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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

青法協和歌山支部憲法連続講座第2回「政府はなぜこれまで集団的自衛権を認めてこなかったのか」を開催しました(10/15)

 今晩(2014年10月16日)配信した「メルマガ金原No.1880」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
青法協和歌山支部憲法連続講座第2回「政府はなぜこれまで集団的自衛権を認めてこなかったのか」を開催しました(10/15)

 去る9月29日の第1回に続き、昨晩(10月15日)、和歌山ビッグ愛801・802会議室において、青年法律家協会和歌山支部が主催する
「青法協憲法連続講座~深めよう集団的自衛権~」の第2回が開かれましたので、その模様を簡単にレポートします。
 なお、第1回の模様は以下のブログをご参照ください。
 
 
 今年、青年法律家協会和歌山支部が集団的自衛権をテーマに3回連続講座をやろうということになり、企画PTで検討した結果、以下のように各回の内容を割り振ることにしました。
 
第1回 集団的自衛権ってなあに?
第2回 政府はなぜこれまで集団的自衛権を認めてこなかったのか
第3回 集団的自衛権閣議決定の問題点を知ろう
 
講師・海堀崇会員 第1回で国連憲章での集団的自衛権の位置付けや国際司法裁判所の判断(ニカラグア事件)の紹介、実際の集団的自衛権行使事例(国連安全保障理事会への報告事例)の検討などを行ったことを踏まえ、第2回では、いよいよ日本国憲法集団的自衛権の関係についての政府見解の変遷を丁寧にたどりながら、これまで政府が、集団的自衛権の行使は憲法上認められないという一線を守り続けてきたのは何故か?ということを考えるのがミッションということになります。
 
 今回、前半の基調報告を担当したのは海堀崇会員(司法修習新63期)でした。
 まずは、そのレジュメの構成をご紹介します。
 
第1 憲法と条約との関係
第2 日本国憲法恒久平和主義
 1 日本国憲法における恒久平和主義
 2 憲法9条の規範構造
 3 徹底した恒久平和主義の意義
第3 戦後の流れ(資料参照)
第4 まとめ
 
 もしも、私が個人的に集団的自衛権についての学習会講師を頼まれ、講演1時間、質疑応答30分というスケジュールを示されたら、このセクションは、いきなり「自衛隊は何故合憲なのか?(と政府は説明してきたか)」というところから入り、次に1972年見解(参議院決算委員会に田中角栄内閣が送付した「資料」)を詳しく説明するということでひとまず説明終わり(ここまでで15分)ということにするでしょうね。
 しかし、ここが青法協憲法連続講座の特色(良いところ?)なのですが、重要論点について、出来るだけ原理に遡るとともに、歴史的経緯も詳しく跡づけるという解説をするだけの時間が講師に与えられているので、それだけ講師に指名された者の負担は大変なのですがね。
 
会場風景(第2回) 実は、昨日海堀さんが用意したレジュメ自体はA4版4ページだったのですが、それとは別に、A4版10ページの資料がついていました。「集団的自衛権に関する政府解釈の流れ」と題するこの資料は、様々な文献を参照・引用しながら、戦後の「憲法自衛権」をめぐる政府解釈が、どのような政治情勢を背景として変遷してきたのか、そして、その変遷にもかかわらず、終止「維持」されてきたものは何だったのかということを、まずは海堀さん自身が理解しようとして(時間をかけて)作成したのだと思います。

 昨日の講演でも、この資料をたびたび引用しながら解説していましたが、時間の都合もありますので、参加者の方もその場ではじっくり目を通す余裕はなかったでしょう。しかしこの資料は、自
宅に持ち帰り、もう一度最初から通読することによって価値を増してくると思います。
 そこで、海堀さんにお願いして、この資料の文字データと参考文献一覧を送ってもらいましたので、このレポートの末尾にそのまま資料「集団的自衛権に関する政府解釈の流れ」(海堀崇弁護士作成)を添付することとしました。是非ご活用ください。
 
