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「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」による被災者支援がさらに3年間延長されました

 2018年4月2日配信(予定)のメルマガ金原No.3105を転載します。
 
東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」による被災者支援がさらに3年間延長されました
 
 今日は、まず、年度末の1日前(平日としては最終日)である3月30日付で発出された日本弁護士連合会の会長談話をご紹介しようと思います。
 中本和洋会長名で出される会長声明、会長談話も、おそらくこれが最後(の1つ)であったはずです。
 
東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律の一部を改正する法律」の成立に当たっての会長談話
(引用開始)
 本年3月30日、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(以下「本特例法」という。)の一部を改正する法律案」が可決され、成立した。これにより、本特例法の有効期限が本年3月31日から更に3年間延長された。まずは、本特例法の有効期限延長に向けて尽力された各政党、国会議員の方々、その他の関係者の方々に敬意を表したい。
 本特例法は、東日本大震災の被災者支援のため、柔軟な法的支援事業の創設を求める当連合会の取組等により、2012年(平成24年)3月23日に成立した。その後、2015年(平成27年)3月31日に一度延長されたものの、本年3月31日に効力を失うものとされていた。
 しかし、本特例法による法律相談件数は、2012年度(平成24年度)以降、毎年5万件前後で推移してきており、東日本大震災の発生から7年以上を経過した現在においても、いまだ復興は道半ばである。
 当連合会は、被災者及び被災地の状況に鑑み、2017年(平成29年)7月20日付けで本特例法の有効期限の再延長を求める要望書を取りまとめ、その実現に向けて取組を行ってきた。この要望に沿った今回の改正を歓迎するとともに、今後も被災者の生活再建や被災地の復興に向けて、更なる法的支援の充実に万全を期す所存である。
 
               2018年(平成30年)3月30日
                 日本弁護士連合会      
                   会長 中本 和洋
(引用終わり)
 
 以上の談話を読んだだけでは、日弁連が何を「歓迎」しているのか、よく分からないと思います。今日のブログは、その解説を試みようというものです。
 
 2012年(平成24年)3月23日に成立した「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」は、その附則第3条において、「この法律は、この法律の施行の日から起算して三年を経過した日に、その効力を失う。」と規定されていました。
  そこで、最初の失効予定日でああった2015年(平成27年)3月31日を3年間延長する法律が成立したものの、再び失効予定日の2018年(平成30年)3月31日が迫ってきたため、再度期間を3年間延長する法律案が3月30日に成立したのです。
 その審議経過を示す衆議院ホームページによれば、3月27日に衆議院において全会一致で可決され、同月30日に参議院でも可決されて成立しました。
 法案の中身は、附則第3条第1項の「平成三十年三月三十一日」(法律の失効日)を「平成三十三年三月三十一日」に改めるというものです。
 
 それでは、もともとこの6年前に出来た特例法は、どういう「趣旨」の下に、どんな「特例」を定めていたかを説明します。
 まず法律の「趣旨」です。特例法第1条は以下のように規定しています。
 
 (趣旨)
第一条 この法律は、東日本大震災の被災者が裁判その他の法による紛争の解決のための手続及び弁護士等のサービスを円滑に利用することができるよう、東日本大震災の被災者に対する援助のための総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)第十三条に規定する日本司法支援センター(以下「支援センター」という。)の業務の特例を定めるものとする。
 
 上記表現は、やや分かりにくいかもしれません。「東日本大震災の被災者に対する援助のための総合法律支援法」という法律がある訳ではなく、日本司法支援センター(愛称「法テラス」)の業務を定めた「総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)」第13条の規定の特例を、「東日本大震災の被災者に対する援助のため」に設けたということです。
 要するに、東日本大震災による被災者に対する法的支援の一方策として、この特例法が制定されたのですが、特例の内容を理解するためには、特例が適用されない通常の場合はどうか?ということと対比するのでないと、特例の特例たるゆえんが理解できませんよね。
 ただ、それをやろうとすると、そもそも法テラス(日本司法支援センター)とはどういう組織で、その主たる業務である民事法律扶助の内容はどういうものか、一から説明しなければならないので、これはなかなか大変です。ましてや、その前史である、今はなき財団法人法律扶助協会(日弁連が設立)にまで話を遡らせたらいよいよ収拾がつかなくなりそうです。
 
 そこで、特例法が成立した2012年(平成24年)3月23日付で法テラスが発出したプレスリリースが比較的分かりやすく、この制度(特例)の概要を説明していますので、これを引用するとともに、若干のコメントを付すことによって本稿の責めをふさぎたいと思います。
 
(引用開始)
                                                 日本司法支援センター(法テラス)
 
            「東日本大震災被災者援助特例法(震災特例法)」について
 
 平成24年3月23日に、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(震災特例法)が成立しました。法テラスはこの法律に基づき、施行日から3年間にわたって「東日本大震災法律援助事業」を新たな事業として実施します。
 
