※Facebookにも同内容で掲載しています。
「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」をめぐる「夢想」について
私も会員に名前を連ねている「子どもたちの未来と被ばくを考える会」が、今年(2022年)の1月に発行して会員に送ったニュースレターのために寄稿した小文をご紹介します。共同代表の松浦雅代さんから会員への呼びかけに応え、昨年の12月7日に書いたものです。松浦さんからのリクエストは「子ども脱被ばく裁判の(1審判決の)その後」についてというものでしたが、私の手には余るので「どうしようか」と悩んでいたところ、ちょうど雨の中参加してきたランチTIMEデモにからめたアイデアが浮かび、一気に書き上げたものです。
内容的には、本来なら、「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」の呼びかけ団体である「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の定例会の場で問題提起するのが適当ではないかとも思われますが、まだ私自身の中でも生煮えのアイデアなので、他の方のご意見などもお聞きできればと思い、公開してみることにしたものです。
タイトル:「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」をめぐる「夢想」について
2014年6月23日に第1回を行った「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が、本稿を書いている今日(2021年12月7日)行われたデモで90回目を迎えた。今日も、降り続く雨の中、55人の市民が参加した。よく7年以上も休まずに続けてこられたものだと、主催団体の一員ながら感心する。
7年前の政治状況を記憶している方には説明の必要もないかもしれないが、デモが「憲法の破壊を許さない」と名乗ったのは、当時、第2次安倍政権が、日本国憲法の下では集団的自衛権の行使は認められないという、歴代の自民党政権(民主党政権も)が守り続けてきた憲法解釈を、本来なら憲法改正の発議を経て国民投票にはかるべき問題であるにもかかわらず、一内閣が勝手に閣議決定で変更しようとしていることに抗議し、「憲法の破壊を許さない」市民の意思をアピールしなければという切迫感にかられてスタートしたものだった。
このような経緯から、このデモは、呼びかけの当初の段階では、立憲主義を守るためのデモとしてスタートしたものであり、決して9条護憲派だけのデモではなく、実際、第1回の参加者160人の中には、「自分は9条は改正した方が良いと思うが、安倍政権のやり方は許せない」という人も、ごく少数ながら参加していた。
その後、いつしかデモで使われるコールの中に「憲法9条世界の宝」とか「9条を子どもに残そう」というフレーズが登場しても誰も怪しまなくなり、「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」が、あたかも「9条を守るためのデモ」であるかのような外観を呈するに到った。
今日のような雨の日にも50人を超えるそれなりの参加者があるのは、いくつもの「9条の会」の協力があればこそであり、このような推移はある種必然であったとは思う。
しかし、2019年から2020年にかけて、検察庁法に違反する東京高検検事長の定年延長や、日本学術会議法に違反する会員推薦候補6名の恣意的任命拒否など、従来では考えられもしなかったあからさまな法秩序を無視した横紙破りを政府が堂々とやってのけるという状況を目の当たりにして、「9条」だけが問題なのではない、ということを改めて認識することになったのも事実である。
実は、今日の第90回デモのコーラーは主催団体共同代表の1人である豊田泰史弁護士が務めたのだが、いつものコールの中に、さりげなく「和歌山にIRカジノはいらない!」というコールを挿入しており、参加者も元気よく唱和していた。カジノ問題が憲法問題か?についてはいささか疑問もあるが、憲法が保障する人権や価値を守るために見過ごすことのできない問題が社会には多々ある訳で、そのような様々なテーマをコールの中に取り入れることはできないか、コーラーも弁護士だけではなく、その回のテーマに相応しい人にお願いしてはどうか、などということを夢想したりしている(まだ夢想の段階で、主催団体の内部で問題提起もしていないが)。
もしもこの夢想が実現に一歩踏み出せば、放射能から逃れるための「避難の権利」を保障せよというコールが、「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」の中で聞ける時が来るかもしれないというようなことを思ったりした12月7日であった。
(参考)
◎「子どもたちの未来と被ばくを考える会」公式ブログ
◎同じニュースレターに松永久視子さんが書かれた文章(Facebookで公開)