海堀会員+畑純一元支部長 なお、後半は、いつものように質疑応答タイムでした。昨晩は、講演が予定より長引いたため、質疑応答の時間は約50分でした(いつもは1時間以上やっている)。もっとも、昨日はいつもより参加者が少なめ(40人余り)でしたので、この程度の質疑応答時間でちょうど良かったのですが。
 後半では、前半の講師・海堀崇会員に加え、回答者として畑純一元支部長(司法修習4
4期)が加わりました。
 以下に、会場からの質問のいくつかを書きとめておきます。
 
○これまでの政府見解では、「いわゆる」集団的自衛権という表現をしていたが(例えば、1972年見解)、7月1日閣議決定では、「いわゆる」という言葉は使われていないようだが、その意味内容が変わったのだろうか?
○新3要件では、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」など厳しい(と政府は言っているようだが)要件が課されることになったので、日本が
攻撃を受けた場合、かえって従来よりも自衛権の発動が難しくなるということはないのか?
○安倍首相は「国民を守り抜く」などとたびたび言っているが、過去の歴史を振り返れば「軍隊
は国民を守らない」ということこそ真理だと思うがどうか。
○数十年にわたって認めてこなかった集団的自衛権の行使を、何故今になって認めることにな
ったのか、その政治的背景はどう理解すれば良いのか?
○今回の閣議決定について、アメリカの意向(要請、指示)はどの程度影響していると考える
べきか?
○このような集団的自衛権についての連続講座を受講することはためになるとは思うが、これを周囲に広める自信はない。たとえば、憲法9条ノーベル平和賞をとか、なかにし礼さんの詩などは、普通の国民にも理解してもらいやすいと思う。今後の我々の運動はどのような方向を目指すべきだとお考えか?
 
 皆さんなら、以上の質問にどう答えるでしょうか?もちろん、私なりの意見はありますが、それをここで書く余裕はありません。
 1人1人が、「自分はこう思う」という意見を持てるように、様々なことを学び、考えていただければと思います。
 
 この集団的自衛権を考える連続講座も、次回(第3回)が最終回となります。是非、万障お繰り合わせの上ご来場をお願いします。
 
日 時 2014年10月31日(金)午後6時30分~
会 場 和歌山ビッグ愛801・802会議室
テーマ 集団的自衛権閣議決定の問題点を知ろう
担当者 
 前半(基調報告) 浅野喜彦会員
 後半(質疑応答) 浅野喜彦会員、由良登信会員(元支部長)
入場無料、予約不要
 
 それでは、最後に海堀崇弁護士による労作「集団的自衛権に関する政府解釈の流れ」を掲載します。是非一度通読してみてください。
 

          集団的自衛権に関する政府解釈の流れ
 
                        弁護士 海 堀   崇
 
日本国憲法制定期ころ】集団的自衛権の解釈を明確にする政府解釈はない
昭和20年 終戦
昭和21年5月 新憲法案審議
昭和21年6月26日 吉田茂首相
戦争放棄に関する規定は,直接には自衛権を否定していないが,第9条第2項において一切
の軍備と国の交戦権を認めない結果,自衛権の発動としての戦争も,交戦権も放棄した」
 集団的自衛権の議論はなかったが,自衛権は否定されないとの解釈
昭和21年11月 日本国憲法公布
昭和25年2月 中曽根康弘議員の集団的自衛権というものを総理大臣は認めるかとの
質問に対して,吉田茂首相は集団的自衛権の実際的な形で見た上でなければ答えられないと答弁
 
