2017年9月23日配信(予定)のメルマガ金原.No.2944を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
いわゆる安保法制2法(「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」)が国会で成立した2015年9月19日から、はや2年が経過しました。
昨年の3月29日に施行されて以降、南スーダン派遣の陸上自衛隊施設部隊に「駆け付け警護」等の新任務が付与されたり、護衛艦(ヘリコプター空母)「いずも」に米艦防護が命じられるなど、着々と安保法制に基づく実績作りが行われています。
私自身、2年前の9.19直後、何をしていたかと振り返ってみると、普通の人とは少し毛色の変わった作業に熱中していたことを思い出します。
皆さんは、2015年9月19日未明に参議院本会議で法案が採択される3日前の9月16日、与党の自由民主党と公明党、野党の日本を元気にする会、次世代の党、新党改革という5党が「平和安全法制についての合意書」を締結し、翌9月17日、参議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における採決に際し、上記5党合意と同趣旨の附帯決議が行われ、さらに、法案成立直後の9月19日に行われた持ち回り閣議において、「5党合意の趣旨を尊重し、適切に対処するものとする。」ことを内容とする「平和安全法制の成立を踏まえた政府の取組について」という閣議決定が行なわれたことをご記憶でしょうか?
何しろ、与野党合意とはいえ、野党3党は議員数1名~5名の弱小政党ばかり、しかも元自民党議員も多いということから、野党の一部も賛成しており、審議は十分に尽くしたという形を整えるために利用されただけ、という見方が多かったのもやむを得ないところであり、私自身も当初はあまり関心を持てませんでした。
ところが、10月第1週のビデオニュース・ドットコム(ニュース・コメンタリー)の神保哲生さんと宮台真司さんによるトークを視聴したことをきっかけとして考えを改め、「5党合意」をしっかりと読み込もうと決意し、何と10回にわたって連載(内8回分で逐条解説を試みた)したものでした。
私を駆り立てたものは何だったのか。
連載の最終回「私はこう読んだ(総集編)」(2015年10月25日)、末尾の「おわりに~5党合意をどう活かすか」において、私は以下のように述べていました。やや長くなりますが引用します(この総集編だけ「である」調で書いたのでした)。
(引用開始)
参議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、安全保障関連2法案が強行採決される前日の9月16日に、自由民主党、公明党、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の5党間で締結された「平和安全法制に関する合意事項」については、締結直後の冷ややかな雰囲気も過ぎ去り、いまやほとんどの国民が忘れてしまっているのではないかと思える今日この頃である。
もちろん、5党合意と一口に言っても、様々な内容を含んでおり、各条項の解釈にしても、必ずしも断定しかねる曖昧さを残すものも少なくない。それに、私自身、浅学非才の故に、思わぬ検討不足や勘違いをしている可能性も十分にある。従って、多くの人が「5党合意を自分はこう読んだ」という意見を次々と発表してくれることが一番良いと思っている。
安保関連法制自体を廃止できる時がくれば、「5党合意」はその意味を失うが、それまでにあとどれだけの期間を要するのか誰にも分からない。それまでにも、生身の自衛官が危険な戦地に派遣される可能性は(法律の施行後は特に)常に存在する。そうである以上、自衛隊の戦地派遣を阻止する、あるいはせめて抑制するために使える手段はどんなものでも総動員しなければならない。私が5党合意の注釈をしつこく続けたのはそのためであった。
このまことに中途半端と言えば中途半端な5党合意が、もしかすると将来、思わぬ効力を発揮する場面があるかもしれない(それが良いことなのかどうかは別論として)。
(引用終わり)
「安保関連法制自体を廃止できる時がくれば、「5党合意」はその意味を失うが、それまでにあとどれだけの期間を要するのか誰にも分からない。」ことが、10回に及ぶ連載を続けさせるモチベーションとなったのでした。
「5党合意」の中身をここで繰り返すことはしませんが、末尾にリンクした連載の、逐条解説(第2回~第9回)はともかくとして、出来れば第1回(資料編)と第10回(総集編)だけでも読んでいただけるとまことに幸いです。
ところで、「安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか」シリーズへの反響はどうだったかというと、少なくとも私の知る限り、全くありませんでした。まあ、私のブログを読んでくれる人自体がとても少ない上に、中身が地味ですからね。
さて、それから2年、相変わらず安保法制は廃止できておらず、いつ廃止できるのかも分かりません。その間、5党合意に加わった3野党の内、1つは党名変更を繰り返し、議員数を2人まで減らしながらも存続していますが(次世代の党→日本のこころ)、残る2つ(日本を元気にする会、新党改革)に至っては既に存在しません。わずかに「5党合意」の中にその名称をとどめるのみ、と言っては失礼かもしれませんが、少なくとも私にとっての両政党に対する記憶はそのようなものです。
しかしながら、2015年9月19日の閣議決定「平和安全法制の成立を踏まえた政府の取組について」を変更する閣議決定はいまだ行われていません。仮に安倍内閣が後継の自公政権に交替したとしても、最低限、この閣議決定を守るように求めることは必要です。そのためにも、とにかく「忘れない」ことが大事です。
そして、「安保法制の廃止」を求め続けることの重要性もまた、言うまでもないことです。その決意を再確認するため、去る9月19日に国会議事堂正門前で行われた「戦争法強行採決から2年、戦争法・共謀罪の廃止と安倍内閣退陣を求める大集会」(主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会/参加者:1万0500人と発表)での各登壇者のスピーチをご紹介しますので、是非視聴願います。オープニングアクトの歌を除くスピーチ部分だけなら、約1時間程度です。
いくつも動画がアップされていますが、ここでは、1本にまとまっている「Makabe Takashi」さんによる動画と、発言者ごとに13分割された「The River」さんの動画をご紹介することにします。是非、集会を追体験し、「安保法制の廃止」を求め続ける意識を高めましょう。
【Makabe Takashiチャンネル】
冒頭~ 〈プレ・コンサート〉なりぞうさん【1/13】(17分38秒)
18分~ 司会者からのお知らせ
20分~ 開会
22分~ コール (1)
53分~ コール (2)
1時間03分~ 澤口香織さん(安保関連法に反対するママの会@大田)
1時間13分~ 山口あずささん(安保法制違憲訴訟の会事務局次長)
1時間20分~ 〈行動提起〉福山真劫さん(戦争をさせない1000人委員会)
1時間29分~ コール (3) ~ 閉会
【The Riverチャンネル】
〈プレ・コンサート〉なりぞうさん【1/13】(17分38秒)
コール (1)【2/13】(4分59秒)
コール (2)【8/13】(2分45秒)
澤口香織さん(安保関連法に反対するママの会@大田)【10/13】(10分08秒)
山口あずささん(安保法制違憲訴訟の会事務局次長)【11/13】(6分42秒)
〈行動提起〉福山真劫さん(戦争をさせない1000人委員会)【12/13】(8分52秒)
コール (3) ~ 閉会【13/13】(2分49秒)
(弁護士・金原徹雄のブログから/「安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか」シリーズ)
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