2017年12月3日配信(予定)のメルマガ金原.No.3005を転載します。
普段は手に取ることのない女性週刊誌(もっとも、その他の週刊誌を手に取ることもめったにありませんが)について、過去何度かブログで取り上げてきました。
巻末のリンク一覧(我ながら網羅できなていないと思います)をご覧いただければ分かると思いますが、三大女性週刊誌のうち、最近は「週刊女性」(主婦と生活社)に注目することが多かったのですが、今日取り上げるのは「女性セブン」(小学館)です。
「24条変えさせないキャンペーン」サイトが「女性セブン」2017年12月14日号に掲載された記事(NEWSポストセブンにアップされた)を紹介し、その同キャンペーンの記事を紹介したFacebookの投稿をシェアしてくれた方がいたおかげで私も気がついたという次第です。
このようにして、SNSの「友達の輪」が情報を伝播していってくれる訳です。結果として、自分のところまで回ってきたのが「良記事」か否かの見極めが出来るかどうかは、もちろん受取手の能力次第ですけどね。
ところで、「女性セブン」2017年12月14日号が掲載した記事は、「24条変えさせないキャンペーン」が取り上げたことで分かるとおり、憲法24条にまつわる基本的なエピソードの紹介です。
憲法についてある程度勉強してきた人にとっては、特に目新しいところのない内容かもしれませんが、ベアテさんのことも、現行24条のことも、自民党改憲案(「家族は、互いに助け合わなければならない。」は何故ダメなのか)も、全然知らないという人にこそ読んでもらいたい、素晴らしい記事です。
このように、女性週刊誌は頑張ってくれているのですが、若年層向けの雑誌はどうなんだろう?週刊ビッグコミックスピリッツが日本国憲法全条文を綴じ込み付録にしたことがあったけれど(『Our Book 日本国憲法』を綴じ込んだ週刊ビッグコミックスピリッツの心意気/2016年7月5日)。
それでは、「女性セブン」2017年12月14日号に掲載された2本の記事をご紹介します。
日本国憲法の男女平等のために奮闘した米国人女性の生き様
(抜粋引用開始)
(略)
彼女の父親は有名ピアニストのレオ・シロタ。1928年に家族で来日し、5才から15才まで日本で暮らしたベアテさんは、日本文化に精通していた。
(略)
「彼女は、日本の伝統的な『家制度』によって女性が虐げられ、参政権もなく、結婚も離婚も自分の意志でできずに苦しむ現状を見てきた。『女性に人権がないと日本は平和になれない』という強い想いを持っていました」(清末愛砂さん)
(略)
(略)
ベアテさんが書いた草案は、男女平等、男女同権から妊婦と乳児の公的保護、教育の拡充、児童の不当労働の禁止、長男の単独相続権の廃止など多岐に及んだ。従来の日本では後回しにされてきた“弱者”に寄り添う文言だった。しかし、草案作成の統括責任者だった民政局次長のケーディス大佐は、これを読んで表情を曇らせた。
「ベアテさんの草案は、個別具体の事例まで詳細に踏み込んだため、相当な長文になっていた。GHQからすると、憲法はあくまで原則の骨子を示すもので、簡潔明瞭であることが求められる。日本政府との争点を極力減らしたいという意向もあったのでしょう。『詳細な制度は民法に委ねればよい』として、大部分が削られることになりました」(ジェームス三木さん)
無論、ベアテさんは猛抗議した。彼女は過去にインタビューでこう答えている。
《そのときに私、泣いたんです。「憲法のなかに書かないと、民法に入らない」って。だって、私は虐げられてきた日本の女性の姿をこの目で見てきましたからね。民法を書くのは官僚的な日本の男性でしょう。彼らはそんなこと書かないと思っていました》
「日本国憲法について、アメリカからの『押しつけ憲法だ』という人がいますが、それを言ったらわれわれが今謳歌している民主主義自体が押しつけです。日本国憲法は、当時の日本人が考えつかなかった革新的な憲法です。ベアテさんは、『自分の持ち物よりもいい物を誰かにあげるとき、それを押しつけとは言わない』と話していました。私も同じ気持ちです。日本国憲法は押しつけではなくて“ギフト”なのだと思います」(三木さん)
(引用終わり)
NEWSポストセブン 2017.12.01 07:00(※女性セブン2017年12月14日号)
(抜粋引用開始)
(略)
《婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない》
《配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない》
(略)
《家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない》
《婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない》
《家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない》
唐突に登場する「家族を大切にせよ」という新たな条文。加えて、現行の24条で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し」と定める部分が、「両性の合意に基づいて」に修正。「のみ」が削られる形となった。財産権や相続権に関する条文にも、「家族」「扶養」「後見」といった文言が加筆されている。この改正案の意味するところを、女性の権利問題に詳しい弁護士の打越さく良さんが解説する。
「社会を家族単位で規定しようとする思想で、『個人』を骨抜きにする意向が透けて見えます。新たな条文は、とりわけ女性へ向けたものでしょう。個人を尊重し、女性が社会に出ていつまでも結婚しなければ、『家族』がなくなり、子供も生まれず、ひいては次代の労働力がいなくなる…。そんな懸念のもと、改憲派は家族主義にこだわっているように思えます。『女性は家の中で役割を果たしなさい』と。夫婦という横の繋がりよりも、祖父母、父母、子供という血族の流れを重視し、夫は働き、妻は良妻賢母として家に尽くし、子供を産んで育てるという構図を再び作りたいのでしょう。ベクトルが戦前に向いています」
「家族主義は、ともすれば社会福祉の削減にも繋がりかねない側面を持っています。子育てや介護がいくら経済的に大変でも、『国を頼らず家族でやりなさい』と突き放されてしまう。保育園や介護施設が圧倒的に足りない現状が、家族主義の名の下で正当化されてしまう可能性もある」
婚姻の規定から「のみ」の2文字を削ったことも、大きな問題だと打越さんは指摘する。
「両性の合意“のみ”で決まるのであれば、他人が介入する余地はない。でも、ここから“のみ”の言葉を外してしまうと、例えば“家柄”を気にして親が口を出す、ということがまかり通ることになる。結婚が個人と個人のものではなく、家と家のものに戻ってしまうのです」
《『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し』とあるから高校生の桃子ちゃんが変な男と結婚したいって言っても菊池さんは止められない》
《残念ながら両性の『合意のみ』によって成立した結婚は『合意のみ』によって気軽に破局を迎えやすいものです》
《こんな憲法だと家族が崩壊してるのも頷ける》
安倍政権が日本会議の思想に影響を受けているかどうかは定かではないが、これだけ時代と逆行する改正案を作りながら、自民党は「女性が輝く社会の実現」を党のスローガンに掲げているのだから笑えない。前出のジェームス三木さんが語る。
「時代に応じて変えた方がいい条文も確かにあるでしょう。最近は男が弱くなってきて、これでいいのかと思うところもある(笑い)。でもベアテさんが24条に込めた想いだけは、忘れないでほしい。当時の日本人女性が、どれほど過酷な社会で生きていたか。24条はその歴史を示す証であるのです。願わくば、天国の彼女にも胸を張れる国でありたいものです」
(引用終わり)
(弁護士・金原徹雄のブログから/女性週刊誌関連)
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