朝鮮戦争講和条約時期】
昭和25年6月 朝鮮戦争勃発(昭和28年7月停戦)
昭和25年8月 警察予備隊
第1条(目的) この政令は,わが国の平和と秩序を維持し,公共の福祉を保障するのに必要な限度内で,国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うため警察予備隊を設け,その組
織等に関し規定することを目的とする。
昭和26年2月 西村外務省条約局長
「1つの武力攻撃が発生した場合に,その武力攻撃によって自国の安全に対する被害を受ける国が数多くある場合には,その数多くの国はおのおの国際法上当然自衛権を行使し得るわけであるが,これらの国が自衛権をいわゆる共同して行使するという場合,そこに集団的自衛権があ
るというものがあると解釈するのが一番穏当かと思われる」
 集団的自衛権について,国連憲章の提案者が国家固有の権利という観念で作ったと考えて
いるとも答弁
 集団的自衛権は国家固有の権利であること,集団的自衛権は個別的自衛権の共同行
使と捉えている
昭和26年9月 サンフランシスコ平和条約
第5条 (a) 日本国は,国際連合憲章第二条に掲げる義務,特に次の義務を受諾する。
 (ⅰ) その国際紛争を,平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに平和を危うくしない
ように解決すること
 (ⅱ) その国際関係において,武力による威嚇又は武力の行使は,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも,また,国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるもの
も慎むこと。
 (ⅲ) 国際連合が,憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え,
且つ,国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと。
(b) 連合国は,日本国との関係において国際連合憲章第二条の原則を指針とすべきことを確
認する。
(c) 連合国としては,日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結
することができることを承認する。
昭和26年11月 西村熊雄外務省条約局長
「日本は憲法第9条によって厳として軍備をもたない,また交戦権を行使しないという国家の性格を明らかにしている。いかなる要請が国連ないしアメリカ政府から出ても,日本としては,この憲法を崩すようなことは断じて許されない。」「日本は独立国なので,集団的自衛権も個別的自衛権も完全に持つ。しかし,憲法第9条により,日本は自発的にその自衛権を行使する最も有効な手段である軍備を一切持たないことにしている。だから,我々はこの憲法を堅持する限り
は,御懸念(警察予備隊を国外の軍事行動に使用すること)のようなことは断じてやってはいけないし,また他国が日本に対してこれを要請することもあり得ないと信ずる。
 …我が国が集団的自衛権を有すること明示
昭和27年4月 (旧)日米安全保障条約
前文 平和条約は,日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有するこ
とを承諾し,さらに,国際連合憲章は,すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を
有することを承認している。
 これらの権利の行使として,日本国は,その防衛のための暫定措置として,日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを
希望する。
昭和27年7月 保安庁法 保安隊創設
第4条(保安庁の任務) 保安庁は,わが国の平和と秩序を維持し,人命及び財産を保護す
るため,特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し,運営し,及びこれに関する事
務を行い,あわせて海上における警備救難の事務を行うことを任務とする。
第61条(命令出動) 内閣総理大臣は,非常事態に際して,治安の維持のため特に必要が
あると認める場合には,保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。
昭和29年5月 日米相互防衛援助協定,自衛隊法,防衛庁設置法の審議
下田武三外務省条約局長
「平和条約でも,日本国の集団的,個別的の両者の自衛権というものは認められているが,しかし,憲法の観点から言えば,憲法が否認していないと解すべきものは,既存の国際法上一般に認められた固有の自衛権,つまり,自分の国が攻撃された場合の自衛権であると解すべきである。集団的自衛権,これは換言すれば,共同防衛又は相互安全保障条約,あるいは同盟条約ということであって,つまり,自分の国が攻撃されてもいないのに,他の締結国が攻撃された
場合に,あたかも自分の国が攻撃されたと同様にみなして,自衛の名において行動するということは,一般の国際法からはただちに出てくる権利ではない。それぞれの同盟条約なり共同防衛条約なり,特別の条約があって初めて条約上の権利として生まれてくる権利である。ところが,そういう特別な権利を生み出すための条約を日本の現憲法下で締結できるかというと,できない。…日本自身に対する直接の攻撃あるいは急迫した攻撃の危険がない以上は,自衛権の名において発動し得ない。」
 憲法が認めるのは個別的自衛権のみで集団的自衛権の行使を認めないと理解
昭和29年6月 参議院自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」
「本院は,自衛隊の創設に際し,現行憲法の条章と,我が国民の熾烈な平和愛好精神に照
らし海外出動はこれを行わないことを,茲に更めて確認する」
昭和29年6月 自衛隊
第3条(自衛隊の任務) 自衛隊は,わが国の平和と独立を守り,国の安全を保つため,直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし,必要に応じ,公共の秩序の
維持に当るものとする。
昭和31年12月 国連憲章効力発生(日本国)
第51条 この憲章のいかなる規定も,国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合に
は,安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間,個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当つて加盟国がとつた措置は,直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また,この措置は,安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲
章に基く権能及び責任に対しては,いかなる影響も及ぼすものではない。
 
