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「戦争立法」はどうなるのか?~若い弁護士のための勉学の勧め

 今晩(2015年2月14日)配信した「メルマガ金原No.2001」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「戦争立法」はどうなるのか?~若い弁護士のための勉学の勧め

 4月の統一地方選挙終了後、昨年7月1日の閣議決定を具体化するための関連法案等が通常国会に上程されると言われていますが、水面下の下交渉はともかく、本格的な与党間協議がこれからということもあり、その実体がなかなか見えてきません。しかしながら、いったん上程された後は、一気に審議を進め、場合によっては強行採決もいとわないだろうということは、2013年12月の特定秘密保護法成立時の与党の振る舞いを顧みれば、容易に予想されるところです。従って、私たちも、事前にそれなりの「想定」をしておくことが是非とも必要です。
 
 とりあえず、ここでは3人の識者による論考と講演をご紹介しておきます。私もこれらを参考としながら、早急に検討を進めねばと思っています。
 
 まずご紹介するのは、弁護士(広島弁護士会)の井上正信さんによる論考です。井上弁護士は、日弁連憲法委員会副委員長を務めておられましたが、昨年春の改組によって憲法問題対策本部となってからは事務局を引き受けておられるのではなかったかと思います。
 いずれにせよ、こと安全保障法制に関して、日本中の弁護士の中で井上弁護士の右に出る者はいないと言っても、おそらく多くの弁護士はうなずくことと思います。
 以下にご紹介する論考は、「法律の条文は抽象的で難解な法律用語を使用していますが、それにより何を行おうとしているかを理解すれば案外分かりやすいのです。そこで、まず閣議決定ではどんなことを行おうとしているのか、ガイドライン見直しで日米同盟はどんな姿になるのかを説明すれば、自ずから安全保障法制の改正で何を目指しているのかが分かるはずだ、と思い」、Q&A形式で解説したものです。
 この論考は、今、私たち弁護士が各地の学習会の講師として呼ばれた際には、必ず事前に目を通すべき参考文献の筆頭に挙げられるものだと思います。
 ここでは「Q」の部分のみ引用しておきますので、是非、リンク先のNPJで全文をお読みください。なお、「Q37」が重複しているのは単純なミスでしょう。
 
【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える/井上 正信
7・1閣議決定、ガイドライン改訂、安全保障法制改正はこの国と私たちをどこへ導くのか
2015年2月3日(2月12日改訂)

Q1 7・1閣議決定はどのようなことを決定したのですか
Q2 なぜ今このような閣議決定をする必要性があるのでしょうか。我が国の存立が危ないとか、国民の生活が危険にさらされている事情があるのでしょうか。
Q3 では、そのような事情があるからといって、なぜ憲法第9条の解釈を180度変えてまで閣議決定をする必要性、防衛法制を作り変える必要性はあるのでしょうか。
Q4 でも、中国や北朝鮮の脅威が現実化した場合、日本が集団的自衛権を行使することで日米同盟を強化して、米国に守ってもらうことができるのではないですか。
Q5 でも米国の若者は日本を守るために血を流すのに、日本は米国にために血を流さなければ、米国はいざという時日本を守らないのではないでしょうか。日米安保条約はその意味で対等ではないので、この際対等な条約にすべきではないでしょうか。そのためには憲法第9条の解釈の変更は必要ではないでしょうか。
Q6 「切れ目のない」安全保障法制と言いますが、「切れ目」とはどことどこの切れ目でしょうか。
Q7 安倍首相は抑止力を強化して日本は戦争に巻き込まれなくなると説明しますが、本当でしょうか。
Q8 閣議決定で「武力攻撃に至らない侵害への対処」ではどのようなことを決定したのでしょうか。
Q9 運用を変えて迅速に対応できるのは良いことではないでしょうか。
Q10「 平時における自衛隊の警察権行使」では、閣議決定はこれ以外にどのようなことを決定していますか。
Q11 「国際社会の平和と安定への一層の貢献」ではどの様なことを決定したのでしょうか。
Q12 その程度の法制度の見直しでは大して問題ではないのではないでしょうか。自衛隊武力行使を行うことは考えられないのではないでしょうか。
Q13 「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」ではどの様なことを決定したのでしょうか。
Q14 集団的自衛権行使だけを容認するのでしょうか。国連安保理による集団的措置(軍事的措置)は含まないのでしょうか。
Q15 でも国際法では主権国家に集団的自衛権が与えられていますから、我が国がこれを行使しても何ら問題はないのではないでしょうか。
Q16 それはどういうことですか。
Q17 ホルムズ海峡での機雷掃海へ参加するのかしないのか、自民党公明党との間で意見が分かれていると聞いています。安倍首相はホルムズ海峡での機雷掃海をするといっています。本当のところどうなるのでしょうか。
Q18 日米防衛協力の指針とはどんなものですか。
Q19 これまでのガイドラインの内容と憲法第9条とはどのような関係だったでしょうか。
Q20 ではどうして今回の見直しをしなければならなくなったのでしょうか。
Q21 ではガイドラインの見直しの具体的な内容はどうなるのでしょうか。
Q22 見直されたガイドラインと7・1閣議決定とはどのような関係になるでしょうか
Q23 ガイドラインの見直しはいつ頃なされるのでしょうか、安全保障法制の改正問題と関係してきますか
Q24 では政府が行おうとしている安全保障法制はどんな内容なのでしょうか。
Q25 2006年から2007年第一次安倍内閣は、自分の任期中に憲法改正を行うと公言していましたが、その当時安全保障法制を大きく変更したことがあったと聞きましたが、どんな内容でしたか。
Q26 その改正はどんな意味を持っていたのでしょうか。今回の安全保障法制の改正とどのようなつながりがあるのでしょうか。
Q27 7・1閣議決定は三つの分野で安全保障法制を改正すると述べていますが、現行の安全保障法制では三分野にどのような法律がありますか。まずグレーゾーン事態関連の法律から説明してください。
Q28 国際平和協力に関する分野にはどのような法律がありますか。
Q29 武力行使(自衛権行使)に関する分野ではどのような法律がありますか。
Q30 ではこれらの安全保障法制はどのように改正されようとしているのでしょうか。
Q31 詳細なことは法案が明らかにならないと正確な議論はできないでしょうか、改正で問題になる争点としてはどのようなことがあるでしょうか。
Q32 確かに集団的自衛権なのか我が国の防衛(個別的自衛権)なのか曖昧な改正のようですが、何か法的には問題はないのでしょうか。
Q33 武力攻撃事態法では「武力攻撃予測事態」があり、自衛隊法ではその際に防衛出動待機命令を出すことになっていますが、改正法案ではどうなるでしょうか。
Q34 周辺事態法はどうなるのでしょうか。新聞報道では廃止をするという報道があったり、改正をするとの報道があります。
Q35 国際平和協力活動の分野では、PKO協力法はどうなるのでしょうか。自衛隊海外派遣恒久法を作る動きがあると聞いていますが、どのようなものなのでしょうか。
Q36 イスラム国が日本人二人を人質にしましたが、在外邦人救出ができるような法改正を考えているのでしょうか。
Q37 今後安全保障法制の改正を許さないということの重要性は理解できましたが、どうやってそれを阻止できるのでしょうか。
Q37 閣議決定や安保法制の改正が憲法第9条に違反していることは分かりましたが、北朝鮮が弾道ミサイルを撃ち込んだり,中国が尖閣を占拠したらどうするのだ、と問われれば、どう反論すればよいのでしょうか。
Q38 安倍政権はあたかも私達の平和と安全のために憲法第9条の解釈を変更する閣議決定を行い、安保法制の全面改正をしようとしていますが、それに反対するだけでは説得力があまりないと思われます。これに代わるべき安全保障政策はあるのでしょうか。
Q39 今後安全保障法制の改正を許さないということの重要性は理解できましたが、どうやってそれを阻止できるのでしょうか。
 
