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ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2015-2016」(第1稿)

 今晩(2016年2月4日)配信した「メルマガ金原No.2355」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2015-2016」(第1稿)

 私が「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の事務局長を務めていたのは、2006年1月から2012年1月までの丸6年間でしたが、就任2年目以降は、毎年1月開催の総会に向けて1人で議案書を書いて
いました。
 本来なら、事務局会議でも招集して協議すれば良かったのでしょうが、数十人しか会員がおらず、その内実働会員は半分以下という小さな所帯のことでもあり、会議を招集する手間をかけるくらいなら自分で書いた方が早いということで、総会の間際に短時間で書き上げていました(本当は良くないですけどね)


 ところで、事務局長を退任した後、「これで楽が出来る」と思ったのもつかの間、私も運営委員に名前を連ねていた地元9条の会で、総会議案書を運営委員が分担執筆することになり、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」事務局長時代に書いていたものと同じだろうということでしょうが、私は「情勢分析」のパートを割
り当てられることになりました。
 そして、自分に割り当てられたパートの議案書を書いているとメルマガ(ブログ)を書く時間がなくなり、苦し紛れに、まだ確定もしていない草稿を、メルマガ(ブログ)に掲載するということがここ2年続いています。
 
 
 総会議案書の完成稿では、他のパートとのバランスもあることなので、もっと切り詰める必要がありますし、十分に練れていない部分も多く、このような文章を公開して良いのだろうか?ということはもちろんあるのですが、一昨年、昨年と私が書いた「情勢分析」(第1稿)を読み返してみると、「戦後最も危険な政権であることが誰の目にも明らかとなった第2次安倍政権」(2年前の議案書)と私たちがどのように対峙してきたのか、そして、その結果がどうなったのかということを鳥瞰できるということに気がつきます。
 非常に苦い結論に直面せざるを得ないとしても、このような振り返りを可能とするのなら、生煮えの草
稿であっても、自分の考えを記録しておくことも無意味ではないという気がします。
 以下の文章を読んだからといって、今、読者の皆さまのお役に立つことはないかもしれませんが、1年
後、2年後に振り返った時、「ああそうだった」とうなずかれる方が少しはいるだろうと思いながら、ある地域9条の会「総会議案書」の内「情勢分析2015-2016」(第1稿)を掲載します。
 

          ある地域9条の会 総会議案書
 
(情勢分析)
1 政権が憲法秩序を破壊するクーデターを行った
 2014年7月1日、安倍晋三自民・公明連立政権は、長年にわたって歴代内閣が維持し続けてきた、日本国憲法の下では集団的自衛権は行使できないという政府解釈を覆し、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限
度の実力を行使することは」「憲法上許容される」などとした新たな閣議決定を行った。
 2015年5月15日、上記閣議決定を具体化するためのいわゆる安保関連法案(新法1、10本の法律の一括改定法1の2法案)が衆議院に提出され、同年7月16日に衆議院で、9月19日未明に参議院で、賛成多数により可決され成立した(9月17日の参議院特別委員会での採決が存在したのかには疑義
もあるが)。
 圧倒的に多数の憲法学者、日本弁護士連合会を始めとする全ての弁護士会、元内閣法制局長官、元最高
裁長官らが一致して安保関連法案を違憲と断じた理由は概ね以下の3点に集約される。
[1]集団的自衛権の行使は憲法9条に違反する。
[2]重要影響事態における後方支援及び国際平和共同対処事態における協力支援は憲法9条1項が禁じ
た「武力の行使」にあたるかその恐れが極めて大きい。
[3]海外での武力行使を容認する安保法制は内閣の権限を定めた憲法73条に違反する。
 安倍政権は、内閣法制局長官集団的自衛権容認論者にすげ替え、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、ついに違憲の法律を数の力で押し通して成立させることにより、法秩序の連続性を破壊してしまった。このような行為を法学的には「クーデター」と呼ぶしかない(石川健治東京大学教授)。世界史的に見れば別に珍しいことではないが、私たちは、まさにクーデター政権の下で生きることを余儀なくされている国民なのだという自覚が必要である。
 
