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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

内閣総理大臣補佐官が憲法改正の旗を振ってはいけない~(再配信)「立憲主義」を聴いたことがないという参議院憲法審査会委員

憲法 政治
 今晩(2015年3月5日)配信した「メルマガ金原No.2020」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
内閣総理大臣補佐官憲法改正の旗を振ってはいけない~(再配信)「立憲主義」を聴いたことがないという参議院憲法審査会委員

 もう2週間近く前の記事で、今さら取り上げるのもどうかと思うのですが、来年の参議院選挙後の憲法改正発議という政治日程を吹聴する自民党「先鋒隊」の有力者の1人には違いないので、ご紹介することとします。
 
毎日新聞 2015年02月21日 20時12分
憲法改正:礒崎首相補佐官「来年中に国民投票まで」

(引用開始)
 礒崎陽輔首相補佐官は21日、盛岡市内で開かれた自民党憲法改正に関する会合で講演し、憲法改正の時期について「来年中に国民投票までもっていきたい。遅くとも再来年の春には行いたい」と述べ、来
年夏の参院選後、速やかに衆参各院で改正を発議し、国民投票の実施を目指す考えを示した。
 礒崎氏は自民党憲法改正推進本部の事務局長を兼務している。改正項目については、国家緊急権▽環境権▽財政規律の確保??の明記などを例に挙げ「民主党も入れて(発議に必要な衆参各院の)3分の2を取
れる内容にしないといけない」と述べた。
 衆参両院の改憲勢力の現状については「ちょうど3分の2ぐらいで、憲法改正が見えるところに来た」と指摘し、「とにかく1回、改正することが大事だ。『そんなに怖いものではない』ということになれば
、2回目以降は難しいこともやっていこうと思う」と語った。【青木純】
(引用終わり)
 
 以上の記事の内容については取り立ててコメントはしません。動画や講演録で裏がとれれば良いのですが、多分無理でしょう。

 先ほど自民党「先鋒隊」と書きましたが、その隊長が船田元(ふなだ・はじめ)憲法改正推進本部長とすれば、同本部事務局長の礒崎陽輔(いそざき・ようすけ)氏(参議院議員)は、さしずめ副長(新撰組になぞらえれば土方歳三ですからご本人も
悪い気はしない?)といったところでしょうか。
 同本部には、本部長の下に、最高顧問(5名)、顧問(4名)、本部長代行(小坂憲次氏)、本部長代理(古屋圭司氏)、副本部長(5名)、事務局次長(12名)、幹事(15名)とやたらたくさんの役員が名前を連ねていますが、マスメディアに対するスピーカーの役を専ら務めているのは、本部長と事務局
長と言って良いと思います。
 
 さて、私が礒崎陽輔氏のことを取り上げる気になった理由を簡単に説明しましょう。
 磯崎氏は、自民党「日本国憲法改正草案」が発表されてからちょうど1か月が経過した2012年5月27日、Twitter上で、物議を醸す発言(tweet)を行いました。
 
「時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。この言葉は、Wikipediaにも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか。」
 
 当然のことながら、この「挑発的な」tweetには多くの批判が寄せられ、私も、「『立憲主義』を聴いたことがないという参議院憲法審査会委員」という文章を書き、2012年5月30日に「メルマガ金原No.961」として配信した上、その後ブログに転載したのでした。
 
wakaben6888のブログ(2012年11月12日)
弁護士・金原徹雄のブログ(2013年2月16日)
 
 結局のところ、よくあることではありますが、この「立憲主義」をめぐる興味深い(?)論争の種となったかもしれない問題も、インターネットの片隅での短期間の局地戦で終わってしまいました。
 そして、このような発言があっても、2013年7月の参議院選挙(大分選挙区)で、磯崎氏が悠々と2回目の当選を果たす妨げには全くなりませんでした。
 
 さて、まさに自民党が具体的な改憲発議に動き出したこの時期に、率先してその旗振り役を務める人物が、憲法に対してどういう考え方を持っているのかについて、あらためて多くの人に知っていただくことにはそれなりの意義があるだろうと思い、この記事を再配信することにしました。
 
 なお、基本的に以下の文章は、2012年5月30日に書いたオリジナルのままで修正は加えていません。
 ただ、磯崎氏の経歴に付け加えるとすれば、前述のとおり、一昨年の選挙で2選を果たしたということの他、2012年12月、第2次安倍内閣で内閣総理大臣補佐官に任命された、ということは逸すること
ができません。
 首相補佐官の根拠規定は内閣法22条です。
 
内閣法(昭和二十二年一月十六日法律第五号)
第二十二条 内閣官房に、内閣総理大臣補佐官五人以内を置く。
2 内閣総理大臣補佐官は、内閣総理大臣の命を受け、国家として戦略的に推進すべき基本的な施策その
他の内閣の重要政策のうち特定のものに係る内閣総理大臣の行う企画及び立案について、内閣総理大臣
補佐する。
3 内閣総理大臣は、内閣総理大臣補佐官の中から、国家安全保障に関する重要政策を担当する者を指定
するものとする。
4 略
5 略
 
