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第5回「日隅一雄・情報流通促進賞」表彰式を視聴する~今年の大賞は「みんなのデータサイト」

 2017年12月20日配信(予定)のメルマガ金原.No.3022を転載します。
 
第5回「日隅一雄・情報流通促進賞」表彰式を視聴する~今年の大賞は「みんなのデータサイト」
 
 産経新聞出身の弁護士でNPJ(News for the People in Japan)編集長、そして「情報流通促進計画BY日隅一雄(ヤメ蚊)」で鋭い意見を発信するブロガーというのが、私が認識していた日隅一雄(ひずみ・かずお)さんという存在でした。
 その日隅さんが、宿痾に冒されながら3.11後の東電記者会見の取材を続けた末、2012年6月に逝去された後、同年12月、「日隅一雄・情報流通促進基金」が設立されました。少し長くなりますが、「設立の言葉」を引用したいと思います。
 
(引用開始)
■日隅一雄・情報流通促進基金 設立の言葉
 日隅一雄さんは、2012年6月12日、胆のう癌のため亡くなった弁護士・ジャーナリストです。享年49歳でした。
 日隅さんは、5年間、産経新聞社で新聞記者として仕事をし、1998年、弁護士となりました。
 記者経験を生かし、「NHK番組改変事件」や「沖縄密約情報公開訴訟」などの表現の自由をめぐる裁判に心血を注ぐ一方、報道被害の救済、情報公開の推進と内部告発者の保護などの活動に力を尽くしました。
 日隅さんは、「新聞記者を辞めた」=「ヤメ蚊(ブン)」弁護士と名乗り、「情報流通促進計画」と題するブログを開設して自ら情報の公開や発信に取り組みました。弁護士の仲間と設立したインターネットメディア「News for the People in Japan(NPJ)」では編集長として活動しました。
 日隅さんは、また、この国のマスメディアにおける構造的欠陥であるクロスオーナーシップ制や公権力によるメディアへの介入、審議会委員の選任方法における問題点を調査、研究した著書を刊行しています。
 2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所の事故直後からNPJ記者として自ら記者会見場に通い、東京電力と政府の情報隠しと闘い、メルトダウンSPEEDI隠し、放射能汚染水の海洋放出などの情報を粘り強く追求しました。日隅さんの記者会見場における活躍は、インターネット中継などを通じて日本中で視聴され、多くの人から熱い共感がよせられています。
 このような活動の最中、日隅さんは体調の不調をうったえ、検査の結果、2011年5月、末期胆のう癌で余命6カ月の告知を受けました。
 しかし、日隅さんは、数週間の入院治療ののち、再び病をおして記者会見に出席し続け、その回数は110回に及びました。加えて、主権者である市民が、自ら判断するために公的情報の公開とその流通が必要だという強い信念のもと、癌の激痛をおして体験と思索をいくつもの著書にまとめ、「市民が主人公になる社会」の実現を強く訴え、子どもたちに「主人公となる幸せ」を託しました。自ら企画したNPJ主催の連続対談を6回やりとおし、他界七日前の福島県須賀川市での講演や他界二日前の武蔵野市での講演など多数の講師活動にも献身しました。前日まで執筆、メールなどに尽力しましたが余命の告知から約1年にあたる2012年6月12日逝去しました。
 「日隅一雄・情報流通促進基金」は、「市民が主人公になる社会」のため日々発信を続けながら亡くなった日隅さんの願いを継承し、さらにそれを発展させることを目的として日隅さんの友人、仲間たちによって設立されました。
 基金は生前の日隅さんの著作や活動を広めます。また表現の自由と知る権利が保障され、市民が主人公になる社会の実現をめざして活動を行います。この考えを分かち合い、皆さまの力で、この「日隅一雄・情報流通促進基金」を発展させていただきますようお願いいたします。
 闇に光をもたらし、希望のために闘い続けた日隅一雄さんの精神を語り継ぐために。
2012年12月12日
日隅一雄・情報流通促進基金
代表理事 海渡雄一(弁護士)・桂敬一(ジャーナリスト)
同 理事 梓澤和幸(NPJ代表)・宇都宮健児(日弁連前会長)・木野龍逸(ジャーナリスト)・白石草(OurPlanet-TV)・田中早苗(弁護士)・西野瑠美子(NHK番組改変訴訟原告団)(五十音順)
(引用終わり)
 
