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「平成30年7月豪雨による災害」について総合法律支援法に基づく無料法律相談を適用する政令が施行されました(2018年7月14日)

 2018年7月15日配信(予定)のメルマガ金原No.3209を転載します。
 
「平成30年7月豪雨による災害」について総合法律支援法に基づく無料法律相談を適用する政令が施行されました(2018年7月14日)
 
総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)
(目的)
第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、法による紛争の解決が一層重要になることにかんがみ、裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者(弁護士及び弁護士法人以外の者であって、法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者をいう。以下同じ。)のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援(以下「総合法律支援」という。)の実施及び体制の整備に関し、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、その中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とする。
(この章の目的)
十三条 日本司法支援センター(以下「支援センター」という。)の組織及び運営については、この章の定めるところによる。
第十四条 支援センターは、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的とする。
(業務の範囲)
第三十条 支援センターは、第十四条の目的を達成するため、総合法律支援に関する次に掲げる業務を行う。
一~三 略
四 著しく異常かつ激甚な非常災害であって、その被災地において法律相談を円滑に実施することが特に必要と認められるものとして政令で指定するものが発生した日において、民事上の法律関係に著しい混乱を生ずるおそれがある地区として政令で定めるものに住所、居所、営業所又は事務所を有していた国民等を援助するため、同日から起算して一年を超えない範囲内において総合法律支援の実施体制その他の当該被災地の実情を勘案して政令で定める期間に限り、その生活の再建に当たり必要な法律相談を実施すること。
五~十二 略
2 略
3 略
 
 昨日(7月14日・土曜日)午後6時から、愛媛弁護士会において、「平成30年7月豪雨災害」に対応するための研修会が開かれましたが、日本弁護士連合会が共催し、テレビ会議システムを通して全国の弁護士会に中継され、私も、和歌山弁護士会館で同研修を受講しました。講師には、平成26年広島豪雨災害を広島弁護士会会員として経験した弁護士2名(内1名は法テラスの常勤弁護士で、その後、広島から本部を経て現在は福岡に転勤)が講師を務められ、大規模災害、とりわけ、豪雨災害が発生した場合に、緊急の相談に対応する弁護士が身につけておくべき心構えやスキルについて、実際の体験を踏まえた貴重な助言が得られ、今後いつどこで発生してもおかしくない大規模災害時の弁護士の対応を考える上で、とても役立つ研修でした。
 
 ところで、同研修会の閉会挨拶で、日弁連の担当副会長から、「今回の平成30年7月豪雨を、総合法律支援法30条1項4号に基づく「非常災害」に指定する政令が、今日の閣議で決定した」という報告がなされ、何はともあれ「良かった」と喜んだものでした。
 
 既に、大きな被害を受けた被災地の弁護士会では、無料の電話相談や面接相談をいち早く始めているところが多く、そういうところでは、会員弁護士のボランティア、あるいは、各弁護士会の費用負担でとりあえず緊急対応しているところが大半でしょう。
 けれども、いつまでもそのようなボランティア精神だけに期待することは出来ませんので、総合法律支援法30条1項4号の指定が期待されていたのです。
 
 ここで、平成16年に作られた総合法律支援法とは何を定めた法律か?というようなことから説いている余裕はありませんので、「総合法律支援」実施の中核組織とされている日本司法支援センター(愛称「法テラス」)のホームページなどをお読みください、と申し上げるにとどめておきます。
 
 総合法律支援法30条は、同法の中でも最も重要な規定であり、法テラスが行うべき業務を列挙しています。
 そのうち、今回問題となっているのが1項4号の規定であり、平成28年改正(同年6月3日公布)で新たに法テラスが行うことになった業務のうちの1つですが、このうち、特定援助対象者援助事業とDV等被害者法律相談援助事業については、準備を重ねて、今年の1月24日に施行されましたが、1項4号のみは、法律公布前の平成28年4月に発生していた熊本地震に適用する必要があったため、先行して同年7月1日から施行されました。
 
  総合法律支援法30条1項4号をお読みいただければ分かるとおり、政令によって、①「非常災害」を指定し、②対象となる「地区」を指定し、③「期間」(発災から1年を超えない範囲)を定めることによって、被災者に対する資力を問わない無料相談を実施することができるようにしたものです。
 ちなみに、法テラスが行う一般の無料法律相談は、一定の収入・資力の範囲内の方が対象ですが、この非常災害相談が適用されれば、資力は問いません。
 
 この無料相談が、法テラス自身が行う相談会で実施できることは言うまでもありませんが、他機関(例えば弁護士会)が行う無料相談会などであっても、法テラスの指定相談場所としての指定を行うことにより、柔軟に利用できる制度設計になっているはずです。
 
 これまでの適用例は熊本地震だけであり、平成28年7月1日に施行された政令により、①「平成二十八年熊本地震による災害」を「非常災害」と指定し、②「熊本県」を適用対象区域とし、③期間は、政令施行日から「平成二十九年四月十三日」までと定められました(平成二十八年熊本地震による災害についての総合法律支援法第三十条第一項第四号の規定による指定等に関する政令)。
 
