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自衛隊記念日観閲式での安倍内閣総理大臣による常軌を逸した訓示(2018年10月14日)~それを誰も止めないことが最大の国家的危機

 2018年10月16日配信(予定)のメルマガ金原No.3302を転載します。
 
自衛隊記念日観閲式での安倍内閣総理大臣による常軌を逸した訓示(2018年10月14日)~それを誰も止めないことが最大の国家的危機
 
読売オンライン 2018年10月14日 19時33分
首相が観閲式で訓示、自衛隊明記の改憲に意欲
(抜粋引用開始)
 安倍首相は14日、陸上自衛隊朝霞訓練場(埼玉県新座市など)で行われた自衛隊観閲式で訓示した。首相は約4000人の自衛隊員を前に、「すべての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる政治家の責任だ。私はその責任を果たす」と述べ、自衛隊の根拠規定を明記する憲法改正に意欲をにじませた。(後略)
(引用終わり)
 
日本経済新聞 2018/10/14 13:05
首相、自衛隊憲法明記に意欲 観閲式で訓示
(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相は14日、陸上自衛隊朝霞訓練場(埼玉県新座市など)で開いた観閲式で訓示した。「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは今を生きる政治家の責任だ。責任を果たす決意だ」と述べ、憲法9条に自衛隊の存在を明記する改憲案の実現に意欲を示した。(後略)
(引用終わり)
 
産経ニュース 2018.10.14 12:41
安倍首相「政治の責任果たす」 陸自観閲式で憲法改正に意欲
(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相は14日、陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区など)の朝霞訓練場で行われた自衛隊観閲式で訓示し、「すべての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは、今を生きる政治家の責任だ。私はその責任を果たしていく」と述べ、憲法9条自衛隊の存在を明記することへの決意を改めて示した。(後略)
(引用終わり)
 
毎日新聞 2018年10月14日 18時14分(最終更新 10月14日 18時39分)
首相 陸自観閲式で訓示 改憲へ意欲あらわ
(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相は14日、陸上自衛隊の朝霞訓練場(東京都練馬区など)で行われた観閲式で訓示した。首相は「国民の9割は敬意を持って自衛隊を認めている。かつては厳しい目で見られたが、諸君自身の手で信頼を勝ち得た」と述べたうえで、「次は政治がその役割をしっかり果たさなければいけない」と表明。憲法9条への自衛隊明記に重ねて意欲を示した。(後略)
(引用終わり)
 
朝日新聞デジタル 2018年10月15日05時00分
自衛隊、誇り持てる環境を」 首相、改憲に意欲 観閲式
(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相は14日、陸上自衛隊朝霞訓練場(埼玉県など)であった自衛隊観閲式に出席した。訓示で「すべての自衛隊員が強い誇りをもって任務をまっとうできる環境を整える」と述べ、改めて自衛隊を9条に明記する憲法改正への意欲をにじませた。(後略)
(引用終わり)
 
TBSニュース 2018年10月14日 14時53分
安倍首相、自衛隊観閲式で9条改正に改めて意欲
(抜粋引用開始)
 安倍総理は3年に1度行われる陸上自衛隊の観閲式に出席し、自衛隊員を前に、憲法9条自衛隊を明記する憲法改正に改めて意欲を示しました。
 「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える、これは今を生きる政治家の責任であります。私は、その責任をしっかり果たしていく決意です」(安倍首相)
 自衛隊の観閲式に出席した安倍総理はこのように述べ、憲法9条自衛隊を明記する憲法改正に改めて意欲を示しました。(後略)
(引用終わり)
 
 きりがないので引用はこれくらいで止めておきますが、いずれのメディアも異口同音に、安倍首相が改憲憲法改正、9条改正、自衛隊明記)に「意欲」という表現で訓示の内容を伝えています。
 
