wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「九条俳句」裁判が確定~その成果を糧として

 2018年12月22日配信(予定)のメルマガ金原No.3369を転載します。
 
「九条俳句」裁判が確定~その成果を糧として
 
 「『九条俳句』市民応援団」というWEBサイトの中の「これまでの経緯」というページの冒頭にはこう書かれています。
 
(引用開始)
東京・銀座で、集団的自衛権の行使容認に反対するデモ。それを見たさいたま市大宮区の女性(74・現原告)が
  梅雨空に 『九条守れ』の 女性デモ
と詠み所属する俳句教室で発表しました。
とても良い句だということで、その教室で会員の互選によって、翌月の公民館報に載せる句に選ばれました。
それを三橋公民館が独断で掲載を中止し、公民館報の俳句コーナーを削除して発刊しました。
ここからこの問題が始まりました。
(引用終わり)
 
 以下、詳細な年表が(今のところ、2018年9月2日まで掲載)続くのですが、それによると、女性がデモを見て「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という句を詠んだのが2014年6月上旬、俳句教室の互選によって公民官報掲載句に選ばれたのが同年6月24日、その翌25日、三橋公民館(さいたま市)が「公民館の意見と誤解される恐れがある」として掲載拒否を連絡し、同月30日、同公民館が俳句コーナーを削除して公民官報7月号を発行したという流れとなります。そして、その公民官報が発行された翌7月1日、安倍内閣集団的自衛権を一部容認する閣議決定を行ったという時系列の中で、否応なく、この「九条俳句掲載拒否事件」が、表現の自由を脅かす行政機関の政治的忖度、社会教育の危機という文脈で考えざるを得ないものになっていったのでした。
 
 掲載拒否から1年後の2015年6月25日、女性はさいたま市を被告として、「1 被告は、原告に対し、さいたま市三橋公民館において発行する三橋公民館だよりに、別紙目録の「1 体裁」の項記載のとおりの体裁で、「【●俳句会】 梅雨空に 「九条守れ」の 女性デモ ● 」のとおりの文書を掲載せよ。」「2 被告は、原告に対し、金200万円及びこれに対する平成26年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」との民事訴訟さいたま地方裁判所に提起しました。
 
 その後、昨年(2017年)10月13日にさいたま地方裁判所で、今年(2018年)5月18日には東京高等裁判所で、いずれも被告さいたま市の責任を認め、(低額とはいえ)原告に損害賠償を命じる判決が言い渡されました。
 これらの判決については、既に私のブログでご紹介していますので、ご参照いただければと思います。なお、地裁判決、高裁判決とも、裁判所WEBサイトの裁判例情報のコーナーから判決本文を検索できますので、そのPDFファイルにもリンクしておきます。
 
弁護士・金原徹雄のブログ 2017年10月13日
「九条俳句」裁判、さいたま地裁が画期的判決~思想・信条を理由とした公民館誌への掲載拒否と認定
 
さいたま地方裁判所 平成27年(ワ)第1378号 
(主文を引用)
1 被告は,原告に対し,5万円及びこれに対する平成26年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを70分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。
 
弁護士・金原徹雄のブログ 2018年5月20日
「九条俳句」東京高裁判決(2018年5月18日)と社会教育の危機
 
東京高等裁判所 平成29年(ネ)第5012号
(主文を引用)
1 第1審被告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
 (1) 第1審被告は,第1審原告に対し,5000円及びこれに対する平成26年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (2) 第1審原告のその余の請求をいずれも棄却する。
2 第1審原告の本件控訴を棄却する。
3 第1審原告の当審における追加請求を棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを400分し,その399を第1審原告の負担とし,その余を第1審被告の負担とする。
5 この判決は,1項(1)に限り,仮に執行することができる。
 
 結局、さいたま市も一審原告も、共に上告及び上告受理申立てを行ったのですが、朝日新聞の伝えるところによると、「最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、5千円の賠償を命じた二審判決を支持し、20日付の決定で市と女性の上告を退けた。」とのことです。
 
朝日新聞デジタル 2018年12月21日17時46分
九条俳句、公民館だより不掲載は違法 最高裁で確定
(抜粋引用開始)
 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。こう詠んだ俳句が秀句に選ばれたのに公民館だよりに載らず、精神的苦痛を受けたとして、作者の女性(78)がさいたま市に200万円の慰謝料などを求めた訴訟で、不掲載を違法とした判断が確定した。最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、5千円の賠償を命じた二審判決を支持し、20日付の決定で市と女性の上告を退けた。
(略)
 一審・さいたま地裁は、公民館では3年以上、秀句を公民館だよりに載せ続けていたと指摘。秀句を掲載しなかったことは、思想や信条を理由にした不公正な取り扱いで「句が掲載されると期待した女性の権利を侵害した」として、5万円の慰謝料を認めた。
 二審・東京高裁は、集団的自衛権の行使について世論が分かれていても、不掲載の正当な理由とはならないとし「女性の人格的利益の侵害にあたる」と判断。不掲載の経緯などを踏まえ、慰謝料の額を減額した。
 作者の女性は支援者を通じ「ほっとしました。裁判が長く続いたことに、本当に行政は情けないと思っていた。早急に句の掲載を求めたい」とのコメントを出した。(岡本玄)
(引用終わり) 
 
 これで、「第1審被告は,第1審原告に対し,5000円及びこれに対する平成26年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」と命じた東京高等裁判所の判決が確定したわけです。
 2014年6月にこの句を詠んだ時74歳だった第1審原告の女性も、裁判が(実質勝訴で)終結した時点で78歳になっておられたわけで、「よく頑張ってくださいました」と、頭が下がる思いです。
 行政による「政治的忖度」の蔓延に歯止めをかけ、市民の最も基礎的な人権である「表現の自由」を守るため、果敢に闘ってくださった原告、弁護団、そして市民応援団の皆さんに、あらためて心からの敬意を表するとともに、その成果を糧として、私たち1人1人が「不断の努力」(日本国憲法12条)を怠らぬように決意したいと思います。
 そのためにも、確定した東京高裁判決の重要部分を再確認しておきましょう。
 
(抜粋引用開始)
争点(8)(本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことが,第1審原告の人格権ないし人格的利益を侵害し,国家賠償法上,違法であるか)について
(1) 公民館は,市町村その他一定区域内の住民のために,実際生活に即する教育,学術及び文化に関する各種の事業を行い,もって住民の教養の向上,健康の増進,情操の純化を図り,生活文化の振興,社会福祉の増進に寄与することを目的とした施設であり(社会教育法20条),国及び地方公共団体が国民の文化的教養を高め得るような環境を醸成するための施設として位置付けられている(同法3条1項,5条参照)。そして,公民館は,上記の目的達成のために,事業として①定期講座を開設すること,②討論会,講習会,講演会,実習会,展示会等を開催すること,③図書,記録,模型,資料等を備え,その利用を図ること,④体育,レクリエーション等に関する集会を開催すること,⑤各種の団体,機関等の連絡を図ること,⑥その施設を住民の集会その他の公共的利用に供することとされ(同法22条),さらに公民館は,住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(公の施設)として,普通地方公共団体は,住民が公民館を利用することについて,不当な差別的取扱いをしてはならないと解される(地方自治法244条3項)。
 公民館の上記のような目的,役割及び機能に照らせば,公民館は,住民の教養の向上,生活文化の振興,社会福祉の増進に寄与すること等を目的とする公的な場ということができ,公民館の職員は,公民館が上記の目的・役割を果たせるように,住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の実現につき,これを公正に取り扱うべき職務上の義務を負うものというべきである。
 そして,公民館の職員が,住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき,その思想,信条を理由に他の住民と比較して不公正な取扱いをしたときは,その学習成果を発表した住民の思想の自由,表現の自由憲法上保障された基本的人権であり,最大限尊重されるべきものであることからすると,当該住民の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである(最高裁平成17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁参照)。
(2) これを本件についてみると,前提事実(3)及び(5)のとおり,三橋公民館は,本件合意に基づき,平成22年11月から平成26年6月まで3年8か月間にわたり,本件句会が提出した秀句を一度も拒否することなく継続的に本件たよりに掲載してきており,本件たよりに掲載する俳句の選定を基本的に本件句会に委ねていたと認められるところ,従前と同様の選考過程を経て本件句会が提出した本件俳句については,それまでの他の秀句の取扱いと異なり,その内容に着目し,本件俳句の内容が,その当時,世論を二分するような憲法9条集団的自衛権の行使を許容するものであるとの解釈に反対する女性らのデモに関するものであり,本件俳句には,第1審原告が憲法9条集団的自衛権の行使を許容するものと解釈すべきではないという思想,信条を有していることが表れていると解し,これを本件たよりに掲載すると三橋公民館の公平性・中立性を害するとの理由で掲載を拒否したのであるから,第1審被告の上記掲載拒否行為は,第1審原告の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき,第1審原告の思想,信条を理由に,これまでの他の住民が著作した秀句の取扱いと異なる不公正な取扱いをしたものであり,これによって,第1審原告の上記人格的利益を違法に侵害したというべきである。
(3) 第1審被告は,三橋公民館が,本件俳句を本件たよりに掲載することは,世論の一方の意見を取り上げ,憲法9条集団的自衛権の行使を許容すると解釈する立場に反対する者の立場に偏することとなり,中立性に反し,また,公民館が,ある事柄に関して意見の対立がある場合,一方の意見についてのみ発表の場を与えることは,一部を優遇し,あるいは冷遇することになり,公平性・公正性を害するため,許されないから,本件俳句を本
件たよりに掲載しなかったことには,正当な理由がある旨主張する。
 しかし,前提事実(3)エのとおり,本件俳句を本件たよりに掲載する場合、原判決別紙俳句目録1記載のように,本件句会の名称及び作者名が明示されることになっていることからすれば,本件たよりの読者としては,本件俳句の著作者の思想,信条として本件俳句の意味内容を理解するのであって,三橋公民館の立場として,本件俳句の意味内容について賛意を表明したものではないことは,その体裁上明らかであるから,本件俳句を本件た
よりに掲載することが,直ちに三橋公民館の中立性,公平性及び公正性を害するということはできない。また,前記(1)で説示したとおり,公民館の職員が,住民の公民館の利用を通じた社会教育活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき,その思想,信条を理由に他の住民と比較して不公正な取扱いをすることは許されないのであるから,ある事柄に関して意見の対立があることを理由に,公民館がその事柄に関する意見を含む住民の学習成果をすべて本件たよりの掲載から排除することは,そのような意見を含まない他の住民の学習成果の発表行為と比較して不公正な取扱いとして許されないというべきである。
 以上によれば,本件俳句が詠まれた当時,集団的自衛権の行使につき世論が大きく分かれていたという背景事情があったとしても,三橋公民館が本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことにつき,正当な理由があったということはできず,三橋公民館及び桜木公民館の職員らは,本件俳句には,第1審原告が憲法9条集団的自衛権の行使を許容するものと解釈すべきではないという思想,信条を有していることが表れていると解し,これを理由として不公正な取扱いをしたというべきであるから,上記職員らの故意過失も認められ,第1審被告の主張は採用することができない。
(4) したがって,三橋公民館及び桜木公民館の職員らが,第1審原告の思想や信条を理由として,本件俳句を本件たよりに掲載しないという不公正な取扱いをしたことにより,第1審原告は,人格的利益を違法に侵害されたということができるから,三橋公民館が,本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことは,国家賠償法上,違法というべきである。
(引用終わり)