2 9条だけではない政権による憲法無視の数々
 政権によって無視された憲法規範は9条だけではない。そのいくつかを列挙すれば以下のとおりである

(1)2015年10月21日、憲法53条に基づき、野党5党が衆参両院の各4分の1以上の議員の連名によって臨時会の召集を求める請求を行ったにもかかわらず、常会が召集されるまで2か月以上の期間
があったのに、安倍内閣は憲法53条の規定を無視し、臨時会の召集を決定しなかった。
(2)2015年11月6日、放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会が、NHK総合テレビ「クローズアップ現代」等についての調査結果を公表し、総務大臣が、放送法を根拠に番組内容を理由とした行政指導(文書での厳重注意)を行ったことに対し、放送法が保障する「自律」を侵害する行為で「極めて遺憾である」と指摘したのに対し、同月10日、高市早苗総務相安倍晋三首相が、衆議院予算委員会(閉会中審査)において、放送法総務相が放送局に対して行政指導を行う権限があると主張
したが、これは、報道の自由を含む表現の自由を強く保障した憲法21条の趣旨を没却するものである。
(3)2016年1月4日に召集された第190回常会冒頭から、改憲への意欲を総理大臣として公然と語る安倍首相の態度は、憲法99条の公務員の憲法尊重擁護義務の存在を全く無視しているとしか考えられない。
 
3 憲法よりも国会よりも沖縄よりもアメリカが大事
 安保関連法案が国会に提出される前の2015年4月27日、ニューヨークでの「2+2」において、
新たな日米ガイドライン(第3次)が合意されたが、その内容は後に日本の国会に提出された安保関連法案で具体化することになるものであった。さらに、その2日後に米国連邦議会上下両院合同会議で演説した安倍首相は、夏までの法案の成立を米国の議員に向かって「約束」した。まだ、閣議決定もしておらず、国会に提出もしていない法案についてである。
 さらに、数々の選挙で辺野古新基地建設反対の意思を示し続けた沖縄の民意を踏みにじり、米海兵隊
基地建設工事を強行することに何のためらいも見せないことも、安倍政権の顕著な特徴である。
 そもそも、成立を強行した安保関連法制とは、従来の後方地域という地理的制限や戦闘地域では活動しないという制限を撤廃し、世界中どこでも自衛隊に米軍のための後方支援(兵站)活動を行わせ、必要とあれば、(存立危機事態を認定して)米軍とともに自衛隊に戦争をさせることができるようにするというものであって、軍事面におけるアメリカへの従属をより広汎かつ強固にするものと評するしかないもので
ある。
 
4 明文改憲に向けた動向
 現在の衆参両院の議席状況は以下のとおりである。
[衆議院 定数475]
 自由民主党     291
 公明党         35
  与党計       326
 おおさか維新の会   13
  改憲政党計    339(議席占有率71.3%)
 その他         135
 欠員            1
[参議院 定数242]
 自由民主党     115(改選49)
 公明党         20(改選9)
  与党計       135(改選58)
 おおさか維新の会    7(改選2)
 日本のこころを大切にする党
      4(改選1)
  改憲政党計    146(改選61)(議席占有率60.3%)
 その他          96(改選60)
 欠員            0
 ※これまでの主張を参考に野党の一部を便宜上「改憲政党」としてカウントした。
 2016年1月4日に召集された第190回常会の冒頭から、明文改憲への意欲を隠そうともしない安倍首相であるが、その前提としては、上記のような議席状況がある。
 特に、民主党参議院議員59人の内、実に42人が今年改選期を迎える。もしも改憲政党の現職議員(61人)全員が議席を守ったと仮定すると、参議院の2/3(162人)を確保するためには、民主党などの野党から16議席を奪えば良いということになり、ここ数年の選挙の傾向(2013年参議院選挙で議席を得た民主党議員は17名しかいない)から考えて非常に現実性のある数字である。
 逆の面から言えば、今夏の選挙で改憲派が2/3を超える議席を獲得できなければ、3年後の参議院選挙で改憲派がこれ以上議席を増やすことは難しく(3年前に民主党が負け過ぎている)、「改憲のチャン
ス」が当面遠のく可能性が高い。
 日本会議神社本庁などが中心となって推進している「美しい日本の憲法をつくる1,000万人賛同署名」についても、有名神社の境内で初詣客に署名を呼びかけるなど、非常に活動が活発化しており、明ら
かに今年の参議院選挙後の国会による改憲発議を目指した動きである。
 現在のところ、まず緊急事態条項から具体的な改憲発議を目指すとされているが、それ自体危険極まりない内容を含んでおり、警戒を怠るわけにはいかない。
 