 今回の「平成30年7月豪雨災害」は、「平成28年熊本地震による災害」と異なり、被災地が西日本一帯に広く分布しており、総合法律支援法30条1項4号による指定が迅速になされるのだろうか?という懸念もありましたが、7月14日に素早く政令が施行されたことは高く評価して良いことだと思います。
 
 昨日(7月14日)、公布・即日施行された「平成三十年七月豪雨による災害についての総合法律支援法第三十条第一項第四号の規定による指定等に関する政令(第二百十二号)」が、「平成30年7月14日 官報(号外特第12号)」2頁に掲載されていますので、以下に引用します。
 
(引用開始)
政令第二百十二号
平成三十年七月豪雨による災害についての総合法律支援法第三十条第一項第四号の規定による指定等に関する政令
 内閣は、総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)第三十条第一項第四号の規定に基づき、この政令を制定する。
 (法第三十条第一項第四号に規定する非常災害の指定)
第一条 総合法律支援法(次条において「法」という。 ) 第三十条第一項第四号に規定する非常災害として、平成三十年七月豪雨による災害を指定する。
 (法第三十条第一項第四号の政令で定める地区及び期間)
第二条 前条の非常災害についての法第三十条第一項第四号の政令で定める地区は、平成三十年七月豪雨に際し災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)が適用された同法第二条に規定する市町村の区域とする。
2 前条の非常災害についての法第三十条第一項第四号の政令で定める期間は、この政令の施行の日から平成三十一年六月二十七日までとする。
   附 則
 この政令は、公布の日から施行する。
(引用終わり)
 
 分かりやすくするために、以上の政令による指定を、総合法律支援法30条1項4号に落とし込んで読み替えてみましょう(文責:金原)。
 
「『平成三十年七月豪雨による災害』が発生した日において、同災害により災害救助法が適用された市町村に住所、居所、営業所又は事務所を有していた国民等を援助するため、平成30年7月14日から同31年6月27日までの間、その生活の再建に当たり必要な法律相談(資力を問わない)を実施すること(が法テラスに認められた)」
 
 今後、昨日付の政令による指定で可能となった無料法律相談のスキームをどう活かしていくか、域内に災害救助法適用市町村を抱える法テラス地方事務所と単位弁護士会等が至急協議に入ることになるのだろうと思います。
 そして、そのような運用の積み重ねが、将来発生するであろう次の被災地における法的支援活動の教訓となり、さらには制度改善(法改正)のための立法事実ともなっていくのだろうと思います。
 
(参考法令)
災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)
 (救助の対象)
第二条 この法律による救助(以下「救助」という。)は、都道府県知事が、政令で定める程度の災害が発生した市町村(特別区を含む。)の区域(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、当該市の区域又は当該市の区若しくは総合区の区域とする。)内において当該災害により被害を受け、現に救助を必要とする者に対して、これを行う。
 
(付記・昨日施行されたもう1つの政令
 なお、昨日(7月14日)制定・公布・施行されたもう1つの政令があり、こちらも法的に重要なものなので、以下に、「平成30年7月14日 官報(号外特第12号)」1頁から、条例の本文を引用します。
 
政令第二百十一号
平成三十年七月豪雨による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令
 内閣は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成八年法律第八十五号)第二条第一項及び第二項前段、第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項、第六条並びに第七条の規定に基づき、この政令を制定する。
 (特定非常災害の指定)
第一条 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項の特定非常災害として平成三十年七月豪雨による災害を指定し、同年六月二十八日を同項の特定非常災害発生日として定める。
 (特定非常災害に対し適用すべき措置の指定)
第二条 前条の特定非常災害に対し適用すべき措置として、法第三条から第七条までに規定する措置を指定する。
 (行政上の権利利益に係る満了日の延長期日)
第三条 第一条の特定非常災害についての法第三条第一項の政令で定める日は、平成三十年十一月三十日とする。
 (特定義務の不履行についての免責に係る期限)
第四条 第一条の特定非常災害についての法第四条第一項の政令で定める特定義務の不履行についての免責に係る期限は、平成三十年九月二十八日とする。
 (法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置に係る期日)
第五条 第一条の特定非常災害についての法第五条第一項の政令で定める日は、平成三十二年六月二十六日とする。
 (相続の承認又は放棄をすべき期間の特例に関する措置に係る地区及び期日)
第六条 第一条の特定非常災害についての法第六条の政令で定める地区は、平成三十年七月豪雨に際し災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)が適用された同法第二条に規定する市町村の区域とする。
2 第一条の特定非常災害についての法第六条の政令で定める日は、平成三十一年二月二十八日とする。
 (調停の申立ての手数料の特例に関する措置に係る地区及び期日)
第七条 第一条の特定非常災害についての法第七条の政令で定める地区は、平成三十年七月豪雨に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域とする。
2 第一条の特定非常災害についての法第七条の政令で定める日は、平成三十三年五月三十一日とする。
   附 則
 この政令は、公布の日から施行する。
(引用終わり)
 
(参考法令)
特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成八年法律第八十五号)