2018年8月30日配信(予定)のメルマガ金原No.3255を転載します。
「今から13年前に頭脳警察のPANTAさんと一緒に作り、PANTAさんと制服向上委員会とぼくとでレコーディングした憲法9条に関する2曲、「理想と現実」と「西暦20XX年」を『アートな憲法ルーム』のページで聞くことができます。ぼくの短い文章も載っています。」
以上の文章とともに、以下のページにリンクがはられていましたので、すぐに読んでみました。
(抜粋引用開始)
それまでも憲法9条についての歌が作られたり、憲法9条に曲をつけて歌う試みがいろいろとあったと思いますが、ぼくは日本の憲法の前文や9条で謳われている言葉を取り入れながら、そこに日本の憲法、とりわけ9条に対する自分の思いや考えを重ねて歌詞を作っていきました。そしてできあがったのが、以下のような歌詞です。
(略)
憲法を、とりわけ9条を変えようと主張する人たちの多くは、憲法が現実にそぐわなくなっているから、そして憲法がアメリカに押しつけられたものだからと主張しています。しかしぼくは憲法がもしも現実と乖離しつつあるのだとしたら、憲法を現実に合わせるのではなく、現実を憲法に、憲法の理想に合わせるべきなのではないかと考えています。
それに今の日本の憲法を作り上げる上でアメリカの力が大きく働いているとしても、それは押しつけなどでは決してなく、人類の理想のため、戦争のない世界のために、国家や民族を超えて共に手をつなぎ前に進もうという強い働きかけ、大きなメッセージだったとぼくは思っています。
そんな全世界の、人類全体の大切な宝物と言える日本の憲法をぼくらは「守ろう」と叫ぶ以上に、もっともっと逞しく「育て」ていくべきだとぼくは考えています。
しかも憲法とは権力や為政者が道を踏み外さないようにと、その国の民衆が作り上げているものです。もし憲法を変えなければならない状況になったとしても、その声は民衆の中から上がるべきで、今の日本のように政府や与党、権力を握っている党やそこの党首、その背後にある団体が率先して声を上げているのは、とんでもない本末転倒で、ぼくには滑稽に思えてなりません。
(略)
その時1曲だけではシングルCDを作れないということで、カップリング曲として急遽生まれたのが「西暦20XX年」という曲です。「理想と現実」をスタジオでレコーディングしている時、ぼくがその場で歌詞を書き、PANTAさんがやはりその場で作曲して誕生した曲です。
(略)
それから13年、この国で現実を理想に近づけようとする動きは遅々として進んでいないどころか、どこまでも理想を現実に引き下げようとする力ばかりが猛威をふるっていますし、いつまでもフィクションの世界であってほしいと強く願って作った「西暦20XX年」が、どんどん現実のものとなってきています。
いくら歌ったって理想は実現しないし、現実はますます恐ろしいものになっていくばかり。それでもぼくは「理想と現実」と「西暦20XX年」の2曲はしつこく繰り返し歌い続けて行きます。理想の力を信じながら。
(引用終わり)
2005年に発表された『理想と現実』と『西暦20XX年』(いずれも作詞:中川五郎、作曲:PANTA)がカップリングされたCDシングルは、私の手許にもあります。発売当初に購入したのではなく、今から5年前の2013年1月、法学館憲法研究所に注文して入手したものです。
なぜ、伊藤真弁護士が主宰する法学館憲法研究所がCDシングル販売(の斡旋)をしていたのか、詳しい事情はよく分かりませんが、制服向上委員会会長の橋本美香さんへのインタビューが、同研究所サイトの「今週の一言」コーナーに掲載された際(2013年1月21日)、その記事の末尾に<法学館憲法研究所事務局より>として、購入希望者は法学館憲法研究所まで申し込んで欲しいということでしたので、早速私も注文したのでした。 http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20130121.html
ちなみに、届いたCDのライナーノートは、どう考えてもどこかの(法学館憲法研究所の?)コピー機でカラーコピーしたとしか思えないもので、2005年にプレスしたCDシングルは、とっくに在庫切れになっていたことが推測されました。もちろん、録音自体には何の問題もありませんでしたけど。
さらに言うと、上記インタビュー記事を含め、橋本さんや制服向上委員会のことも紹介したくて書いたのが「橋本美香さん「原発、憲法…理想を現実に」」という文章で、これが「弁護士・金原徹雄のブログ」の記念すべき(?)最初の配信記事だったのです。
2013年1月24日
そういう個人的な思い出はさておき、8月27日にアップされた中川五郎さんの「憲法9条「理想と現実」」という記事は、そのタイムリーな内容に感銘を受けるとともに、『理想と現実』と『西暦20XX年』の両曲とも、中川さんが書いた歌詞の全てが掲載され、その上、音源自体が全曲ヴァージョンで聴けるようになっており(もちろん、著作権者の了解の下)、素晴らしい試みだと思いました。