 次にご紹介するのは、飯島滋明名古屋学院大学准教授(戦争をさせない1000人委員会事務局次長)による論考です。
 比較的コンパクトにまとまっており(と言ってもそこそこ分量はありますが)、まずこちらを読んで概略を頭に入れてから前掲の井上正信さんの論考に進んだ方が頭に入りやすいかもしれません。
 こちらも、各項目の標題のみ引用します(【7】が重複していますが、これも単純なミスでしょう)。
 なお、「戦争をさせない1000人委員会」では、リーフレット「何が問題?日米ガイドライン再改定と戦争法案」(清水雅彦さんと飯島滋明さんが執筆)を製作しており、送料のみ負担すれば必要部数を送ってくれるようです。
 
【1】2014年7月1日の閣議決定ガイドライン改定と「集団的自衛権
【2】目的規定の改正
【3】アメリカのための国家総動員体制、武器使用へ
【4】「グレーゾーン」への対応
【5】「派兵恒久法制定」の動き
【6】「駆け付け警護」「任務遂行」「邦人救出」のための武器使用
【7】「機雷除去」「船舶検査」(いわゆる臨検)について
【7】なにが問題か
【「7月1日閣議決定」「ガイドライン再改定」を根拠に新法制定、廃止、法改正が想定される「戦争関連法案」の一例】
(1) 根拠法
(2) アメリカの戦争のための国家総動員体制、武力行使
(3)「グレーゾーン」への対応
(4) 海外派兵のための法整備
(5) 「駆け付け警護」
(6) 任務遂行のための武器の使用の緩和
(7)「機雷除去」「船舶検査」(いわゆる「臨検」)
 
 最後にご紹介するのは、柳澤協二さん(元内閣官房副長官補)による講演動画です。
 2月3日に行われた「集団的自衛権を考える超党派の議員と市民の勉強会」が、「安全保障法制の第一線で長らく経験を積まれ、この間の集団的自衛権行使の問題においても極めて鋭い提起をしておられる柳澤協二さんを講師に迎え、「戦争立法はこうなる」をテーマにいっしょに考える集いを持ちたいと思います」ということで開催された勉強会の動画です。
 何しろ、安全保障法制のガイドライン交渉や法案作りのプロフェッショナル中のプロフェッショナルである柳澤さんこそ、まことにうってつけの講師ということで決まった企画でしょう。
 ただし、イスラム国人質事件が悲惨な結末を迎えた直後ということもあるかもしれませんが、国家の危機管理や安全保障についての基本的な認識はどうあるべきかということがお話の中心になっていたようで、それはそれで大変聴くべきところが多い講演であると思います。
 
20150203 UPLAN【集団的自衛権を考える超党派の議員と市民の勉強会(第13回)】柳澤協二「戦争立法はこうなる」
 

 私が、3月、4月にかけて学習会の講師に呼ばれた若い弁護士から相談を受けたとすれば、以上に取り上げたコンテンツを紹介した上で、
① 飯島滋明さんの論考を一読して予想される「戦争法制」の概略を頭に入れ、
② 井上正信さんの論考(Q&A)を熟読し、特に重要と思う部分を自分のレジュメにピックアップする。
③ 柳澤協二さんの講演を視聴して、本来あるべき安全保障・危機管理について考える(出来れば、柳澤さんの著書『自分で考える集団的自衛権 若者と国家』も一読する)。
ことを勧めますね。
 実際、実践するだけの時間はないかもしれませんが。