 各社が引用した部分を、首相官邸ホームページからあらためて引用しておきます(同サイトには動画もあります)。
 
平成30年10月14日
平成30年度自衛隊記念日観閲式 安倍内閣総理大臣訓示
(抜粋引用開始)
 今や、国民の9割は、敬意をもって、自衛隊を認めています。60年を超える歩みの中で、自衛隊の存在は、かつては、厳しい目で見られた時もありました。それでも、歯を食いしばり、ただひたすらに、その職務を全うしてきた。
 正に、諸君自身の手で、信頼を勝ち得たのであります。
 次は、政治がその役割をしっかり果たしていかなければならない。
 全ての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。これは、今を生きる政治家の責任であります。私はその責任をしっかり果たしていく決意です。
(引用終わり)
 
 安倍首相の言のとおりだとすれば、9割の国民が敬意をもって自衛隊を認めているというのですから、なぜ「今の自衛隊」(集団的自衛権の行使も一部認められた安保法制型自衛隊)をわざわざ憲法に明記する提案(発議)を行い、国民投票によって否決されるかもしれないというリスクを冒すのか、首相の立場に立ったとしても、とても合理的な説明をすることができません。
 早稲田大学の長谷部泰男教授がつとに指摘されているとおり、安倍首相やその取り巻きは、自衛隊を明記する改憲発議をすれば、国民投票で賛成が多数を占めるとしか考えていないようですが、否決されるという可能性も十分にある訳で、もしも改憲派国民投票で敗れたら、自衛隊は一体どうなるのでしょうか?
 もちろん、憲法改正国民投票の結果如何にかかわらず、自衛隊法やその関連法の効力に直接的な影響はありませんから、ただちに自衛隊の存在が法的にゆらぐことはありませんが、国民投票によって示された国民の意思は、「今の自衛隊」の正統性について、重大な疑義をもたらします。
 一体、9割の国民が認めている自衛隊とは何なのか?
 2014年7月1日閣議決定と2015年9月19日成立の安保法制によって変質する前の専守防衛自衛隊なのか?
 それとも、人道支援の名の下にインド洋やイラクに部隊派遣するようになる前の、海外派兵はしない自衛隊なのか?
 あるいは、武器・装備はそこそこで良いから、もっぱら国内・国外の災害救助に力を注いでくれる自衛隊なのか?
 いずれにせよ、国民投票自衛隊明記案が否決された場合の混乱(主として正統性をめぐる混乱)を、安倍首相がどう考えているのか(何も考えていないのか)、理解不能です。
 
 ただし、安倍首相の改憲への「意欲」を一斉に報じたマスメディアのほとんどが、首相の憲法尊重予後義務について触れていないのは納得しにくいところです。
 
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
 
 この点を明確に批判したのは、今回もやはり日本共産党でした。
 
志位和夫Twitter 6:26 PM - 14 Oct 2018
「『自衛隊の最悪の政治利用だ』共産 志位委員長が首相批判」
「政治的中立性が最も厳格に求められる実力組織での訓示で、持論の改憲の号令をかけるというのは、常軌を逸した危険で異常な行動だ。自衛隊の最悪の政治利用であり、憲法99条に違反する行動だ。許してはならない!」
 
日本共産党YouTubeチャンネル 志位委員長の会見 2018年10月14日(34分)
※各社からの質問は主に今後の野党共闘について集中していましたが、25分40秒~でNHKの記者からこの日行われた自衛隊観閲式での安倍首相訓示についての質問がなされました。26分~の志位委員長による発言を要約したものが上記tweetです。
 そんなに長いものではないので、以下に書き起こしておきます。
 