「防衛費の膨大な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明」(2018年12月20日)を読む

 2018年12月21日配信(予定)のメルマガ金原No.3368を転載します。
 
「防衛費の膨大な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明」(2018年12月20日)を読む
 
 昨日(12月20日)、研究者・実務家有志一同が発表した(日本外国特派員協会で記者発表しました)「防衛費の膨大な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明」は、様々な「声明」が各種団体から次々と発せられる中にあって、出色のものだと、一読して感心しましたので、今日のブログでご紹介させていただくことにしました。
 
 まず、この声明を報じた報道の中から、東京新聞の記事を引用します。
 
東京新聞 2018年12月21日 朝刊
防衛費増大に抗議声明 大学教授ら「人権規約に反する」
(抜粋引用開始)
 米国製兵器の輸入拡大で防衛費が毎年増加している問題で、申惠ボン(しんへぼん)青山学院大教授(国際人権法)らが二十日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見し「政府が米国などから莫大(ばくだい)な額の兵器を買い込む一方で、生活保護費や年金の切り下げ、貧弱な教育予算を放置することは、憲法の平和主義、人権保障だけでなく、国際人権規約に反する」との抗議声明を発表した。(山本哲正)
 声明は申さんら十八人の大学教員や弁護士が呼び掛け、東京大大学院の高橋哲哉教授(哲学)、小林節慶応大名誉教授(憲法学)、伊藤真弁護士ら約二百十人が賛同者に名を連ねた。
 声明では、安倍政権は史上最高規模の防衛予算を支出し、その補填(ほてん)として補正予算も使っているのは、憲法の財政民主主義に反すると指摘。「主要先進国で最悪の財政状況にある日本にとって、米国の赤字解消のため借金を重ねて巨額の予算を費やすのは常軌を逸している」と批判している。
 一方で「政府は生活保護費の減額で予算削減を見込んでいるが、米国からの野放図な兵器購入を抑えれば必要なかった」と指摘。「社会保障や適切な生活水準の権利の実現を後退させることは、国際人権規約に反する」とした。
 申さんは会見で「巨額の武器を米国の言い値でローンまで組んで買うのが問題。貧困・格差が広がっており、財政破綻しないように限られた予算をどれだけ防衛費に割くか、真剣に考えないと。中国が軍事力を増やすからと張り合えば、際限のない軍拡競争。十九世紀に逆戻りだ」と話した。 
(引用終わり)
 
 オスプレイやF35を米国の言い値で「爆買い」し、「いずも」型護衛艦の空母化を決定するなど、安全保障面でも財政面でも、安倍政権のやりたい放題ぶりに対する国民の怒りが沸点に達した時に発表されたという(辺野古への土砂投入もありました)、ある意味、絶妙のタイミングで出された「声明」である上に、その内容自体、誰にとっても無理なく頷ける、高い説得性を持ったものであると思います。
 私は、この「声明」を読んで、去る12月10日に沖縄弁護士会が臨時総会を開いて決議した「辺野古新基地建設が、沖縄県民にのみ過重な負担を強い、その尊厳を踏みにじるものであることに鑑み、解決に向けた主体的な取り組みを日本国民全体に呼びかけるとともに、政府に対し、沖縄県民の民意を尊重することを求める決議」を読んだ時と同種の強い感銘を受けました。
 これは、是非1人でも多くの方に読まれるべき文章だと思います。
 私のこのブログで初めてこの「声明」を知ったという方は、是非周りの方に広めていただければと思います。きっと、あなたと同じように、「声明」に対して「そのとおり」と賛同してくださる方がきっといっぱいいます。
 
 「声明」としてはかなり長いものですが、一気に読めるはずです。
 
(引用開始)
  防衛費の膨大な増加に抗議し、教育と社会保障への優先的な公的支出を求める声明
 
                                      2018年12月20日 研究者・実務家有志一同
 
声明の趣旨
 世界的にも最悪の水準の債務を抱える中、巨額の兵器購入を続け、他方では生活保護や年金を引き下げ教育への公的支出を怠る日本政府の政策は、憲法と国際人権法に違反し、早急に是正されるべきである。
 
1.安倍政権は一般予算で史上最高規模の防衛予算を支出しているだけでなく、補填として補正予算も使い、しかも後年度予算(ローン)で米国から巨額の兵器を購入しており、これは日本国憲法の財政民主主義に反する。
2.米国の対日貿易赤字削減をも目的とした米国からの兵器「爆買い」で、国際的にも最悪の状態にある我が国の財政赤字はさらにひっ迫している。
3.他方で、生活保護費や年金の相次ぐ切り下げなど、福祉予算の大幅削減により、国民生活は圧迫され貧困が広がっている。
4.また、学生が多額の借金を負う奨学金問題や大学交付金削減に象徴されるように、我が国の教育予算は先進国の中でも最も貧弱なままである。
5.このように福祉を切り捨て教育予算を削減する一方で、巨額の予算を兵器購入に充てる政策は、憲法社会権規定に反するだけでなく、国際人権社会権規約にも反する。
 
以下、具体的に理由を述べる。
 
1 膨大な防衛費増加と予算の使い込み
 現在、安倍政権の下で防衛費は顕著に増加し続け(2013年度から6年連続増加)、2016年度予算からは、本予算単独でも5兆円を突破している。加えて、防衛省は、本来は自然災害や不況対策などに使われる補正予算を、本予算だけでは賄いきれない高額な米国製兵器購入の抜け道に使い、2014年度以降は毎年2,000億円前後の補正予算を計上して、戦闘機や輸送機オスプレイ、ミサイルなどを、米側の提示する法外な価格で購入している。
 しかも、これには後年度負担つまり次年度以降へのつけ回しの「ローン」で買っているものが含まれ、国産兵器購入の分も合わせると、国が抱えている兵器ローンの残高は2018年度予算で約5兆800億円と、防衛予算そのものに匹敵する額に膨れ上がっている(2019年度は5兆3,000億円)。米国へのローン支払いが嵩む結果、防衛省が国内の防衛企業に対する装備品代金の支払いの延期を要請するという異例の事態まで起きている(「兵器ローン残高5兆円突破」「兵器予算 補正で穴埋め 兵器購入『第二の財布』」「膨らむ予算『裏技』駆使」「防衛省 支払い延期要請 防衛業界 戸惑い、反発」東京新聞2018年10月29日、11月1日、24日、29日記事参照)。毎会計年度の予算は国会の議決を経なければならないとしている財政民主主義の大原則(憲法86条)を空洞化する事態である。
 防衛省の試算によれば、米国から購入し又は購入を予定している5種の兵器(戦闘機「F35」42機、オスプレイ17機、イージス・アショア2基など)だけで、廃棄までの20~30年間の維持整備費は2兆7,000億円を超える(「米製兵器維持費2兆7000億円」東京新聞11月2日)。一昨日、12月18日には政府は、今後5年間の「中期防衛力整備計画」(中期防)を決定し、過去最高となる27兆4,700億円もの防衛予算を盛り込んだ。戦闘機「F35」追加購入も、11月末には、1機100億円超のものを100機購入して計1兆円以上の見込みとされていた(2018年11月27日日本経済新聞)ものが、12月18日には、105機購入し総額は1兆2千億円以上の見込みと、金額がさらに膨れ上がっている(12月19日朝日新聞)。
 
2 米国のための高額兵器購入による財政逼迫
 このような防衛費の異常な膨張について、根源的な問題の一つは、米国からの高額の兵器購入が、トランプ政権の要請も受け、米国の対日貿易赤字を解消する一助として行われていることである。
 歳入のうち国債依存度が約35%を占め、国と地方の抱える長期債務残高が2018年度末で1,107兆円(対GDP比で約2倍の196%)に達するという、「主要先進国の中で最悪の水準」(財務省「日本の財政関係資料」2018年3月)の財政状況にある日本にとって、他国の赤字解消のために、さらなる借金を重ねてまで兵器購入に巨額の予算を費やすことは、国政の基盤をなす財政の運営として常軌を逸したものと言わざるを得ない。
 また、導入されている兵器の中には、最新鋭ステルス戦闘機「F35」のような攻撃型兵器が多数含まれている。戦闘機が離着陸できるよう海上自衛隊護衛艦「いずも」を事実上「空母化」することも、12月10日に閣議決定された新防衛大綱に含まれた。これらは、専守防衛の原則を逸脱する恐れがきわめて強い。
 政府は北朝鮮情勢や中国の軍備増強を防衛力増強の理由として挙げるが、朝鮮半島ではむしろ緊張緩和の動きが活発化しているし、近隣国を仮想敵国として際限なく軍拡に走ることも、武力による威嚇を禁じ紛争の平和的解決を旨とする現代の国際法の大原則に合致せず、それ自体が近隣国の警戒感を高める、かえって危険な政策というべきである。
 
