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日本学術会議「東日本大震災に伴う原発避難者の住民としての地位に関する提言」他を読む

 2017年12月28日配信(予定)のメルマガ金原.No.3030を転載します。
 
日本学術会議東日本大震災に伴う原発避難者の住民としての地位に関する提言」他を読む
 
 京都大学の山極壽一総長が、日本学術会議の第24期会長(任期は2017年10月から3年間)に選任されたというニュースは、同氏が大学における軍事研究に否定的な見解を公言されていることもあって、好意的に受け止める人が多かったように思います。もっとも、日本学術会議ほどの組織(何しろ、1949年に制定された日本学術会議法によって設置され、「経費は、国庫の負担とする。」(同法1条3項)とされています)ですから、会長の個性が具体的な施策に反映するにはしばらく時間がかかると見なければならないでしょうが。
 
 ところで、巻末のリンク一覧のタイトルをご覧いただければ分かると思いますが、私は過去、日本学術会議による高レベル放射性廃棄物の処分に関する「暫定保管」という提言をフォローしてきました。もともと、この提言は、東京電力福島第一原発事故のほぼ半年前(2010年9月)、原子力委員会から「高レベル放射性廃棄物の処分の取組における国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめを依頼」されて検討が始まったものでしたが、その途中で3.11に遭遇し、急遽、議論の方向を大転換したのではないかと私は推測しています。何しろ、求められていたのは、地層処分を前提として、それを国民に納得されるための宣伝方策についてのお知恵拝借だったはずなのに、2012年9月に出てきたのは、地層処分自体をを見直して「暫定保管」すべきという新たな提言だったのですからね。
 
 さて、日本学術会議は、高レベル放射性廃棄物問題以外にも、様々な分科会を設け、東京電力福島第一原発事故から発生した問題への対処についての提言を重ねてきました。
 今日、たまたま、今年(2017年)の9月に日本学術会議東日本大震災復興支援委員会 原子力発電所事故に伴う健康影響評価と国民の健康管理並びに医療のあり方検討分科会)がまとめた「東日本大震災に伴う原発避難者の住民としての地位に関する提言」を通読したのを機に、それに先行する3つの提言と併せ、ご紹介することにしました。
 
 住民は、特定の市町村に住民登録することにより(それにリンクして、と言ってもよいのですが)、様々な権利行使、サービスの享受、負担などの法的効果と結びつけられます。ところが、心ならずも原発事故による放射線被ばくを免れるために避難を余儀なくされた人は、避難元自治体と避難先自治体という2つの自治体と否応なく関係を持たざるを得ないにもかかわらず、我が国の住民基本台帳法は、住民登録について二重登録を認めていません。今日読んだ日本学術会議の「提言」は、住民登録の問題に焦点を当て、具体的な制度についての提案を行うものでした。
 たしかに、住民登録は問題の一端に過ぎなないとも言えますが、子ども・被災者支援法が宣言する「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。」(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律2条2項)という理念をどう具体化するのかという問題についての重要な一適用場面なのです。
 
 以下に、日本学術会議がこれまでに公表した4つの「提言」にリンクするとともに、各冒頭の「要旨」から、特に避難者・被災者の住民としての地位に関わる提言・提案部分を中心に引用します(今年9月の「提言」は「要旨」全体を引用します)。時間の都合がつけば、是非該当箇所だけでも「提言」本文をお読みいただければと思います。
 
平成25年(2013年)6月27日
日本学術会議 社会学委員会 東日本大震災の被害構造と日本社会の再建の道を探る分科会
原発災害からの回復と復興のために必要な課題と取り組み態勢についての提言
(抜粋引用開始)
4 具体的政策提言
 以上のような一般的提言を踏まえて、五つの具体的政策を提言する。
(1) 低線量被曝の長期影響に対する統合的な科学的検討の場の確立
 低線量被曝の健康影響問題、各地域の長期的な放射線量予測問題、適切な除染方法と除染効果をめぐる問題、健康管理問題などについて、適切な科学的知見を得るために、多様な見解・学説を有する科学者たちが分立するのではなく、一堂に会するような、開かれた統合的な科学的検討の場をつくる必要がある。
(2) 健康手帳の機能も有する被災者手帳
 被災した住民が、生活再建に関わる「元の自治体の住民」としての権利と「移住地の住民」としての権利を有することを明確にするために「被災者手帳」を交付するべきであり、それに、長期的な健康管理のための「健康手帳」の機能も付与するべきである。
(3) 避難住民への継続的訪問調査を住民参加型で実施
 広域に分散している避難住民一人ひとりに対して、県外への避難者も含む形で、個人面接型の調査を長期的、定期的に実施し、それによって、各個人のニーズを把握するとともに、住民間のネットワークを維持し、生活再建の道についての支援のチャンネルを確保するべきである。そのような訪問調査を効果的に実施するためには、国が予算措置を取るとともに、被災者・避難者自身も参加するような住民参加型の共同調査とするべきである。
(4) 長期避難者の生活拠点形成と避難元自治体住民としての地位の保障
 現在、被災住民が避難先での生活基盤確立のためにそこでの住民登録を望むことと、被災元の自治体が人口減少を回避し存続することとが、ジレンマに陥っている。そのようなジレンマを解決するためには、現在、居住している地域において住民登録を行った場合にも、避難前に住んでいた自治体の住民としての地位を有し、当該自治体の今後のあり方や復興のあり方の検討・決定などに参画出来るような特別の仕組みを整えることによって、原発災害による長期避難者に二重の保障をしていくべきである。また、長期避難者の生活拠点形成とネットワーク形成を促進し、避難元の自治体のアイデンティティが維持出来るようにするべきである。
(5) 被災住民間のネットワークの維持
 被災者・避難者が、中心的な担い手となって、自分たちを結ぶネットワークを形成していくように支援するべきである。話し合いのための集会や様々なイベントを通して、被災者・避難者自身がネットワークを形成しやすくするために、行政は、物心両面でそれを支援するべきである。
(引用終わり)
 
平成26年(2014年)9月25日
日本学術会議 社会学委員会 東日本大震災の被害構造と日本社会の再建の道を探る分科会
東日本大震災からの復興政策の改善についての提言
(抜粋引用開始)
3 復興のための「第三の道」の提案
 このような条件整備の下、原発災害被災地と、津波被災地のそれぞれに即した、復興のための「第三の道」を構想するべきである。
(1) 原発災害被災地域の再建のためには、政策に沿った「早期帰還」という第一の道と、自力による移住という第二の道の二者択一が強制されている問題点を克服するために、「(超)長期待避・将来帰還」という第三の道を政策として打ち出す。すなわち、避難先での被災者の生活再建を長期にわたって政策的に支援するとともに、元の避難自治体のコミュニティを維持し、住民が安心して帰還できる程度にまで長期待避を続け、放射線量が低下した時点で帰還を実施する。待避帰還が5年以上の場合を「長期待避」、30年以上の場合を「超長期待避」と言おう。第三の道を効果的に実現するために、二重の住民登録、被災者手帳、セカンドタウン、初等・中等教育を担う学校の維持、復興まちづくり公社などの「政策パッケージ」を実施する。
(2) 略(津波被災地についての提案)
(引用終わり)
 
平成26年( 2014年)9月30日
日本学術会議 東日本大震災復興支援委員会 福島復興支援分科会
東京電力福島第一原子力発電所事故による長期避難者の暮らしと住まいの再建に関する提言
(抜粋引用開始)
提言等の内容
 原子力災害による放射線被曝は、長期的に健康被害をもたらさないように、できる限り避けなければならない。一方で、避難生活に関わる帰還、移住、避難継続の選択については、誰からも強要されることなく、避難者個人の判断を尊重する必要がある。また自主避難者や避難指示解除後の避難者に対しても、強制避難者と同様の政策対応を保障することが必要である。このような個人の多様な選択を保証する「複線型復興」の立場から、各種の制度・施策の改善・創設に関わる提言を、以下に述べる。
(1) 早急に個人や家族の生活再建を図るために基金立て替え方式による賠償を進めること
 原子力災害による長期避難者の生活再建には、直接帰還するケース、移転するケース、避難を継続するケースなど、多様な方法がある。国は被災した個人や家族の生活再建を早急に進めるために、これらのケースに柔軟に対応しながら、労災保険制度のように、東京電力に代わって避難者への賠償の立て替えを直ちに行うことが必要である。
(2) 帰還をする住民への支援を具体化すること
 ふるさとへの帰還を希望する住民は、避難に伴う人口減少、地域産業・商店街の空洞化など、生活・暮らしの面で困難な状況に置かれる可能性が高い。帰還後の行政・医療・福祉・教育サービスや買物サービスなどにおいて、住民支援の具体策が必要であるが、地元自治体や住民自身の努力だけでは限界がある。相談員制度の拡充など国による支援策を強化し、その際、地域主体が柔軟に運用できる仕組とすることが必要である。
(3) 帰還を当面選択しない住民も公平な取り扱いをすること
 たとえ空間放射線量が低くても、被曝の危険を恐れるなどの事情でふるさとへの帰還をためらう被災者もいる。これらの被災者は、「自主避難者」と扱われる可能性もある。そのため避難指示解除後も、借り上げ住宅を一定期間、継続的に使用できるなど住居の確保を行うべきである。原子力災害による長期避難者には、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下、「原発事故子ども・被災者支援法」という)において、「住宅の確保に関する施策」を具体化し、現在の応急仮設住宅等への入居の判断が都道府県知事にゆだねられ、全国一律ではないことを解消し、強制避難者も自主避難者も同等に扱う必要がある。
(4) 長期避難者の住民としての市民的権利を保障すること
 原子力災害による被災者には、被災者生活再建支援法など、他の自然災害において認められる制度活用が保障されていない。長期にわたって町外コミュニティなどに居住しなければならない被災者は避難先の地域において住民の一員として、地域づくりや政治参加が認められるべきであり、納税制度、参政権、地域づくり参画など「二重の住民登録」制度の導入に向けての具体的な検討が必要である。
(5) 自治体間の広域連携を推進すること
 原子力災害による避難者のふるさとへの帰還が長期にわたって困難になるという状況の中で、被災自治体により災害公営住宅を含む長期避難者の生活拠点整備が進められている。この場合、避難先は各地に分散していることから、現在の自治体職員だけでは十分対応しきれないのが現状である。医療・介護・教育などの最も身近な住民サービスにおいては、自治体間の広域連携を進めることにより、行政事務の効率化などを図ることが必要である。
(6) 現行法制の不備を検証し改善する場を設置すること
 原発事故から既に3年半が経過しており、当面は原子力損害の賠償に関する法律、原子力災害対策特別措置法原発事故子ども・被災者支援法三法の内容充実を図り、現実の問題の解決に即した法改正を行うべきである。その上で、総合的・包括的な「原子力災害対策基本法」(仮称)の制定について検討する場を設けるべきである。また原子力災害被災地の復興に関する関連分野の研究者によって実施される学際的な調査研究、政策立案の拠点を被災地に常設することが必要である。
(引用終わり)
 
