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ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 前編

 2017年8月3日配信(予定)のメルマガ金原.No.2893を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月) 前編
 
 今年の3月終わりから、それまで私の「得意分野」でも「重点関心分野」何でもなかった「教育」、それも「家庭教育」について、考えざるを得ない事態となっています。
 その間の事情は、私がブログに書いた以下の4本の記事に書き留めてきました。
 
2017年3月29日
2017年6月28日
2017年7月4日
2017年7月27日
 
 上記のブログを読んで(読み返して)いただければ一番良いのですが、手短かに要約すれば、以下のようになるでしょうか。
 
自民党「日本国憲法改正草案」(2012年4月)第24条1項「家族は、互いに助け合わなければならない。」に代表されるように、いわゆる改憲派が、9条や緊急事態条項と並んで重点改憲目標としているのが「家族問題」である。
改憲派の家族感には、戦前に回帰しようという価値観(それを国民に押し付けようという意図)が濃厚に認められる。
〇そのことは、自民党が中心となって準備している「家庭教育支援法案」の内容にも反映している。
地方自治体レベルでは、法律を先取りする形で「家庭教育支援条例」を制定するところが増えつつある。
〇また、法律や条例の制定を待たずとも、各自治体の中には、国が推奨する「家庭教育支援チーム」を設置し、家庭訪問などを実施しているところも少なくない。
〇ちなみに、私の住む和歌山県は、小中学生のいる全家庭を訪問する家庭教育支援チームが活動していたり(湯浅町)、県庁所在地の和歌山市が、全国の政令市・中核市の先陣を切って家庭教育支援条例を制定するなど、「家庭教育支援」の「先進県」だったりする。
 
 以上の要約の最後に書いた地元の事情にあまりにも無知・無関心だったことを反省し、まことに遅ればせながら、「家庭教育」問題をフォローしなければと思い立ったという次第です。
 
 さて、今日から3回にわたってご紹介するのは、文部省が太平洋戦争開戦の5ヶ月後(1942年5月7日付)、文部次官通牒として、全国の各地方長官宛に発出した「戦時家庭教育指導ニ関スル件」(発社128号)で発表された「戦時家庭教育指導要項」です。
 この要項では、以下の5項目について、家庭教育指導の方向性を指示しています。
 
1 我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚
2 健全ナル家風ノ樹立
3 母ノ教養訓練
4 子女ノ薫陶養護
5 家生活ノ刷新充実
 
 「家庭教育支援法案」や「家庭教育支援条例」の思想的背景に、国策として推進された戦前の「家庭教育」への回帰志向があるのではないか?ということがよく論じられているようなのですが、自信をもって「そうだ」と言うためには、その前提として、戦前の「家庭教育」がどのようなものであったか、基本的なところから勉強しなければと思っていたところ、戦時中の「家庭教育」に関する基礎的文献の1つである上記「戦時家庭教育指導要項」を、東京の若手弁護士お2人が「超訳」したという報告が、私も登録している某メーリングリストになされ、早速、添付されていた「超訳」と「解説」を読ませてもらったところ、「これは多くの人に読んでもらうべきだ」と確信しました。幸い、訳者の大久保秀俊さん、久保木太一さん(いずれも東京の城北法律事務所に所属する若手弁護士)のお2人から、私のブログへの全文転載をご了解いただきました。大久保さん、久保木さん、ありがとうございました。
 
 ところで、せっかく「超訳」をご紹介するのですから、原文も一緒に読みたいですよね。けれども、戦前の行政文書の通例で、漢文読み下し調で、やたらと漢語、四字熟語が出てくる、原則として濁点、半濁点も句読点もない、というものですから、漢字に全部振り仮名でも振られていなければ、読んでみようという意欲もわかないかもしれないと思い、一念発起して、「原文に全部ルビを付けよう」と決意しました。
 大久保先生と久保木先生が「超訳」する際の底本とされたのは、2014年10月に刊行された奥村典子著『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』(六花出版)に掲載された原文(同書109~111頁)ということであり、しかも、お2人に「超訳」を勧めた仲里歌織弁護士が、必要あってその原文を文書ファイルに入力したデータがあるということで、仲里先生からそのデータをご提供いただけたおかげで、原文を一から入力していく手間を省くことができ、とても助かりました。なお、以下にご紹介する原文(『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版)は、仲里さんから提供いただいたデータを基に、あらためて同著に掲載された原文と照合し、私の責任で修正を加えたりしていますので、転記ミスがあれば、それは私の責任です。
 
 あとは、総ルビを振る作業です。これが一昔前なら、国語辞典や漢和辞典と首っ引きで調べる必要が生じたところでしょうが、幸い、今はインターネットの普及により、漢字を入力して検索すれば、代表的な「読み」を知ることは非常に容易になりました。
 もっとも、そう一々インターネットで読み方を調べた訳ではなく、「こう読むはずだ」という私の直感でルビを振った箇所の方が圧倒的に多いので、間違っている箇所があったらご容赦ください。
 ちなみに、私が大久保、久保木両弁護士による「超訳」を知った某MLに、「戦時家庭教育指導要項」(後にご紹介する奈良県立図書情報館版の)前文のルビ付き試案を投稿し、「漢字の読み方が間違っていないか?が不安です」という正直な感想を吐露したところ、ベテランの澤藤統一郎先生(毎日更新している「憲法日記」で有名)から、「未曾有」のルビは「みぞうう」でも間違いではないが、大勢は「みぞう」となっているのでは、というご指摘をいただき、そのように修正しました。たしかに、漢字変換ソフトでも、「みぞう」と入力しないと「未曾有」になってくれません。ただし、発音は「MI-ZO」ではなく、「MI-ZO-U」だろうと思いますが。
 