3 福祉切り捨ての現状
 このように防衛費が破格の扱いで膨張する一方、政府は、生活保護費や年金の受給額を相次いで引き下げている。
 生活保護については、2013年からの大幅引き下げに続き、今年10月からは新たに、食費など生活費にあてる生活扶助を最大で5%、3年間かけて引き下げることとされ、これにより、生活保護世帯の約7割の生活扶助費が減額となる。
 しかし、削減にあたっては、減額された保護費が最低限の生活保障の基準を満たすのかどうかについての十分な検討がされておらず、厚生労働省生活保護基準部会の報告書がこの点で提起した疑問は反映されていない。特に大きな影響を受ける母子世帯や高齢者世帯を含め、受給当事者の意見を聴取することも一切されていない。
 生活保護基準は、最低賃金や住民税非課税限度額など様々な制度の基準になっているため、引き下げによる国民生活への悪影響は多方面にわたる。
 また、年金については、2013年からの老齢基礎年金・厚生年金支給額の減額に続き、長期にわたり自動的に支給額が削減される「マクロ経済スライド」が2015年から発動されており、高齢者世帯の貧困状況は悪化している。
 政府は生活保護減額によって160億円の予算削減を見込んでいるが、そもそも、国家財政を全体としてみた場合、この削減は、青天井に増加している防衛費の増加、とりわけ米国からの野放図な兵器購入を抑えれば、全く必要がなかったものである。
 日本の国家財政は、米国の兵器産業における雇用の創出と維持のために用いられるべきものではない。国民の生存権よりも同盟国からの兵器購入を優先するような財政運営は根本的に間違っている。
 
4 主要国で最も貧弱な日本の教育予算
 日本は、GDPに占める教育への公的支出割合が、主要国の中で例年最下位である。特に、日本は「高等教育の授業料が、データのあるOECD加盟国の中で最も高い国の一つであり、過去10年、授業料は上がり続けている」。「高等教育機関は多くを私費負担に頼っている。日本では、高等教育段階では68%の支出が家計によって負担されており、この割合は、OECD加盟国平均30%の2倍を超える」(OECD, Education at a Glance 2018)。
 給付型奨学金は2017年にようやく導入されたものの、対象は住民税非課税世帯に限られ、学生数は各学年わずか2万人、給付額は月2~4万円にすぎない。大学生の約75%は私立大学で学んでいるが、国の私学助成が少ないため家計の負担が大きいところ、私大新入生のうち無利子奨学金を借りられるのは15%にすぎず(東京私大教連調査)、多くの卒業生は奨学金という名のローン返済に苦しんでいる。「卒業時に抱える平均負債額は32,170ドルで、返済には学士課程の学生で最大15年を要する。これは、データのあるOECD加盟国の中で最も多い負債の一つである」(OECD, supra)。2011年から2016年の5年間で延べ15,338人が、奨学金にからんで自己破産している(「奨学金破産、過去5年で延べ1万5千人 親子連鎖広がる」朝日新聞デジタル2018年2月12日)。
 国立大学法人化後、その基盤経費となる運営費交付金も年々削減され(2004年から2016年までで実質1,000億円以上。文部科学省調査)、任期付き教員の増加など大学の教育・研究に支障をきたしている(「土台から崩れゆく日本の科学、疲弊する若手研究者たち これが『科学技術立国』の足元」Wedge Infinity 2017年11月27日)。
 高等教育だけではない。教育予算が全体としてきわめて貧弱であり人員が少ないため、公立の小・中・高等学校では半数以上の教員が過労死レベルで働いている(「過労死ライン超えの教員、公立校で半数 仕事持ち帰りも」朝日新聞デジタル2018年10月18日)。
教育に予算を支出しない国に未来はあるだろうか。納税者から託された税金を何にどう用いるかという財政政策において、教育を受ける権利の実現は最優先事項の一つでなければならない。
 
5 日本は社会権規約に違反している
 憲法25条は国民の生存権を保障している。また、日本が批准している「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)は、社会保障についての権利(9条)、適切な生活水準についての権利(11条1項)を認め、国はこれらの権利の実現のために、利用可能な資源を最大限に用いて措置を取る義務があるとしている(2条1項)。
 権利を認め、その実現に向けて措置を取る義務を負った以上は、権利の実現を後退させる措置を取ることは規約の趣旨に反する(後退禁止原則)。社会権規約委員会は「一般的意見」で、「いかなる意図的な後退的措置が取られる場合にも、国は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び、国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されること、を証明する責任を負う」としている。
 このような観点から委員会は、日本に対する2013年の「総括所見」で、社会保障予算の大幅な削減に懸念を示している。また、日本の最低賃金の平均水準が最低生存水準及び生活保護水準を下回っていることや、無年金又は低年金の高齢者の間で貧困が広がっていることにも懸念を表明した(外務省ウェブサイト「国際人権規約」参照)。
 今年(2018年)5月には、10月からの生活保護引き下げについて、「極度の貧困に関する特別報告者」を含む国連人権理事会の特別報告者ら4名が連名で、引き下げは日本の国際法上の義務に違反するという声明を発表し政府に送る事態となった。「日本のような豊かな先進国におけるこのような措置は、貧困層の人々が尊厳をもって生きる権利を直接に掘り崩す、意図的な政治的決定を反映している。」「貧困層の人権に与える影響を慎重に検討しないで取られたこのような緊縮措置は、日本が国際的に負っている義務に違反している」。
 また社会権規約は、国はすべての者に教育の権利を認め、中等教育と高等教育については、無償教育を漸進的に導入することにより、すべての人に均等に機会が与えられるようにすることと規定している。適切な奨学金制度を設立することも定めている(13条2項)。教育に対する日本の公的支出の貧弱さはこれらを遵守したものになっていない。なお政府は2017年12月に閣議決定した「新しい政策パッケージ」で「高等教育の無償化」を打ち出したが、対象となる大学を選別する不当な要件を付しており問題が大きい。
 
**************************
 
 後年度負担まで組んで莫大な額の兵器を買い込み国家財政を逼迫させる一方で、十分な検討も経ずに生活保護を引き下げることや、きわめて貧弱な教育予算を放置し又は削減することは、憲法の平和主義、人権保障及び財政上の原則のみならず、国際法上の義務である社会権規約(及び、同様の規定をもつ子どもの権利条約や障害者権利条約など)に違反している。我々は、安倍政権による防衛予算の異常な運営に抗議し反対の意を表明するとともに、教育と社会保障の分野に適切に予算を振り向けることを強く求めるものである。
 
<呼びかけ人>(五十音順、*発起人)
荒牧 重人(山梨学院大学教授、憲法学・子ども法)
井上 英夫(金沢大学名誉教授・佛教大学客員教授、人権論・社会保障法学)
大久保 賢一(弁護士)
小久保 哲郎(弁護士、生活保護問題対策全国会議事務局長)
今野 久子(弁護士)
澤藤 統一郎(弁護士、日本民主法律家協会元事務局長・日本弁護士連合会元消費者委員会委員長)
*申 惠丰(青山学院大学教授、国際人権法学会前理事長、国際人権法学)
田中 俊(弁護士)
谷口 真由美(大阪国際大学准教授、国際人権法学)
角田 由紀子(弁護士)
*徳岡 宏一朗(弁護士)
戸室 健作(千葉商科大学専任講師、社会政策論)
根森 健(神奈川大学特任教授、新潟大学埼玉大学名誉教授、憲法学)
浜 矩子(同志社大学教授、経済学)
尾藤 廣喜(弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事)
藤田 早苗(エセックス大学研究員、国際人権法学)
藤原 精吾(弁護士・日本反核法律家協会副会長・日本弁護士連合会元副会長)
吉田 雄大(弁護士)
                                                                   以上 計18名
<賛同者>(五十音順)
(賛同者氏名引用省略)
                                                               以上 計 209名
 
Statement of Protest against the Massive Increase of the Defense Budget: An Urgent Call for Prioritized Public Expenditure on Education and Social Security
(本文英訳引用省略)
(引用終わり)
 
 昨日、日本外国特派員協会で行われた記者会見には、この声明の発起人を務められたお2人、申惠丰(シン・ヘボン青山学院大学教授と徳岡宏一朗弁護士が出席されました。特派員協会のオフィシャルサイトの動画をご紹介しておきます。
 
日本外国特派員協会 会見映像 オフィシャルサイト
Shin & Tokuoka: Statement of Protest against the Massive Increase of the Defense Budget(1時間05分)
 
 なお、発起人のお1人で、昨日の外国特派員協会での記者会見にも、申教授と共に出席された徳岡宏一朗弁護士が、ご自身のブログ「Everyone says I love you !」で、記者会見の模様をたくさんの写真付きで詳報されています。
 
防衛費の増大と兵器爆買いによる福祉・教育の切り捨てに反対する研究者・実務家の声明発表、記者会見大成功!! 2018年12月21日
(抜粋引用開始)
 この声明の独自性は、財政赤字の中、福祉・教育予算にしわ寄せして、防衛費だけ異常に増大させることは国際人権規約社会権規約に違反すると明言したことにあります。
 そして、この声明がなぜ成功したかというと、憲法などの法律の専門家だけではなく、国際人権法、社会保障、教育、財政法など様々な専門家と実務家が結集できる内容だったからです。
 わずか2週間の呼びかけでノーベル賞受賞者を含む230名の専門家が賛同し、わずか2日間の登録期間しかないのに30名の記者が集まった。
 いかに危機感を募らせている専門家とジャーナリストが多かったかということだと思います。
 ここからはさらに専門家へ。そして市民へ。そして、政権へ。
 これはとてつもない運動になる予感がします。
(引用終わり)
 
 徳岡先生が書かれている「ここからはさらに専門家へ。そして市民へ。」を実現するためのツールとして、「ストップ!兵器爆買い、防衛費増大を許さない!!専門家と市民の共闘ブログ」が立ち上げられたのだろうと思います。
 まだ今のところ、上に引用した「声明(及び英訳のStatement)」がアップされただけのようですが、今後は様々な展開を考えておられるのではないかと思いますので、注目したいと思います。

志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)講演「安保法制違憲訴訟における平和的生存権・人格権」と『虚空(そら)の名前』など3曲の演奏を聴く

 2018年12月20日配信(予定)のメルマガ金原No.3367を転載します。
 
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)講演「安保法制違憲訴訟における平和的生存権・人格権」と『虚空(そら)の名前』など3曲の演奏を聴く
 
 以前は、「日本に2人しかいない『歌う憲法学者』のお1人」という風にご紹介していた志田陽子(しだ・ようこ)先生(武蔵野美術大学教授)ですが、いまや、志田先生の「歌でつなぐ憲法の話」は、全国各地で大好評をもって迎えられ、現地の状況に応じて、様々なヴァリエーションでの展開を見せているようです。
 