【安保改定期】
昭和34年3月 林修三内閣法制局長官
「外国の領土に,外国を援助するために武力行使を行うということの点だけにしぼって集団的自衛権ということが憲法上認められるかどうかということをおっしゃれば,それは今の日本の憲法に認
められている自衛権の範囲には入らない、こういうふうに言うべきであろうと思います。」
昭和35年1月 新日米安全保障条約
前文 日本国及びアメリカ合衆国は,両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し,並びに民主主義の諸原則,個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し,または,両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し,並びにそれぞれの国における経済的な安定及び福祉の条件を助長することを希望し,国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和の内に生きようとする願望を再確認し,両国が国際連合憲章で定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し,両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し,相互協力及び安全保
障条約を締結することを決意し,よつて,次のとおり協定する。
第5条 各締約国は,日本国の施政の下にある領域における,いずれか一方に対する武力攻撃が,自国の平和及び安全の危うくするものであることを認め,自国の憲法の規定及び手続に従つ
て共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
昭和35年2月 林修三内閣法制局長官
「自分だけで守る力が不足であるから他の国の協力を得て守るということは集団的自衛権の発動
ではない。まさに個別的自衛権の発動である。」
昭和35年3月 岸信介首相
「いわゆる集団的自衛権というものの本体として考えられておる締結国や、特別に密接な関係に
ある国が武力攻撃をされた場合に,その国まで出かけて行ってその国を防衛するという意味におけ
る、私は集団的自衛権は,日本の憲法上は持っていない、かように考えております。」
集団的自衛権という内容が最も典型的なものは,他国に行ってこれを守るということでございます
けれども,それに尽きるものではないとわれわれは考えておるのであります。」
同年同月 林修三内閣法制局長官
「たとえば,現在の安保条約におきまして,米国に対して施設区域を提供いたしております。あるいは,米国と他の国の侵略を受けた場合に,これに対してあるいは経済的な援助を与えるというようなこと,こういうことを集団的自衛権というような言葉で理解すれば,こういうものを私は日本の憲法
は否定しておるものとは考えません。」
 …「集団的自衛権」の行使が完全に不可能なわけではないとの考え
 
【1960年代から1970年代】
昭和43年8月 佐藤栄作首相
「アメリカの基地といっても,日本の領海,領土,領空を侵害しないでそういう攻撃はないと思っている。その場合には,私は自衛の権利がある,これは日本本土に対する攻撃をされたように考えるべ
きではないかと考える」
 在日米軍基地への攻撃に対して個別的自衛権を合憲的に発動できるとの考え
昭和44年3月 高辻正己内閣法制局長官
「我が国と連帯的関係が仮にあるとしても,他国の安全のために我が国が武力を用いるというのは
憲法第9条の上では許されないだろう。…我が国が集団的自衛権の恩恵を受けている受けているのはともかくとして,我が国が他国の安全のために兵力を派出してそれを守るということは憲法
9条のもとには許されないだろうというのが我々の考え方である」
 …海外派遣が集団的自衛権の本質であるとの考え,他国の集団的自衛権に基づく軍事的行
為の利益を受けるのは問題がない
昭和47年10月 決算委員会提出資料(田中角栄内閣)…安保条約前文の集団的自衛権規定と政府解