平成29年(2017年)9月29日
日本学術会議 東日本大震災復興支援委員会 原子力発電所事故に伴う健康影響評価と国民の健康管理並びに医療のあり方検討分科会
東日本大震災に伴う原発避難者の住民としての地位に関する提言
(抜粋引用開始)
要旨
1 問題の所在
 日本学術会議は、これまでの提言において、2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」)における事故の結果、避難することを余儀なくされた被災住民について、避難元への帰還か移住かの二者択一を迫るのではなく、被災住民の意向を尊重しつつ、より柔軟な政策をとるべきことを主張してきた。その一環として提案してきたのが、避難した被災住民が避難元自治体と避難先自治体の双方との結びつきを維持する(その意味で「二重の地位」をもつ)ことを可能にする制度を設けることである。本提言は、この提案が今なお重要性を失っていないという認識のもとで、住民登録の問題に焦点を当て、具体的な制度についての提案を行うものである。
2 避難住民の現状と「二重の地位」
 政府は、2017年3月をめどに避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示を解除する方針を決定し、解除はこのスケジュールにしたがって順次実施された。しかし、避難指示が解除されても、ただちに帰還した人の数は限られ、従来の強制避難者の少なからぬ部分が、避難指示が解除されたにもかかわらず自らの判断で帰還していないという意味で「自主避難者」化し、支援の対象外になる恐れが高まっている。各自治体は、帰還か移住かの二分法には収まらない住民の選択を想定し尊重する姿勢を示している。このように、避難住民の現状を考えると、避難者が避難元自治体と避難先自治体の双方との結びつきを維持することを可能にする方向で、住民としての地位の制度化を図ることが必要となっている。
3 現行法とその問題点
 原発避難者の地位について定めている法律のひとつは「原発避難者特例法」(2011年)である。同法は、「指定市町村」からの「避難住民」に対して必要な行政サービスを提供するうえで重要な役割をはたしている。同時に、適用される住民の範囲や制度の実効性などの問題点も存在する。その中には運用によって改善される余地のあるものもあるが、改善を確かなものとするためには、「支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還について」「被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」という基本理念を謳った「子ども・被災者支援法」の理念に立ち返りつつ避難住民の法的地位をいっそう明確かつ安定したものとし、そのことによって避難元および避難先の自治体のなすべきことを明らかにすることが望ましい。
4 2つの制度の新設
 避難者という場合、原発事故からすでに6年を経過した現在では、次の2つの場合を区別しておくことが必要である。ひとつは、避難元自治体に帰還することを前提にその時期を待っている、あるいは帰還するか避難先その他の土地に移住するかについての判断をさまざまな理由でなお留保しているという意味で暫定的な状態にある場合であり、もうひとつは、移住するという選択をしたうえで、将来における帰還の可能性を含め、避難元とのつながりを維持することを希望するという場合である。
 前者については、避難元市町村に住民登録を残している避難住民を、住民基本台帳法の改正により、避難先市町村における「特例住民」(仮称)として位置づける、という制度を設けることが考えられる。また、後者については、東電福島第一原発事故の被災者で避難先市町村に住民登録を移した住民のうち、避難元市町村との制度的つながりを維持することを希望する者を「特定住所移転者」(仮称)として位置づけ、各避難元市町村が、「特定住所移転者」に関わる施策や、まちづくり等に関してその意見を聴取するための制度を、それぞれの自治体の実情に応じて条例により定めることとすることが考えられる。
5 2つの制度と健康管理・医療の課題
 避難者が直面している健康管理・医療上の問題は、①原発事故にかかわりなく、国または自治体の制度にもとづき、住民としてもともと受けることのできる保健関連サービス、②原発事故の結果としての放射線被ばくにともなう健康管理、③避難にともなう心身の健康への負荷、の3つに整理することができる。「特例住民」制度および「特定住所移転者」制度、とりわけ前者は、避難住民が避難先自治体において住民に準ずる地位において地域共同体を構成する者としての自己認識を明確にもつことを可能にし、避難者に対する否定的なレッテルや孤立化を解消し、避難にともなう心身への追加的な負荷を軽減する方向に向かわせる一要因となることが期待される。
6 提言
(1) 帰還か移住かについての被災者の選択の尊重
 東電福島第一原発事故の結果、元の居住地から避難することを余儀なくされた住民について、「支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」という子ども・被災者支援法の理念を再確認すべきである。とりわけ、避難指示の解除にともない、期限を区切ることによって、帰還するか移住するかの判断を事実上強いることのないようにすべきである。また、少なくとも当面のあいだ、原発避難者特例法にもとづく「指定市町村」の指定を維持すべきである。
(2) 避難先(移住先)と避難元の双方の自治体との結びつきを維持することを可能にする制度の新設
 東電福島第一原発事故の結果、元の居住地から避難することを余儀なくされた住民が、
避難先(移住先)と避難元の双方の自治体との結びつきを安定的に維持することを可能にするために、国は、今後生じうる類似の事態をも念頭に置きつつ、避難元に住民登録を維持している者を対象とする「特例住民」(仮称)制度、および避難先に住民登録を移した者を対象とする「特定住所移転者」(仮称)制度を立法措置により設けることを検討すべきである。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「日本学術会議」関連)
2012年10月1日(2014年1月18日にブログに再アップ)
2012/9/11 日本学術会議による高レベル放射性廃棄物の処分に関する「提言」
2012年12月31日(2013年2月13日にブログに再アップ)
12/2日本学術会議 学術フォーラム「高レベル放射性廃棄物の処分を巡って」
2013年3月27日
日本学術会議チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復:20年の記録』の翻訳を公開
2014年10月3日
日本学術会議・分科会が公表した高レベル放射性廃棄物問題についての2つの「報告」
2015年2月19日
「核のごみ」をめぐる注目すべき動き~国の「基本方針」改訂と日本学術会議の「提言」
2015年5月7日
日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言―国民的合意形成に向けた暫定保管」をこれから読む
2015年11月17日
長谷川公一氏「日本学術会議 暫定保管提言を考える」講演と意見交換(11/16原子力資料情報室 第88回公開研究会)

原子力市民委員会が『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』を発表~過去の蓄積にも注目しよう

 2017年12月27日配信(予定)のメルマガ金原.No.3029を転載します。
 
原子力市民委員会が『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』を発表~過去の蓄積にも注目しよう
 
 3.11東京電力福島第一原子力発電所事故から2年余りが経過した2013年4月15日、民間の有識者が集まり、「原子力市民委員会」が設立されました。
 設立趣意書の一部を引用します。
 
(引用開始)
 脱原発社会建設のための具体的道筋について、公共政策上の提案を行うための専門的組織として「原子力市民委員会」を設立することとした。1956年に設立された政府の「原子力委員会」をはじめ、原子力政策に関与する政府の諸組織(原子力規制委員会経済産業省総合資源エネルギー調査会、復興庁など)に対抗する組織として、脱原発へ向けた原子力政策改革の具体的方針を提案すること、およびそのために必要な調査研究を行い、その成果を公開することが目的である。
(略)
 政府の原子力委員会は、最重要の政策文書として「原子力政策大綱」を定め、それ以外にも多くの専門部会等を設置し、問題別の報告書を発表してきた。また随時、委員会としての見解・声明を発表してきた。
 原子力市民委員会は、それに対抗した政策提言活動を進めていきたい。その最重要の報告書となるのは「脱原子力政策大綱」である。設立1周年を目処に、第1回の脱原子力政策大綱を公表したい。基本的には毎年、改訂を加えていく予定である。参加者たちの間で意見の一致がみられない論点については、複数案についてそれぞれ長所・短所を明記して、並記する。無理に一本化する必要はない。また、脱原子力政策大綱以外にも、重要度の高いテーマについて各論的な報告書を随時まとめる。急を要する重要問題については適宜、見解・声明を発表する。
(略)
 この市民委員会は、認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金(略称:高木基金)の特別事業として設立され、同基金からの助成を主たる財源として運営される。
(略)
 脱原発は一朝一夕には実現できない。ドイツでもシュレーダー政権下で脱原発合意(2000年)ができてから、メルケル政権による脱原発決定(2011年)まで11年の歳月を要した。この間、前進局面もあれば後退局面もあった。日本でも同様の経過は避けられないだろう。また脱原発には一定の痛みが伴う。脱原発が実現してからも長期にわたり、私たちは原子力負の遺産の返済に追われ続けるだろう。それでも脱原発の道筋をつけることにより、よりよい未来を孫子の代に手渡すことができる。日本の脱原発を願う全ての人々の参加を期待する。
(引用終わり)
 
 巻末のリンク一覧をご覧いただければお分かりのとおり、私もこれまで何度か原子力市民委員会の活動をブログで取り上げてきましたが、散発的であったことは否めません。
 たまたま、一昨日(12月25日)、原子力市民委員会が『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』を公表し、そのための記者会見を開いたということを知ったのを機に、これまでの原子力市民委員会の活動の成果として公表されてきた報告書などを、まとめてご紹介することにしました。
 
 まず、一昨日公表された『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』の「はじめに」の全文を、少し長くなりますが、全文引用します。これによって、これまでの原子力市民委員会の活動の概要がご理解いただけると思うからです。
 
(引用開始)
 原子力市民委員会は、脱原発社会の実現に向けて最善の道筋をつけるための公共政策を提言する専門的組織として、2013年4月に設立され、調査、分析および公論形成活動を進めてきた。設立にあたっての状況認識と活動姿勢について述べた「原子力市民委員会 設立趣意書」を本書巻末に再録したので、ご参照いただきたい(☞ pp.295-296)。
 設立後1年間の研究と討議、そして各地で開催した意見交換会をふまえ、原子力市民委員会は2014年4月に『原発ゼロ社会への道 ─ 市民がつくる脱原子力政策大綱』(以下、「大綱 2014」と略記)を発表した。本書『原発ゼロ社会への道 2017 ─ 脱原子力政策の実現のために』は、大綱 2014の続篇であり、展開である。その意味で「大綱 2017」ではあるのだが、大綱 2014 が脱原発政策の大きな青写真を示すべく、理念・倫理・原理を説明しつつ、あるべき制度や組織を大胆に提案したのに対し、本書では、現状の批判的分析により深く踏み込んで記述している。その意味では、あまり「政策大綱」らしくない。しかし、本書での記述・分析を通じて、脱原発を妨げる要因が具体的に把握され、脱原発にむけた政策転換のための急所が明らかになるだろう。
 私たちが提示する脱原子力政策の骨組みは、大綱 2014 から大きな変更は無い。東京電力福島第一原発事故のもたらした被害の現実に向き合うこと、事故の後始末に長期的な視点を取り入れること、核廃棄物の全体像をふまえた対処を考えること、エネルギー転換と地域経済転換を軸に脱原発のロードマップ(行程表)を描くこと、そして何よりも民主主義と道理性をふまえた議論のプロセスを重んずること、などがその骨格である。これらの検討を通じ、脱原発こそが倫理・経済・技術・環境のすべての面で合理的かつ現実的な選択であることを示していく。
 読者には、ぜひ大綱 2014 と本書をあわせて読んでいただきたいが、本書を先に読まれる方のために、各章の最初に「総説」を置き、2014 年時点での主な論点を振り返り、それ以降の私たちの研究や議論がどのように展開してきたかを簡潔に示すようにした。章の構成は 2014 年版のそれを踏襲している。新しく設置を提案する組織や制度の名称(仮称)に〈 〉をつけて示したのも2014 年版と同様である。
 原子力市民委員会では、大綱 2014を発表した翌年と翌々年に、それぞれ年次報告書を刊行して、原子力政策・エネルギー政策の現状と東電事故の被害対策・被害者支援および事故炉への対処の課題について問題提起を重ねてきた。年次報告 2015では「原子力発電復活政策の現状と今後の展望」と題して、政府が進める原発復活政策(というよりは原発延命政策)について詳細かつ批判的に分析した。年次報告 2016では、「ますます無理を重ねる原子力政策とその歪み」と題して、政府が原発延命に無理を重ねることによって、経済・財政・安全規制・エネルギー政策・被害者支援・復興政策など、さまざまな面で深刻な歪み(ゆがみ・ひずみ)が生じてきている実態を明らかにした。これら年次報告書で示した論点は、より実証的なかたちで本書に反映されている。
 また、原子力市民委員会では、4つの部会(☞ p.297)で調査と討議を進める一方、いくつかの重点テーマについてプロジェクトチームを編成し、特別レポートをまとめてきた。
 特別レポート1『100年以上隔離保管後の「後始末」』(2015年6月刊;改訂版2017年11 月刊)
 特別レポート2『核廃棄物管理・処分政策のあり方』(2015年12月刊)
 特別レポート3『「人間の復興」に必要な医療と健康支援とは?』(2016年11月刊)
 特別レポート4『原発立地地域から原発ゼロ地域への転換』(2017年4月刊)
 特別レポート5『原発の安全基準はどうあるべきか』(2017年12月刊)
これら特別レポートの成果も本書に反映されている。しかし、調査と提言をして終わりということではない。これらの知見をもとに、異なる価値観や経験をもつ幅広い人々が議論に参加する機会を提供すること、それを脱原発に向けた公論の形成と政策転換につなげていくことが原子力市民委員会の任務である。今後、本書や特別レポートを「叩き台」に各地での公開フォーラムや意見交換会を開催していく。多くの方々の参加を呼びかけたい。また、原子力市民委員会は、議会、議員あるいは政党によるヒアリングにも積極的に応じる用意がある。
 なお、本書に収録した文章の多くは、2017年5月から7月にかけての時期に書かれたものである。その後の査読と編集校閲の段階で、事態の進展があった出来事の一部(地層処分地の選定に関わる「科学的特性マップ」の発表、廃炉ロードマップの改定、原発安全規制における火山灰濃度基準の改定、日米原子力協定の延長についての米国側の態度表明など)については本文の記述または脚註に追加させることができたが、原賠訴訟の千葉地裁判決・福島地裁判決、柏崎刈羽原発の適合性審査など、本書に収録できなかった重要事項も少なくない。それらについては、今後の取り組みのなかで分析と批判を進めていきたい。
 本書では、論述や提案の客観的な根拠を示すため、脚註をかなり多めに付けている。脚註の番号は、第1章、第2章、第3章、第4章ではそれぞれ1番、201番、301番、401 番から、第5章は601番から、終章は801番からとなっている。
 原子力市民委員会は、髙木仁三郎市民科学基金(略称:髙木基金 www.takagifund.org)の特別事業として運営され、全面的に一般市民からの寄付に支えられている。財政面だけでなく、公開の委員会・学習会・意見交換会・フォーラム・記者会見などといった各種イベントへの参加、報告書・声明等への賛同や批評など、さまざまな形で寄せられる市民の熱い思いこそが私たちを支える希望であり、脱原発を可能にする駆動力である。もちろんご批判も歓迎する。これまでご支援くださった各地の皆様にあらためて感謝申し上げるとともに、今後とも一層のご支援をお願いしたい。
(引用終わり)
 