 私がブログでご紹介した、2017年10月と2018年5月に東京都大田区で2度にわたって開催された「楽しく聴いて知るコンサート」は、沼館千佳子さんが伴奏ピアニストを務められ、志田先生の中学・高校時代の同級生であるジャズシンガー石川真奈美さんが共演するという実に本格的なものでした。
 
 このような豪華共演者にサポートされた演奏は、地方での講演会や、大学の施設を使用した研究会などでは現実的ではないからでしょうが、事前に収録された映像と音楽(歌入りヴァージョンとカラオケ・ヴァージョンがあるようです)を用意され、講演の内容に沿った曲を何曲か歌われるパターンもあるようなのです。
 
 そのような「地方ヴァージョン」の講演会の動画を見つけましたので、ご紹介しようと思います。
 それは、今年の10月22日、福岡大学を会場として、「平和を愛する福岡大学人の会」と「九州歴史科学研究会」が主催した第8回講演討論会「憲法に託された平和的生存権-歌・映像から考える夢と今-」です。
 以下にその動画をご紹介していますが、「講演討論会」の内、志田先生の「講演」部分がアップされています。冒頭から47分頃までが講演で(パワポに書かれた講演タイトルは「安保法制違憲訴訟における平和的生存権・人格権」というものでした)、最後に3曲、映像付きの録音をバックに志田先生が歌われています(『Danny Boy』、『虚空(そら)の名前』、『ハナミズキ』)。
 
 講演の中でも説明されているとおり、志田先生は、東京地裁に提訴された安保法制違憲訴訟(差止訴訟の方)の原告本人でもあり、また、学者として意見書も書かれています。
 そのようなお立場から、安保法制違憲訴訟の原告が主張の根拠とする平和的生存権・人格権の具体的内容を、分かりやすくかみくだいて説明してくださっています。最後の方は、時間が押してきたからでしょうが、かなり駆け足になっていますけれど。
 安保法制違憲訴訟に関心を持たれている方にも、またそうでない方にも、是非視聴していただければと思います。
 
憲法に託された平和的生存権 -歌・映像から考える夢と今- 講演:志田陽子(武蔵野美術大学 教授)(1時間07分)
冒頭~
「安保法制違憲訴訟における平和的生存権・人格権」
 美大の教職憲法教員が原告になった理由
 南スーダンへの自衛隊派遣と平和的生存権・人格権の侵害
 このような困惑状況が生じた原因
 訴えの具体性と多様性
6分~
1 人格権の諸相
2 本訴訟の訴えと人格権の諸相
(1)生命権・生命的人格権・平穏生活権
 ①大阪空港訴訟(大阪高等裁判所昭和50年11月27日判決)
 ②大飯原発差止め訴訟第一審判決(福井地方裁判所平成26年5月21日)
 ③有害物質による汚染のおそれなど
 ④生命・健康・生活に直結する平穏生活権
(2)内面的な生活利益と「内心の静謐」
   民法上の「人格権」と憲法13条との一体性
 ①日照、騒音などの問題を要素とする内面的な生活利益
 ②「内心の静謐」を内実とする生活利益
(3)加害者となりたくない者の平和的生存権と人格権
22分~
3 安保違憲訴訟に見る平和的生存権と人格権の理論的発展の芽
(1)生命権・生命的人格権・平穏的生活権
 ①現地の自衛官自身の生命の危険
 ②戦争体験者の恐怖感、PTSD
 ③職業ジャーナリスト、NGO活動従事者などが被る危険
 ④一般市民が有する恐怖感
 ⑤海外渡航中、海外渡航を常とする日本人
(2)内面的な生活利益と「内心の静謐」
(3)加害者となりたくない者の良心=平和的生存権と人格権
 ①「良心の自由」、「平和的生存権」、「人格権」
 ②他国人および自国の自衛官に対する憂慮
(4)家族にとっての人格権侵害
(5)人格的自律と社会的信頼関係
 ①人格的自律
 ②職業上とくに必要な信頼関係と職業遂行の自由
(6)社会的弱者にとっての平和的生存権・人格権の特殊な重要性
 ①外国人が抱く特殊な恐れ
 ②女性、児童が抱く特殊な恐れ
4 軍事以外の貢献を果たしているか-「人間の安全保障」から見た貢献は
さいごに
この問題を市民とともに考えるための音楽動画コンテンツを作成しました。音楽と写真で、しめくくります。
49分~『Danny Boy』
54分~『虚空(そら)の名前』(作詞作曲:志田陽子)
1時間01分~『ハナミズキ
 
 ところで、このような生伴奏なし(画像・音声データを再生)パターンの講演会で使われた動画が、志田陽子先生のオフィシャルサイトで紹介されていました。
 それは、今年の5月3日、上智大学四谷キャンパス・ソフィアタワー101大教室で開かれた「全国憲法研究会主催 憲法記念講演会」で、志田先生が「「憲法と「夢」――人々が憲法に託してきたもの」と題して講演された際に「使用した歌唱つき資料の一部」です。
 ここでは、詳細なスライドをバックに、『Over the rainbow』、『Danny Boy』、『虚空(そら)の名前』の3曲が流れます。
 こちらも是非視聴していただければと思います。 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/志田陽子氏関連)
2016年8月21日
響け!歌声 自由のために 歌と映画と憲法と~予告8/28志田陽子教授(武蔵野美術大学憲法学)がおくる歌と講演(平和を育てる大泉9条の会)
2017年6月9日
九条の会・小平12周年の集い」(星美智子さんの歌と志田陽子さんの講演)を視聴する
2018年7月11日
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)が歌い、語る「楽しく聴いて知るコンサート」を視聴しましょう

ぞう列車が走って70年 和歌山ぞうれっしゃ合唱団 団員募集!(公演予定日:2019年7月27日)

 2018年12月19日配信(予定)のメルマガ金原No.3366を転載します。
 
ぞう列車が走って70年 和歌山ぞうれっしゃ合唱団 団員募集!(公演予定日:2019年7月27日)
 
 私も一応会員に名前を連ねている「和歌山うたごえ九条の会」(由井勝会長)から、昨日(12月18日)、「会員のみなさま」と題したお知らせが届きました。
 その全部をご紹介する必要はありませんが、連絡事項のうちの2つだけ、私のブログでもご紹介したいと思います。
 
 1つめは、来年(2019年)、5年ぶりに結成される和歌山ぞうれっしゃ合唱団が「ぞうれっしゃがやってきた」(全曲)を歌うという素敵なニュースです。
 
(引用開始)
「ぞうれっしゃ」公演成功にご協力ください
 来年がぞう列車が走って70年の記念の年になります。全国からの呼びかけに応えて前述のとおり5年ぶりに「ぞうれっしゃ」公演を行います。12月22日に第1回練習日を入れていますが、第2回練習日は、1月12日(土)午後1時30分~、あいあいセンターです。2回目からでも構いませんので、是非ご参加・ご協力をお願いいたします。
(引用終わり)
 
 1986年3月30日の名古屋市での初演以来、合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」(原作:小出隆司、台本:清水則雄、作曲:藤村記一郎)は全国各地で多くの公演が行われ、子どもたちの、大人たちの様々な感動が積み重ねられてきました。
 以下のチラシに記載された世話人のどなたかとお会いする便宜のない方でも、チラシをプリントアウトした上で、入団申込書に所定事項を記入して、事務局にFAX(073-722-5919)送信し、第1回(和歌山市民会館)もしくは第2回(和歌山市あいあいセンター)の練習会場で入団金を払えば入団できるようです。
 経験者もそうでない方も、子どもさんとご一緒に、「ぞうれっしゃがやってきた」を歌いませんか?
 以下に、チラシ記載情報を転記します。
※チラシPDF
 
(チラシ記載情報から引用開始)
子どもたちの夢を乗せ
ぞう列車が走って70年
 
おじいちゃんも おばあちゃんも
  お父さんも お母さんも
    子どもたちといっしょに歌いましょう!!
 
和歌山ぞうれっしゃ合唱団 団員募集
 
 荒れてしまった戦後の日本。でも名古屋の東山動物園に生き残ったゾウたちがいました。 子どもたちの夢をのせて、全国から名古屋へ「ぞう列車」が走って、来年で70年になります。それを記念して、合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」を全国一斉に歌おうと呼びかけられました。和歌山でも5年ぶりにうたいたいと思います。
 ぜひご家族でいっしょに歌ってください。感動の舞台をごいっしょに作り上げましょう。
 
公演予定日 2019年7月27日(土)
         和歌山市民会館小ホール
      第1部(未定)
      第2部 合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」(全曲)
        演奏/和歌山ぞうれっしゃ合唱団ほか
        指揮/由井 勝
■第1回練習日 2018年12月22日(土)午後1時30分~
       和歌山市民会館4階第1練習室
※第2回以降の練習日は、入団していただいた団員の皆さまに直接連絡させていただきます。まず、入団をお願いします。
  入団金/大人 1,000円  子ども 500円
※下記申込書に入団金を添えて、世話人にお渡しいただくか、事務局にFAXをお願いします。FAXの場合、入団金は練習日にお願いします。
 
ぞうれっしゃ70年を成功させる和歌山の会
世話人/井澤慶三・北 康生・北 仁美・北島弘子・佐古雅哉・中尾偕子・中北幸次・浜口由利子・山田和之・由井耀子 (応援団体)生協コーラスみらい・うたごえオールスターズ
事務局/和歌山市元寺町3丁目27 中北幸
      電話 090-8826-5664  FAX 073-722-5919
(引用終わり) 
 
(参考サイト)
合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」の歌詞
 
第10曲「ぞうれっしゃよはしれ」演奏動画(川口ぞうれっしゃ合唱団)
 
 さて、「和歌山うたごえ九条の会」からのお知らせの中からもう1つご紹介しておきます。
 
(引用開始)
 別紙チラシのとおり、1月19日に県民文化会館大ホールで、安倍改憲を許さないための県民のつどいが開催されます。安倍改憲を許さないと思うすべての県民にお集まりいただき、大成功させたいという取り組みです。ぜひ皆さんも、まわりを誘ってご参加ください。
 ちなみに、うたごえオールスターズは、(1月19日は)うたごえ喫茶定例日なのですが、1月26日の第4土曜日に1週間延ばすことにいたしました。
(引用終わり)
 
