)が昨日届いたということで、その決定書や、訴訟代理人代表との「共同意見表明」などをメールで送っていただき、「これも紹介したいものだ」と思ったものの、資料の整理に少し時間がかかりそうです。
 
 ということで、今日は、昨日東京地裁で開かれた重要な刑事裁判の第1回口頭弁論を伝えた報道と、その前後の集会を収録した動画をご紹介します。3.11から6年3ヶ月以上過ぎて、ようやく始まった福島第一原発事故についての刑事責任を追及する裁判です。
 日本人は、東京電力福島第一原発事故をどう裁いたか?どのような結論に至るにせよ、歴史に残る裁判にならざるを得ません。注目し続けましょう。 
 
 まず、公判の概要を報じた中日新聞です。
 
中日新聞 2017年7月1日 朝刊
東電元会長ら、初公判で無罪主張 福島原発、強制起訴

(抜粋引用開始)
 二〇一一年の東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電勝俣恒久元会長(77)ら旧経営陣の三被告の初公判が三十日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。原発事故の刑事責任が裁判で争われるのは初めて。検察官役の指定弁護士が起訴状を朗読した後、勝俣元会長らは罪状認否で「今回の津波や事故の予測は不可能だった」と起訴内容を全面的に否認し、無罪を主張した。
 他の被告は武黒(たけくろ)一郎(71)と武藤栄(67)の両元副社長。三人が大津波の襲来を予測できたかどうかが、公判の最大の争点となり、指定弁護士と真っ向から対立する構図が明らかになった。
 永渕裁判長は「事案の専門性や複雑性から、全体の審理計画を策定するには時間を要する」と述べ、公判は長期化する見通し。
 三人はいずれも罪状認否に先立ち、「原発事故で社会の皆さんに多大なご迷惑をかけたことをおわびします」などと述べた。
(略)
 福島原発告訴団が一二年、勝俣元会長らを告訴・告発。東京地検は二度、不起訴としたが、検察審査会が三人を起訴すべきだと議決し、一六年、検察官役の指定弁護士が強制起訴した。次回期日は未定。
(引用終わり)
 
 検察役の指定弁護士及び被告弁護側双方の冒頭陳述の概要については、東京新聞の記事をご欄ください。
 
東京新聞 2017年7月1日 朝刊
「15メートル津波08年に認識」検察役 「長期予測信頼性ない」弁護側 福島事故 東電元会長ら無罪主張

(抜粋引用開始)
 指定弁護士は冒頭陳述で、東電は二〇〇八年三月、国の地震調査研究推進本部(推本)の長期予測に基づき、福島第一に最大で高さ一五・七メートルの津波が押し寄せるとの試算結果を得て、敷地東側全面を囲う海抜二〇メートルの防潮堤や、沖合の防潮堤の建設を検討していたことを明らかにした。
 さらに、三人が出席した〇九年の会議で、当時原子力設備管理部長だった吉田昌郎(まさお)・元福島第一原発所長=一三年死去=が「一四メートル程度の津波が来ると言っている人がいる」と発言したことも示し、遅くともこれ以降は津波対策を取るべきだったと指摘。「三人が費用と労力を惜しまず、義務と責任を果たしていれば事故は起きなかった」と結論付けた。
 一方、弁護側は冒頭陳述で「(一四メートルは)疑問視される意見として述べられていた。発言を聞いたからといって津波を予見できたとは言えない」と反論。また一九六六年に福島第一が設置許可されて以降、国の安全設計指針に基づき「安全性は確保されていると評価されてきた」と反論した。
(引用終わり)
 
 OurPlanet-TVホームページに、検察官役の指定弁護士による「冒頭陳述」が掲載されていました。
 後にご紹介する海渡雄一弁護士らによる解説を聞いた上でこの「冒頭陳述」を読めば、責任追及側の論拠がよく理解できると思います。
 なお、被告人3名(弁護人)の冒頭陳述は、多分ネットには公表されていないでしょうねえ(発見していません)。
 
 なお、OurPlanet-TVによる、第1回公判を報じた記事は以下のとおりです(過去の取材による動画へもリンクされています)。
 
 
 それでは、昨日一日を振り返るための動画をご紹介しておきます。この問題をずっと追いかけてきた三輪祐児さん(UPLAN)は、開廷前の集会をまず収録し、その後、参議院議員会館講堂で行われた福島原発刑事訴訟支援団集会・記者会見も収録されています。
 
20170630 UPLAN【地裁前集会】東京電力福島第一原発事故の刑事裁判の初公判/東京地裁104号(1時間01分)

 
20170630 UPLAN【院内集会】東京電力福島第一原発事故の刑事裁判の初公判/東京地裁104号(3時間04分)


裁判終了後の記者会見をフューチャーしたOurPlanet-TVの動画も併せてご紹介しておきます。
 
アーカイブ動画】「東電原発事故刑事裁判初」公判後記者会見(1時間36分)

 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年3月6日
2016年2月29日 勝俣恒久元東京電力会長ほか2名が業務上過失致死傷罪で起訴された