「政府は,従来から一貫して,わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても,国権の発動としてこれを行使することは,憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許
されないとの立場に立っているが,これは次のような考え方に基くものである。
 憲法は,第9条において,同条にいわゆる戦争を放棄し,いわゆる戦力の保持を禁止しているが,前文において「全世界の国民が…平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し,また,第13条において「生命・自由及び幸福追求に対する国民の権利については,…国政の上で,最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも,わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって,自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。しかしながら,だからといって,平和主義をその基本原則とする憲法が,右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって,それは,あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫,不正の事態に対処し,国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置として,はじめて容認されるものであるから,その措置は,右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。そうだとすれば,わが憲法の下で,武力行使を行うことが許されるのは,わが国に対する急迫,不正の侵害に対処する場合に限られるのであって,したがって,他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内
容とするいわゆる集団的自衛権の行使は,憲法上許されないといわざるを得ない。」
 集団的自衛権を包括的・一般的な武力行使の態様と捉えて憲法上行使はできないとの考え
 
【1980年代】
米ソ冷戦継続
昭和55年1月 大平正芳首相 
リムパックへの海上自衛隊の参加が集団的自衛権を前
提とするものとの質疑に対し
「共同演習参加を通じて,戦術技術の訓練,向上を図ることにすぎないのであって,それ以上の
ものとは考えていない。」
昭和56年5月 稲葉修衆議院議員提出の質問主意書に対する答弁書鈴木善幸内閣)
国際法上,国家は,集団的自衛権,すなわち,自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利を有している
ものとされている。
 我が国が,国際法上,このような集団的自衛権を有していることは,主権国家である以上,当然であるが,憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,そ
の範囲を超えるものであって,憲法上許されないと考えている。」
 …政府の集団的自衛権概念の定義の確立。以降,議論の中心は各ケースが集団的自衛権
に該当するか,憲法違反かという議論へ
昭和56年6月 角田礼次郎内閣法制局長官
「個別的自衛権は持っているが実際に行使するに当たっては,非常に幅が狭い。ところが,集団
自衛権については,全然行使できないのでゼロである。」
昭和58年2月 角田礼次郎内閣法制局長官
集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり,それを明確にしたいということであ
れば,憲法改正という手段を当然とらざるを得ないと思う。」
 …政府の集団的自衛権の概念が確立
1000カイリシーレーン防衛政策
中曽根康弘首相
「日本が武力攻撃を受けた場合に,日本が救援,来援するアメリカの艦船等に対して,その日本
に対する救援活動が阻害される場合に,日本側がこれを救い出すということは,領海においても公
海においても,憲法に違反しない個別的自衛権の範囲内である。」
昭和61年3月 加藤紘一防衛庁長官 P3C対潜哨戒機などアメリカ軍への情報提供
「一般的に情報交換というものはいわゆる集団的自衛権の行使を禁ずる原則に背馳するものだと
は思わない。」
昭和63年4月 斎藤邦彦外務省条約局長 在日米軍経費の日本側負担が有事の際
にアメリカ軍の戦闘行為の費用になるおそれがあることについて
憲法上認められていない集団的自衛権の行使は,我が国による実力の行使を伴うのであるので,実力の行使に当たらない便宜供与はそのような集団的自衛権の行使に当たらないと考えている。」
 
【1990年代】
冷戦終結,国連活動への協力
平成2年10月 中山太郎外相

「参加に至らない協力については,国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであっても,その
武力行使と一体とならないようなものは,憲法上許される。」
平成3年 湾岸戦争
平成3年9月 工藤敦夫内閣法制局長官 PKFへの参加について