 さて、総ルビ付き原文と「超訳」を各項目ごとに交互に掲載して、「戦時家庭教育指導要項」を読んでいただくという狙いは、一応は以上で達成されることになるのですが、私自身、それではやや物足りない点があるのです。
 それは、はたして原文の校訂がきっちりと出来ているかどうか、確信が持てないという問題が残るからです。
 『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』に掲載された「戦時家庭教育指導要項」に関する注釈(140頁の注25)によると、「『近代日本教育制度資料』第7巻3-5頁」が出典として明示されていますので、それに当たれれば良いのですが、それを待っていては、このブログをいつアップできるか分かりません。
 そこで、得意の(?)ネット検索で「戦時家庭教育指導要項」の原文をアップしているサイトはないか?と探してみたところ、1つだけ、奈良県立図書情報館ホームページに、8枚の画像として掲載されているのを発見しました。
 
 奈良県立図書情報館ホームページには、「5月7日付で文部省から各都道府県知事に通牒された要項。「重大時局」に際して「家生活」を改め、「皇国の重責」を負うに足る子女の育成を説いたもの。作成者:奈良県 作成年代:昭和17年5月」という簡単な解説が載っているだけでした。
 これが、文部省が各地方長官宛に送付した「要項」に間違いないはずですから、「超訳」の底本となった『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収の原文と、基本的には同じもののはずと思って読み進んでみると・・・驚きました。これは、同じ目的を持った、同じ表題の、同じ構成の文章には違いありませんが、明らかに「版」が違います。
 比べてみると、大項目内の小項目の見出しが違っている箇所がたくさんあるだけではなく、大項目自身の表記が異なっているものもあります。
 「三、母ノ教養訓練」⇔「三、母性ノ教養訓練」(奈良版)
 「五、家生活ノ刷新充実」⇔「五、家庭生活ノ刷新充實」(奈良版)
 さらに、「時局認識」という小項目に至っては、『動員される母親たち』所収版では「五、家生活ノ刷新充実」の中にあるのに、奈良版では、「三、母性ノ教養訓練」で論じられています。
 細かな文章の相違などは数知れずです。
 これは、一体どう解釈したら良いのでしょうか?
 文部省から送られた「要項」の文章が気にくわないと思って、奈良県の担当者が勝手に改訂したのでしょうか?これはとてもありそうもないですけど。
 
 ところで、「要項」が発表された同じ年に、戸田貞三著『家の道 文部省戦時家庭教育指導要項解説』(中文館)という注釈書が刊行されており、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができます。
 同書で引用されている「要項」は、基本的に、『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』に掲載された版と同一のようです。
 そうすると、いよいよこの「奈良版」は何なんだ?という疑問がわいてきますが、今のところ、これ以上探索のしようがありません。奈良県立図書情報館まで行って調査するような余裕は残念ながらありません。
 けれども、せっかく見つけた「原文」をスルーするのも惜しいし、資料的価値もあるかもしれないということで、各大項目ごとに、
 『超訳』(黒色表示)
 『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版(紺色表示)
   原文
   総ルビ付き原文
 『奈良県立図書情報館版』(茶色表示)
   原文
   総ルビ付き原文
の順番で掲載することにしました(前文は奈良版しかありません)。おかげで、えらく長いものになってしまいましたので、3回に分載することにしました。
 そして、超訳と原文だけでは分かりにくい点を補充する意味で、大久保秀俊弁護士、久保木太一弁護士による解説「戦時家庭教育指導要項の成立とその背景」を末尾に掲載させていただくことにしました(黒色表示)。
 あらためて、ご協力いただいた、仲里歌織先生、大久保秀俊先生、久保木太一先生に、心より御礼申し上げます。
 この「ルビ付き原文と超訳で読む「戦時家庭教育指導要項」(1942年5月)」が多くの人のお役に立てればと念願します。
 
(付記)
 以上まで書き上げたところで上に謝辞を述べた3人の皆さまに草稿をお送りしたところ、「超訳」及び「戦時家庭教育指導要項の成立とその背景」の執筆者である大久保秀俊弁護士から、貴重な資料をメールでお送りいただきました。
 それは、文部大臣官房文書課編『文部省例規類纂』昭和十七年(復刻版『文部省例規類纂』第7巻/大空社/1987年)の20頁~25頁で、そこに「戰時家庭教育指導ニ關スル件」(昭和十七年五月七日發社一二八號 各地方長官ヘ文部次官通牒)及び「戰時家庭教育指導要項」が掲載されており(もちろん、漢字は旧字体です)、これが、文部省文書課が「例規」として記録すべきと認めたオフィシャルな「要項」だと思われます。
 もちろん、以下にご紹介している『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版もこれに準拠しています(もっとも、漢字は新字体に改められていますが)。ただし、「文部省例規類纂」版と対照してみると、誤記と思われるところが何箇所かありましたので、気の付いたところは「文部省例規類纂」版に基づき訂正しました。
 