東日本大震災法律援助事業」の概要
 東日本大震災の発災以降、多くの被災者が、相続、不動産、二重ローンのほか、原発事故による被害の損害賠償請求など様々な法的問題に直面しています。「東日本大震災法律援助事業」は、東日本大震災の被災者の方々を対象に、弁護士・司法書士による無料法律相談、民事裁判等の各種法的手続や書類の作成を弁護士・司法書士等に依頼する場合の費用を立て替えるというもので、主な特徴は次のとおりとなります。
 
■資力にかかわらず、すべての被災者が利用可能
 本事業の対象者は、東日本大震災の被災者で、東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村(東京都を除く。詳細は別紙参照。)に平成23年3月11日に住居や営業所等があった方となります。
 なお、従来から法テラスが行っている無料法律相談や弁護士・司法書士の費用等を立て替える事業(民事法律扶助)では、収入や資産が一定額以下であることが利用の条件となりますが、本事業にはこのような条件はありません。
※金原コメント 通常の民事法律扶助を利用するための要件となる「収入や資産が一定額以下であること」について、具体的な基準については以下のページなどをご参照ください。「民事法律扶助のしおり」
「弁護士・司法書士と相談したい」
 なお、特例法が適用される「東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村(東京都を除く)」がどこか、法テラスの上記プレスリリースに地図付きで明示されていますのでご確認ください。
(全市町村が対象となっている県)
(一部の市町村が対象となっている県)
青森県、栃木県、茨城県、千葉県、新潟県、長野県  
 
東日本大震災に特有の法的手続にも幅広く対応
 本事業における無料法律相談は、刑事事件以外の法的問題について幅広くご利用いただくことができますが、裁判等の各種法的手続の代理や書類作成を弁護士・司法書士等に依頼する際の費用については、震災に起因する紛争であることが利用の条件となります。
 従来の民事法律扶助業務では、弁護士・司法書士が代理受任あるいは書類作成することができるのは、主として民事・家事・行政に関する裁判所の手続に限られていましたが、本事業では、より幅広い範囲の法的手続についてご利用いただくことができます。
 例えば、原発事故による被害について損害賠償請求をする場合、東京電力㈱が指定する請求書の提出や原子力損害賠償紛争解決センターなどのADR(裁判外紛争処理)機関の利用など、通常の民事裁判手続以外に、新たな法的手続が設けられていますが、本事業では、これらの手続も対象となります。また、被災地域では、生活保護費の受給、不動産登記、税の減免措置など行政上の決定に対する「行政不服審査」の手続が増加することも考えられ、民事法律扶助業務では対応が難しかったこれらの手続についてもカバーできるなど、被災者にとってより利用しやすいものとなっています。
※金原コメント ここでは、弁護士などが依頼者の代理人となって法的手続を行う場合などについて説明されていますが、この場合でも、無料法律相談と同様、「資力にかかわらず、すべての被災者が利用可能」です(通常の民事法律扶助では、収入や資産が一定額以下である必要があります)。ただし、この特例を利用しようとする場合には、「震災に起因する紛争であることが利用の条件」となります。従って、3.11当時、災害救助法適用市町村(東京都を除く)に居住していた方であっても、「震災に起因する」とは認められない紛争に関しては、特例法は適用されず、(資力要件を満たせば)通常の民事法律扶助を利用していただくことになります。
 
■ 弁護士・司法書士費用返済の負担にも配慮
 民事法律扶助業務では、弁護士・司法書士による事件の受任が決定すると、原則としてすぐに弁護士・司法書士費用の返済(月々5千~1万円)が開始されます。しかし、被災地における厳しい雇用情勢などを背景に、被災者において安定的な収入を得ることが困難な状況にあることを踏まえ、本事業では、事件が終了した段階から費用の返済が開始されるようになっています。
※金原コメント 通常の民事法律扶助にあっては、「進行中償還」が原則であるのに対し、震災特例法が適用される場合には、全件、事件終結まで償還が猶予されるという意味です。
(引用終わり)
 
 3.11から既に7年以上が経過したというものの、会長談話が言うとおり、「いまだ復興は道半ば」です。そういう意味からも、2011年3月11日に災害救助法適用地域(東京都を除く)に住居や営業所があった方が、資力を問わない無料法律相談を受けたり、震災に起因する紛争について弁護士等による代理援助などの法的サービスが受けたりするニーズはまだまだあると思います。
 日弁連会長談話が「今回の改正を歓迎する」と述べた意味を、私なりに解説すると以上のようなことになります。
 なお、詳細は、法テラス(日本司法支援センター)ホームページのトップページから入れる「東日本大震災被災者への法的支援」のコーナーをご参照ください。