 ちなみに、現在、磯崎氏は、内閣法22条3項に基づき、「国家安全保障担当」の指定を受けた内閣総理大臣補佐官の地位にあります。
 その点で、自民党憲法改正推進本部長の船田元氏とは立場が違います。磯崎氏の憲法改正に関わる発言は、自民党憲法改正推進本部事務局長と首相補佐官のどちらの立場での発言であるかが常に問題とならざ
るを得ません。
 もちろん、憲法99条が定める公務員の憲法尊重擁護義務との関係においてです。
 何しろ、安倍内閣は、最高責任者の安倍首相自身が各所で憲法改正に意欲を示しているのですから、首相補佐官憲法改正のスケジュールを公言しても誰も驚かないのでしょうが、本来、あってはならないこ
とだと思います。
 少なくとも、磯崎氏は、首相補佐官に任命されるに際し、自民党憲法改正推進本部事務局長は辞するべ
きであったのです。
 しかしながら、東大法学部で(故)芦部信喜先から立憲主義という言葉を聞いたことがないという磯崎氏ですから、この2つの立場の兼務が憲法尊重擁護義務に抵触するなどという意識の持ち合わせは毛頭な
いのでしょう。
 しかし、おかしいものはおかしいと言い続ける必要があると思っています。
 

以下の文章は、「メルマガ金原No.961」として2012年5月30日に配信したものを再配信するものです。
 
立憲主義」を聴いたことがないという参議院憲法審査会委員
 
 今日の昼休みに事務所でコーヒーを飲みながらパソコンを立ち上げたところ、Afternoon Cfe というブログに、「警報:ガチで『立憲主義って、聞いたこと無い』という自民党国会議員が憲法審査会委員をつとめている!!」という扇情的なタイトルの記事が掲載されているのに目がとまりました。
 
 このブログでやり玉に挙げられている自民党国会議員というのは、礒崎陽輔(いそざき・ようすけ)参議院議員であり、その問題発言(tweet)は以下のとおりです。
 
(引用開始)
時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。この言葉は、Wikipediaにも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説
なのでしょうか。
10:47 PM - 27 5月
(引用終わり)
 
 Afternoon Cafe の管理人は、以下のように憤っているのですが・・・。

(抜粋引用開始)
思わず、4月1日じゃないよね!?ってカレンダー見てしまった。
立憲主義って昔からある学説ですかって、あーた、学説とかいうレベルの話じゃないでしょ。
それ、国民主権ってなに?とか
法の支配、法治国家ってなに?とか
民主主義ってなに?とかいうレベルの話ですよ!
こんなひとが憲法審査会委員って信じられません。
どうりで立憲主義を完全にぶち壊した文言のめちゃめちゃな改正案になってるわけです。
以前からずっと、自民党憲法改正案は立憲主義を理解していないと書いては来ましたが、まさか、まさ
か、本当に知らなかったとは・・・世も末です。
いやいやいやいや、そんなはずはない知らないはずはない、たちの悪い冗談ですよね、礒崎さん?
と思い直して続きのツイート読んでみたら・・・本当に知らなかったみたい・・・orz
学生時代の憲法講義では聴いたことないってマジあり得ません。
学生時代に英文学部に所属してたけど、シェイクスピアなんて聞いたことがない、といってるに等しいで
すよ、これ。
(引用終わり)
 
 さて、これだけご紹介しただけでは、やはり十分な情報提供とは言えないでしょう。
 ということで、少し裏を取ってみることにしました。
 
裏付1:礒崎陽輔参議院議員の経歴調査
 ご本人の公式サイトに掲載されたプロフィール
 全部コピーして貼り付ける必要もないでしょうが、注目すべき箇所のみ抜粋します。
   
経歴
   昭和32年10月 大分市上野に生まれる
      51年 3月 大分県立大分舞鶴高等学校卒業(23回生)
      57年 3月 東京大学法学部卒業
      57年 4月 旧自治省に入省
                 以下略
      62年 4月 和歌山市企画部次長、財政部長
                 以下略
   平成18年 7月 総務省大臣官房参事官を最後に退職
      19年 7月 第21回参議院議員通常選挙・大分選挙区で当選
   現職
    参議院
     予算委員会理事
     総務委員会委員
     憲法審査会委員
    自由民主党
     憲法改正推進本部事務局次長・起草委員会事務局長
     他の党務は略
 