 これによって、「奈良版」の謎はいよいよ深まるばかりですが、1つ分かったことがあります。それは、「奈良版」にあった前文が、実は「戰時家庭教育指導ニ關スル件」という文部次官から各地方長官への通牒の本文であり、「要項」は別紙とされていたことがはっきりしました。
 そこで、当初の草稿では、奈良県立図書情報館版の前文だけを掲載していたのですが、大久保先生からお送りいただいた上記資料に基づき、これに対応する「戰時家庭教育指導ニ關スル件」本文を追加掲載することにしました(旧字体のまま転記しました)。
 このように、「文部省例規類纂」に収載された「通牒」「要項」と「奈良版」の「要項」とをあらためて比べてみると、文部省が発出したものは「通牒」とその別紙たる「要項」に分かれていたものが、「奈良版」では、一つの「要項」の前文と本文に改められており、奈良県独自に改変を加えたという可能性が~とてもありそうもないと思っていましたが~もしかしたらあるかもしれないと思えてきました。もっとも、仮にそうだとしても、その理由は全然想像がつきません。
 しかし、他の県ではどうだったんだろうか?
 
 
【文部大臣官房文書課編『文部省例規類纂』昭和十七年版所収】
                              戰時家庭教育指導ニ關スル件
未曾有ノ重大時局ニ際會シ肇國ノ大精神ニ則リ國家總力ヲ結集シ以テ聖業翼贊ニ邁進スベキ時國運進展ノ根基ニ培フベキ家ノ使命愈々重キヲ加フルニ至レリ
仍テ家生活ヲ刷新充實シ家族制度ノ美風ヲ振起シ皇國ノ重責ヲ負荷スルニ足ル健全有爲ナル子女ヲ育成薰陶スベキ家庭教育ノ振興ヲ圖ルハ正ニ刻下ノ急務タリ茲ニ戰時家庭教育指導要項別紙ノ通相定メラレタルニ付之ガ徹底ニ關シ萬遺憾ナキヲ期セラレ度此段依命通牒ス
 
        戰時家庭教育指導(せんじかていきょういくしどう)ニ關(かん)スル件(けん)
未曾有(みぞう)ノ重大時局(じゅうだいじきょく)ニ際會(さいかい)シ、肇國(ちょうこく)ノ大精神(だいせいしん)ニ則(のっと)リ、國家總力(こっかそうりょく)ヲ結集(けっしゅう)シ、以テ(もって)聖業翼贊(せいぎょうよくさん)ニ邁進(まいしん)スベキ時(とき)、國運進展(こくうんしんてん)ノ根基(こんき)ニ培(つちか)フベキ家(いえ)ノ使命(しめい)愈々(いよいよ)重(おも)キヲ加(くわ)フルニ至(いた)レリ。
仍テ(よって)家生活(いえせいかつ)ヲ刷新充實(さっしんじゅうじつ)シ、家族制度(かぞくせいど)ノ美風(びふう)ヲ振起(しんき)シ、皇國(こうこく)ノ重責(じゅうせき)ヲ負荷(ふか)スルニ足(た)ル健全有為(けんぜんゆうい)ナル子女(しじょ)ヲ育成薰陶(いくせいくんとう)スベキ家庭教育(かていきょういく)ノ振興(しんこう)ヲ圖(はか)ルハ、正(まさ)ニ刻下(こっか)ノ急務(きゅうむ)タリ。茲(ここ)ニ戰時家庭教育指導要項(せんじかていきょういくしどうようこう)別紙(べっし)ノ通(とおり)相定(あいさだ)メラレタルニ付(つき)、之(これ)ガ徹底(てってい)ニ關(かん)シ、萬(ばん)遺憾(いかん)ナキヲ期(き)セラレ度(たく)、此段(このだん)依命通牒(いめいつうちょう)ス。
 
【前文~奈良県立図書情報館版】
                                   戰時家庭教育指導要項
未曾有ノ重大時局ニ際會シ肇國ノ大精神ニ則リ國家總力ノ總動員ヲ以テ聖業翼贊ニ邁進スベキ時國運進展ノ根基ニ培フベキ「家」ノ使命愈々重キヲ加フルニ至レリ
仍テ此ノ際家生活ヲ刷新シ家族制度ノ美風ヲ振起シ皇國ノ重責ヲ負荷スルニ足ル健全有為ナル子女ヲ育成薰陶スベキ家庭教育ノ振興ヲ圖ルハ正ニ刻下ノ急務タリ、茲ニ左記要項ニ依リ之ガ徹底ヲ期セントス
 
               戰時家庭教育指導要項(せんじかていきょういくしどうようこう)
未曾有(みぞう)ノ重大時局(じゅうだいじきょく)ニ際會(さいかい)シ、肇國(ちょうこく)ノ大精神(だいせいしん)ニ則リ(のっとり)、國家總力(こっかそうりょく)ノ總動員(そうどういん)ヲ以テ(もって)聖業翼贊(せいぎょうよくさん)ニ邁進(まいしん)スベキ時(とき)、國運進展(こくうんしんてん)ノ根基(こんき)ニ培フ(つちかう)ベキ「家(いえ)」ノ使命(しめい)愈々(いよいよ)重(おも)キヲ加(くわ)フルニ至(いた)レリ。
仍テ(よって)此(こ)ノ際(さい)家生活(いえせいかつ)ヲ刷新(さっしん)シ、家族制度(かぞくせいど)ノ美風(びふう)ヲ振起(しんき)シ、皇國(こうこく)ノ重責(じゅうせき)ヲ負荷(ふか)スルニ足(た)ル健全有為(けんぜんゆうい)ナル子女(しじょ)ヲ育成薰陶(いくせいくんとう)スベキ家庭教育(かていきょういく)ノ振興(しんこう)ヲ圖(はか)ルハ正(まさ)ニ刻下(こっか)ノ急務(きゅうむ)タリ。茲(ここ)ニ左記(さき)要項(ようこう)ニ依(よ)リ之(これ)ガ徹底(てってい)ヲ期(き)セントス。
 