(書き起こし開始)
質問 NHKのキタヤマです。昨日の委員長のご報告にもあった憲法改正について伺いたいんですけども、今日安倍総理大臣が自衛隊の観閲式の中で、あらためて、自衛隊員が誇りをもって任務を全うできる環境を整えることが、今を生きる政治家の責務だという風に発言してまして、憲法改正にあらためて意欲を示したんですけれども、委員長のご所見をあらためてお願いします。 
志位和夫氏 これはね、本当に常軌を逸した行動だと、強く批判したいと思います。それで、自衛隊というのは、政治的中立性が最も厳格に求められる実力組織です。その実力組織の観閲の場で、その最高司令官が憲法改定のいわば号令をかけると。これはね、自衛隊の、本当に最悪の政治利用ですよ。そして、憲法99条には、閣僚の憲法遵守、尊重義務が書いてある、憲法99条違反であることは明瞭です。総理大臣として訓示を言っている訳でしょ。自民党総裁だからっていう言い逃れは通用しませんよね。そういう場でね、改憲の事実上の宣言をする、これは本当に常軌を逸した暴走だと。ですから、中身の面でも大問題ですけどね、やり方の面で全く常軌を逸してるということを強く批判したいと思います。
(書き起こし終わり) 
 
 この短い応答の中で、「常軌を逸した」という表現が3回も繰り返されているところをみると、さすがの志位委員長も、安倍首相の度外れた暴走ぶりに、言葉を失ってしまったのかもしれません。
 
 ここまで読んできて、皆さんは、当然、9月3日に行われた第52回自衛隊高級幹部会同での安倍内閣総理大臣による訓示を思い出していただけましたよね?
 該当部分を首相官邸ホームページから引用しておきましょう。
 
平成30年9月3日
第52回自衛隊高級幹部会同 安倍内閣総理大臣訓示
(抜粋引用開始)
 国民のために命をかける。これは全国25万人の自衛隊員一人一人が自分の家族に胸を張るべき気高き仕事であり、自分の子や孫たちにも誇るべき崇高な任務であります。
 幹部諸君。それにもかかわらず、長きにわたる諸君の自衛隊員としての歩みを振り返るとき、時には心無い批判にさらされたこともあったと思います。悔しい思いをしたこともあったかもしれない。自衛隊の最高指揮官、そして同じ時代を生きた政治家として、忸怩(じくじ)たる思いです。
 全ての自衛隊隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。これは、今を生きる政治家の責任であります。私はその責任をしっかり果たしていく決意です。
(引用終わり)
 
 それからわずか6週間足らずにして、今度ははるかに多くの自衛官を前にした観閲式での訓示です。もう、安倍首相の周辺にはもちろん、自民党の中にも、「いくらなんでも、これはまずいと思います。」と直言できる者が跡を絶ったということでしょう。
 実は、そのことが、この一連の安倍首相訓示の最大の問題なのではないかと思われます。
 
 なお、9月3日の訓示については、以下のリンク一覧「自衛隊員の服務宣誓関連」の末尾のブログをご参照願います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/自衛隊員の服務宣誓関連)
2013年8月29日
自衛隊員等の「服務宣誓」と日本国憲法
2014年7月3日
今あらためて考える 自衛隊員の「服務宣誓」
2015年5月31日
もう一度問う 自衛隊員の「服務の宣誓」~宣誓をやり直さねばおかしい
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/立憲主義憲法尊重擁護義務)
2012年5月3日(2013年1月26日に再配信)
憲法記念日に考える(立憲主義ということ) 前編
2012年5月3日(2013年1月26日に再配信)
憲法記念日に考える(立憲主義ということ) 前編
2013年4月3日
日本国憲法「第10章 最高法規」を読む 前編
2013年4月3日
日本国憲法「第10章 最高法規」を読む 後編
2014年9月27日
地方議会の「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」は憲法尊重擁護義務に違反する
2017年2月18日
安倍内閣は「憲法99条は内閣総理大臣憲法改正を主張することを禁止する趣旨のものではない」と断定した
2018年9月5日
憲法尊重擁護義務を土足で踏みにじった安倍晋三内閣総理大臣の訓示(第52回自衛隊高級幹部会同にて)