 それでは、以下に、上記「はしがき」で言及されている原子力市民委員会による各種報告書にリンクするとともに、目次の内の章立ての部分を引用します(いずれもPDFファイルがホームページ上で公開されている他、書籍の形でも市販されています)。
原子力市民委員会の本
 ただし、「特別レポート5『原発の安全基準はどうあるべきか』(2017年12月刊)」は
原子力市民委員会のホームページにはまだ未掲載のようです。
 ざっと目次を眺めるだけでも、この間の議論の積み重ねが偲ばれます。是非この蓄積を多くの人が共有できるように広められればと思います(その前に、まず私自身、読んでいかなければと思いました)。
 
原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱』(2014年4月12日発表)
序章 なぜ原発ゼロ社会を目指すべきなのか
はじめに
第1章 福島原発事故の被害の全貌と人間の復興
第2章 福島第一原発事故炉の実態と「後始末」をめぐる問題
第3章 放射性廃棄物の処理・処分
第4章 原発再稼働を容認できない技術的根拠
第5章 原発ゼロ社会への行程
終章 「原子力複合体」主導の政策決定システムの欠陥と民主的政策の実現への道
おわりに 日本の脱原発を世界に広げていく
資 料
 
『年次報告 2015 原子力発電復活政策の現状と今後の展望』(2015年6月8日発表)
第一部 原子力発電復活政策の現状と今後の展望
はじめに
1 続く被災者の困難―切り捨て政策の変更を求めて
2 再稼働政策への評価
3 原子力政策への評価
2
第二部 原子力市民委員会 2014 年度活動報告
おわりに
 
『年次報告2016 ますます無理を重ねる原子力政策とその歪み』
はじめに
第1章 無理な帰還促進政策がもたらす歪み ─人間なき復興
第2章 現実を直視しない事故処理の進め方
第3章 核燃料サイクル政策のさらなる迷走
第4章 原発ゼロに向けての障壁と選択
第5章 原発“介護”政策の動向
第6章 なぜ原発再稼働を認めるべきでないか
原子力市民員会2015年4月~2016年6月活動記録と今後の予定
 
原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』(2017年12月25日発表)
はじめに
概要
第1章 東電福島原発事故の被害と根本問題
第2章 福島第一原発事故現場の実態と後始末
第3章 核廃棄物政策の課題
第4章 原子力規制の実態となし崩しの再稼働
第5章 原発ゼロ時代のエネルギー政策の展望
終章 原発ゼロ社会を創造するために
※15頁~27頁に全体の「概要」が掲載されていますから、まずこれを読むことをお勧めします。
※2017年12月25日(月)午後1時から、衆議院第1議員会館において開かれた「発表のつどい」の模様がUPLANによってYouTubeにアップされています。
20171225 UPLAN【記者会見・意見交換会】「原発ゼロ社会への道2017-脱原子力政策の実現にむけて」発表のつどい(2時間19分)
1分~ 趣旨説明 菅波 完氏(高木仁三郎市民科学基金事務局長)
原発ゼロ社会への道 2017」の概要紹介
第1章について
12分~ 島薗 進氏(上智大学グリーフケア研究所所長、原子力市民委員会 座長代理・福島原発事故部会長)
17分~ 満田夏花氏(国際環境NGO FoE Japan、原子力市民委員会 座長代理)
第2章について
30分~ 筒井哲郎氏(プラント技術者の会、原子力市民委員会 原子力規制部会長)
第3章について
42分~ 伴 英幸氏(原子力資料情報室共同代表、原子力市民委員会 核廃棄物部会長)
第4章について
59分~ 筒井哲郎氏
第5章について
1時間10分~ 大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授、原子力市民委員会 座長代理・原発ゼロ行程部会長)
終章について
1時間28分~ 満田夏花氏
国会議員挨拶 1時間36分~ 菅直人衆議院議員立憲民主党
意見交換 1時間40分~
 
特別レポート1『100年以上隔離保管後の「後始末」』(2015年6月刊;改訂版2017年11月刊)
まえがき
1 提案の主旨
2 大工程
3 現行作業の問題点
4 検討過程の説明
5 検討結果
6 隔離保管中の安全性について
7 デブリの状態について
8 結論――リスク最小の選択を
 
特別レポート2『核廃棄物管理・処分政策のあり方』(2015年12月刊)
序章
第1章 核廃棄物の管理・処分の基本原則
第2章 東京電力福島原発事故廃棄物の管理・処分政策
第3章 事故由来放射能汚染物の管理・処分に関する重要な論点
第4章 従来型の核廃棄物の管理・処分政策
 
特別レポート3『「人間の復興」に必要な医療と健康支援とは?~原発事故5年、いま求められていること~』(2016年11月刊)
はじめに
講演再録
原発事故から5年 臨床医から見たフクシマ」牛山 元美(さがみ生協病院内科部長)
「栃木県における原発事故被害と支援ニーズの分析―被害者アンケートと聞き取り調査から―」清水 奈名子(宇都宮大学国際学部准教授)
「「人間の復興」に必要な医療と健康支援とは?」白石 草(OurPlanet-TV 代表)
パネルディスカッション
 牛山 元美、清水 奈名子、白石 草
 島薗 進(原子力市民委員会座長代理、第1 部会長、上智大学グリーフケア研究所所長)
 満田 夏花(同委員会座長代理、国際環境NGO FoE Japan 理事)
 司会:細川 弘明(同委員会事務局長、京都精華大学人文学部教授)
※2016年6月12日(日)、文京シビックセンター・スカイホールで開催された原子力市民委員会主催の公開フォーラム「『人間の復興』に必要な医療と健康支援とは?~原発事故5年、いま求められていること~」の記録です。
 この公開フォーラムの動画もUPLANによってアップされています。
 
特別レポート4『原発立地地域から原発ゼロ地域への転換』(2017年4月刊)
はじめに 
第1章    なぜ地域脱原発を進めるのか
第2章    原発立地自治体の経済・財政の実態
第3章    原発ゼロ地域への転換政策  
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「原子力市民委員会」関連)
2013年12月24日
原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』(原子力市民委員会)について
2015年3月10日
「高浜原発再稼働問題をどう考えるか」(3/9原子力市民委員会)を視聴して学ぶ
2015年12月30日
原子力施設立地・周辺自治体の財政・経済自立に向けた課題」(12/26第十五回 原子力市民委員会)を視聴しながら高浜原発再稼働を思う
2016年1月2日
原子力市民委員会 特別レポート No.2「核廃棄物管理・処分政策のあり方」を読む

「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(089~091)~地球温暖化、帆布と藍、サンフランシスコ市慰安婦像問題を考える

 2017年12月26日配信(予定)のメルマガ金原.No.3028を転載します。
 
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(089~091)~地球温暖化、帆布と藍、サンフランシスコ市慰安婦像問題を考える
 
 3週間毎にお届けする「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブ。2017年の最後となる今回は、089~091の3回分です。
 このところ、ブログのサブタイトルには、3人のゲストのお名前を連記していたのですが、今回は、番組で取り上げられたテーマを連記することにしました。正直、今回の3人のゲストの皆さん(水野一晴さん、新里カオリさん、方清子さん)のお名前を私が1人も存じ上げなかったのに対し、それぞれのゲストが語られたテーマが、いずれも非常に重要なものばかりであったから、そのようにしてみました。
 あらためて、このようなテーマに相応しいゲストを迎えて充実した番組を作り続ける「自由なラジオ LIGHT UP!」は素晴らしいと思います。是非1人でも多くの方に聴いていただければと思います。
 なお、過去のアーカイブは以下のYouTubeチャンネルから聴取できます。
 
自由なラジオ Light Up! (001~039までのアーカイブが聴けます)
jiyunaradio funclub (039以降のアーカイブが聴けます)
 
089 2017.12.12
PERSONALITY 西谷文和(ジャーナリスト)
GUEST 水野一晴さん(京都大学大学院文学研究科、地理学専修教授)
■メインテーマ:「地球温暖化による気候変動。今そこにある危機
 数億年前の大陸移動時代から温暖化の危機が叫ばれる今日まで、地球は気候変動などの環境変化によりその姿を大きく変えてきました。特に、極度の低温や乾燥を受ける限界地帯では、わずかな変化でも自然や植生に著しい変化が起こり、時には生態系そのものを脅かすこともあります。今回は、アフリカやアンデスでその実態を目の当たりにして来られた、京都大学大学院文学研究科、地理学専修教授の水野一晴さんに、具体的な危機の有り様をレポートしていただきます。
■Light-Upジャーナル:「大飯再稼働と東海第二原発延命の安全性の根拠は?」
 11月11月、関西電力大飯原発日本原子力発電(原電)の東海第二原発が、相次いで、再稼働の動きを見せました。両原発ともに課題は多く、安全性には特に深刻な疑問が残ります。本来は廃炉へ向けて進んでいくのが当然であるという声も多い中、なぜのように事を急ぐのでしょうか?今中哲二さんにお聞きします。
【参考サイト】
水野一晴のホームページ
京都大学大学院文学研究科・文学部 地理学専修ホームページ
 