 
超訳 1 日本における家の特徴と家の使命を教えます】
 日本における家は、
イ 家長が中心の結合体で、先祖も君たちもみんな一体です。
 親子関係をベースとして、愛情や尊敬に包まれながら人格を形成して、永遠に続いていく場所です。
ロ こんなこと言うとバチが当たりそうですが、皇室は君たちみんなの本家です。そうやって君たちの家は発展していきました。なので、家は、天皇への忠誠心を持った天皇のしもべとしての子供を生み出し、天皇への奉仕者としての資質を伸ばすことに全力を傾ける場にしてください。
ハ 親子、夫婦、兄弟、姉妹は仲良くしてください。上下関係といった役割にしたがってお年寄りや子供の面倒もみてください。自分も他人も一心同体です。贅沢は敵なので、誘惑に負けない訓練をつみ、大東亜戦争を遂行するためのベースを培うことが日本の家の役割です。日本のため、大東亜戦争のための使命を完璧に果たしてもらうことが必要です。
 
【一、我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚~『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版】
一、我ガ国ニ於ケル家ノ特質ノ闡明並ニ其ノ使命ノ自覚
我ガ国ニ於ケル家ハ
イ、祖孫一体ノ道ニ則ル家長中心ノ結合ニシテ人間生活ノ最モ自然ナル親子ノ関係ヲ根トスル家族ノ生活トシテ情愛敬慕ノ間ニ人倫本然ノ秩序ヲ長養シツツ永遠ノ生命ヲ具現シ行ク生活ノ場ナルコト
ロ、畏クモ 皇室ヲ宗家ト仰ギ奉リ恒ニ国ノ家トシテ生成発展シ行ク歴史的現実ニシテ忠孝一本ノ大道ニ基ヅク子女錬成ノ道場ナルコト
ハ、親子、夫婦、兄妹、姉妹和合団欒シ序ニ従ツテ各自ノ分ヲ尽クシ老ヲ扶ケ幼ヲ養フ親和ノ生活ノ裡ニ自他一如、物心一如ノ修錬ヲ積ミ進ンデ世界新秩序ノ建設ニ参スルノ素地ニ培フモノナルコト
等ヲ其ノ特質トスルコトヲ闡明シ我ガ国ニ於ケル家ノ国家的並ニ世界的意義ニ徹セシメ之ガ使命ノ完遂ニ遺憾ナカラシメンコトヲ要ス
 
一、我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ノ闡明(せんめい)並(ならび)ニ其(そ)ノ使命(しめい)ノ自覚(じかく)
我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ハ
イ、祖孫一体(そそんいったい)ノ道(みち)ニ則(のっと)ル家長中心(かちょうちゅうしん)ノ結合(けつごう)ニシテ人間生活(にんげんせいかつ)ノ最(もっと)モ自然(しぜん)ナル親子(おやこ)ノ関係(かんけい)ヲ根(ね)トスル家族(かぞく)ノ生活(せいかつ)トシテ情愛敬慕(じょうあいけいぼ)ノ間(かん)ニ人倫本然(じんりんほんねん)ノ秩序(ちつじょ)ヲ長養(ちょうよう)シツツ、永遠(えいえん)ノ生命(せいめい)ヲ具現(ぐげん)シ行(ゆ)ク生活(せいかつ)ノ場(ば)ナルコト。
ロ、畏(かしこ)クモ 皇室(こうしつ)ヲ宗家(そうけ)ト仰(あお)ギ奉(たてまつ)リ恒(つね)ニ国(くに)ノ家(いえ)トシテ生成発展(せいせいはってん)シ行(ゆ)ク歴史的現実(れきしてきげんじつ)ニシテ忠孝一本(ちゅうこういっぽん)ノ大道(だいどう)ニ基(もと)ヅク子女錬成(しじょれんせい)ノ道場(どうじょう)ナルコト。
ハ、親子(おやこ)、夫婦(ふうふ)、兄妹(きょうだい)、姉妹(しまい)和合団欒(わごうだんらん)シ序(じょ)ニ従(したが)ツテ各自(かくじ)ノ分(ぶん)ヲ尽(つ)クシ老(ろう)ヲ扶(たす)ケ幼(よう)ヲ養(やしな)フ親和(しんわ)ノ生活(せいかつ)ノ裡(うち)ニ自他一如(じたいちにょ)、物心一如(ぶっしんいちにょ)ノ修錬(しゅうれん)ヲ積(つ)ミ進(すす)ンデ世界新秩序(せかいしんちつじょ)ノ建設(けんせつ)ニ参(さん)スルノ素地(そじ)ニ培(つちか)フモノナルコト
等(とう)ヲ其(そ)ノ特質(とくしつ)トスルコトヲ闡明(せんめい)シ我(わ)ガ国(にく)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ国家的(こっかてき)並(ならび)ニ世界的意義(せかいてきいぎ)ニ徹(てっ)セシメ之(これ)ガ使命(しめい)ノ完遂(かんすい)ニ遺憾(いかん)ナカラシメンコトヲ要(よう)ス。
 
