wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

憲法学習会レジュメ(2013年10月・60分ヴァージョン)

 今晩(2013年10月20日)配信した「メルマガ金原No.1518」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
憲法学習会レジュメ(2013年10月・60分ヴァージョン)
 
 昨年(2012年)は一度もなかった憲法学習会の講師依頼が、今年は非常に増えているということは、以前にも何度か書いたことがあると思います。
 特に参議院議員選挙直前の6月には、週末ごとに県内各地を飛び回っていましたが、選挙が終わった後しばらく小休止していました(青年法律家協会和歌山支部として3回連続の憲法学習会を開催したりはしていましたが)。
 
 季節が移り、臨時国会も召集されて「危険法案」が目白押しという状況を前にして、再び学習会講師活動の再開です。今のところ、10月から11月にかけて3回予定しています。
 
 ところで、「学習会のレジュメを書いていると、メルマガの原稿を書いている時間がくなる」「そこでレジュメをメルマガで配信する」ということは、以前にも「宣言」(?)させてもらったところです。
 その見本は以下のとおりです。
 
「あらためて“9条事始め” 前編」
「あらためて“9条事始め” 中編」
「あらためて“9条事始め” 後編」
 
日本国憲法『第10章 最高法規』を読む 前編」
日本国憲法『第10章 最高法規』を読む 後編」
 
「憲法学習会用標準レジュメ(2013年6月版) 前編」
「憲法学習会用標準レジュメ(2013年6月版) 中編」
「憲法学習会用標準レジュメ(2013年6月版) 後編」
 
 今晩ご紹介するのは、来週の水曜日(2013年10月23日)、「和歌山法律関連働組合」の学習会でお話するために作ったレジュメです。法律事務所や司法書士事務所の事務員さんなら、憲法の話を聴く機会も多いのではないか、と一般の方は思われるかもしれませんが、世話役の方から伺ったところでは、普通の事務員さんは、憲
法について話を聴いたり勉強したりする機会などまずない、ということでした。
 そこで、レジュメの構成についても、学校を卒業して以来、憲法について勉強したことがいという前提で考えることにしました。
 また、主催者からは、私の話が60分で、その後質疑応答と意見交換を予定してるということでしたので、1時間で話せる内容にしなければなりません。
 そこで書いてみたのが以下のようなレジュメです。
 レジュメは何とかA4版で2枚に収まるようにしたかったので、意味が通じにくいところがあるかもしれません。そこで、若干の注(※)を付けて、私が過去に書いた参考記事にリンクをはっておきました。
 
 さて、次は「和歌山障害者・患者九条の会」の「憲法しゃべり場」のために30分ヴァージョンを考えよう。
※参考「予告11/10『憲法しゃべり場』に集いませんか(和歌山障害者・患者九条の会)」
 

 
       憲法の危機と向き合うために
 
             弁護士 金 原 徹 雄
 
【本日のお話の構成】
1 はじめに~憲法を学ぶために
2 憲法は何のためにあるのか~立憲主義ということ
3 自民党「日本国憲法改正草案」の問題点~あり過ぎて何を話せばよいのか
4 集団的自衛権行使を認めてはいけない~広汎な世論の盛り上がりが日本を救う
5 終わりに~様々な「危機」に立ち向かうために
 
1 はじめに
 皆さんは「日本国憲法」の全条文を読んだことがありますか?
 事務所にある模範六法や有斐閣六法の冒頭にももちろん載っていますし、インタ
ネットでも読めます。
 でも、「自分自身」の「日本国憲法」の本を持ち、おりに触れて読むのも良いと思い
ます。2冊ご紹介します。
 小学館『日本国憲法』 500円+税
 講談社学術文庫日本国憲法 新装版』 300円+税
※参照「読むためのテキスト『日本国憲法』2種類(小学館&講談社学術文庫)のご紹介」
 
2 憲法は何のためにあるのか
① 憲法とは何か
 「規範」とは何か?
 「法」とは何か?
 「法律」とは何か?
 「憲法」とは何か?
② 立憲主義はどのように教えられてきたか
※参照「『あたらしい憲法のはなし』と“立憲主義”(運動の再構築のために)」
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/30258811.html
③ 立憲主義の危機→自民党改憲案をじっくり読めば「危機」の実態が一目瞭然
 