090 2017.12.19
次の世代にそっと手渡したい~尾道向島の帆布と藍のにおいが指し示す大切なこと~
GUEST 新里カオリさん(立花テキスタイル研究所・代表)
 新里カオリさんは、尾道向島で「立花テキスタイル研究所」を設立し、特産物である帆布を使って、バッグやファッション小物などを作っています。帆布とは、帆かけ船の帆に使われる布です。かつては軍需産業としても重宝された地域の伝統産業でしたが、安価な化学繊維に追われて、尾道にある帆布工場の数は減少の一途を辿っています。
 その中で、新里さんは消えゆく地域の文化に新しい息吹を吹き込むべく、その土地にある材料、それも廃棄物として捨てられるようなものにも着目して、白い帆布に味わい深い染色を施し、おしゃれな商品を生み出しています。
 染色の原料となるものには、藍や柿渋など伝統的な技法にもこだわりますが、それに加えて造船工場で出る鉄屑、農家が剪定して残った枝、家具工場の廃材など、その土地の「足元」にあるさまざまなものを利用するのだといいます。
 埼玉県ご出身の新里さんは東京の美大を出てから、ふつうに現代のファッションやインテリアデザインなどの道に進むはずだったといいます。それが、旅先の尾道に根を下ろし、地元の帆布と染色にとりつかれたわけとは?
 今回の収録でとても印象的だった新里さんの言葉があります。美しい藍色を出すためには、藍のかめのお守りがとても難しく大変なのですが、温度・PHなどは最初、正確に計器で計りながら仕事をしてきた。しかし永く続けるうちに、「間に数字を入れない方が、信頼関係が築けることに気が付いた」といいます。においや味、五感で感じるものを信じながらのお仕事、もしかしたら、人ならではの力が、今ほんとうに必要な時代なのかもしれません。なぜなら、合理的なものだけが経済を動かし、結果、文化を消し去る。尾道向島の帆布がこれからも世代を超えて残っていく意味を、今一歩踏み込んで考えてみたいと思うのです。
 どうぞお楽しみに!
[立花テキスタイル研究所のホームぺージ] https://tachitex.com/
【参考サイト】
立花テキスタイル研究所YouTubeチャンネル
  
091 2017.12.26
サンフランシスコ市の慰安婦像問題、大阪市姉妹都市解消へ
PERSONALITY 矢野宏(新聞うずみ火代表・ジャーナリスト)
GUEST 方清子(パン・ヨンジャ)さん(日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク)
■メインテーマ:「サンフランシスコ市の慰安婦像問題、大阪市姉妹都市解消へ」
 60年前から姉妹都市の関係を結んでいるアメリカのサンフランシスコ市に対し、大阪市が絶縁宣言を突きつけました。サンフランシスコ市が慰安婦像の寄贈を受け入れたことで、大阪市の吉村洋文市長が、「日本の名誉に関わる慰安婦像の受け入れはやめてほしいとお願いしてきたが、今回のことで信頼関係が崩れた」と、姉妹都市解消を宣言したのです。慰安婦像の寄贈を受けることが、日本の名誉を損ねることなのか?なぜ、大阪市長慰安婦像にこだわるのか?「慰安婦」問題がまだ日本で広く知られていなかった1990年代初めから、日本軍「慰安婦」問題解決のために奔走している方清子さんをゲストにお迎えし、今回の経緯についてお聞きします。
■LIGHT−UPジャーナル:「伊方原発運転差し止め、広島高裁が初判断」
 四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁は12月13日、運転を差し止める決定をしました。来年9月末までの期限が付いた異例の決定とはいえ、高裁が再稼働をストップさせる初めての判断です。本日は、この「伊方原発の差し止め」について、今中さんにお話を伺います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「自由なラジオ LIGHT UP!」アーカイブ・シリーズ)
2016年8月16日
「市民のための 自由なラジオ LIGHT UP!」のご紹介~もう19回分もアーカイブがたまっていた
2016年9月5日
古賀茂明さん、泥憲和さん、望月衣塑子さん~「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(020~022)
2016年10月1日
チェルノブイリ事故から30年目のベラルーシを訪ねた菅谷昭松本市長ほか~「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(023~026)
2016年10月25日
伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)が西谷文和さんと語る「現場記者が見てきた『原子力ムラ』」ほか~「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(027~030)
2016年11月26日
DAYS JAPAN”丸井春編集長が語る「いのちのものさし」ほか~「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(031~034)
2016年12月18日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(035~037)~祝おしどりマコさん・ケンさん平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞受賞!
2017年1月12日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(038~041)~YouTube新アカウントで復活!(しつつある)
2017年2月9日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(042~045)~YouTubeトラブルは解決していないけれど
2017年3月7日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(046~049)~YouTubeアーカイブ完全復活
2017年3月28日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(050~052)~「森友」問題も「カジノ」問題も
2017年4月19日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(053~055)~命を見つめ続けてきた人たち
2017年5月10日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(056~058)~内田樹さん、丹下絋希さん、原発ゼロに舵を切った台湾レポート
2017年5月30日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(059~061)~スズキコージさん、伊藤千尋さん、上西小百合さん
2017年6月20日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(062~064)~浅井隆さん、藤田早苗さん、西谷文和さん
2017年7月11日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(065~067)~小出裕章さん、上杉聡さん、下重暁子さん
2017年8月1日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(068~070)~山秋真さん、伊藤真さん、豊田直巳さん
2017年8月24日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(071~073)~リスナー大感謝祭、「原爆の図」、笑福亭竹林さん
2017年9月12日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(074~076)~朝鮮学校無償化裁判、『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』、福島地裁・生業訴訟
2017年10月3日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(077~079)~斉加尚代さん(MBS)、PANTAさん、相可文代さん(元中学校教師)
2017年10月25日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(080~082)~高遠菜穂子さん、藤井克徳さん、池田 実さん
2017年11月14日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(083~085)~宇田有三さん、巻上公一さん、松竹伸幸さん
2017年12月5日
「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(086~088)~石田温香さん、木村真さん、アーサー・ビナードさん

年末はNHK・BS1スペシャルで佐藤琢磨の勇姿を見よう~1人のモータースポーツ・ファンとして

 2017年12月25日配信(予定)のメルマガ金原.No.3027を転載します。
 
年末はNHK・BS1スペシャルで佐藤琢磨の勇姿を見よう~1人のモータースポーツ・ファンとして
 
 私は、ブログに書くことはほとんどないものの、主にテレビ観戦を通じてではありますが、いっぱしのモータースポーツファンであった時代もあるのです。何しろ、私は、鈴鹿に初めてFIがやって来た1987年(ちょうど30年前で、その年からフジテレビによるF1全戦中継が始まりました)の4月から司法修習生(当時は2年課程)となったのですが、実はその2年前から司法試験のために荻窪に下宿する受験生の身でありながら、たびたび赤坂のホンダ本社ビル1階のショールームまで足を運び、スクリーンに展開されるF1を始めとする4輪や2輪世界GPなどの映像(ホンダ勢が活躍する部分のみ編集したビデオ)を食い入るように見つめ、「オートスポーツ」や「サイクルサウンズ」といった4輪、2輪のモータースポーツ専門誌に読みふけった(金がないので、立ち読みで済ますことが多かったですが)ものでした。
 
 フジテレビ全戦中継の2年目(1988年)、この年は、アイルトン・セナアラン・プロストを擁するマクラーレン・ホンダが、16戦15勝という圧倒的勝利を重ね、セナが鈴鹿で初のチャンピオンを決めた年でしたが、私は全戦VHSビデオに収録し、特に鈴鹿は何度も見直しましたね。序盤で、非力な自然吸気エンジンを積むイーヴァン・カペリが、ホームストレートで一瞬プロストを抜いてトップに立った瞬間は忘れられません。それ以来、エイドリアン・ニューウェイは天才デザイナーだと確信しました。・・・と言っても、熱心なF1ファン以外には通じないでしょうが。なお、この1988年F1完全収録VHS16巻セットは、後日、やはりF1大好きの従弟にプレゼントしました。
 
 思えば、あの年がホンダF1第2期の絶頂だったということでしょう。その後の、ジェンソン・バトンをメインドライバーとした第3期を経て、2015年から復活した第4期のマクラーレン・ホンダの惨状については、今年で終止符を打って「やれやれ」というのが長年のホンダ・ファンとしての私の正直な感想です。ちなみに、ホンダ・ファンというのは、「モータースポーツの応援では」ということであって、実生活で乗ってきた車はマツダとスバルですけどね。
 
 F1については、あまり中継(今や地上波では放送していない)を見る気もしなかった今年、日本のモータースポーツ・ファンにもたらされた最大の朗報は、5月29日にインディアナポリス・モータースピードウェイで行われた第101回インディアナポリス500マイルレース(インディ500)における佐藤琢磨の優勝(日本人初)でしょう。
 生中継を見るだけの体力がなかったため、翌朝、録画を見て興奮したものでした。結果が分かって見たにもかかわらず、ホワイトフラッグが出る前の周におけるへリオ・カストロネベスのアタックに持ち堪えたシーンには手に汗握りました。
 
 その後、色々な特別番組が作られたようですが、その掉尾を飾る番組が、年末、NHKのBS1で放送されます。それも、初回放送の番組(30日)と再放送の番組(31日)が連日見られるのですから、BSを視聴できる環境にある方には、(あまりモータースポーツに関心のない方にも)是非見ていただきたいですね。
 
NHK・BS1 2017年12月30日(土)21時00分~21時50分
BS1スペシャル「激突!ふたりの“世界最速”男~佐藤琢磨室屋義秀~」
(番組案内から引用開始)
世界三大レースのひとつ「インディ500」で優勝した佐藤琢磨と「エアレース世界選手権」で年間チャンピオンを獲得した室屋義秀。2人はお互いに車、飛行機に同乗体験をして、重力加速度Gのコントロールの仕方や勝負のタイミング、逆境に負けないメンタルの鍛え方など刺激的な対話を重ねていく。「モータースポーツで勝つために必要なことは何か?」誰よりも速く!世界最速を目指す2人が、その秘密を明らかにしていく。
(引用終わり)
 
NHK・BS1 2017年12月31日(日)20時00分~21時50分
BS1スペシャル「完全保存版 インディ500~佐藤琢磨・優勝への軌跡~」(再放送)
(番組案内から引用開始)
世界3大レースのひとつインディ500。30万人を超える大観衆の前で、佐藤琢磨が優勝した。レース中のピットの様子や、ドライバーとスポッターの無線音声なども駆使して、レースを面白く立体的に伝える。また、現役F1レーサー、アロンソなど琢磨のライバルの姿もピックアップ。高速でコーナーを走るときに身体にかかる巨大なG(重力)を、ドライバーはどのように耐えているのかも科学的に分析。感動のレースの完全保存版。
【語り】伊藤雄彦小郷知子   詳細
(引用終わり)
 
 ところで、モータースポーツに何の関心もない人にとっても、このBS1スペシャルはなかなか無関心ではいられない放送枠なのですよね。というのは、NHKスペシャルなどで放送された番組のロングヴァージョンが、「完全版」などと称して放送されたりするからです。
 今、予告されている番組(再放送)では、
 
12月26日(火)19時00分~20時50分
「沖縄と核」(110分ヴァージョン)
12月27日(水)19時00分~20時50分
「戦慄の記録 インパール 完全版」(110分ヴァージョン)
12月30日(土)午前7時00分~8時10分
「終わらない人 宮崎駿」(70分ヴァージョン)
 
 最後の「終わらない人 宮崎駿」は、昨年の11月にNHKスペシャルとして放映された時に録画して視聴しましたが、たしかこの時は50分番組だったはずです。それが、「ノーナレーションの完全版。トトロにポニョもたっぷりみせます!」として70分ヴァージョンになっているのですからね。ちなみに、この70分ヴァージョンは、今ではDVDとしても販売されているようです。
 東海テレビなら、劇場版として公開されるようなロングヴァージョンが、NHKではBS1で「完全版」と称して2度のお勤めをしているとは、何と言ったら良いのか。
 いずれにせよ、年末は録画に忙しくなりそうです。

平成天皇(皇后も)の公的発言は退位後も歴史資料として宮内庁ホームページで読めるようにして欲しい

 2017年12月24日配信(予定)のメルマガ金原.No.3026を転載します。
 
平成天皇(皇后も)の公的発言は退位後も歴史資料として宮内庁ホームページで読めるようにして欲しい
 
 12月23日が天皇誕生日として祝日となるのも、昨日を含めてあと2回。退位後も何らかの祝日として残すべきかについて議論があるようですが、平日に戻すのが、今上天皇のこれまでの振る舞いから考えて、より相応しいような気がします。
 