【一、我ガ國ニ於ケル家ノ特質ノ闡明竝ニ其ノ使命ノ自覺~奈良県立図書情報館版】
一、我ガ國ニ於ケル家ノ特質ノ闡明竝ニ其ノ使命ノ自覺
我ガ國ニ於ケル家ノ特質ハ
イ、祖孫一體ノ連繫ト家長中心ノ結合トヨリ成り、人間存在ノ最モ自然的ナル親子ノ關係ヲ根本トスル情愛敬慕ノ生活ノ間ニ人倫本然ノ德性秩序ヲ長養シツヽ永遠ノ生命ヲ具現シ行クモノナルコト
ロ、畏クモ 皇室ヲ宗家ト仰キ奉リ恒ニ國トノ繫ガリニ於テ生成發展シユク歴史的具體的ナル存在ニシテ、忠孝一本ノ大道ニ基ツク子女鍊成ノ道場ナルコトハ、親子、夫婦、兄妹、姉妹和合團欒シ各自ノ分ヲ盡シ老ヲ扶ケ幼ヲ養フ互助共同ノ生活ノ裡ニ自他一如ノ修練ヲ積ミ進ンデ世界新秩序ノ建設ニ邁往スル素地ニ培フモノナルコト等ノ諸點ニアルコトヲ闡明シ、我ガ國ニ於ケル家ノ國家的竝ニ世界的意義ニ徹セシメコレガ使命ノ完遂ニ遺憾ナカラシメンコトヲ要ス
 
一、我ガ國(わがくに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ノ闡明(せんめい)竝(ならび)ニ其(そ)ノ使命(しめい)ノ自覺(じかく)
我(わ)ガ國(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ハ
イ、祖孫一體(そそんいったい)ノ連繫(れんけい)ト家長中心(かちょうちゅうしん)ノ結合(けつごう)トヨリ成(な)リ、人間存在(にんげんそんざい)ノ最(もっと)モ自然的(しぜんてき)ナル親子(おやこ)ノ關係(かんけい)ヲ根本(こんぽん)トスル情愛敬慕(じょうあいけいぼ)ノ生活(せいかつ)ノ間(かん)ニ人倫本然(じんりんほんねん)ノ德性秩序(とくせいちつじょ)ヲ長養(ちょうよう)シツヽ永遠(えいえん)ノ生命(せいめい)ヲ具現(ぐげん)シ行(ゆ)クモノナルコト。
ロ、畏(かしこ)クモ 皇室(こうしつ)ヲ宗家(そうけ)ト仰キ(あおぎ)奉(たてまつ)リ恒(つね)ニ國(くに)トノ繫(つな)ガリニ於テ(おいて)生成發展(せいせいはってん)シユク歴史的(れきしてき)具體的(ぐたいてき)ナル存在(そんざい)ニシテ、忠孝一本(ちゅうこういっぽん)ノ大道(だいどう)ニ基ツク(もとづく)子女鍊成(しじょれんせい)ノ道場(どうじょう)ナルコトハ、親子(おやこ)、夫婦(ふうふ)、兄弟(きょうだい)、姉妹(しまい)和合團欒(わごうだんらん)シ各自(かくじ)ノ分(ぶん)ヲ盡(つく)シ老(ろう)ヲ扶(たす)ケ幼(よう)ヲ養(やしな)フ互助共同(ごじょきょうどう)ノ生活(せいかつ)ノ裡(うち)ニ自他一如(じたいちにょ)ノ修練(しゅうれん)ヲ積(つ)ミ進(すす)ンデ世界新秩序(せかいしんちつじょ)ノ建設(けんせつ)ニ邁往(まいおう)スル素地(そじ)ニ培(つちか)フモノナルコト等(とう)ノ諸點(しょてん)ニアルコトヲ闡明(せんめい)シ、我ガ國(わがくに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ國家的(こっかてき)竝(ならび)ニ世界的(せかいてき)意義(いぎ)ニ徹(てっ)セシメコレガ使命(しめい)ノ完遂(かんすい)ニ遺憾(いかん)ナカラシメンコトヲ要(よう)ス。
 
 
超訳 2 健全な家風を作ってください】
 家風はその家の伝統であり、ずっと発展していかなければならないものです。家風は家族の性格に影響します。なので、国民が健全かどうかは家風が健全かどうかによります。家風は家によって異なっていると思いますが、日本の家の役割を考えて、健全な家風を作るために下記の点に注意してください。
イ 神と祖先をリスペクトしてください
 先祖も君たちもみんな一体となるために、これはとても大切なことです。
 神をリスペクトすることがなぜ大事かというと、神とは実は天皇だからです。
 先祖をリスペクトすることがなぜ大事かというと、先祖も君たちと同じように天皇に仕えていたからです。
 つまり、神をリスペクトすることも祖先をリスペクトすることも、全部天皇に対する忠誠心へとつながります。
 どの家も必ず神棚を設け毎日ちゃんとお祈りしましょう。祭祀も行事としてちゃんとやりましょう。そうやって神と祖先をリスペクトすることで、天皇への忠誠を示してください。
ロ 礼儀や上下関係は守った上で、家族を敬愛し、仲良くしてください
 家長が一番で、子よりは親、妻よりは夫、弟よりは兄が偉いという上下関係をしっかりすることは家族の基本です。敬愛することも大事ですが、親しき中にも礼儀はあります。自分より偉い人には奉公し、自分より偉くない人には協力してあげることによって健全な家庭を築くことが、健全な国家のベースになります。
ハ 円満な家庭を築きましょう
 家庭生活は国のベースです。家庭円満のために、道徳をちゃんと守りましょう。勤労と規律によって家族がまとまることは、豊かな生活につながります。
ニ お隣さんと仲良く協力しよう
 血縁と地縁は昔からある日本の家ぐるみの付き合いのベースです。血のつながった者同士が協力するように、お隣さん同士も協力してください。それをさらに広げて、国で一体となって協力しましょう。これが日本の家の役割です。そういうことなので、お隣さんとは仲良くしてください。
 