5 安保法制に反対する広汎な市民の活動(全国で、和歌山で)
 従来、様々な歴史的経緯から、なかなか統一行動をとることができなかった諸団体が、安倍政権の暴走を止めるために団結して統一行動をとるしかないということは、かねてから懸案であり続けていたが、まず反原発の行動で事実上の統一行動の実績が重ねられ、反安保法制の闘いにおいても、「戦争をさせない1000人委員会」、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」の3団体が「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を共同して結成し、戦争法反対の大きなうねりを起こす原
動力となったことは特筆すべきことであった。
 また、それ以外でも、SEALDs(自由との民主主義のための学生緊急行動)に結集した若い学生たちが、これまでにないユニークな運動の核となったこと、子育て世代の母親、父親たちが「安保関連法(案)に反対するママの会」を結成し、各地で積極的に発言したこと、「安全保障関連法(案)に反対する学者の会」も、急速に賛同者を増やし、学問研究の場から街頭に出て、市民とともに反対の声を上げ続けたこと、日本弁護士連合会をはじめ、全国すべての弁護士会が一致して安保法制反対のための行動に立ち上がったことなど、大きな共同のうねりを巻き起こすことができたことは、非常に重要であった。これは、今後
の安保法制廃止をめざす運動を構想するための前提となるものである。
 そして、このような共同の動きは、全国にやや遅れてではあったが、和歌山でも大きく結実した。
 7月12日に和歌山城西の丸広場で行われた和歌山弁護士会主催による「憲法違反の「安保法制」に反対する7・12和歌山大集会&パレード」には、様々な団体の協力も得て、県下各地から2500人が集まるという盛り上がりを見せた。また、9月13日には、「戦争をさせない和歌山委員会」と「憲法九条を守るわかやま県民の会」が「9.13 戦争法案を廃案に!みんなで総がかり行動in和歌山」を初めて共同で呼びかけるという画期的な動きに発展し、この動きは、以上2団体に加え、「弁護士の会」、「ママの会」、「和歌山大学有志の会」なども加わった9団体共同呼びかけによる集会&デモの開催に引き継がれている。
 
6 参議院選挙での勝利のために~野党共闘を求める市民の動き
 日本における憲法の危機はまことに深刻な状況であり、とりわけ上記「4 明文改憲に向けた動向」で述べたとおり、今年7月に実施される参議院選挙の結果次第では、明文改憲が具体的政治日程に上る可能
性が高い。
 そのような事態を何としても阻止すべく、野党共闘によって与党に対抗できる選挙態勢を作り上げよう
という市民を主体とした動きが、全国各地で湧き起こっている。
 そして、そのような動きを支援するため、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」「ミナセン(みんなで選挙)市民勝手連」が活発な動きを始めている。いまだ、野党統一候補の擁立が実現した選挙区はごく一部にとどまるが、今後急速に機運を盛り上げ、勝てる統一候補を擁立す
る選挙区を少しでも増やすことが必須の政治課題となっている。
 このような動きは和歌山でも起こっており、2015年12月24日、「憲法9条を守る和歌山弁護士
の会」など4団体を当初の賛同団体として、「安保法制の廃止を求める和歌山の会」が記者会見を開き、2016年7月の参議院選挙和歌山選挙区に、
 ① 先の国会で成立した安全保障関連法の廃止 
 ② 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の撤回               
 ③ 日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すこと
を確約しその実行を期待できる統一候補を擁立すること、そのために、野党各党とこの呼びかけに賛同する団体による合同会議を早急に開催することを県内各野党に要請する予定であることを公表し、同月28日までに、民主党日本共産党社民党維新の党の野党4党に上記申し入れを行った。その後、賛同団体、個人賛同者は急速に増えており、2016年1月30日には第1回の
「賛同団体・賛同者のつどい」を開催した。
 以上のような参議院選挙に向けた野党統一候補擁立のための活動とともに、現在、各団体が総力をあげて取り組んでいるのが「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が呼びかけている「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」である。
 安保関連法案の審議の過程で低下した内閣支持率が再び5割を上回ったという報道がなされる状況の下、安保法制の廃止を求める圧倒的な世論を「可視化」するためにも、2000万人署名を達成することの意義は極めて大きい。 
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