 この日隅一雄・情報流通促進基金による主要な活動の1つが、「日隅一雄・情報流通促進賞」です。その目的は以下のようにホームページで説明されています。
 
(引用開始)
 日隅一雄・情報流通促進賞は、表現の自由、情報公開、国民主権の促進に生涯を捧げた日隅一雄の理念を基に日隅一雄・情報流通促進基金により2012年に設立されました。公正な情報の流通の促進をし、真の国民主権の実現に貢献している個人や団体を顕彰し、支援を行うことを目的としています。
(引用終わり)
 
 これまで5回の受賞者をご紹介しましょう。
 
第1回(2013年)
大賞 情報公開クリアリングハウス(代表:三木由希子)
奨励賞 CRMS(市民放射能測定所)(代表:丸森あや)
同 福島原発告訴団(代表:武藤類子)
特別賞 東京新聞こちら特報部」(代表:野呂法夫)
 
第2回(2014年)
大賞 FFTV(フクロウ・FoEチャンネル)満田夏花・阪上武
奨励賞 「福島原発事故 県民健康管理調査の闇」(岩波書店)日野行介
同 海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会
特別賞 「福島原発事故 東電テレビ会議 49時間の記録」(岩波書店)宮﨑知己・木村英昭
同 秘密保全法に反対する愛知の会
 
第3回(2015年)
大賞 「原発と大津波 警告を葬った人々」(岩波新書添田孝史
奨励賞 季刊誌「ママレボ」和田秀子・吉田千亜
特別賞 『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議
同 東海林路得子
 
第4回(2016年)
大賞 金聖雄(袴田巖さんを撮影した映画「夢の間の世の中」制作)
奨励賞 中日新聞記者・榊原崇仁(新聞紙面を通じた継続的な原発報道)
特別賞 共同通信記者・鎮目幸司(福島原発事故津波対策懈怠に関する一連の報道)
同 毎日新聞記者・青島顕・日下部聡(秘密保護法に関する一連の報道)
 
第5回(2017年)
大賞 「みんなのデータサイト」の活動(共同代表:石丸偉丈、阿部浩美、大沼章子)
【表彰理由】「みんなのデータサイト」は、東京電力福島第一発電所事故により、放射性物質で汚染した土壌を市民の手で計測し、集積した上で、地図上に分かりやすくプロットするという市民参加型のプロジェクトを実施。17都県の土壌採取を広く呼びかけて測定し、土壌汚染データを集積した上で、 市民の立場で科学的データをわかりやすくまとめて公開していることを評価し、大賞に選定しました。
奨励賞 尾崎孝史(SEALDs参加者への取材活動) 
【表彰理由】写真家としてSEALDsへの継続的な取材を行い、写真集「SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語」を著しました。安保法反対運動をはじめとして新しい運動スタイルを切り拓いたSEALDsの動的な情報発信を切り取って、豊富な写真とともに詳細な記録として残したことは、一過性にとどめない未来に続く情報流通として優れた作品になっており、奨励賞に選定しました。
特別賞 木村真森友学園問題にかかわる情報公開を含む調査活動)
【表彰理由】豊中市議の木村真さんは、森友学園が新設する「瑞穂の国記念小学校」の児童募集ポスターを目にしたことをきっかけに、学園が開校する土地取引の情報公開に着手。世間が着目する前に、いち早く問題を発見し公文書を通じて実態を明らかにしようと取り組みました。森友学園の一連の疑惑の端緒になり、その後の情報公開を求める流れをつくった功績を評価し、特別賞に選定しました。
同  小原美由紀(「コッカイオンドク!」活動)
【表彰理由】「コッカイオンドク」は、共謀罪などをめぐり、噛み合ない与野党の国会質疑内容をいちはやく文字に起こし、市民が大臣や国会議員に扮して音読する取り組みです。国会会議録ではわからない間合いをリアルに再現し、市民が自ら表現活動として行うというユニークさは、市民が情報流通の主体となる新しい活動として優れていることから、特別賞に選定しました。
 