【ニ、健全ナル家風ノ樹立~『動員される母親たち 戦時下における家庭教育振興政策』所収版】
ニ、健全ナル家風ノ樹立
 家風ハ家々ノ伝統ノ具体的表現ナルト共ニ不断ニ生成発展スベキモノナリ家人ノ性格ハ家風ニヨリ律セラルルコト大ニシテ家人ノ、従ツテ国民ノ健全ナルカ否カハ家風ノ如何ニ関ハル家風ハ家ニヨリテ異ナルモノアリト雖モ我ガ国ニ於ケル家ノ特質ニ鑑ミ健全ナル家風ノ樹立ノ為ニ特ニ左記諸項ノ徹底ニツキ留意スルヲ要ス
イ、敬神崇祖
 敬神崇祖ハ祖孫一体ノ道ノ中枢タルベキモノナリ敬神ハ実ニ 天皇ニ帰一シ奉ル所以崇祖ハ 天皇ニ仕ヘマツレル祖先ヲ祀リ崇ブ所以ニシテ敬神ト崇祖トハ相合致シテ忠孝一本ノ大道ヲ顕現スルモノナリ従ツテ各戸必ズ神棚ヲ設ケテ日常礼拝ヲ怠ラズ祭祀ヲ行事トシテ厳粛ニ執行シ敬神崇祖ノ精神ヲ具現セシムルヲ要ス
ロ、敬愛、親和、礼節、謙譲
 家長ヲ中心トシテ親子、夫婦、兄妹ノ序ヲ正シクスルコトハ家生活ノ根本ナリ家人相互ニ敬愛ノ情ヲ尽クシ親和ノ間ニ礼節ヲ忘レズ相互ニ謙譲シテ協力奉公ノ実践ニ力メテ家生活ヲ健全ナラシメ此ノ間健全ナル国家ノ基礎ヲ確立ス
ハ、一家和楽
 家生活ハ国家活動ノ源泉ニシテ道義ニ基ヅク家生活ノ実践ハ自カラ之ヲ和楽ナラシム勤労ト規律トヲ和スルニ寛ギヲ以テシ一家団欒ノ楽ミヲ偕ニスルコトハ更ニ豊カナル生活力ニ培フ所以ナリ
ニ、隣保協和
 血縁ト地縁トハ古来我ガ国ニ於ケル家ト家トノ結合ノ基本ニシテ血縁ニヨル家ト家トノ親和ノ実ヲ移シテ地縁ニヨル隣保ニ及ボシ延イテハ国家的結合ヲ家族的ナラシムルトコロニ家ノ日本的性格ノ存スル所以ヲ認識セシメ隣保協和ノ実ヲ挙ゲシム
 