「仮に全体として平和維持隊などの組織が武力行使に当たるようなことがあっても,我が国として
はみずから武力行使はしない,また当該平和維持隊などの組織とそれが行う武力行使と一体化することはないということであって,我が国が武力行使をするという評価を受けることはない。したが
って,憲法前文や9条の平和主義や武力行使の禁止に反するようなことはない。」
平成4年6月 PKO等協力法成立
平成8年5月 大森政輔内閣法制局長官 どのような条件であれば多国籍軍の武力行
使と一体化するかについて
武力行使と一体になるような行動かどうかということによって,憲法上の問題は決せられるべきものである。…各国軍隊による武力の行使と一体となるような行動に該当するか否かは,①戦闘行動の地点と当該行動の場所との地理的関係,②当該行為の具体的内容,③各国軍隊の武力行使の任にある者との関係の密接性,④協力しようとする相手方の活動の現況等,の諸
般の事情を総合的に勘案して個々具体的に判断されるべきである。」
平成9年10月 橋本龍太郎首相
「武器弾薬の輸送それ自体は武力の行使には該当せず,また戦闘地域と一線を画する場所に
おいて行うという前提にかんがみれば,アメリカ軍との武力の行使の一体化の問題は生じない。」
平成11年1月 小渕恵三首相 周辺事態安全確保法の審議の中で
「後方地域支援は,米軍に対するもののみであるが,これ自体は武力の行使との一体化の問題が生じることは想定されず,…集団的自衛権の行使につながるものではない。」
 
【2000年~2009年】
平成13年5月 土井たか子議員の質問主意書に対する答弁書小泉純一郎内閣)

「政府は,従来から,我が国が国際法集団的自衛権を有していることは,主権国家である以上当然であるが,憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,その範囲を超えるものであって,憲法上許されないと考えてきている。憲法は我が国の法秩序の根幹であり,特に憲法第9条については過去50年余にわたる国会での議論の積み重
ねがあるので,その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考える。他方,憲法に関する問題について,世の中の変化も踏まえつつ,幅広い議論が行われることは重要であり,集団的自衛権の問題について,様々な角度から研究してもいいのではないかと考えている。」
平成13年9月 同時多発テロ
平成19年6月 自衛隊法改正(防衛庁防衛省
 
【2009年~】
平成21年9月 民主党中心の政権へ交代
平成21年11月 鳩山由紀夫首相 沖縄問題との関連で

「アメリカ軍に沖縄を中心として基地を貸しているということ自体が集団で自衛をしている,防衛をしている発想に,当然広く考えればなるわけであろうかと思う。しかし,一般に議論されている集団的自衛権というものは必ずしもそうでないことも理解している。…同盟関係を結んでいる一方のアメリカの本土が,例えば,何らかどこかの国によって攻撃を受けたときに,果たして日本がそれに対して武力行使というものを行ってよいかどうかという発想がある。そういった発想が…憲法第9条の中で日本がとるべきではないと言っている集団的自衛権の発想だと思っており,その意味では,私は,現在の憲法第9条の解釈をこの内閣において現在のところ変えるつもりは
ない。」
 集団的自衛権の政府解釈は政権交代によっても変更されなかった
 
【参考文献】
憲法第9条集団的自衛権」(国立国会図書館政治議会課憲法室・鈴木尊紘)(「レファ
レンス」平成23年11月号p.31~)
「政府の憲法解釈」(阪田雅裕編著・有斐閣
基本法コンメンタール憲法」(小林孝輔・芹沢斉編・日本評論社
衆議院議員稲葉誠一君提出「憲法国際法集団的自衛権」に関する質問に対する答
弁書」(昭和56年5月29日受領答弁第32号)
「安全保障の法的基盤に関する従来の見解について」(内閣官房副長官補・平成25年11
月13日安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(第4回会合)資料)
集団的自衛権行使を容認する閣議決定違憲・違法性について」(参議院議員小西洋
之・2014年6月27日(2014年6月30日改訂))
集団的自衛権解釈の再考と日本国憲法」(西川吉光、国際地域学研究第11号2008年3月、p.55~73)