 以上のとおり、うたごえオールスターズの皆さんは、毎月第3土曜日の午後、デサフィナードというお店(和歌山市紀三井寺)で「うたごえ喫茶」を開催し続けておられるのですが、1月19日(土)は、「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」に協力・参加するため、特別に開催を1週間遅らせてくださったのです。中北さん、うたごえオールスターズの皆さん、ありがとうございました。
 以下に、「1・19和歌山県民のつどい」の開催概要をあらためてご紹介しておきます。是非、お誘いあわせの上ご参加ください。 http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52768421.html
 
[開催概要]
名称:危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい
 
開催日時:2019年1月19日(土)
  開場 12時30分
  開会 13時30分
  閉会 16時00分(予定)
 
開催場所:和歌山県民文化会館大ホール(和歌山市松原通1丁目1)
 
趣旨:総理大臣が先頭に立って憲法改正に意欲を示すという「ありえない」状況の中、日本国憲法がはたしてきた重要な役割をあらためて確認し、危険な改憲をくいとめるための「県民のつどい」を開催します。是非ご参加ください。
 
内容:
第1部 桂 文福 さん (芸人9条の会)
  「相撲甚句河内音頭、そして9条新作落語
第2部 小林 節 さん (慶應義塾大学名誉教授・弁護士)
  講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」
第3部 ~平和を奏でる有志たち~ Wakayama Peace Band
※和歌山で平和のための音楽活動を行ってきたミュージシャンによる臨時編成バンドの演奏にご期待ください。ちなみに、Wakayama Peace Bandの演奏の前に、三木久美夫さんが津軽三味線の妙技を披露してくださることになりました。ご期待ください。
ロビー企画
 紙芝居や絵本、カルタ、おりがみなど、子どもたちと一緒に楽しめるブースもあります。
 
主催:「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」実行委員会
[実行委員会構成団体]安全保障関連法制の廃止を求める和歌山大学有志の会/安保関連法に反対するママの会@わかやま/安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま/9条ネットわかやま/九条の会・わかやま/憲法九条を守るわかやま県民の会/憲法9条を守る和歌山弁護士の会/戦争をさせない和歌山委員会/和歌山県地方労働組合評議会/和歌山県平和フォーラム
 
参加無料・予約不要
 
手話通訳:小林節さん講演には手話通訳がつきます。・・・と予告したのですが、その後、桂文福さんの出番についても手話通訳をつけられることになりました。
 
託児:託児ご希望の方は1月8日(火)までに、下記「お問合せ先」までご連絡をお願いします。
 
お問合せ先:☎073-427-0852(金原法律事務所)
 平日9:00~17:00。年末年始(12/28~1/6)は対応できません。託児お申し込みの方はお早めにお願いします。

全国市長会と日本弁護士連合会が「災害時における連携協力に関する協定」を締結しました(2018年12月17日)

 2018年12月18日配信(予定)のメルマガ金原No.3365を転載します。
 
全国市長会と日本弁護士連合会が「災害時における連携協力に関する協定」を締結しました(2018年12月17日)
 
 大規模災害の発生に備え、各地の自治体と弁護士会の間で、いわゆる「災害協定」を結ぶ動きが強まっています。
 例えば、静岡県弁護士会は、このような自治体との協定の締結に非常に積極的に取り組んでいる弁護士会として知られており、同会ホームページのトップページの【新着記事】を一覧しただけでも、以下のような記事にリンクされていました。
 
【お知らせ】 松崎町と平時及び災害時の被災者支援等に関する協定を締結しました
2018年12月7日(締結日11月16日)
 
【お知らせ】 裾野市と平時及び災害時の被災者支援等に関する協定を締結しました
2018年11月10日(締結日11月6日)
 
【お知らせ】 菊川市と平時及び災害時の被災者支援等に関する協定を締結しました
2018年11月2日(締結日10月26日)
 
【お知らせ】 函南町と平時及び災害時の被災者支援等に関する協定を締結しました
2018年10月1日(締結日9月25日)
 
【お知らせ】 小山町と平時及び災害時の被災者支援等に関する協定を締結しました
2018年10月1日(締結日9月14日)
 
 現在のトップページだけでこれだけあるのですから驚きます。
 小山町よりも前に締結されたところがどれだけあるのか知りたいと思ってネット検索したところ、同弁護士会会員の永野海(ながの・かい)弁護士のホームページにまとめて掲載されていました。
 それによると、平成15年2月の静岡県、同25年3月の静岡市以降、沼津市浜松市磐田市藤枝市富士宮市富士市御殿場市三島市御前崎市焼津市掛川市(これに続くのが小山町)との間で協定を締結しているとのことです。
 
 具体的にどのような内容の協定が結ばれているのか調べてみたところ、藤枝市静岡県弁護士会との「災害時相談業務等に関する藤枝市静岡県弁護士会との協定書」(平成27年5月12日付)が、藤枝市のホームページに掲載されていましたので、興味のある方はリンク先でお読みください。
 
 静岡県ほど進んでいるところは少ないかもしれませんが、全国各地で同種の協定を締結すべく、話し合いを進めているところはたくさんあるはずです。
 昨日、そのような動きを強力に後押しする力になるのではと期待される協定が、全国市長会と日本弁護士連合会との間で締結されましたので、今日は、その協定(正式名称は「災害時における連携協力に関する協定」)の全文をご紹介しようと思います。
 
 まず、その協定締結を伝えた弁護士ドットコムニュースを引用します。
 
弁護士ドットコムニュース 2018年12月17日 14時29分
日弁連全国市長会と「災害協定」締結 「被災者に寄り添っていきたい」
(抜粋引用開始)
 日本弁護士連合会(日弁連)と全国市長会は12月17日、「災害時における連携協力に関する協定」(災害協定)を締結した。この日、全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長)と日弁連の菊地裕太郎会長による協定締結の調印式が東京・霞が関弁護士会館でおこなわれた。
 協定には、弁護士による相談(無料相談を含む)や被災者の生活再建、被災地域の復旧復興などの情報提供をおこなうことなどが盛り込まれた。
 菊地会長は、法律相談にかぎらず、生活相談を含めて応じていくとして、「これから被災にあわれたら、まっさきに自治体、弁護士会に甘えてもらえたらと願っている」とした。
 また、日弁連の太田賢二副会長は「弁護士会自治体と連携し、できるかぎりすみやかに正確な情報提供をするなどして、被災者に寄り添いたい。まずは被災者に安心してほしい。さまざまなニーズにこたえていきたい」と話した。
 全国市長会の立谷会長は「市長会のそれぞれの市長が、すみやかに弁護士の協力が得られるようにという願いでお願いしました。このような協定という形で実現を得られたことをこころよりお礼申し上げる」と話した。
(略)
(引用終わり)
 
 以下の協定・第4条にあるとおり、「被災市等及び被災地弁護士会等の間に合意等が存する場合には、当該合意等が本協定に優先する」とされているとおり、大規模発生直後から迅速な法的支援を可能とするためには、やはり、地域ごとに、自治体と地元弁護士会との災害協定を事前に締結しておくことが望ましいことは言うまでもありません。
 先ほど述べたとおり、この全国市長会日弁連との災害協定が、各地における自治体と弁護士会との協議を加速させる役割を果たしてくれることを期待したいと思います。
 
 それでは、以下に、全国市長会日弁連との間で昨日締結された「災害時における連携協力に関する協定」全文をご紹介します。
 
(引用開始)
                       災害時における連携協力に関する協定
 
 全国市長会(以下「甲」という。)と日本弁護士連合会(以下「乙」という。)とは、災害時における連携協力に関し、次のとおり協定(以下「本協定」という。)を締結する。
 
 (趣旨)
第1条 本協定は、日本国内において災害が発生した場合において、被災地域の市及び特別区(以下「被災市等」という)並びに被災地域に存する弁護士会及び弁護士会連合会(以下「被災地弁護士会等」という。)が協調して、被災者に対する迅速な生活再建の支援を図り、もって被災地の円滑な復旧復興を実現するために、甲及び乙が連携協力することを目的とする。
 (協力事項)
第2条 甲及び乙は、次に掲げる事項の実施のために連携協力する。
 (1) 被災者に対する弁護士による相談(無料相談を含む。)
 (2) 被災者の生活再建、被災地域の復旧復興その他被災者に有益な情報の提供
 (3) 前各号に掲げるもののほか、被災者の支援に必要な事項
2 日本国内において大規模災害が発生した場合、甲及び乙は、可及的速やかに、被災市等と被災地弁護士会等が協議の上、被災者が災害発生直後の初動期間に前項第(1)号の相談を無料で受ける機会を実現できるように、互いに連携協力する。
 (連絡責任者)
第3条 甲及び乙は、本協定に基づく連携協力に関する連絡責任者を選定し、相互に通知するものとし、変更があった場合も同様とする。
 (被災市等及び被災地弁護士会等との協議)
第4条 甲及び乙は、第2条に定める連携協力を実施するに当たり、前条に定める連絡責任者を通じて、それぞれ被災市等及び被災地弁護士会等と協議を行うものとする。なお、被災市等及び被災地弁護士会等の間に合意等が存する場合には、当該合意等が本協定に優先するものとし、甲及び乙は、当該合意等を尊重するものとする。
 (事前準備等)
第5条 甲及び乙は、本協定が想定する事態に備え、常時情報交換や相談窓口の連絡先等の提供に努め、連携協力するものとする。
 (期間)
第6条 本協定は、本協定締結の日から効力を生じるものとし、甲又は乙が書面をもって
本協定を終了させる意思を通知しない限り、その効力は継続するものとする。
 (協議)
第7条 本協定に関し必要な事項については、甲及び乙が協議の上、別に定めるものとする。
2 本協定に定めのない事項については、甲及び乙がその都度協議して定めるものとする。
 
 本協定の締結を証するため、本書2通を作成し、甲及び乙がそれぞれ記名押印の上、各自その1通を保有する。
 
 2018年12月17日
 
                 甲 東京都千代田区平河町二丁目4番2号
                    全国都市会館4階
                          全国市長会
                                              会長 立 谷 秀 清
 
                 乙 東京都千代田区霞ヶ関一丁目1番3号
                    日本弁護士連合会
                     会長 菊 地 裕太郎
(引用終わり)