 それはさておき、誕生日の少し前(12月20日)、恒例により、宮内記者会との記者会見に臨んだ際の発言が、昨日の各紙に掲載されるとともに、宮内庁のホームページにアップされています。
 皇后の場合には、「皇后陛下お誕生日に際し(平成29年)宮内記者会の質問に対する文書ご回答」が発表されるだけで、会見自体は行われていません。
 
 ただ、昨日の朝日新聞などを読むと、「会見」とはいえ、事実上、用意した文章を読み上げるだけではないかと思われます。
 
朝日新聞デジタル 2017年12月23日05時09分
天皇陛下、会見で声詰まらせたことも 伝えてきた思い
(抜粋引用開始)
 継承に向け準備を行っていく――。天皇陛下は誕生日前の会見で、2019年の退位に向けた思いを語った。即位から29年。年に1度の誕生日の機会に、陛下はこれまでも様々な思いを伝えてきた。
 会見は20日、皇居・宮殿の石橋(しゃっきょう)の間であった。獅子の能面を着けた演者が舞う日本画家・前田青邨作「石橋」を背に、陛下は約12分間、用意した文章をゆっくりと読み上げた。
 九州北部豪雨被災地の復興の取り組みを「心強く思いました」と述べるなど、今年も災害や戦争で苦労した人への言及が目立った。
 2~3月のベトナム初訪問を振り返った際も、戦後も日本に帰らずベトナム独立運動に関わった「残留日本兵」の家族を「幾多の苦労を重ねました」と紹介。日本の家族と交流が続いていることに「深く感慨を覚えました」と述べた。
(略)
 戦後70年の15年は、会見の半分ほどの時間を戦争や平和への思いにあてた。多くの民間船員の犠牲について言及した際には声を詰まらせた。戦争を知らない世代が増えるなかで「先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なことと思います」と語った。
(略)
 ただ、質問数は徐々に減った。初期は17問もあったが、05年には3問に。14年に2問になり、会見で時間が余った場合に記者がその場で質問する「関連質問」がなくなった。15年以降は1問となった。
 誕生日会見の質問は、宮内記者会が事前に宮内庁を通じて陛下に伝える。宮内庁によると、陛下は毎回、資料を読むなど時間をかけて回答を考え、直前まで推敲(すいこう)する。高齢化に伴い、その負担が大きくなったことが削減の理由だった。
(引用終わり)
 
 「直前まで推敲」を重ねた「回答」が、1990年(平成2年)から2017年(平成29年)までの28回分、宮内庁ホームページに集積されています(平成11年と16年は体調の問題から文書回答)。
 
 私は、今年の8月15日、平成元年から29年までの、全国戦没者追悼式における「おことば」を全て読んでみました(全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること)。
  29年分の8月15日「おことば」を通読しての感想自体は、ブログをお読みいただければと思うのですが、私が、その時気になったけれどブログには書かなかったことをここで書いておきます。
 それは、今上天皇の平成元年以来の「おことば」を読み始めた時、前代(昭和天皇)の「おことば」を読みたいと思ったのですが、どうしても見つからなかったことです。おそらく、「昭和天皇実録」を調べれば分かるのでしょうが、宮内庁には、国民誰もが読めるようにしておいて欲しいものだと思ったのでした。
 そして、それ以上に私が強く懸念したのは、現在、宮内庁ホームページに集積されている今上天皇や皇后の「おことば」や「記者会見」での、推敲を重ね、おそらくは身を削ってまで用意したに違いない文章の数々が、はたして譲位以後も、宮内庁ホームページで読める状態が継続するのかどうかということです。
 私が考えるに、これらの「おことば」や「記者会見」での公式発言は、貴重な歴史資料であり、国民共有の財産です。
 宮内庁には、是非、今上天皇退位後も、これらのアーカイブをホームページで容易に閲覧できるようにして欲しいと要望したいと思います。
 
 最後に、今年の宮内記者会との記者会見での質問と回答(のごく一部)を引用しておきます。
 
(引用開始)
宮内記者会代表質問
問 この1年,天皇陛下ベトナムへの公式訪問や九州北部豪雨の被災地お見舞い,鹿児島県の離島3島訪問など,国内外でさまざまなお務めを果たされました。6月には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立し,9月には初孫の眞子さまのご婚約が内定しました。この1年を振り返りながら,退位の日までのお過ごしについてのお考えをお聞かせください。
 今年,宗像・沖ノ島と関連遺産群ユネスコ世界遺産に登録されたことは,喜ばしいことでした。10月に福岡県で行われた「全国豊かな海づくり大会」に出席する機会に宗像大社を参拝し,4世紀から9世紀にかけて沖ノ島に奉献された宝物ほうもつを見ました。沖ノ島は,我が国と朝鮮半島との間に位置し,航海の安全と交流の成就を祈る祭祀がそこで行われ,これらの宝物ほうもつは,その際に奉献されたとのことでした。
 また,それに先立つ9月に埼玉県日高市にある高麗神社を参拝しました。今から約1300年前に,高句麗からの渡来人がこの地に住み,建てられた神社です。多くの人に迎えられ,我が国と東アジアとの長い交流の歴史に思いを致しました。
(引用終わり)
 
(追記)
 私は、内田樹(うちだ・たつる)さんのように「天皇主義者」宣言をするだけの勇気も自信も学識もありませんが、『街場の天皇論』(東洋経済新報社/2017年10月)の第1部に収録された論考のいくつか、特に、「月刊日本」2017年5月号に掲載された「私が天皇主義者になったわけ」には、かなりの程度納得させられました。内田さんご自身のブログに転載されていますので、これだけでもお読みになることをお勧めします。
内田樹の研究室 2017年5月16日
天皇制についてのインタビュー
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/皇室関連)
2012年3月19日(2013年2月24日に再配信)
3/11天皇陛下の「おことば」とマスコミ報道
2013年4月4日
「主権回復の日」式典と天皇陛下
2013年10月30日
五日市憲法草案を称えた皇后陛下の“憲法観”
2014年1月6日
天皇陛下の“日本国憲法観”(付・「陛下」という敬称について) 
2014年1月14日
日本傷痍軍人会」最後の式典での天皇陛下「おことば」と安倍首相「祝辞」(付・ETV特集『解散・日本傷痍軍人会』2/1放送予告) 
2014年8月30日
“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する
2014年12月23日
天皇誕生日皇后陛下の文章を読み天皇陛下の発言を聴く
2015年5月30日
内閣総理大臣の孤独な闘い~天皇制と日本の若者を救った幣原喜重郎(この仮説は知っておく価値がある)
2015年8月15日
全国戦没者追悼式総理大臣「式辞」から安倍談話を読み返す(付・同追悼式での天皇陛下「おことば」について)
2016年7月17日
天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)
2016年8月9日
続・「天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして) 
2016年8月15日
全国戦没者追悼式で今年も貫徹された“安倍3原則”(付・天皇陛下「おことば」を読む)
憲法」カテゴリの最新記事
2017年6月1日
天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」は憲法に違反していると思う
2017年8月15日
全国戦没者追悼式における「おことば」(平成元年~29年)を通読して見えてくること

開催予告2/3「沖縄・平和を歌う会」(和歌山うたごえ九条の会)~参加者・出演者大募集!

 2017年12月23日配信(予定)のメルマガ金原.No.3025を転載します。
 
開催予告2/3「沖縄・平和を歌う会」(和歌山うたごえ九条の会)~参加者・出演者大募集!
 
 旧知の中北幸次さんから、チラシデータとともにお知らせと拡散要請が届きましたので、早速ブログで取り上げてご紹介することにしました。2018年2月3日(土)、和歌山市あいあいセンター6階ホールにおいて、和歌山うたごえ九条の会が「沖縄・平和を歌う会」を開催します。参加者だけではなく、出演者も「募集中!!」ということです。「募集中!!」と言っても、チラシの刷り上がりが12月26日頃と中北さんのメールに書かれていましたので、まだまだ「募集締めきり」にはならないでしょう。
 
 チラシをよく読むと、「「歌う会」の前に、和歌山うたごえ九条の会の総会を開催しますので、会員の方は、12時30分までに」来て欲しいと書いてありますし(私も会員です/もっとも最後に会費を払ったのがいつだったか定かな記憶がない)、「沖縄・平和を歌う会」の開場が午後1時とも書いてありますので、総会は30分で手早く片付ける計画のようです。
 以前には、総会からそのまま「花見の会(兼歌う会)」になだれ込むこともあったのですが、今回の企画は、会員以外の人にもたくさん参加・出演して欲しいということで、きっちりと時間を分けて開催ということになったようです。総会が終わってから1時半の「歌う会」開会まで、一般会員は、持参の弁当でも食べて待つことになるのだろうか。会場設営のお手伝いならいくらでもしますが、PA関係は素人には手出しできないし、あいあいセンターは固定席ですから、あまり手伝うこともなさそうですね。
 
 ところで、今回のお知らせは、和歌山うたごえ九条の会事務局長としての中北幸次さんからのお知らせだったのですが、中北さんには他にも様々な顔があり、うたごえオールスターズの中北さん、日本機関紙協会和歌山県本部の中北さん、(今でも販売しているのかどうか不明ながら)紀州九条せんべいの会の中北さんなどという様々な立場でお付き合いさせていただいてきました。最近では、「ゆいま~る和歌山」でも活動されており、「沖縄とともに生きる やんばるの生命の話/宮城秋乃さん講演会/2017年10月14日/中央コミセン」や「沖縄料理を楽しむ会/2017年12月17日/河北コミセン」などを精力的に開催されています。
 今回の「沖縄・平和を歌う会」の企画は、和歌山うたごえ九条の会主催であり、「ゆいま~る和歌山」は直接関わっている訳ではないようですが、中北さんの長年の沖縄と関わり続けてきた活動の一環であることは間違いないでしょう。
 
  是非、皆さんも拡散にご協力ください。そして、ご家族、お友だちお誘い合わせの上、ご参加、ご出演(!)をよろくお願いします。
 
(チラシから引用開始)
歌える自由を未来まで!! 和歌山うたごえ九条の会
 
沖縄・平和を歌う会
 
2018年2月3日(土)午後1時30分~(1時開場)
あいあいセンター6階ホール(男女共生推進センター)
 和歌山市小人町29
入場無料
 
 和歌山うたごえ九条の会は、2008年5月に大阪舞洲で開催された9条世界会議のオープニング大合唱に参加した仲間が中心に、「歌える自由を未来まで」をキャッチスローガンに誕生しました。
 安倍首相の「九条に自衛隊のことを書き加える」との発言に、黙っているわけにはいかないと「沖縄・平和を歌う会」を企画いたしました。
 沖縄に連帯し、9条を守る思いを共有できればと願っています。
 会員以外の方も大歓迎です。お誘い合わせてご参加ください。
※「歌う会」の前に、和歌山うたごえ九条の会の総会を開催しますので、会員の方は、12時30分までにお越しいただけますようお願いいたします。
 
【プログラム】
第1部 発表の部
 ●生協コーラス「みらい」
 ●うたごえオールスターズ
 ●ほか(ただ今募集中)
第2部 歌う会
 うたごえオースターズの伴奏で
 
出演者募集中!!
 会員以外の方も歓迎です。時間の関係がありますので事前に事務局にお申し込み・お問い合わせください。
 
和歌山うたごえ九条の会
事務局/〒640-8024 和歌山市元寺町3丁目27 中北幸次宅
℡:090-8826-5664  mail:spgcn608@yahoo.co.jp
(引用終わり)
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枝野幸男立憲民主党代表の日本記者クラブでの記者会見(2017年12月21日)を視聴する

