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菅義偉官房長官から臨時国会召集決定要求を行った野党に対する通知書(9/22)から読み取れること

 2017年9月24日配信(予定)のメルマガ金原.No.2945を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
菅義偉官房長官から臨時国会召集決定要求を行った野党に対する通知書(9/22)から読み取れること
 
 積極的に活用しているというほどではありませんが、私もFacebookTwitterのアカウントを作り、毎日ブログ更新情報を発信しています。
  Facebook金原徹雄 
  Twitter金原徹雄 
 そして、FacebookTwitterを通じて知る情報というのももちろんあります。今日は、昨日、そのような方法を通じて知った情報を、記録にとどめるという趣旨で取り上げたいと思います。
 まず、私がSNSを通じて知った情報というのは以下のものです。
 
(引用開始)
野党が、憲法53条に基づき臨時国会召集を要求したのが6月22日。3カ月も店ざらしにしたあげく、こんな紙を持ってきた。これで冒頭解散なら、憲法と国会をこんなにバカにした話はない。
(引用終わり)
 
 このtweetに添付された画像に写っている管官房長官名の文書を書き写しておきます(原文は縦書き)。
 
(引用開始)
内閣閣第一四四号
  平成二十九年九月二十二日
 
                         内閣官房長官  菅   義 偉
 
衆議院議員 野 田 佳 彦 殿
衆議院議員 志 位 和 夫 殿
衆議院議員 小 沢 一 郎 殿
衆議院議員 照 屋 寛 徳 殿
 
 さきに、貴殿方を代表とする安住 淳君外百十九名の方々から衆議院議長を経由して内閣総理大臣宛て臨時国会の召集要求書の提出がありましたが、政府は、来る九月二十八日に、臨時国会を召集することを決定いたしましたから、ご了承願います。
(引用終わり)
 
 上記管官房長官名義の文書については、志位和夫日本共産党委員長Twitterで述べていた感慨に同感の意を表すれば良いようなものですが、やや蛇足めくものの、知っておいた方が良いと思われる補注を若干加えておきます。
 その上で、上記文書は、憲法違反を何とも思わない内閣が存在したという明白な証拠として後世に残すべき歴史的文書だと思いますので、拡散にご協力いただければ幸いです。
 
〇この文書の宛先が、日本共産党志位和夫委員長、自由党小沢一郎(共同)代表と、それぞれ党首宛になっているのに、民進党野田佳彦前幹事長、社民党照屋寛徳国対委員長となっているのは、憲法53条後段に基づく臨時国会(条文上は「臨時会」)の召集決定の要求は、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」をもってすることになっており、今回も、衆参両院で、それぞれ「総議員の四分の一以上」による要求書を提出していることから、衆議院については、要求書提出時の蓮舫代表が参議院議員であった民進党は当時の野田幹事長が、また、党首が国会に議席を有しない社民党福島みずほ副党首は参議院議員)は照屋寛徳国対委員長が、それぞれ衆議院における代表となっていたことによります。
 
憲法第53条に基づき臨時国会召集を要求 野党4党(民進、共産、自由、社民)幹事長・書記局長会談
「記者会見終了後、4党の幹事長・書記局長はそろって川端達夫衆院副議長に臨時国会召集要求書を提出した。また、参院民進、共産、希望、沖縄の風の4会派が臨時国会召集要求書を郡司彰副議長に提出した。」
※金原注 参院の「希望」とは、もちろん噂される小池新党(希望の党)とは全く関係のない、自由党社民党の合同会派「希望の会」のことです。それにしても紛らわしい。
 
〇報道によると、一昨日(9月22日)の持ち回り閣議により、9月28日に臨時国会を召集することが決定されたとのことですが、「議院の総議員四分の一から臨時会の召集を要求し、内閣が臨時会の召集を決定したときは、即日、内閣総理大臣からその旨議長宛に通知するのを例とする。」(「衆議院先例集昭和30年2月版」「一二 議院の総議員四分の一以上の要求又は内閣の必要に基き、臨時会が召集される。」より)とありますので、おそらく、9月22日のうちに、内閣から(管官房長官名でしょう)衆参両院議長宛に、「政府は、来る九月二十八日に、臨時国会を召集することを決定いたしましたから、ご通知致します。」というような文書を送っていることでしょう(読んでいないので、内容については保障できませんが)。
 そして、上記「先例集」には書いていませんが、召集要求を行った議員の代表宛にも、今回のような通知書を届ける例になっているのでしょう。
 しかし、翻って考えてみると、臨時国会(臨時会)の憲法上の召集根拠は53条の以下の規定です。
「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」 
 臨時国会が召集されるのは、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」があった場合(53条後段)、もしくは「内閣が」必要であると判断して「召集を決定」した場合(53条前段)の2つだけです。
 今度召集される第194回国会(臨時会)の召集根拠は、憲法53条前段なのか、それとも後段なのか、どちらなんでしょう?こんなこと、誰も考えていないんだろうか?
 いずれにせよ、9月22日付の管官房長官の4野党に対する文書の内容からは、今度の臨時国会召集の根拠は、憲法53条後段だと言っているように読み取るのが普通でしょう。でも、それってあり得ない!
 各議院の「総議員の四分の一以上」が臨時会の召集決定を要求したのが今年の6月22日ですよ。これを丸々3か月間放置しておいて、「政府は、来る九月二十八日に、臨時国会を召集することを決定いたしました。」って、盗っ人猛々しいというか何というか、言葉もありません。
 たしかに、日本国憲法53条には、「~日以内に」というような、召集決定を行う期間を限定する規定はありませんが、内閣が好き勝手に時期を決められるなどという解釈はあり得ません。
 悪評紛々たる自民党の日本国憲法改正草案(2012年4月)ですら、「いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。」と改正することを提言しており、その理由として、Q&Aにおいて、「「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である」という意見が、大勢でした。」と説明されているほどです。
 あらゆる観点から見て、安倍内閣による臨時国会召集要求の3か月間の放置は、明白な憲法違反として、全ての国民が認識し、記憶すべきことです。 
 