立憲デモクラシーの会・声明「国会の空洞化を憂い立憲主義的な議会運営を求める」(2018年12月13日)を読む

 2018年12月17日配信(予定)のメルマガ金原No.3364を転載します。
 
立憲デモクラシーの会・声明「国会の空洞化を憂い立憲主義的な議会運営を求める」(2018年12月13日)を読む
 
 中野晃一さん(上智大学教授)のFacebookにより、12月13日、立憲デモクラシーの会が、「国会の空洞化を憂い立憲主義的な議会運営を求める」という声明を発表したことを知りました。
 
Facebook:中野晃一 2018年12月14日 金曜日 21:56
(引用開始)
昨日、立憲デモクラシーの会が記者会見を開き、以下の「国会の空洞化を憂い立憲主義的な議会運営を求める」声明を発表しました。裏方を元SEALDsや未来公共の若者たちがやってくれるという密かにゴージャスなものでした。(しかし都合のついた発言者はオジサンの会にまたもやなってしまってすみません 涙)
(引用終わり)
 
 そこで、「未来のための公共」の公式Twitterを確認してみたところ、記者会見出席者を正面からとらえた良い写真がありました。
 
Facebook:未来のための公共 12:17 AM - 13 Dec 2018
(引用開始)
【声明 : 国会の空洞化を憂い立憲主義的な議会運営を求める】
立憲デモクラシーの会が、記者会見をしています。憲法が規定し戦後日本において確立してきた立憲主義的な統治システムが、危機に瀕しています。熟議の場としての国会の、一刻も早い再構築が望まれます。
(引用終わり)
 
 この写真で確認したところ、記者会見出席者は以下の方々でした(写真向かって左から)。
 
山口二郎氏(立憲デモクラシーの会共同代表、法政大学教授)
長谷部泰男氏(早稲田大学教授)
中野晃一氏(上智大学教授)
西谷 修氏(立教大学特任教授)
 
 立憲デモクラシーの会による国会運営に関わる声明としては、2017年6月26日に発表された「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」に続くものだと思います。
 この声明については、私のブログでも2度にわたって取り上げています。
 
2017年6月30日
立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む
2017年7月20日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」発表記者会見(6/26)
 
 前回の警告(声明)から1年半、ついに「ナチス・ドイツで、全権委任法によって行政府にあらゆる権限が集中され、議会の関与が否定されたのと同質のことが今、日本において始まろうとしている。」とまで言わざるを得ない状況となったことを、多くの国民に知って欲しいというやむにやまれぬ気持ちから、中野晃一先生が言う「発言者はオジサンの会にまたもやなってしまって」も、あえてこの段階で声明を発表することになったのだろうと思います。
 
 この記者会見の動画が見当たらないのが残念ですが、もしかしたら前回同様、いずれ文字起こしを掲載してくれるかもしれないと期待しつつ、以下に声明全文をご紹介します。
 
(引用開始)
声明:国会の空洞化を憂い立憲主義的な議会運営を求める(2018年12月13日)
 
 2018年10月召集の第197回臨時国会では、現在の国会が、憲法第41条に規定された「唯一の立法機関」とも「国権の最高機関」ともなりえていない実態が露呈した。
 
 議院内閣制では、大統領制と異なり、議会が内閣総理大臣を選出するため、慎重な運用をしなければ、行政権と立法権とが癒着し、議会が内閣の翼賛機構に堕すという形で、政治権力の暴走が発生する危険性がある。しかるに現状では、そうした慎重さが失われ、憲法が規定し戦後日本において確立してきた立憲主義的な統治システムが危機に瀕している。
 
 この国会では、出入国管理及び難民認定法改正案(入管法改正案)、水道法改正案など、将来の日本の社会のあり方や国民生活に大きな影響を与える法案が審議されたが、立法過程は異常なものであり、強引な議会運営により、ごく短時間の審議で法案は成立した。委員会審議では、外国人労働者の資格や待遇に関して野党が指摘した問題点について、政府側は具体的な運用規則は政省令で決めるとの一点張りで、その答弁は著しく誠実さを欠いていた。
 
 これまで事実上、外国人労働の法的枠組みとなってきた技能実習制度について、多数の失踪者が出るなどさまざまな問題点が指摘されながら、法務省はこの制度の欠陥を隠蔽するためか、失踪の理由について虚偽の説明をした。野党議員からの調査原票の閲覧要求に対し、法務省が複写・撮影を禁止した結果、野党議員らは調査票の筆写を強いられた。その姿は、政府による国会軽視を象徴するものであった。
 
 大島理森衆議院議長は8月の通常国会終了後に、行政府によるデータ改ざんや情報隠蔽について「民主主義の根幹を揺るがす問題」と指摘する異例の所感を公表したが、事態は改善されるどころか悪化している。
 
 与党の有力議員からは、「議論をすればするほど問題点が出て来るから」早急に採決を行うという趣旨の発言もあった。問題点が明らかになれば、さらに議論を深めるべきであり、議会審議の意義を真っ向から否定する発想が蔓延しているとすれば、容認できない。
 
 入管法改正案のように、空疎な法案を国会で審査させ、具体的な内容をすべて政令等に委ねることは、国会の立法権の侵害であり、行政権への白紙委任を強いるに等しい。ナチス・ドイツで、全権委任法によって行政府にあらゆる権限が集中され、議会の関与が否定されたのと同質のことが今、日本において始まろうとしている。あるいは、内閣が君臨し、国会は議論なしでその政策を追認した戦前の翼賛体制への退行である。
 
 国会を、内閣提出法案を成立させる下請け機関であるかのように位置づけ、次々に法律を成立させることを「生産性」と見なすような見方が広まっている。しかし、そもそも多数決原理と党議拘束を前提とすれば、法案成立は提出の段階で決まっているとも言える。それでは国会審議は何のためにあるのか。審議を尽くして法案の問題点を洗い出し、修正、さらには再考を迫るためではないか。野党に求められるのは、何よりもそうした役割である。
 
 マスメディアは、政府与党と野党を等距離で批判する態度で臨み、野党は法案阻止の決め手を欠く等と論評するが、与党側が現在のように強引な運営を進めた場合、野党の対抗手段が限られていることは否定できない。
 国会はずさんな議論で法案を通すところという虚無主義的な認識がこのまま流布するならば、日本の議会制民主主義は実質的に崩壊する。熟議の場としての国会の一刻も早い再構築が望まれる。
 
2018年12月13日  立憲デモクラシーの会
(引用終わり)

映画『BEYOND THE WAVES』上映と山本太郎議員トークイベント(2019年1月26日@和歌山県民文化会館小ホール)のご案内

 2018年12月16日配信(予定)のメルマガ金原No.3363を転載します。
 
映画『BEYOND THE WAVES』上映と山本太郎議員トークイベント(2019年1月26日@和歌山県民文化会館小ホール)のご案内
 
 関係者から企画進行中であるとは聞いてたものの、「まだ調整中の部分もあるので」ということであったため、ブログに書くのは控えていましたが、いよいよFacebookのイベントページも立ちあがりましたので、私のブログでもご案内することと致しました。
 来年1月26日(土)に山本太郎参議院議員自由党共同代表)が和歌山県民文化会館でのトークイベントのために来和されます。しかも、山本太郎さんを取材したドキュメンタリー映画『BEYOND THE WAVES』(アラン・ドゥ・アルー監督)の和歌山初上映も観られるという、見逃せない企画です(参加費-資料代-499円)。
 以下に、イベントページの「詳細」コーナー記載情報を転記します(一部、チラシから補充しました)。
 
(引用開始)
 
山本太郎ドキュメンタリー映画『BEYOND THE WAVES』の上映と、主演本人、山本太郎さんとのトークイベントを行います!
ぜひ、お友だち、ご親戚、お隣さん、ご近所、お誘い合わせのうえお越しください!
いっしょに和歌山に大旋風を巻き起こしましょーっ!
 
◇◆◇ 山本太郎 來和 ◇◆◇
 
日時:2019年1月26日(土)
   12:00 開場
   12:30 上映開始(~13:45予定)
    ※資料代:499円(1円カンパでワンコイン♪)
山本太郎さんトークイベント
 「目からウロコ」の太郎節!~永田町の真実をお教えします~
   14:00~16:00
会場:和歌山県民文化会館 小ホール
 
※※同日開催※※
   11:00~@同会場
   第2回 自由党和歌山県連大会 
   どなたでも無料でご入場いただけます。ぜひ、こちらもよろしくお願いします!
 
山本太郎さんについて◎
オフィシャルサイト・プロフィール
街宣や国会質疑などの動画
 
■共催 
 山本太郎ドキュメンタリー映画『BEYOND THE WAVES』上映実行委員会
 自由党和歌山県連   
■お問合せ 090-7757-1959(内海)
(引用終わり)
 
 ここ4週間ほどの間に、山本太郎さんをこのブログで取り上げるのは今日で5回目となります。それだけ、今の日本にとって、なくてはならない国会議員だということだと思っています。
 
 私が山本太郎さんのお話を直接聴く機会を持ったのは、2016年2月7日(山本太郎参議院議員トークライブ和歌山@和歌山県民文化会館3階特別会議室)と2018年7月22日(島久美子和歌山市長選候補者応援@JR和歌山駅前)の2回だけですが、その発言には全て「心」の裏付けがあると感じました。・・・と言っても何のことか分からないかもしれませんけれど。
 1月26日も是非参加したいと思います。
 
(余談)
 実は、「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」の候補日として、当初は1月19日の他に1月26日も考えており、和歌山県民文化会館大ホールを両日とも仮予約していました。様々な事情から1月26日はリリースして、1月19日に決めたのですが、19日にしておいて良かったとしみじみ思っています。
 
(参考サイト)
Beyond the Waves: (Taro Yamamoto, a Japanese rebel) - Trailer(2分56秒)
 
IWJ:映画「Beyond the Waves」上映後のベルギーのアラン・ドゥ・アルー監督と会場のスカイプ質疑応答、山本太郎参院議員との会場での質疑応答(京都大学) 2018.11.25
 