 2017年12月22日配信(予定)のメルマガ金原.No.3024を転載します。
 
枝野幸男立憲民主党代表の日本記者クラブでの記者会見(2017年12月21日)を視聴する
 
 「まだ2か月半余りしか経っていないのか。信じられないな。」というのが、今日の仕事を終えた後、事務所のパソコンで、昨日(12月21日)、日本記者クラブで行われた枝野幸男立憲民主党代表の記者会見の映像(約1時間)を視聴しながら去来した感想です。
枝野幸男氏が、立憲民主党の設立を発表するために、たった1人の記者会見を開いたのが10月2日のことでしたからね。
 
 そして、10月6日(衆院選公示の4日前)に行われた立憲民主党・第1次公認候補発表の記者会見を感銘深く視聴したことも思い出されます。
 私が何に感銘を受けたかと言えば、枝野代表も福山哲郎幹事長も、記者からの質問に最後まで誠実に答えて(「応えて」でもよい)いたからです。つまり、「質問をはぐらかすようなことはしない。」「きかれたことに正面から答える。」という当たり前のことが目の前で行われていることに感動したのです。
 つまり、「枝野さんは、私(たち)に分かる言葉を使ってコミュニケーションできる人だ。」という信頼を多くの国民から勝ち得たことが、公示1週間前の設立にもかかわらず、全国の比例区で1100万票も集められた理由の1つに違いないと思っています。
 
 さて、その第48回衆議院議員総選挙の投開票から2か月、これからの日本の政治を考える上で、核の1つとなることは間違いない立憲民主党枝野幸男代表を招いた記者会見が、昨日、日本記者クラブで行われました。
 1時間という比較的短い時間ながら、今後の立憲民主党の立ち位置がかなり明瞭に理解できる会見だと思いますので、視聴をお薦めしたいと思います。
 
 なお、日本記者クラブでは、11月29日に大塚耕平民進党代表の会見を行ったのを皮切りに、一昨日(12月20日)は岡田克也無所属の会代表、昨日は枝野幸男立憲民主党代表、そして今日は玉木雄一郎希望の党代表を招いて連続会見を行っており、つまり、昨日の枝野代表記者会見は、旧民進党が分裂した後の4勢力の代表からそれぞれ話を聞こうという企画の一環であった訳です。
大塚耕平民進党代表会見
 他の3人の会見動画は未見ですが、時間のない方は、枝野さんの会見を見るだけで、だいたい今後のこの3党・1会派の関係は想像がつくと思いますよ(多分)。
 
 それでは、昨日の日本記者クラブでの枝野幸男氏の会見動画をご紹介します。
 
枝野幸男 立憲民主党代表 会見 2017.12.21(1時間00分)
 
 なお、司会を担当した平井文夫 日本記者クラブ企画委員(フジテレビ)が「「党勢拡大より国民との約束を実現させることに力を注ぐ」。民進党系勢力との連携を問われるたびに、この姿勢を強調した。希望の党との連携は「あり得ない」としつつ、選挙協力については「我々は市民連合の呼びかけに応じる。希望の党が同様に応じるなら・・・」と可能性は否定しなかった。」という会見メモを書いています。枝野代表の冒頭発言が終わった後の司会者からの質問を聞けば分かりますが(18分~)、この人は、かなりゆがんだ立ち位置から枝野さんの発言を引きだそうとしているという印象を受けました。
 それに、枝野さんが市民連合との関係に言及したのは、共産党との関係について尋ねた質問への答えにおいてであって、その発言が終わった後、このフジテレビの平井という人が、「希望の党との候補者調整というのはありえないんですか?」と突っ込んだ無理筋の質問の流れの中で、市民連合との関係にも言及されたというに過ぎず、上記会見メモのまとめはミスリーディングに近いと思います。野党間の選挙協力市民連合の関係についての枝野代表の考えは、動画の40分~44分で述べられていますので、全国の市民連合運動に関わっておられる方は是非注目して視聴してください。
 
 最後に、私がもう1つ注目した部分をご紹介しましょう。それは動画の50分~の部分で、経済政策についての見解を求められた際の枝野氏の答えの一部なのですが、一部文字起こししておきます。リアリスト・枝野幸男としては、早晩やってくるアベノミクス崩壊後にこそ政権交代の機会が訪れると見ていることがよく分かります。
 
「こうした現状を前提とした経済対策というか、経済に対する考え方を明確に示すとともに、やはりリアルな政治論としては、与党が失敗した時に、野党に期待値が高まっていくということになりますから、やはり次の経済危機の打撃を受けた後に、政権を担うことになる可能性が高いと思っていますので、そうした局面に対するシミュレーションと、その場合の危機管理策について、これはあんまり派手にやれば、そのこと自体が危機を煽ることになりますから、きちっと水面下で準備しておくことができるのか。これは、党の立場でというよりも、今党首の立場にある私の責任として、水面下でどれ位の準備をしておくかということはやっておこうと思っています。」
 
(参考動画)
立憲民主党の枝野代表が外国特派員協会で会見(2017年12月18日)(1時間01分)

ETV特集「老いて一人 なお輝く~一人芝居 50年~」(12/23)~「土佐源氏」(宮本常一『忘れられた日本人』収録)を読み直してみよう

 2017年12月21日配信(予定)のメルマガ金原.No.3023を転載します。
 
ETV特集老いて一人 なお輝く~一人芝居 50年~」(12/23)~「土佐源氏」(宮本常一『忘れられた日本人』収録)を読み直してみよう
 
 時として、何十年も前に読んだ本が、思いもかけず世上を賑わすことになったのを機に、もう一度書棚の奥から引っ張り出して、ぱらぱらと頁をくることがあります。
 宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』は、吉野源三郎氏の名著自体の映画化ではなく、「その本が主人公にとって大きな意味を持つという話です」(2017年10月28日付・朝日新聞デジタル宮崎駿監督、新作タイトルは「君たちはどう生きるか」)ということらしいのですが、それでも、思わず岩波文庫を探し出し、いつでも読めるように枕元に置いたりしています(まだ読み直していませんけど)。
 
 今日はまた、おそらく読んでから二十数年は経っている岩波文庫を引っ張り出すことになると思います。その本というのは、宮本常一(みやもと・つねいち/1907-1981)氏のあまりにも有名な著作『忘れられた日本人』です。
 岩波書店のホームページでは、「柳田国男渋沢敬三の指導下に,生涯旅する人として,日本各地の民間伝承を克明に調査した著者が,文字を持つ人々の作る歴史から忘れ去られた日本人の暮しを掘り起し,「民話」を生み出し伝承する共同体の有様を愛情深く描きだす.「土佐源氏」「女の世間」等十三篇からなる宮本民俗学の代表作.(解説 網野善彦)」と紹介されています。
 思い起こせば、弁護士になってからまだ数年しか経っていない頃、ブログなどやっていなかったので(インターネット黎明期で誰もブログなどやっていなかった)読書に費やせる時間が十分にあったからか、宮本常一氏の民俗学関連の著作も数冊は読んだ記憶があります。その中の1冊として、おそらく同氏の著述の中で最も有名な『忘れられた日本人』(最初は1960年に未來社から刊行)も含まれていたのです。
 
 この稿は事務所で書いているため、帰宅しないと岩波文庫版を見ることができないのですが、同書収録の13編の中で、最も印象深く思い出すのは(多くの人がそうだと思いますが)、「土佐源氏」という一風変わった、タイトルだけでは中身の想像がつきにくい一編です。
 
 私の拙い文章で中身をご紹介するよりは、そんなに長いものではありませんので、原著自体を読んでいただくにしくはないと思います(税込864円で発売中です)。
 それでも概略を知りたいという方は、エッセイストの湯川豊さんが「本の中の旅」の一編として書かれた「宮本常一 歩かなければ見えないもの」が、文春サイトで読むことができ、その中で、『忘れられた日本人』が取り上げられており、特に「土佐源氏」については詳しく紹介されています。
 一部引用してみましょう。
 
(引用開始)
 旅の話とは直接関係はないが、『忘れられた日本人』のなかで最もよく知られている「土佐源氏」一篇も、つまるところは旅の途上の聞き書である。ついでながら、この文章にふれておこう。
 高知県の山中にある檮原(ゆすはら)という村は、愛媛との県境に近い。四万十(しまんと)川の最上流部にあたる四万(しま)川が流れている。その四万川のさらに上流の支流が茶ヤ谷という場所で、宮本は昭和十六年の二月、流れの橋の下に小屋掛けしていた「土佐源氏」をたずねて話を聞いたのである。
 自ら「乞食」の身になったという男は、元馬喰(宮本はばくろうと平仮名で書いている)。みなし子同然の境涯で、少年時代に馬喰の親方のところへ奉公に出た。男がいうには、「わしは八十年何にもしておらん。人をだますことと、女(おなご)をかまう事ですぎてしまうた」。
 そして男の「色ざんげ」が始まるのだが、色ざんげという言葉がもつ湿り気がない。じめじめしていない。愁いの色はあるのだけれど、情事のあったときから十分に時間が経ったせいか、すでにゆるぎのない「物語」になっている趣きがある。
 馬喰という身分では寄りつきようのない、当時の田舎では上流とされる家庭の人妻と体の関係をもった話が二つ語られる。一つは楮(こうぞ)買いの商売をしていたときに出入りした営林署の役人の妻が相手。もう一つは、旦那が県会議員をしている、庄屋のおかた(奥さん)に手をつける話。
(略)
 宮本常一がこの男の聞き書に「土佐源氏」というタイトルをつけたのは、まさに絶妙というべきであろう。被差別民のひとつであった馬喰が、女たちの「悲しみ」への「思いやり」によって、身分高いとされる女性たちの相手になることができた。これが「土佐の源氏」であるという発想には、ユーモアとおだやかな皮肉もただよっている。
 じつは「土佐源氏」は山本槌造(つちぞう)という人物で、「乞食」ではなかった。水車小屋をもち、そこで村人のために米を搗くのが仕事だった。佐野眞一氏が『旅する巨人―宮本常一渋沢敬三』のなかで、山本槌造の孫に取材した話を明らかにしている。「土佐源氏」がすごい話芸の持ち主で、宮本常一にした話も巧みに虚実とりまぜたものに違いないというふうに孫は語っている。
 私は十分それはあり得ると思う。営林署の役人の妻との話は、「秋じゃったのう。/わしはどうしてもその嫁さんとねてみとうなって……」という語りからその場面が始まる。語り手である「土佐源氏」が、自分の体験を「物語化=虚構化」しているようすが、この思い入れたっぷりの語り口から伝わってくる。
 これはフィクションで話の真実性を補強し、強化するやり方といってもいいだろう。現代最高の旅行文学の書き手だったイギリスのブルース・チャトウィン(一九八九年、四十八歳で死去)は、自分の作品をフィクションで補強することをあえて避けなかったし、それを行なう名手でもあった。チャトウィンについてはくわしく語る機会が後にあるだろうが、「土佐源氏」の場合、語り手自身が虚実をとりまぜて語り、宮本はそれを承知しながら採録しているのかもしれない。それでも「土佐源氏」の輝きは少しも減じない。これは民俗学の成果ではなく、旅をしつづけた人の一個の作品なのである。
(引用終わり)
 
 さて、最後に、私がなぜ『忘れられた日本人』や「土佐源氏」を思い出したのかを書いておきましょう。
 私は、定期的に、録画すべきTVドキュメンタリー番組はないかとネット検索するのですが、今日たまたまNHK・EテレのETV特集のホームページを確認したところ、以下のような番組案内にぶつかったのです。
 
NHK・Eテレ
本放送 2017年12月23日(土)午後11時00分~午前0時00分
再放送 2017年12月28日(木)午前0時00分~1時00分(水曜深夜)
ETV特集老いて一人 なお輝く~一人芝居 50年~」
「88歳で現役の役者、坂本長利さんがライフワークとしているのが一人芝居「土佐源氏」。今年で公演50周年、演じた回数は1190回に。記念公演の旅に密着し魅力に迫る。
今年米寿の坂本長利さんは、現在もテレビドラマや映画で活躍する。昭和16年民俗学者宮本常一高知県聞き書きした「土佐源氏」に感銘を受け独自に脚本化した。目の不自由な80代の男性が語る若い頃の女性遍歴。そこには今失われつつある思いやり深い日本人の姿も描かれている。6年前にがんを患い一人暮らしの坂本さんは「忘れてはいけないものがあるから演じ続ける」と語る。旅公演からその情熱の根源を見つめる。」
 