裏付2:Wikipediaに掲載された「立憲主義」の説明
(抜粋引用開始)
立憲主義(Constitutionalism)は、多義的な概念であるが、国家の統治を、憲法に基づき行う原理、ないし、憲法によって権力の行使を拘束・制限し、統治機構の構成と権限を定めて、権利・自由の保障を図る
原理をいう。
古典的立憲主義
 省略
近代的立憲主義
(前略)
近代的立憲主義は、このような絶対君主の有する主権を制限し、個人の権利・自由を保護しようとする動きの中で生まれたのである。そこでは、憲法は、権力を制限し、国民の権利・自由を擁護することを目的とするものとされ、このような内容を持つ憲法を、特に立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)という。
フランス人権宣言16条には「権利の保障が確保されることなく、権力分立が定められていないすべての社会は、憲法をもつものではない」とあるが、ここにいう「憲法」や、19世紀に各国で定められた自由主義憲法こそ、立憲的意味の憲法である。個人の人権の保障と権力分立は、その重要な要素である。
(後略)
外見的立憲主義
 省略
近代的立憲主義の現代的変容
 省略
(引用終わり)
 
裏付3:Afternoon Cafe の該当記事へのコメントの参照
 様々なコメントの書き込みがあってこれも参考になります。
 特に、慶応義塾大学の小林節(こばやしせつ)教授が「マガジン9条」のインタビューに答えた記事は
是非一読したいですね(かなり前のものですが)。
 
小林節さんに聞いた(その1)
 
小林節さんに聞いた(その2)
 
裏付4:礒崎陽輔議員の tweet の続きを検証する
 字数制限のある twitter では、1つのテーマを論じる場合には、いくつかの tweet が連なることが多いので、Afternoon Cafe が引用する tweet の続きがあるのではないかと思い、ご本人の twitter に当たってみようと思ったのですが、既に同じことを考えてまとめてくれていた人がいたので引用します(やや
手抜きですが)。

(引用開始)
時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。この言葉は、Wikipediaにも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説
なのでしょうか。
2012/05/28 14:47:28
確かに、「憲法は、国家権力の抑制を定め、国民の人権を守るものだ。」とよく言われます。立憲主義は、このことでしょうか。それは否定しませんが、それは憲法の重要な側面を規定した言い方であり、憲
法を問われれば、「国家の基本法」というのが正解でしょう。
2012/05/28 14:50:46
立憲主義」、Wickpediaでは、樋口陽一先生の著書が引用されています。私は、芦部信喜先生に憲法を習
いましたが、そんな言葉は聞いたことがありません。いつからの学説でしょうか?
2012/05/28 15:51:42
我々が憲法の教科書に使ったのは、有斐閣の法律学全集で、清宮四郎先生と宮澤俊義先生のもの。ありませんね。佐藤功先生の「日本国憲法概説」を見ていますが、「立憲主義」は、ないようです。法制局に聞
くと、京都大学佐藤幸治先生が広めたのではないかと。それならば、80年代後半以降でしょう。
2012/05/28 21:32:37
(引用終わり)
 
 とりあえず裏を取る作業はこんなところでいいでしょう。
 そこで、私の意見ですが、基本的にこの元自治官僚は人格に問題があると思います。
 こういう元学生に「芦部信喜先生に憲法を習いましたが、そんな言葉は聞いたことがありません」と言
われては、芦部信喜(あしべのぶよし)先生も浮かばれないでしょう。
 もっとも、案外、東大法学部から官僚を目指すような学生にロクな者はいないと達観しておられたかもしれませんが。
 
 1999年に逝去された芦部先生は、2005年「自民党・新憲法草案」や2012年「自民党日本国憲法改正草案」を目にされることはなかった訳ですが、もしも先生が長命を保たれていれば、必ずや自民党案の「非」を指摘されていたことでしょう。
 
 私自身は、東京で司法試験の受験勉強をしていた当時、中央大学主催の講演会で一度芦部先生の講演を伺ったことがあるだけなのですが、たんたんとした語り口の中にも、深い学識がにじみ出ており、深い感銘を受けたものでした。
 
 さて、礒崎陽輔議員が本当に「立憲主義」という言葉を聴いたことがなかったのか否か?ということですが、ここまで調べてくると、「どっちでも同じだ」というのが私の結論です。
 知らなかったとすれば度し難い「無知」ですし、一応字面(じづら)だけは知っていたが、自民党案を
批判する者を揶揄したつもりであったとすれば、「厚顔無恥」の極みです。
 状況証拠から見れば、どちらかと言えば後者の可能性の方が高いでしょうが。
 
 5月3日の憲法記念日に、メルマガNo.929で「憲法記念日に考える(立憲主義ということ)」(前編後編)という文章を書いた私としては、なおざりに出来ない話題であったため、つい力が入ってしまいました。
 以前にも書きましたが、「原発の危機」「放射能の危機」と「憲法の危機」は通底しているということをあらためて実感しています。
 

(付録)
『腰まで泥まみれ』 作詞・作曲:ピート・シーガー 日本語詞・演奏:中川五郎