Facebook:Beyond the Waves自主上映連絡会(ビヨンド・ザ・ウェイブス)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/最近の山本太郎参議院議員関連)
2018年11月22日
山本太郎参議院議員による街頭記者会見を視聴する(11/20@赤羽、11/2@落合、10/22@なんば、10/11@藤沢)
2018年12月2日
「市民と野党の勝利をめざそう!in 参議院選東京選挙区」(2018年11月28日)を視聴する
2018年12月9日
12月8日未明の参議院本会議場で山本太郎議員(自由党)が叫んだ言葉を記録する~会議録には載らないだろうから
2018年12月13日
山本太郎参議院議員中野駅頭街頭宣伝(2018年12月10日)~12月8日未明の「叫び」の内容をご説明しましょう

f:id:wakaben6888:20181216191917j:plain

岡口基一判事分限裁判最高裁決定を批判する全国青年司法書士協議会「意見書」と青年法律家協会弁護士学者合同部会「決議」を読む

 2018年12月15日配信(予定)のメルマガ金原No.3362を転載します。
 
岡口基一判事分限裁判最高裁決定を批判する全国青年司法書士協議会「意見書」と青年法律家協会弁護士学者合同部会「決議」を読む
 
 10月17日、最高裁大法廷が、1人の反対意見もなく、東京高裁の岡口基一判事を戒告処分とした分限裁判は、日本の司法の歴史に拭い難い汚点を残したというのが、多くの法律家の偽らざる感想でしょう。
 岡口裁判官自身が運営するWEBサイト「分限裁判の記録 岡口基一」には、最高裁の決定が出た後も、様々な批判、意見などが集積されており、私のブログ(岡口基一裁判官に対する分限裁判・最高裁大法廷「決定」を読む)にまでリンクされていたのには驚きました。
 
 私も、上記「分限裁判の記録 岡口基一」によってリンクされた記事に全部目を通すような時間的余裕はなく、これまで、岡口分限裁判弁護団による「声明」をご紹介しただけでしたが、
その後、まとまった意見として、全国青年司法書士協議会「意見書」(2018年11月12日)と青年法律家協会弁護士学者合同部会常任委員会「決議」(2018年12月1日)が出ていますので、ここで一緒にご紹介しておこうと思います。
 これら、弁護団「声明」、全青司「意見書」、青法協「決議」に目を通せば、岡口分限裁判についての最高裁決定の問題点の全貌をほぼ理解できるはずです。
 
全国青年司法書士協議会 意見書
(引用開始)
                         2018年度全青司会発第57号
                         2018年11月12日
 
 
              岡口基一判事への懲戒処分決定に関する意見書
 
                         全国青年司法書士協議会
                         会 長 石 川  亮
                         東京都新宿区四谷2-8 岡本ビル5階
                         TEL03-3359-3513 FAX03-3359-3527
                         e-mail info@zenseishi.com
                         URL http://www.zenseishi.com/
 
 全国青年司法書士協議会(以下「当協議会」という。)は、全国の青年司法書士約2,600名で構成され、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。当協議会は裁判官分限法に基づき東京高等裁判所岡口基一判事に対し懲戒を申し立てたことを受け、下記のとおり意見を述べる。
 
                                    意見の趣旨
1.岡口基一判事への戒告処分決定に対し、強く抗議する。
2.裁判官にも表現の自由を始めとする市民的自由を享受できるよう求める。
 
                                    意見の理由
1.はじめに
 最高裁判所は、平成30年10月17日、東京高等裁判所判事である岡口基一氏(以下「岡口判事」という)に対する、東京高等裁判所の懲戒申立(以下「本件懲戒申立て」という)に対し、『「公園に放置されていた犬を保護し育てていたら、3か月くらい経って、もとの飼い主が名乗りでてきて、「返してください」」、「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置しておきながら・・」「裁判の結果は・・」』との記載と、報道記事へのURLを引用したツイート(以下「本件ツイート」という)が、裁判所法第49条所定の「品位を辱める行状」に該当するとして、戒告処分する旨の決定(以下「本件戒告処分決定」という)を下した。
 しかし、以下で述べるとおり、本件懲戒決定は、憲法で保障する表現の自由も、裁判の基本である手続保障も軽視した、ずさんな内容であった。
 
2.本件戒告処分決定の問題点
(1)懲戒権の濫用という点について
 本件戒告決定は、「本件申立てが、被申立人にツイッターにおける投稿をやめさせる手段として、あるいは被申立人がツイッターにおける投稿をやめることを誓約しなかったことを理由にされた不当なものということはできない」としている。
 しかし、本件懲戒申立ては、岡口判事に対しツイッターによる表現行為そのものを止めさせることを目的としていたものと考えざるを得ない。平成30年6月19日付にて岡口判事が提出した陳述書や、平成30年7月4日付にて東京高等裁判所が提出した報告書によれば、東京高等裁判所長官及び同事務局長が岡口判事に対して、「ツイートを止める気はないのか」、「ツイートを続けるということであれば、それを前提にして分限裁判を検討せざるを得ない」などと述べたことが明らかになっている。
 裁判官に対する懲戒は、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである。しかし、司法内部における干渉・圧力を排し、公正を担保するため、裁判手続きによらなければならないとされている。このような趣旨に鑑みれば、懲戒手続全体において、「かりそめにもある種の行政目的ないしは行政的考慮からの懲戒の必要が先行し懲戒原因である行為に関する事実面及び法律面の検討が不十分であったのではないかとの批判を招くことのないよう、懲戒原因である行為について冷静かつ慎重な検討が加えられるべきものである」(最大判平成13年3月30日における金谷利廣裁判官の反対意見、判タ1071号99頁)
ところが、本件懲戒申立ては、後述するように、裁判官分限法第7条に定める申立事由を立証する証拠の提示もなく、更に裁判所法第49条の複数の懲戒事由のうち、いずれを根拠としているのかを示すことなく行われた。更に、決定に至る裁判手続きはずさんであり、最高裁判所は、本件ツイートのみでは、懲戒処分に相当しないと考えつつも、処分するという目的のために、手続保障を無視し、詳細な検討を避けて、敢えて過去の行為を含めた判断を行っていると考えざるを得ない。
 以上の事実に鑑みれば、本件懲戒申立て及び本件懲戒処分決定は、岡口判事が勤務時間外に行っているツイッターでの表現行為を止めさせるために行われたパワーハラスメントの一環としてなされたと評価すべきであり、懲戒権の濫用と断じざるを得ない。このよう懲戒処分を認めることは、憲法が裁判官の独立を担保するために、裁判官の身分を保障(憲法76条3項、78条等)した趣旨を没却させるものであり、断じて許されない。
(2)申立理由に無く、証拠調べに基づかない事実認定をした点について
 裁判手続きにおいて、当事者の防御権を保障するための手続保障をすることは、人権保障の最後の砦である最高裁判所であるなら、当然考慮すべきである。
 ところが、申立の理由には「当該原告の感情を傷つけるもの」としか記載がされておらず、申立理由が曖昧なまま手続きを進めた。そして、本件戒告処分決定の理由は、申立書に記載は無く、申立書から読み込むことの出来ない、「裁判官が、その職務を行うについて、表面的かつ一方的な情報や理解のみに基づき予断をもって判断をするのではないかという疑念を国民に与えるとともに、・・・上記原告の訴訟提起行為を一方的に不当とする認識ないし評価を示すことで、当該原告の感情を傷つけるものであり、裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるものでもあるといわざるを得ない」というものであった。
 裁判官分限法に基づく懲戒申立ては端緒に過ぎず、職権で事実を探知するものだとしても(裁判官の分限事件手続規則7条、非訟法49条1項)、手続の追行に重要な変更を生じ得るものに該当することから、不意打ちを防止するために、当事者に通知すべきであった(非訟法52条)。しかも、事実は証拠により認定すべきであるところ(同53条1項)、これらの事実は何らの証拠にも基づいていない。
 従って、訴訟の基本構造を無視し、手続保障を欠いた、一方的な偏見に基づいた事実の断定をした不当な決定と考えざるを得ない。
(3)不合理な事実認定という点について
 本件戒告処分決定は、本件ツイートが、「専ら上記訴訟の被告の言い分を要約して述べたにすぎないもの、あるいは上記報道記事の要約にすぎないものと理解されることとなるような記載はない上、上記報道記事にも本件ツイートで用いられたような表現は見当たらず、本件ツイートは、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準とすれば、そのような訴訟を上記飼い主が提起すること自体が不当であると被申立人が考えていることを示すものと受け止めざるを得ない」と事実認定している。
 ツイッターは、140字以内の投稿しか出来ないことから、表現を工夫し、少ない文字に情報を詰め込むと共に、報道記事への誘導をする場合には、どのような記事なのか、要約して記載することも通常行われていることである。そして、本件ツイートは、原告が「返してください」と述べた事への反論を会話形式で行っているに過ぎず、岡口判事の考えを述べたものではなく、被告からの反論の要約であることは容易に認識できる。
 ところが、本件戒告処分決定は、上記ツイッターの特性や表現の工夫などは一顧だにせず、何ら合理的な根拠も示さずに、上記事実認定を行った。そして、この事実認定の裏付けとして、一般の閲覧者では無い、原告である飼い主の抗議があったことを述べている。しかも、その原告ですら、訴え提起自体を不当だと感じたと述べていなかったのであるから、裁判所の事実認定が不合理であることは明白である。
(4)裁判所外への波及効果を軽視している点
 今の日本社会は、表現の自由に関する国連特別報告者が来日して、日本の表現の自由の危機に警鐘を鳴らしていることから分かるように、日本の表現の自由は、国際社会から心配されるほど危機的状況にある。
 このような日本社会において、本件戒告処分決定のような、ずさんな論理、特に補足意見にある「the last straw(麦わら一本)」の論理が広まれば、些細な発言を捉えた懲戒処分が当たり前に行われ、社会は今以上に発言を控えることになるだろう。それは、事実上、表現の自由の保障が無い世界になってしまう。
 こうした影響を避けるために、そもそも曖昧な申立を認めるべきでは無かったし、少なくとも、申立事由を明確にさせ、裁判所が職権により得た事実を開示し、適切な証拠調べをするなど、当事者の手続保障が充実した審理を行い、表現の自由に配慮した決定理由を記載すべきであった。
 