そもそも、私は、法学館憲法研究所サイトに「アートな憲法ルーム」というコーナーが設けられていたことに全然気がついておらず、中川さんの「憲法9条「理想と現実」」を読んだ後、すぐにバックナンバーを調べてみました。
その結果、このコーナーは、今年の7月2日からスタートしており、その後、1週も欠かさず毎週連載が続いており、中川さんが9人目であるということが分かりました、
法学館憲法研究所サイトには、2011年1月から始まった「今週の一言」というコーナーがあり、私も2回登場させてもらっていますが(内1回はブログからの転載で、もう1回は新規原稿の執筆でした)、その経験からいうと、毎週穴を開けずに連載を続けるためには、相当前から執筆者を人選し、交渉し、記事をストックしておく必要があるはずです。
それだけに、法学館憲法研究所のこの新コーナーにかける意気込みの大きさがしのばれます。
以下に、中川五郎さんまでにアップされた8回分にリンクしておきます。
2018年7月2日
デザインが平和とつながっていく 菊地雅志さん(グラフィックデザイナー)
2018年7月9日
私たちの憲法は、生きる私を守るたいまつのあかり 堤 江実さん(詩人)
2018年7月16日
歌で伝わること、歌で伝えたいこと 館野公一さん(シンガー・ソングライター)
※音源付き(「見えない光の矢」「おなじみの短いメール」)
2018年7月23日
語り歌を歌って「世界に誇る日本国憲法」を守りましょうと、平和的に叫びたいわたしなので~~す!! 結城翠唱 (すいしょう)さん・結城孝一さん(歌手)
※音源付き(「愛がめざめる時」「風にゆられて」「この風を覚えているかい」)
2018年7月30日
☆地域に根差し、「愛と平和」を歌う合唱団「いちばん星」☆ 吉田治夫さん(合唱団いちばん星代表)
2018年8月6日
丁寧に伝えること、僕にできることを、ずっと続けていきたい 玉城まさゆきさん(シンガーソングライター)
※演奏は公式サイトにリンクがはられています。 http://rbcsrecords.a.la9.jp/koza.html
2018年8月13日
憲法の希(ねが)いと祭りに込められた願いは繋がっている 金子満里さん(民族歌舞団 荒馬座)
※音源付き(「ぴーひゃらどん」)
2018年8月20日
※音源付き(「歩く」)
これまでに登場された9組(10人)の皆さんの、それぞれの憲法との関わりはまさに「十人十色」ですが、それをアートによって表現するというところに共通点を見出し、「アートな憲法ルーム」という連載を企画した法学館憲法研究所に敬意を表したいと思います。
最初にご紹介した中川五郎さん作詞による『西暦20XX年』(2005年)は次のように歌われています。
(歌詞から抜粋引用開始)
隣の国が攻めてくれば 銃を手に取り戦えるし
遠い異国の戦いにも 戦車で乗り込んで行けるようになった
(略)
国のために用意はいいか?
国のために用意はいいか?
この国のため命を捧げられるか?
(引用終わり)
それから13年、「用意はいいか?」と1人1人の若者に問いかけねばならない時代となってしまいました。
本当に、彼らは用意ができているのでしょうか?
そのような問いかけの手段として、「アート」という切り口が有効だ(有効であり得るかもしれない)というのが「アートな憲法ルーム」の企画の趣旨なのではないかと推測したりします。
私にして(?)、昨日(8月29日)ようやくこの連載に気がつきました。
是非多くの方に「アートな憲法ルーム」の存在を知っていただきたいと思い、ブログで取り上げることとしました。
是非みんなで「拡散」しましょう。
(付録)
2014年10月24日に日比谷野外音楽堂で開催された「ANTI WAR LIVE in HIBIYA~戦争をさせない1000人委員会プレゼンツ~」で演奏された『理想と現実』が、アイドルジャパンレコードの公式YouTubeチャンネルにアップされていましたので、ご紹介します。
(弁護士・金原徹雄のブログから/中川五郎さん関連)
2012年8月22日(2013年2月11日に再配信)
中川五郎さんの新しい“We Sall Oercome”=『大きな壁が崩れる』
2012年9月25日(2013年2月3日に再配信)
『一台のリヤカーが立ち向かう』~彼は3.11前から3.11後を歌っていた~
2015年1月2日
中川五郎さんは問いかける~“ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか”
2016年5月7日
2016年5月8日
中川五郎さんの新曲“Sports for tomorrow”をじっくりと聴く
2017年6月12日
2017年9月6日
中川五郎さんの『トーキング烏山神社の椎ノ木ブルース』を聴き、変わろうとしないこの国の人たちを思う