 「和の心を伝える企画プロデュース 響和堂」ホームページを閲覧してみると、「土佐源氏 公演スケジュール」が掲載されており、2017年12月15日(金)さいたま市「ギャラリーカフェ楽風」での公演が1190回目だそうです。
 不勉強にも、坂本長利さんによる一人芝居「土佐源氏」は全く知りませんでしたが、ETV特集で取り上げられたのをきっかけとして、また『忘れられた日本人』を手にとってみようという気になったのですから、1冊の本との「縁」はどこでどう繋がっているか分からず、不思議なものですね。

第5回「日隅一雄・情報流通促進賞」表彰式を視聴する~今年の大賞は「みんなのデータサイト」

 2017年12月20日配信(予定)のメルマガ金原.No.3022を転載します。
 
第5回「日隅一雄・情報流通促進賞」表彰式を視聴する~今年の大賞は「みんなのデータサイト」
 
 産経新聞出身の弁護士でNPJ(News for the People in Japan)編集長、そして「情報流通促進計画BY日隅一雄(ヤメ蚊)」で鋭い意見を発信するブロガーというのが、私が認識していた日隅一雄(ひずみ・かずお)さんという存在でした。
 その日隅さんが、宿痾に冒されながら3.11後の東電記者会見の取材を続けた末、2012年6月に逝去された後、同年12月、「日隅一雄・情報流通促進基金」が設立されました。少し長くなりますが、「設立の言葉」を引用したいと思います。
 
(引用開始)
■日隅一雄・情報流通促進基金 設立の言葉
 日隅一雄さんは、2012年6月12日、胆のう癌のため亡くなった弁護士・ジャーナリストです。享年49歳でした。
 日隅さんは、5年間、産経新聞社で新聞記者として仕事をし、1998年、弁護士となりました。
 記者経験を生かし、「NHK番組改変事件」や「沖縄密約情報公開訴訟」などの表現の自由をめぐる裁判に心血を注ぐ一方、報道被害の救済、情報公開の推進と内部告発者の保護などの活動に力を尽くしました。
 日隅さんは、「新聞記者を辞めた」=「ヤメ蚊(ブン)」弁護士と名乗り、「情報流通促進計画」と題するブログを開設して自ら情報の公開や発信に取り組みました。弁護士の仲間と設立したインターネットメディア「News for the People in Japan(NPJ)」では編集長として活動しました。
 日隅さんは、また、この国のマスメディアにおける構造的欠陥であるクロスオーナーシップ制や公権力によるメディアへの介入、審議会委員の選任方法における問題点を調査、研究した著書を刊行しています。
 2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所の事故直後からNPJ記者として自ら記者会見場に通い、東京電力と政府の情報隠しと闘い、メルトダウンSPEEDI隠し、放射能汚染水の海洋放出などの情報を粘り強く追求しました。日隅さんの記者会見場における活躍は、インターネット中継などを通じて日本中で視聴され、多くの人から熱い共感がよせられています。
 このような活動の最中、日隅さんは体調の不調をうったえ、検査の結果、2011年5月、末期胆のう癌で余命6カ月の告知を受けました。
 しかし、日隅さんは、数週間の入院治療ののち、再び病をおして記者会見に出席し続け、その回数は110回に及びました。加えて、主権者である市民が、自ら判断するために公的情報の公開とその流通が必要だという強い信念のもと、癌の激痛をおして体験と思索をいくつもの著書にまとめ、「市民が主人公になる社会」の実現を強く訴え、子どもたちに「主人公となる幸せ」を託しました。自ら企画したNPJ主催の連続対談を6回やりとおし、他界七日前の福島県須賀川市での講演や他界二日前の武蔵野市での講演など多数の講師活動にも献身しました。前日まで執筆、メールなどに尽力しましたが余命の告知から約1年にあたる2012年6月12日逝去しました。
 「日隅一雄・情報流通促進基金」は、「市民が主人公になる社会」のため日々発信を続けながら亡くなった日隅さんの願いを継承し、さらにそれを発展させることを目的として日隅さんの友人、仲間たちによって設立されました。
 基金は生前の日隅さんの著作や活動を広めます。また表現の自由と知る権利が保障され、市民が主人公になる社会の実現をめざして活動を行います。この考えを分かち合い、皆さまの力で、この「日隅一雄・情報流通促進基金」を発展させていただきますようお願いいたします。
 闇に光をもたらし、希望のために闘い続けた日隅一雄さんの精神を語り継ぐために。
2012年12月12日
日隅一雄・情報流通促進基金
代表理事 海渡雄一(弁護士)・桂敬一(ジャーナリスト)
同 理事 梓澤和幸(NPJ代表)・宇都宮健児(日弁連前会長)・木野龍逸(ジャーナリスト)・白石草(OurPlanet-TV)・田中早苗(弁護士)・西野瑠美子(NHK番組改変訴訟原告団)(五十音順)
(引用終わり)
 
 この日隅一雄・情報流通促進基金による主要な活動の1つが、「日隅一雄・情報流通促進賞」です。その目的は以下のようにホームページで説明されています。
 
(引用開始)
 日隅一雄・情報流通促進賞は、表現の自由、情報公開、国民主権の促進に生涯を捧げた日隅一雄の理念を基に日隅一雄・情報流通促進基金により2012年に設立されました。公正な情報の流通の促進をし、真の国民主権の実現に貢献している個人や団体を顕彰し、支援を行うことを目的としています。
(引用終わり)
 
 これまで5回の受賞者をご紹介しましょう。
 
第1回(2013年)
大賞 情報公開クリアリングハウス(代表:三木由希子)
奨励賞 CRMS(市民放射能測定所)(代表:丸森あや)
同 福島原発告訴団(代表:武藤類子)
特別賞 東京新聞こちら特報部」(代表:野呂法夫)
 
第2回(2014年)
大賞 FFTV(フクロウ・FoEチャンネル)満田夏花・阪上武
奨励賞 「福島原発事故 県民健康管理調査の闇」(岩波書店)日野行介
同 海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会
特別賞 「福島原発事故 東電テレビ会議 49時間の記録」(岩波書店)宮﨑知己・木村英昭
同 秘密保全法に反対する愛知の会
 
第3回(2015年)
大賞 「原発と大津波 警告を葬った人々」(岩波新書添田孝史
奨励賞 季刊誌「ママレボ」和田秀子・吉田千亜
特別賞 『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議
同 東海林路得子
 
第4回(2016年)
大賞 金聖雄(袴田巖さんを撮影した映画「夢の間の世の中」制作)
奨励賞 中日新聞記者・榊原崇仁(新聞紙面を通じた継続的な原発報道)
特別賞 共同通信記者・鎮目幸司(福島原発事故津波対策懈怠に関する一連の報道)
同 毎日新聞記者・青島顕・日下部聡(秘密保護法に関する一連の報道)
 
第5回(2017年)
大賞 「みんなのデータサイト」の活動(共同代表:石丸偉丈、阿部浩美、大沼章子)
【表彰理由】「みんなのデータサイト」は、東京電力福島第一発電所事故により、放射性物質で汚染した土壌を市民の手で計測し、集積した上で、地図上に分かりやすくプロットするという市民参加型のプロジェクトを実施。17都県の土壌採取を広く呼びかけて測定し、土壌汚染データを集積した上で、 市民の立場で科学的データをわかりやすくまとめて公開していることを評価し、大賞に選定しました。
奨励賞 尾崎孝史(SEALDs参加者への取材活動) 
【表彰理由】写真家としてSEALDsへの継続的な取材を行い、写真集「SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語」を著しました。安保法反対運動をはじめとして新しい運動スタイルを切り拓いたSEALDsの動的な情報発信を切り取って、豊富な写真とともに詳細な記録として残したことは、一過性にとどめない未来に続く情報流通として優れた作品になっており、奨励賞に選定しました。
特別賞 木村真森友学園問題にかかわる情報公開を含む調査活動)
【表彰理由】豊中市議の木村真さんは、森友学園が新設する「瑞穂の国記念小学校」の児童募集ポスターを目にしたことをきっかけに、学園が開校する土地取引の情報公開に着手。世間が着目する前に、いち早く問題を発見し公文書を通じて実態を明らかにしようと取り組みました。森友学園の一連の疑惑の端緒になり、その後の情報公開を求める流れをつくった功績を評価し、特別賞に選定しました。
同  小原美由紀(「コッカイオンドク!」活動)
【表彰理由】「コッカイオンドク」は、共謀罪などをめぐり、噛み合ない与野党の国会質疑内容をいちはやく文字に起こし、市民が大臣や国会議員に扮して音読する取り組みです。国会会議録ではわからない間合いをリアルに再現し、市民が自ら表現活動として行うというユニークさは、市民が情報流通の主体となる新しい活動として優れていることから、特別賞に選定しました。
 
 今年(2017年)の大賞は、「みんなのデータサイト」の活動に贈られました。【表彰理由】を読んだだけではよく分からない、そもそも「みんなのデータサイト」って何だ?と思われる方がおられるかもしれませんので、サイト自体をご紹介しておきます。
 
みんなのデータサイト
 
 「みんなのデータサイト 新着情報ブログ」に掲載された「受賞のお知らせ」を引用したいと思います。
 
(引用開始)
 みんなのデータサイトは2012年に発足し、市民と34の測定室が協力し合い、2011年の東京電力福島第一原発事故以降の放射能汚染測定データを蓄積・公開してまいりました。
 私たちのデータベースには、食品で1万5千件近く、土壌データで3,500件近くのデータが、市民力によって積み上げられ、web上でどなたでも検索閲覧ができます。
 食品データの一件一件は、多くの一般の方々が、お子さんの健康などを心配され、測定に持ち込まれたデータを中心に積み上げられており、一つ一つのデータが貴重なものです。ここまでの形になったのは、本当に多くの方との協力によってしか成り立ちえないことでした。
 また2014年からは、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」と題した、東日本17都県にわたる広範囲な土壌測定を行い、延べ人数4,000人を超える皆様と共に、各地で土壌を採取測定し、データを積み上げ、汚染状況を可視化する取り組みを進めてきています。
 土壌データは、チェルノブイリ事故の後、ウクライナベラルーシでは国費をかけて大規模な測定を行い記録・公開し、避難や保養などの判断基準として使用しているのに対し、日本ではほぼ空間線量のみの測定にとどまっています。また、原発事故前の20倍もの高い値である、年間20mSvという基準が採用され続け、これが住民の避難・帰還基準の判断に用いられているのが現状です。
 このような中、「自分たちの住む地域の汚染を知る権利があるはずだ」という思いのもと、「政府がやらないなら自分たちで明らかにしよう」と、市民力でできるだけ多くの「実際のデータ」を調査・記録・公開することに努めてまいりました。このデータを多くの人に知っていただき活用できるよう、これからも取り組んでまいります。
 今回の受賞は、これまでに全国の測定所に測定を依頼してくださった市民の皆さま、採取活動やカンパなどの資金で私たちを応援してくださった方を含め、非常に多くの方々と共にいただいたものだと思い、共に喜びたいと思います。
 市民科学の力で放射能汚染の実態を、測定データの積み上げにより提示出来ていることに、大きな力を感じます。
 日隅情報流通促進基金の関係者の皆様へ心より感謝申し上げますと共に、原発事故の爪痕を測定を持って可視化し、さらに多くの皆様へ貢献していけるよう、この受賞を励みとし、私たちはさらに前進してまいります。
 みんなのデータサイトを、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
   みんなのデータサイト スタッフ一同
(引用終わり)
 