ニ、健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ樹立(じゅりつ)
 家風(かふう)ハ家々(いえいえ)ノ伝統(でんとう)ノ具体的表現(ぐたいてきひょうげん)ナルト共(とも)ニ不断(ふだん)ニ生成発展(せいせいはってん)スベキモノナリ。家人(かじん)ノ性格(せいかく)ハ家風(かふう)ニヨリ律(りっ)セラルルコト大(だい)ニシテ家人(かじん)ノ、従(すたが)ツテ国民(こくみん)ノ健全(けんぜん)ナルカ否(いな)カハ家風(かふう)ノ如何(いかん)ニ関(かか)ハル。家風(かふう)ハ家(いえ)ニヨリテ異(こと)ナルモノアリト雖(いえど)モ我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ニ鑑(かんが)ミ健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ樹立(じゅりつ)ノ為(ため)ニ特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ノ徹底(てってい)ニツキ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス
イ、敬神崇祖(けいしんすうそ))
 敬神崇祖(けいしんすうそ)ハ祖孫一体(そそんいったい)ノ道(みち)ノ中枢(ちゅうすう)タルベキモノナリ。敬神(けいしん)ハ実(じつ)ニ 天皇(てんのう)ニ帰一(きいつ)シ奉(たてまつ)ル所以(ゆえん)、崇祖(すうそ)ハ 天皇(てんのう)ニ仕(つか)ヘマツレル祖先(そせん)ヲ祀(まつ)リ崇(たっと)ブ所以(ゆえん)ニシテ敬神(けいしん)ト崇祖(すうそ)トハ相合致(あいがっち)シテ忠孝一本(ちゅうこういっぽん)ノ大道(だいどう)ヲ顕現(けんげん)スルモノナリ。従(したが)ツテ各戸(かくこ)必(かなら)ズ神棚(かみだな)ヲ設(もう)ケテ日常礼拝(にちじょうらいはい)ヲ怠(おこた)ラズ祭祀(さいし)ヲ行事(ぎょうじ)トシテ厳粛(げんしゅく)ニ執行(しっこう)シ敬神崇祖(けいしんすうそ)ノ精神(せいしん)ヲ具現(ぐげん)セシムルヲ要(よう)ス。
ロ、敬愛(けいあい)、親和(しんわ)、礼節(れいせつ)、謙譲(けんじょう)
 家長(かちょう)ヲ中心(ちゅうしん)トシテ親子(おやこ)、夫婦(ふうふ)、兄妹(きょうだい)ノ序(じょ)ヲ正(ただ)シクスルコトハ家生活(いえせいかつ)ノ根本(こんぽん)ナリ。家人(かじん)相互(そうご)ニ敬愛(けいあい)ノ情(じょう)ヲ尽(つ)クシ親和(しんわ)ノ間(かん)ニ礼節(れいせつ)ヲ忘(わす)レズ相互(そうご)ニ謙譲(けんじょう)シテ協力奉公(きょうりょくほうこう)ノ実践(じっせん)ニ力(つと)メテ家生活(いえせいかつ)ヲ健全(けんぜん)ナラシメ此(こ)ノ間(かん)健全(けんぜん)ナル国家(こっか)ノ基礎(きそ)ヲ確立(かくりつ)ス。
ハ、一家和楽(いっかわらく)
 家生活(いえせいかつ)ハ国家活動(こっかかつどう)ノ源泉(げんせん)ニシテ道義(どうぎ)ニ基(もと)ヅク家生活(いえせいかつ)ノ実践(じっせん)ハ自(おのず)カラ之(これ)ヲ和楽(わらく)ナラシム。勤労(きんろう)ト規律(きりつ)トヲ和(わ)スルニ寛(くつろ)ギヲ以テ(もって)シ一家団欒(いっかだんらん)ノ楽(たのし)ミヲ偕(とも)ニスルコトハ更(さら)ニ豊(ゆた)カナル生活力(せいかつりょく)ニ培(つちか)フ所以(ゆえん)ナリ。
ニ、隣保協和(りんぽきょうわ))
 血縁(けつえん)ト地縁(ちえん)トハ古来(こらい)我(わ)ガ国(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ト家(いえ)トノ結合(けつごう)ノ基本(きほん)ニシテ血縁(けつえん)ニヨル家(いえ)ト家(いえ)トノ親和(しんわ)ノ実(じつ)ヲ移(うつ)シテ地縁(ちえん)ニヨル隣保(りんぽ)ニ及(およ)ボシ延(ひ)イテハ国家的結合(こっかてき)けつごう)ヲ家族的(かぞくてき)ナラシムルトコロニ家(いえ)ノ日本的性格(にほんてきせいかく)ノ存(そん)スル所以(ゆえん)ヲ認識(にんしき)セシメ隣保協和(りんぽきょうわ)ノ実(じつ)ヲ挙(あ)ゲシム。
 
【ニ、健全ナル家風ノ樹立~奈良県立図書情報館版】
ニ、健全ナル家風ノ樹立
 家風ハ家々ノ傳統ノ具体的表現ナルト共ニ不斷ニ生成發展スベキモノナリ、人々ノ性格ハ家風ニヨリテ規定セラレルコト大ニシテ從ツテ家風ノ健否ハ又國民ノ健否ニ關ハル家風ノ内容ハ多々アリト雖モ我ガ國ニ於ケル家ノ特質ニ鑑ミ健全ナル家風ノ樹立ノ為ニ特ニ左記諸項ノ徹底ニツキ留意スルヲ要ス
イ、敬神崇祖
 敬神崇祖ハ祖孫一體ノ家生活ノ中樞タルベキモノナリ、敬神ハ實ニ 天皇ニ歸一シ奉ル精神ニシテ祖先崇拜ハ 天皇ニ仕ヘマツレル祖先ノ(金原注:「祖先ヲ」の誤りか?)祀ル所以ノモノ乃チ敬神ト相合致シ忠孝一本ノ原理モ亦此處ニ存ス家々ニ於ケル祭祀行事ハ敬神崇祖ノ精神ノ具現ニシテ從ツテ各戸必ス神棚ヲ設ケテ日常禮拜ヲ怠ラス祭祀ヲ嚴肅ニ執行セシムルヲ要ス
ロ、家族道義ノ實踐
 家長ヲ中心トシテ親子、夫婦、兄妹ノ序ヲ正シクスルコトハ家生活ノ根本ナリ、家人相互ニ敬愛ノ情ヲ以テシ、親和ノ間ニ禮節ヲ忘レズ、相互ノ理解ヲ深メテ協力奉仕ノ實踐ニ力メ、家族道義ノ徹底ヲ圖ルハ健全ナル家生活ヲ維持スル所以ニシテ、健全ナル國民ノ基礎モ亦自カラ此ノ間ニ養ハル
 一家和樂ノ生活ハ社會的活動力ノ源泉ナリ、此ノコトハ家族道義ノ實踐ニヨリ自カラ招來サレルトコロトハ言ヘ、勤勞ト規律ノ間ニ寬ギヲ加ヘ一家團欒ノ樂ミヲ與フルコトハ更ニ豊カナル生活力ヲ培フ所以ナリ
ニ、隣保協和
 血緣ト地縁トハ我ガ國古來ノ基本的社會結合ニシテ、兩者ハ矛盾背馳セザルノミナラズ、血緣ニヨル家生活ニ於ケル共存共榮ノ觀念ヲ移シテ地緣ニヨリ隣保ニ及ボシ、延イテハ國家社會ノ結合ノ基本精神トナス(金原注:この箇所「ト」脱落か?)コロニ日本的性格ノ存スル所以ヲ認識セシメ隣保協和ノ實ヲ擧ゲシム
 