 今年(2017年)の大賞は、「みんなのデータサイト」の活動に贈られました。【表彰理由】を読んだだけではよく分からない、そもそも「みんなのデータサイト」って何だ?と思われる方がおられるかもしれませんので、サイト自体をご紹介しておきます。
 
みんなのデータサイト
 
 「みんなのデータサイト 新着情報ブログ」に掲載された「受賞のお知らせ」を引用したいと思います。
 
(引用開始)
 みんなのデータサイトは2012年に発足し、市民と34の測定室が協力し合い、2011年の東京電力福島第一原発事故以降の放射能汚染測定データを蓄積・公開してまいりました。
 私たちのデータベースには、食品で1万5千件近く、土壌データで3,500件近くのデータが、市民力によって積み上げられ、web上でどなたでも検索閲覧ができます。
 食品データの一件一件は、多くの一般の方々が、お子さんの健康などを心配され、測定に持ち込まれたデータを中心に積み上げられており、一つ一つのデータが貴重なものです。ここまでの形になったのは、本当に多くの方との協力によってしか成り立ちえないことでした。
 また2014年からは、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」と題した、東日本17都県にわたる広範囲な土壌測定を行い、延べ人数4,000人を超える皆様と共に、各地で土壌を採取測定し、データを積み上げ、汚染状況を可視化する取り組みを進めてきています。
 土壌データは、チェルノブイリ事故の後、ウクライナベラルーシでは国費をかけて大規模な測定を行い記録・公開し、避難や保養などの判断基準として使用しているのに対し、日本ではほぼ空間線量のみの測定にとどまっています。また、原発事故前の20倍もの高い値である、年間20mSvという基準が採用され続け、これが住民の避難・帰還基準の判断に用いられているのが現状です。
 このような中、「自分たちの住む地域の汚染を知る権利があるはずだ」という思いのもと、「政府がやらないなら自分たちで明らかにしよう」と、市民力でできるだけ多くの「実際のデータ」を調査・記録・公開することに努めてまいりました。このデータを多くの人に知っていただき活用できるよう、これからも取り組んでまいります。
 今回の受賞は、これまでに全国の測定所に測定を依頼してくださった市民の皆さま、採取活動やカンパなどの資金で私たちを応援してくださった方を含め、非常に多くの方々と共にいただいたものだと思い、共に喜びたいと思います。
 市民科学の力で放射能汚染の実態を、測定データの積み上げにより提示出来ていることに、大きな力を感じます。
 日隅情報流通促進基金の関係者の皆様へ心より感謝申し上げますと共に、原発事故の爪痕を測定を持って可視化し、さらに多くの皆様へ貢献していけるよう、この受賞を励みとし、私たちはさらに前進してまいります。
 みんなのデータサイトを、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
   みんなのデータサイト スタッフ一同
(引用終わり)
 
 今年(2017年)の日隅一雄・情報流通促進賞表彰式が、去る12月15日(金)18時30分から、日比谷コンベンションホールにおいて開催されました。共催団体となっているNPJが動画を公開していますので、ご紹介しておきます。
 
第5回 日隅一雄・情報流通促進賞表彰式(1時間43分)
冒頭~ 司会:小竹ひろこ
1分~ 開会挨拶 海渡雄一「日隅一雄・情報流通促進基金代表理事
10分~ 書籍紹介『ウホウホあぶないウホウホにげろ』(日隅一雄:原案、一色悦子:文、市居みか:絵/2015年/子どもの未来社
12分~ 記念講演「治安維持法といま」 増本一彦さん (治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟)
41分~ 審査の講評総評 三木由紀子さん
46分~ 特別賞:森友学園問題にかかわる情報公開を含む調査活動 豊中市議会議員の木村真さんへ
52分~ 特別賞:「コッカイオンドク!」活動 小原 (コハラ) 美由紀さんへ
1時間06分~ 奨励賞:SEALDsへの継続的な取材活動 尾崎孝史さんへ
1時間14分~ 大賞:「みんなのデータサイト」の活動 共同代表の石丸偉丈さん、阿部浩美さん、大沼章子さんへ
1時間34分~ 事務局からのお知らせ(第6回募集について)
1時間36分~ 閉会挨拶 梓澤和幸「日隅一雄・情報流通促進基金代表理事