〇しかも、安倍内閣が、野党による憲法53条後段に基づく臨時国会召集要求を無視して放置したのはこれが初めてではありません。2015年1月に召集された通常国会は、何としても安保法制2法を通過させたいという政府・与党の思惑により、9月27日までという大幅な会期延長がなされ、混乱のうちに安保法制が9月19日未明に可決されたことはよくご記憶のことと思いますが、通常国会閉会後の10月21日、野党5党(「維新の党」というのがあったのですね)が憲法53条後段に基づく臨時国会召集要求を行いましたが、安倍内閣はこれを無視し、翌年1月の通常国会まで、ついに臨時国会の招集決定を
行いませんでした。
 私は、多分、安倍内閣憲法の規定を無視するだろうという予想の下(そういう報道もなされていましたし)、過去の先例に比べてどうなのかということをざっと調べ、召集決定要求のあった10月21日のうちにブログを書きました(憲法53条後段に基づく臨時会召集要求と国会の先例について)。
 その結論部分を抜粋して引用しておきます。
 
(引用開始)
 憲法53条後段による臨時会召集要求が行われながら、召集に至らなかった先例は、いずれも衆議院解散総選挙後に召集された特別会の会期が終了した後の召集要求であったこと、要求が行われた時点で既に11月に入っていたことが認められます。
 これに対し、もしも伝えられるように、安倍政権が臨時会の召集を決定せず、次の国会は来年1月に召集される常会となったと仮定すると、おそらく、日本国憲法施行後、常会から次の常会までの間に、臨時会も特別会も全く召集されなかった初の例となるものと思われます。
(略)
 第13回と第14回の常会が連続していますが、これは1955年に廃止された常会の「前倒し」召集の規定に基づくものであって、特殊な例外です。
 たしかに、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」があった場合でも、「〇〇日以内に、その召集を決定しなければならない」という定めはありませんから、内閣に、それなりの裁量の余地があることは憲法も容認していると解すべきなのでしょう。
 しかしながら、もしも安倍政権が臨時会の召集を決定しなければ、過去の先例を超え、召集要求から次期常会が召集されるまでの最長日数記録を更新することはほぼ確実です。
 しかも、解散総選挙があった訳でもないのに、常会から常会の間に臨時会を1度も召集決定しなかった初の例となる訳です。
(引用終わり)
 
〇伝えられるところでは、9月28日(木)に召集される臨時国会では、首相による所信表明演説は行われず、即日解散されると伝えられています。先例によれば、臨時国会召集日に、本会議すら開かれず、衆議院議長応接室に各会派の代表議員が集められ、解散詔書衆議院議長が朗読することによって解散となった例(1986年6月・第二次中曽根内閣)などもあるようです。
 けれども、今回、安倍内閣が冒頭解散をやろうとしている臨時国会というのは、内閣の意思で召集を決定した臨時国会憲法53条前段)ではなく、あくまで、6月22日に行われた野党からの請求(憲法53条後段)によって召集決定を義務付けられた臨時国会のはずですよね(参照:冒頭で紹介した管官房長官の4党代表宛9月22日付通知書)。それにもかかわらず、一切審議をすることなく冒頭解散する(まだ任期は1年以上残っているのに)というのですから、志位委員長ならずとも、「憲法と国会をこんなにバカにした話はない。」と言いたくなるのが当然です。
 
〇まとめ
 今日、長々と書いてきたことを要約しておきます。今後の街頭でのアピール行動などの参考にしていただければと思います。
 
1 9月22日持ち回り閣議での、9月28日に臨時国会を召集するとした決定は、日本国憲法53条後段により、衆参各院の「総議員の四分の一以上の要求」があった場合に内閣に義務付けられた決定である。9月22日付菅義偉内閣官房長官から衆議院4野党代表に対する通知書がそのことを裏付けている。
2 上記衆参各院の「総議員の四分の一以上の要求」がなされたのは、本年6月22日のことであり、安倍内閣が、憲法で義務付けられた召集の決定を行った9月22日までの間に3ヶ月の期間が経過していた。これは、過去の先例から考えても、何の合理的説明もなし得ない憲法違反の行為(不作為)であると言わざるを得ない。
3 しかも、ようやく召集される臨時国会の冒頭で、所信表明演説すらすることなく解散すると伝えられており、憲法53条後段に基づいて召集された臨時国会において、全く審議をする機会を与えないという、二重の意味で憲法の趣旨を没却した行為に及ぼうとしている。
4 その安倍首相が率いる自民党は、来る総選挙において、自衛隊明記の改憲を公約に盛り込むのではないかと伝えられている。そのこと自体の問題性も重要であるが、過去のいかなる政権も行ったことのない憲法違反・憲法無視を平然と行う政権・与党に、改憲を主張する資格などないことを広くアピールしなければならない。