 今年(2017年)の日隅一雄・情報流通促進賞表彰式が、去る12月15日(金)18時30分から、日比谷コンベンションホールにおいて開催されました。共催団体となっているNPJが動画を公開していますので、ご紹介しておきます。
 
第5回 日隅一雄・情報流通促進賞表彰式(1時間43分)
冒頭~ 司会:小竹ひろこ
1分~ 開会挨拶 海渡雄一「日隅一雄・情報流通促進基金代表理事
10分~ 書籍紹介『ウホウホあぶないウホウホにげろ』(日隅一雄:原案、一色悦子:文、市居みか:絵/2015年/子どもの未来社
12分~ 記念講演「治安維持法といま」 増本一彦さん (治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟)
41分~ 審査の講評総評 三木由紀子さん
46分~ 特別賞:森友学園問題にかかわる情報公開を含む調査活動 豊中市議会議員の木村真さんへ
52分~ 特別賞:「コッカイオンドク!」活動 小原 (コハラ) 美由紀さんへ
1時間06分~ 奨励賞:SEALDsへの継続的な取材活動 尾崎孝史さんへ
1時間14分~ 大賞:「みんなのデータサイト」の活動 共同代表の石丸偉丈さん、阿部浩美さん、大沼章子さんへ
1時間34分~ 事務局からのお知らせ(第6回募集について)
1時間36分~ 閉会挨拶 梓澤和幸「日隅一雄・情報流通促進基金代表理事

五味洋治著『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(創元社・「戦後再発見」双書7)と岩上安身氏による8時間の著者インタビュー(全編無料視聴可)

 2017年12月19日配信(予定)のメルマガ金原.No.3021を転載します。
 
五味洋治著『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(創元社・「戦後再発見」双書7)と岩上安身氏による8時間の著者インタビュー(全編無料視聴可)
 
 以前、放送大学高橋和夫教授の授業に耳を傾けていたところ、同教授が既存のメディア(テレビやラジオ)に出演した際には、何分何十秒などと限定された時間の中で話さなければならなかったのに、インターネットメディアに呼ばれて、どれだけの時間があるのか尋ねると、「好きなだけ話してください」と言われて驚いた、という話をされていたことがありました。
 たしかに、YouTubeUSTREAMでは、今や技術的に何分以内とか、何時間以内ということはないようです。もっとも、だからといって、10時間インタビューや20時間インタビューをネットにアップしても、「誰が視聴するんだ?」ということになりますので、そんなに非常識に長いインタビューというのはめったに見かけません。
 
 ところが、IWJの岩上安身さんによるインタビューで、前後編合わせて8時間以上(!)という超ロングインタビューがアップされているのに気がつきました。しかも、【広告連動企画】ということで、「※1年間全編動画を公開します。」なのです。
 岩上さんによるインタビュー動画は、私のような年会費1万円(月払いなら月額1,000円)を払っている一般会員でも、1か月間しか視聴できないのですが、恒常的に財政危機に瀕するIWJの増収策の一環として、【広告連動企画】というのが始まったようです(前からやっていたのかもしれませんが)。
 今回の広告主は出版社の創元社創元社の新刊(刊行日は2017年12月20日)で、「戦後再発見」双書の第7弾『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(五味洋治著)の宣伝のためにIWJとタイアップし、岩上さんによる著者の五味洋治(ごみ・ようじ)さん(東京新聞論説委員)に対するロングインタビューが実現することになったということのようです。
 もっとも、岩上さんによるインタビューは2時間、3時間の長時間インタビューになるのは別に珍しいことではないとはいえ、2回にわたり、8時間以上もの超ロングインタビューになろうとは、創元社も五味さんも、予想していなかったことでしょう。
 第一、広告効果ということから考えても、これだけの長時間動画を視聴しようという者がどれだけいるかが問題で、早急に、ダイジェスト版も作ってアップした方が良いのではないかと、老婆心ながら助言したいと思います。
 
 ということで、広告主に敬意を表し、創元社ホームページの中の『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』紹介ページにリンクし、「内容紹介」「目次」「著者紹介」を引用します。
 
(引用開始)
内容紹介
緊迫化する世界情勢を読み解くカギはここにあった!
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって緊迫化する日本の安全保障。なぜヨーロッパでは30年も前に消滅した「冷戦構造」が、東アジアではいまだに続いているのか……。現在の日本政府は、アメリカとのあいだに存在する安全保障の枠組みを変えることはまったく選択肢になく、ただ中国と北朝鮮を、崩壊したソ連に代わる「新たな脅威」と位置づけ、従来の冷戦構造を維持しようとしている。本書では、その根源が67年前の「朝鮮戦争」にあることを明らかにし、対米関係では日本と双子のような関係にある韓国の軍事的状況から、これまであまり論じられてこなかった朝鮮戦争と日本の安全保障体制の関係についてときほぐし、これから進むべき日本の未来を展望する。
 
目次
第1章 ソウルにある米軍基地――100年越しの基地移転
第2章 北朝鮮と核ミサイル危機(1962年~2017年)
第3章 朝鮮戦争の歴史――開戦から休戦まで(1950年~1953年)
第4章 朝鮮戦争と日本の戦争協力
第5章 韓国軍の指揮権はなぜ米軍がもっているのか
第6章 朝鮮戦争をどうやって終わらせるか
 
著者紹介
五味 洋治(ごみ・ようじ)
1958年、長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1983年に中日新聞社東京本社へ入社し、1997年に大韓民国延世大学校に語学留学。ソウル支局、中国総局を経て、現在、東京新聞論説委員。著書に『父・金正日と私』(第44回大宅壮一ノンフィクション賞候補作:文春文庫)、『生前退位をめぐる安倍首相の策謀』(宝島新書)などがある。
(引用終わり)
 
 また、このページから「クリック立ち読み」ボタンをクリックすると、本書の一部のPDFファイルを閲覧することができます。このこと自体は、最近は多くの出版社のホームページで実施されており、「まえがき」や「目次」を含め、冒頭の30ページ程度が読めるようになっているのは別に珍しくありません。
 ただ、創元社の「戦後再発見」双書は、太っ腹というか何というか、他の出版社に比べて「立ち読み」できるページが多い!
 この『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』はどうかとクリックしてみたところ、何と1~107頁まで読めることが分かりました。これは、第1章と第2章の全部であり、全320頁の約1/3が無料で読めることになります。まあ、ネットで107ページ読もうという気力のある人なら、読み終わる前に多分この本を買っているでしょうけどね。
 
 それでは、以下にIWJの動画をご紹介します。
 
【広告連動企画】日本人が知らない冷戦構造「朝鮮国連軍体制」の衝撃!在日米軍基地は朝鮮有事で「後方基地」に!『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』著者・五味洋治氏に岩上安身が訊く! 2017.12.11
■全編動画(前編・12/11収録)5時間43分
■全編動画(後編・12/19収録)2時間29分
 
 なお、今回のインタビューの冒頭で、五味さんの新刊『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』に、独自に(?)サブタイトルを付けて紹介していました。それが「誰も知らない日本を支配する『朝鮮国連軍地位協定』」というものです。
 正直、私も知りませんでした。この10月に刊行された伊勢﨑賢治さんと布施祐仁さんの共著『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(集英社クリエイティブ)で取り上げられたことによって初めて知ったという人も多いでしょう。
 
 そこで、『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』を読むために、あるいは8時間の超ロングインタビューを視聴するために、朝鮮国連軍地位協定日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定)とはどんなものか、参考サイトにリンクしておきます。
 
[外務省サイトから]
朝鮮国連軍地位協定(概要の説明)
(引用開始)
1 沿革
(1)朝鮮国連軍は,1950年6月25日の朝鮮戦争の勃発に伴い,同月27日の国連安保理決議第83号及び7月7日の同決議第84号に基づき,「武力攻撃を撃退し,かつ,この地域における国際の平和と安全を回復する」ことを目的として7月に創設された。また,同月,朝鮮国連軍司令部が東京に設立された。
(2)1953年7月の休戦協定成立を経た後,1957年7月に朝鮮国連軍司令部がソウルに移されたことに伴い,我が国に朝鮮国連軍後方司令部が設立された(当初キャンプ座間に置かれたが,2007年11月に横田飛行場に移転した。)。
(3)現在,在韓朝鮮国連軍は,朝鮮国連軍司令部本体と同司令部に配属されている軍事要員からなっており,在韓米軍司令官ブルックス陸軍大将が朝鮮国連軍司令官を兼ねている。
(4)横田飛行場に所在する朝鮮国連軍後方司令部には,ジャンセン司令官(豪空軍大佐)他3名が常駐しているほか,8か国(豪,英,加,仏,トルコ,ニュージーランド,フィリピン,タイ)の駐在武官が朝鮮国連軍連絡将校として在京各国大使館に常駐している。
2 我が国の国連軍に対する援助
(1)1951年9月,我が国は,吉田・アチソン交換公文により,サンフランシスコ平和条約の効力発生後も朝鮮国連軍が日本国に滞在することを許し,かつ,容易にする義務を受諾した。また,1954年6月,朝鮮国連軍が我が国に滞在する間の権利・義務その他の地位及び待遇を規定する国連軍地位協定が締結された(注1)。
(2)朝鮮国連軍による我が国における施設使用
ア 朝鮮国連軍は,国連軍地位協定第5条に基づき,(i)我が国における施設で,合同会議(注:国連軍地位協定に基づき設置された我が国政府と他の締約国政府間の協議・合意機関)を通じて合意されるもの及び(ii)在日米軍の施設・区域で我が国政府が合同会議を通じて同意するものを使用することができる(注2)。
イ 我が国が朝鮮国連軍の使用に供する施設は,国連軍地位協定と同時に作成された同協定についての合意された公式議事録(第5条に関する部分)に従い,「朝鮮における国際連合の軍隊に対して十分な兵たん上の援助(logistic support)を与えるため必要な最少限度に限るもの」となっている。
ウ 現在,朝鮮国連軍は,国連軍地位協定第5条に基づき,我が国内7か所の在日米軍施設・区域(キャンプ座間,横須賀海軍施設,佐世保海軍施設,横田飛行場,嘉手納飛行場普天間飛行場,ホワイトビーチ地区)を使用することができる。
(注1)締約国(12か国):日本,米国,オーストラリア,英国,カナダ,フランス,イタリア,トルコ,ニュージーランド,フィリピン,タイ,南アフリカ
(注2)国連軍地位協定第5条(抄)
国際連合の軍隊は,日本国における施設(当該施設の運営のため必要な現存の設備,備品及び定着物を含む。)で,合同会議を通じて合意されるものを使用することができる。
国際連合の軍隊は,合同会議を通じ日本国政府の同意を得て,日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基づいてアメリカ合衆国の使用に供せられている施設及び区域を使用することができる。
(引用終わり)
 
[データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)から]
(抜粋引用開始)
第五条
1 国際連合の軍隊は,日本国における施設(当該施設の運営のため必要な現存の設備,備品及び定着物を含む。)で,合同会議を通じて合意されるものを使用することができる。
2 国際連合の軍隊は,合同会議を通じ日本国政府の同意を得て,日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いてアメリカ合衆国の使用に供せられている施設及び区域を使用することができる。
3 国際連合の軍隊は,施設内において,この協定の適用上必要な且つ適当な権利を有する。国際連合の軍隊が使用する電波放射の装置が用いる周波数,電力及び類似の事項に関するすべての問題は,合同会議を通じて相互間の合意により解決しなければならない。
4 国際連合の軍隊が1の規定に基いて使用する施設は,必要でなくなつたときはいつでも,当該施設を原状に回復する義務及びいずれかの当事者に対する又はその者による補償を伴うことなく,すみやかに日本国に返還しなければならない。この協定の当事者は,建設又は大きな変更に関しては,合同会議を通じ別段の取極を合意することができる。
(引用終わり)
 
 なお、刑事裁判権に関わる規定は第16条にありますが、あまりに長文名なので引用は控えました。関心のある方は是非リンク先でお読みください。
 
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