3 自民党「日本国憲法改正草案」の問題点
 あまりに「あり過ぎて」どこが問題点かを指摘すること自体「困難」ですが、そうも言
いられないので・・・。
① 立憲主義の否定
 10箇所に及ぶ新たな「義務」規定の追加
 端的には第10章「最高法規」を見よ。
※上記「「日本国憲法『第10章 最高法規』を読む」参照
② 自民党の考える憲法は明治憲法よりも軍人勅諭や教育勅語に近い
 例)「家族は互いに助け合わなければならない」
※参考「憲法24条と自民党改憲案、そして映画『ベアテの贈りもの』」
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/26943432.html
③ 恒久平和主義を捨て去りどこでも戦争のできる国へ
④ 全ては「国家」のために
 前文を是非何度も読み比べて欲しい。
 13条 「個人」→「人」
「公共の福祉」(日本国憲法)と「公益及び公の秩序」(自民党案)
※60分ヴァージョンでは、自民党改憲案批判は相当はしょらざるを得ません。
参考
「マガ9学校 第28回 伊藤真さん『立憲主義と民主主義~主権者って何する人~?』」
日本国憲法と自民党改正草案の“前文”を読み比べてみましょう 前編」
日本国憲法と自民党改正草案の“前文”を読み比べてみましょう 後編」
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/23249743.html
  
4 集団的自衛権行使を認めてはいけない
① 解釈改憲に向けた動き
 第2次「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」設置
 内閣法制局長官に内部昇格の慣例を破って法制局勤務経験のない外交官を任
② 立法改憲に向けた動き
 2012年7月 自民党総務会「国家安全保障基本法案(骨子)」了解
 当初、議員立法でと言われていたが、近時は公明党を説得して閣法でと言われて
る。
③ 国連憲章上、戦争行為を「合法」と主張できる3類型
ⅰ)安全保障理事会の承認(国連憲章42条等) 
ⅱ)個別的自衛権の行使(国連憲章51条) 
ⅲ)集団的自衛権の行使(同上)
④ 集団的自衛権とは何か 
 「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていな
にもかかわらず、実力をもって阻止すること」(1972年10月14日田中角栄内閣)
→この定義は「間違い」ではないが、今、集団的自衛権を議論するための枠組みとし
は甚だ不十分
※参考集団的自衛権の『定義』について」
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/30719436.html
⑤ イラク戦争を想起せよ!
 イラク戦争で日本(自衛隊)は何をし、何をしなかったか?
 イラク戦争では、米国以外にも多くの国が参戦して戦死者を出した。イギリス(3桁)、
ポーランド、スペイン、イタリア、ウクライナ、ブルガリア(2桁)等。
 これらの国は、「何を根拠」に参戦したのか?
もしも当時、日本が「集団的自衛権行使を容認」していたら、自衛隊は何をしてい
か?
⑥ 「尖閣」と集団的自衛権は(基本的には)関係ない
⑦ 日本の今後のあり方を根本から決定付ける「集団的自衛権
   
5 終わりに
○危機は深く、大きく、そして間近に迫っている。その認識を持つことが重要。
○その認識をいかに広めていくかがとりわけ重要。
○そのためには、「理」と「情」の双方が兼ね備わっていなければ効果は薄い。
○「理」は「学習」によって身につけることができる。
○「情」は「学習」では身につかない。「想像力」によってこそ説得力を持った訴えがで
る。
○例えば「集団的自衛権」。「これを認めなければ国が守れない」という主張に対し
どう答えるかを考える際、どこに「視点」を定めるか、ということが非常に大切である。さんならどうだろう?もしも自分の夫や兄弟や子どもが自衛隊員だったとして、「想像力」を精一杯発揮して「集団的自衛権」を考えてみて欲しい。今までとは全く違った光景が目の前に現れるはず。
○「情」「理」兼ね備えた説得のために有用なDVDを2本ご紹介する。
『9条を抱きしめて~元米海兵隊員アレン・ネルソンが語る戦争と平和~』(50分/1000円)
  『伊藤真弁護士/憲法ってなあに?憲法改正ってどういうこと?』(55分/500円) 
※参考「憲法しゃべり場in紀南ピースフェスタ2013(和歌山県田辺市)」
 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/31163486.html
○状況は大変厳しいけれど、決して「あきらめない」ことが一番重要。
※参考「第2回和歌山県「9条の会」交流集会(私が話したこと)」