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国連科学委員会「報告書」の“非科学性”(福島第一原発事故による健康影響)

 今晩(2013年10月26日)配信した「メルマガ金原No.1524」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
国連科学委員会「報告書」の“非科学性”(福島第一原発事故による健康影響)
 
 「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation/ UNSCEAR)という組織があります。
 電離放射線による被曝の程度と影響を評価・報告するために国連によって設置された委員会なのだそうです。
 
 その国連科学委員会が昨日(2013年10月25日)国連総会(第四委員会)に出した「報告書」の内容に抗議する日本の市民団体(63団体)による共同声明「日本の市民社会は、国連科学委員会の福島報告の見直しを求める。」が24日に発表されました。
 
 共同声明とりまとめの中心を担ったと思われる「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の藤和子弁護士と「FoeJapan」理事の満田夏花さんが記者会見し、その模様がIWJOurPlanet-TVで中継されて視聴できます。
 
2013/10/24 「福島、一般市民への被曝量は低い」とする非科学的な国連科学委員会の報告書を問題視~福島報告の見直しを求める緊急記者会見
(抜粋引用開始)
(略)
 冒頭、ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子氏が福島報告について説明。福島報告とは、国連科学委員会が、福島第一原発による放射線被曝の程度と影響に関る研究結果を掲載しているものだが、同報告書は日本政府や福島県から集めたデータをそのまま踏襲しているにすぎない。調査をするにあたって、市民社会から広くデータを集め、独立した調査をするべきと決議で掲げられたにも関わらず、同委員会は一度も現地に足を運んでいない。
■非科学的な国連科学委員会
 報告書には、「一般市民への被曝量は、最初の1年目の被曝量でも生涯被曝量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。被曝した一般市民やそ孫において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない」「事故による放射線被曝のせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない」などと明記されている。
 FoE Japanの満田夏花氏は、これまで、環境省や復興庁に対し、福島県で実施されている県民健康管理調査の改善や、調査を福島県外の広い地域で行うよう政策提言してきたが、その都度、政府側はこの国連科学委員会の報告書を引き合いに出し、「事故の影響は少ない」と繰り返してきたという。
(略)
(引用終わり)
※非会員は冒頭10数分しか視聴できませんので是非会員登録を!
 
OurPlanet-TV(2013年10月24日) 
UNSCEAR報告「健康影響ゼロ」は非科学的〜市民ら声明
 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1662
(抜粋引用開始)
 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ」や国際環境NGOFoE Japan」など国63団体は24日、国連科学委員会(UNSCEAR)が明日、国連総会に提する「福島調査報告」について、抜本的な見直しを求める緊急声明を発表した。
 福島原発事故の健康影響について、子どもの甲状腺がん以外はないとする同告書について、客観性や独立性が乏しく、被曝を過小評価していると指摘。内容を見直すように求めている。
(略)
 これに対し、声明では、国連科学委員会は、原発事故後、独自の調査を実しておらず、日本政府や福島県から提供されたデータのみに基づいていると批判。中立性や生活性に疑問があるとしている。
 また、低線量被曝については、放射線影響調査研究所による広島・長崎の
被害者のLSS(寿命調査)報告(2012年)をはじめ、ここ数年、新たな論文が々に発表されているが、こうした最近の疫学研究を踏まえていないと指摘している。
 ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子さんは、記者会見で「安易に健康
響を過小評価している」と。また、FoEジャパン理事の満田夏花さんは「報告書がドラフトの段階で、一度も一般公開されず、被災当事者や市民、第三者の専門家によるパブリック・レビューを得ていないことのは、大きな問題」と指摘。科学というものは、第三者が検証できてはじめて科学と言えるが、この報告書は、第三者の検証ができない、極めて非科学的なもの」と断じた。
(略) 
(引用終わり)
 
 問題の国連科学委員会の「報告書」、そん中の福島第一原発事故に関わる記述はどういうものかと調べてみました。
 
英語原文(PDF)
日本語訳(部分和訳/訳:平沼百合)
 
 そんなに長いものではありませんが、ここに引用するには長過すぎますのでので、上記日本語訳をお読みいただきたいと思います。
 
 この「報告書」については、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の9つの支(米国、ドイツ、フランス、オランダ、マレーシア、エジプト、ナイジェリア、イタリア、スイス)及び「Independent WHO」が共同して批判的な「論評」を発表しており(2013年10月18日付)、その批判の骨子は、今回の日本の市民団体による共同声明にもかなり取り込まれているようです。
 
英語原文(PDF)
日本語訳
 
 上記「論評」は非常に参考になりますので、是非お読みいただきたいと思いますが、「論評」本文の前後に引用されている、ジョン・F・ケネディ米国大統領の以下のような印象的なスピーチの一節を最後にご紹介しておきます。
 
「骨に癌ができ、血液は白血病を患い、肺に毒が入ってしまった子供たちや孫たちの数は、自然由来の健康被害と比べると統計的に小さいと思えるかもしれない。しかし、これは自然由来の健康被害ではない。さらに、統計的な問題でもない。人間の命が1人分でさえも失われるということ、あるいは、赤ちゃんが1人でも奇形を持って生まれてくるということは、例えその赤ちゃんが、我々が皆死んでしまったずっと後に生まれて来るかもしれなくても、我々全員にとって重要なことであるべきだ。我々の子供たちや孫たちは、我々が無関心を装ってもよいような、単なる統計ではない。」
ジョン・F・ケネディー、1963年7月26日
 
 もちろん、このパラグラフが冒頭に掲げられたのは、国連科学委員会「報告書」に書かれた以下の文章と対比させるためであることは言うまでもありません。
 
「リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。」
UNSCEARの国連総会への報告書、2013年10月25日 
 
 ところで、このケネディ大統領によるスピーチは、核実験禁止条約についての米国民へのラジオとテレビによるアピールとして行われたものであったようです。
 上記該当部分の英語原文は以下のとおり。
 
“The number of children and grandchildren with cancer in their bones, with leukemia in their blood, or with poison in their lungs might seem statistically small to some, in comparison with natural health hazards. But this is not a natural health hazard-and it is not a statistical issue. The loss of even one human life, or the malformation of even one baby-who may be born long after all of us have gone-should be of concern to us all. Our children and grandchildren are not merely statistics towards which we can be indifferent.”
 
スピーチ全文(英語)
スピーチ映像&音声(該当部分は12分40秒から)