ニ、健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ樹立(じゅりつ)
 家風(かふう)ハ家々(いえいえ)ノ傳統(でんとう)ノ具体的表現(ぐたいてきひょうげん)ナルト共(とも)ニ不斷(ふだん)ニ生成發展(せいせいはってん)スベキモノナリ、人々ノ性格(せいかく)ハ家風(かふう)ニヨリテ規定(きてい)セラレルコト大(だい)ニシテ從(したが)ツテ家風(かふう)ノ健否(けんぴ)ハ又(また)國民(こくみん)ノ健否(けんぴ)ニ關(かか)ハル。家風(かふう)ノ内容(ないよう)ハ多々(たた)アリト雖(いえど)モ我(わ)ガ國(くに)ニ於(お)ケル家(いえ)ノ特質(とくしつ)ニ鑑(かんが)ミ健全(けんぜん)ナル家風(かふう)ノ樹立(じゅりつ)ノ為(ため)ニ特(とく)ニ左記諸項(さきしょこう)ノ徹底(てってい)ニツキ留意(りゅうい)スルヲ要(よう)ス。
イ、敬神崇祖(けいしんすうそ)
 敬神崇祖(けいしんすうそ)ハ祖孫一體(そそんいったい)ノ家生活(いえせいかつ)ノ中樞(ちゅうすう)タルベキモノナリ、敬神(けいしん)ハ實(じつ)ニ 天皇(てんのう)ニ歸一(きいつ)シ奉(たてまつ)ル精神(せいしん)ニシテ祖先崇拜(そせんすうはい)ハ 天皇(てんのう)ニ仕(つか)ヘマツレル祖先(そせん)ノ祀(まつ)ル所以(ゆえん)ノモノ乃(すなわ)チ敬神(けいしん)ト相合致(あいがっち)シ忠孝一本(ちゅうこういっぽん)ノ原理(げんり)モ亦(また)此處(このところ)ニ存(そん)ス。家々(いえいえ)ニ於(お)ケル祭祀行事(さいしぎょうじ)ハ敬神崇祖(けいしんすうそ)ノ精神(せいしん)ノ具現(ぐげん)ニシテ從(したが)ツテ各戸(かくこ)必(かなら)ス神棚(かみだな)ヲ設(もう)ケテ日常(にちじょう)禮拜(らいはい)ヲ怠(おこた)ラス祭祀(さいし)ヲ嚴肅(げんしゅく)ニ執行(しっこう)セシムルヲ要(よう)ス。
ロ、家族道義(かぞくどうぎ)ノ實踐(じっせん)
 家長(かちょう)ヲ中心(ちゅうしん)トシテ親子(おやこ)、夫婦(ふうふ)、兄妹(きょうだい)ノ序(じょ)ヲ正(ただ)シクスルコトハ家生活(いえせいかつ)ノ根本(こんぽん)ナリ、家人(かじん)相互(そうご)ニ敬愛(けいあい)ノ情(じょう)ヲ以テ(もって)シ、親和(しんわ)ノ間(かん)ニ禮節(れいせつ)ヲ忘(わす)レズ、相互(そうご)ノ理解(りかい)ヲ深(ふか)メテ協力奉仕(きょうりょくほうし)ノ實踐(じっせん)ニ力(つと)メ、家族道義(かぞくどうぎ)ノ徹底(てってい)ヲ圖(はか)ルハ健全(けんぜん)ナル家生活(いえせいかつ)ヲ維持(いじ)スル所以(ゆえん)ニシテ、健全(けんぜん)ナル國民(こくみん)ノ基礎(きそ)モ亦(また)自(おのず)カラ此(こ)ノ間(かん)ニ養(やしな)ハル。
ハ、一家和樂(いっかわらく)
 一家和樂(いっかわらく)ノ生活(せいかつ)ハ社會的(しゃかいてき)活動力(かつどうりょく)ノ源泉(げんせん)ナリ、此(こ)ノコトハ家族道義(かぞくどうぎ)ノ實踐(じっせん)ニヨリ自(おのず)カラ招來(しょうらい)サレルトコロトハ言(い)ヘ、勤勞(きんろう)ト規律(きりつ)ノ間(かん)ニ寬(くつろ)ギヲ加(くわ)ヘ一家團欒(いっかだんらん)ノ樂(たのし)ミヲ與(あた)フルコトハ更(さら)ニ豊(ゆた)カナル生活力(せいかつりょく)ヲ培(つちか)フ所以(ゆえん)ナリ。
ニ、隣保協和(りんぽきょうわ)
 血緣(けつえん)ト地縁(ちえん)トハ我(わ)ガ國(くに)古來(こらい)ノ基本的(きほんてき)社會結合(しゃかいけつごう)ニシテ、兩者(りょうしゃ)ハ矛盾背馳(むじゅんはいち)セザルノミナラズ、血緣(けつえん)ニヨル家生活(いえせいかつ)ニ於(お)ケル共存共榮(きょうぞんきょうえい)ノ觀念(かんねん)ヲ移(うつ)シテ地緣(ちえん)ニヨリ隣保(りんぽ)ニ及(およ)ボシ、延(ひ)イテハ國家社會(こっかしゃかい)ノ結合(けつごう)ノ基本精神(きほんせいしん)トナスコロニ日本的性格(にほんてきせいかく)ノ存(そん)スル所以(ゆえん)ヲ認識(にんしき)セシメ隣保協和(りんぽきょうわ)ノ實(じつ)ヲ擧(あ)ゲシム。
 
(中編に続く)