3.人権擁護の最後の砦にふさわしく、裁判官に市民的自由を
 裁判官も私人として表現の自由を始めとする市民的自由を享受する。しかし、勤務時間外に行ったツイッターをやめさせるかのような本件戒告処分決定がされてしまう現状をみると、裁判官に市民的自由があるのか疑問に思わざるを得ない。しかも、本件戒告処分決定の手続保障を無視したその手法を見る限り、人権擁護の最後の砦である最高裁判所自らが、特定の行政目的があれば、個人の人権保障を軽視しても良いとお墨付きを与えてしまったことになり、司法に対する国民の期待と信頼を大きく裏切る結果となった。
 過去の寺田事件判決において、河合伸一裁判官は、反対意見の中で以下の通り述べている。
 「裁判官の職務は、事実を確定し、憲法以下の法令を適用して裁判をすることであるが、現代の複雑かつ変化を続ける社会においてこれを適切に行うためには、単に法律や先例の文面を追うのみでは足りないのであって、裁判官は、裁判所の外の事象にも常に積極的な関心を絶やさず、広い視野をもってこれを理解し、高い識見を備える努力を続けなくてはならない。」
 岡口判事の私的な表現行為は、河合伸一裁判官が示した裁判官像の1つの具現化である。岡口判事は、勤務時間外を利用して様々な情報媒体による情報発信すると共に、東京レインボープライドにも参加するなど、多種多様な価値観や立場を理解することに努めてきた。しかし、裁判所規律を重視する旧態依然とした意識の蔓延が、本件戒告決定に至らせたものと推察する。
 最高裁判所は、司法に対する国民の期待と信頼に応え、また、人権擁護の最後の砦にふさわしく、一人一人の裁判官が表現の自由を始めとする市民的な自由を享受できるように、その意識を変革すべきであると考える。
 
4.以上で述べてきたように、本件戒告処分決定は、憲法で保障する表現の自由も、裁判の基本である手続保障も軽視した、ずさんな内容であった。しかも、裁判官の市民的自由への配慮も感じられない決定に対し、一人の反対意見も出なかったことに驚きを感じる。
 よって、当協議会は、最高裁判所の、岡口判事への本件戒告処分決定に対し、強く抗議するものである。また、裁判官にも表現の自由を始めとする市民的自由を享受できるよう求めるものである。
(引用終わり)
 
青年法律家協会弁護士学者合同部会 第3回常任委員会 決議
(引用開始)
              岡口基一判事に対する戒告処分に対し、強く抗議する決議
 
1 最高裁判所大法廷は、2018年10月17日、東京高等裁判所が申し立てた(以下「本件申立て」という。)、岡口基一東京高等裁判所判事(以下「岡口判事」という。)を被申立人とする分限裁判において、岡口判事を戒告するとの決定(以下「本件決定」という。)を下した。
 本件申立ての理由は、岡口判事が、2018年5月17日、ツイッターの自己のアカウントにおいて、東京高等裁判所控訴審判決が出されて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに、「公園に放置された犬を保護し育てていたら、3か月くらい経って、もとの飼い主が名乗り出てきて、『返して下さい』」「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・」「裁判の結果は・・」との文言を記載した投稿(以下「本件ツイート」という。)をして、上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけたことが、裁判所法49条に違反するとするものである。なお、審理の中で、争点は、岡口判事の行為が、裁判所法49条における「品位を辱める行状」に当たるか否かに絞られた。
 
2 本件決定は、裁判所法49条にいう「『品位を辱める行状』とは、職務上の行為であると、純然たる私的行為であるとを問わず、およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうものと解するのが相当である」とした。
 そのうえで、本件ツイートは、「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準とすれば、そのような訴訟を上記飼い主が提起すること自体が不当であると被申立人が考えていることを示すものと受け止めざるを得ないものである」と認定したうえで、「そうすると、被申立人は、裁判官の職にあることが広く知られている状況の下で、判決が確定した担当外の民事訴訟事件に関し、その内容を十分に検討した形跡を示さず、表面的な情報のみを掲げて、私人である当該訴訟の原告が訴えを提起したことが不当であるとする一方的な評価を不特定多数の閲覧者に公然と伝えたものといえる。被申立人のこのような行為は、裁判官が、その職務を行うについて、表面的かつ一方的な情報や理解のみに基づき予断をもって判断をするのではないかという疑念を国民に与えるとともに、上記原告が訴訟を提起したことを揶揄するものともとれるその表現振りともあいまって、裁判を受ける権利を保障された私人である上記原告の訴訟提起行為を一方的に不当とする認識ないし評価を示すことで、当該原告の感情を傷つけるものであり、裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるものでもあるといわざるを得ない。」「したがって、被申立人の行為は、裁判所法49条にいう『品位を辱める行状』に当たるというべきである。」と判断した。
 しかしながら、本件決定には、次の4点において、極めて重大な問題がある。
 
3 第1に、本件決定は、岡口判事の表現の自由を侵害するものである。
 憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と定め、国民に表現の自由を保障している。たとえ裁判官であっても、一市民である以上、憲法上の権利を有することは当然である。そのため、裁判官は、表現の自由を有する。
 ツイッターによる投稿は、それが内心における精神作用を外部に顕出する精神活動であり、また、憲法21条1項が「一切の表現の自由」を保障範囲に含めていることからも、表現の自由として保障されているというべきである。
 この点、本件決定は、前記判断の後に、なお書きとして、「被申立人の上記行為は、表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱したものといわざるを得ないものであって、これが懲戒の対象になることは明らかである。」として、本件ツイートが、あたかも表現の自由埒外であるかのような判断を示している。これは、表現の自由の保障範囲を不当に狭く解するものであって許されない解釈である。
 仮に、本件決定が本件ツイートも表現の自由の保障範囲に含まれると解しているとすれば、それを制限しうる根拠を、個別具体的に検討しなければならないが、本件決定では、そのような検討はされていない。
 さらに、本件決定では、裁判所法49条における「品位を辱める行状」の判断基準が一応は示されているものの、そこでは、「裁判官に対する国民の信頼」や「裁判の公正」という極めて抽象的な保護法益が掲げられているうえに、本件ツイートが「品位を辱める行状」に当たるか否かの考慮要素ないし具体的基準すらも明らかにされていない。
 結局のところ、本件決定は、憲法21条1項で保障される表現の自由を軽視し、何らの客観的基準に依拠することなく恣意的な判断をしているものといわざるを得ず、岡口判事の表現の自由を不当に侵害するとともに、ひいては裁判官の表現の自由を極めて制限する違憲決定である。
 
4 第2に、本件決定は、裁判官の独立にも脅威を与えるものである。
 憲法76条3項は、裁判官の職権行使の独立を保障している。この職権行使の独立には、他者から職権行使に対し指示・命令を受けないことはもちろんのこと、他者から事実上の干渉を受けないことも含まれる。
 裁判官の私生活上の行為が広く懲戒処分の対象となれば、裁判所は、自己の意向に沿わない裁判官の職権行使について、同人の私生活上の行為を裁判官としての職権行使と恣意的に結び付け、懲戒権の行使によって、裁判官の職権行使に事実上干渉することが可能になる。かかる状況は、裁判官の独立を定めた憲法76条3項に反する。
 本件決定は、岡口判事が私生活上の行為として行った本件ツイートの投稿を懲戒処分の対象としており、今後、同様の懲戒処分が一般化されれば、裁判官の独立に対する脅威となりかねないのである。
 したがって、本件決定は、憲法76条3項の点でも問題がある。なお、かつて、いわゆる「ブルーパージ」と呼ばれる思想良心に対する統制、すなわち、青年法律家協会所属の裁判官が再任拒否その他の不利益取扱いを受けるなどの裁判所による裁判官に対する統制が社会的問題として注目された時期があった。本件決定は、ブルーパージと同様の問題がいまもなお解決されていないことを示していると言える。
 
5 第3に、本件申立てにおいては本件ツイートが当事者の感情を害したとの主張がされており、争点としても、本件ツイートが「品位を辱める行状」に当たるか否かとの整理しかされていなかったところ、それにもかからず、本件決定は戒告処分の理由として、本件ツイートが当事者の訴訟提起が不当であったとの評価を表したものであって、「裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるもの」との認定をした。
 そのため、岡口判事は、本件ツイートをもって訴訟提起が不当であるとの評価を表したと評価できるか否か、本件ツイートが国民の信頼や裁判の公正を疑わせるか否かについては、一切、弁明の機会を与えられなかった。
 したがって、本件決定は、公務員に対する懲戒処分にも類推適用される憲法31条の適正手続きに関しても違反するものである。
 
6 第4に、本件決定では、前に述べたとおり、本件ツイートについて、当事者が訴訟提起をしたことが不当であるとの認識を示したものと認定しているが、本件決定をどのように読めば、岡口判事が訴訟提起を不当であるとの認識を示したものと受け止めることができるのかが全く説明されていない。また、本件ツイートについて、他にどのような解釈の余地があるのかの検証も全くなされていない。それらに照らせば、本件決定は、一般国民をして、最高裁判所の事実認定の公正に疑いを抱かせるものである。
 すなわち、本件決定における前記事実認定こそが「裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるもの」である。
 
7 以上述べてきたとおり、本件決定は、理解不能な事実認定を前提としたうえで、憲法31条の適正手続きの要請に反し、岡口判事の表現の自由を不当に侵害するとともに、裁判官の独立をも脅かすものである。
 裁判官の権利が奪われ、また、裁判官に対する統制が強められることは、裁判官を国民の人権を擁護する存在から、国策追従の存在へと変容させるものであり、国民の人権に対する大きな脅威である。
 当部会は、本件決定に強く抗議をするとともに、人権擁護の最後の砦としての最高裁判所の役割を取り戻すことを強く求めるものである。
 
 2018年12月1日
 
                    青年法律家協会弁護士学者合同部会
                    第 3 回 常 任 委 員 会
(引用終わり)
 
(付録)
弁護士ドットコムNEWS 2018年12月14日 15時32分
弁護士が選んだ2018年話題の法律ニュース、トップは? 司法のあり方に注目集まる
(抜粋引用開始)
弁護士ドットコムは会員の弁護士に対して、2018年に印象に残った法律ニュースについて、アンケートを実施した(回答数:208人)。東京高裁の岡口基一裁判官のTwitterの投稿をめぐる懲戒処分が最多で、57.6%(120票)を集めた。2位は、僅差で日産自動車の元会長カルロス・ゴーン氏の逮捕(57.2%、119票)。
アンケートは、12月5日から11日にかけて、会員弁護士を対象に実施。弁護士ドットコムニュース編集部が、PVやSNS拡散数、話題性などを考慮してセレクトした2018年のニュース20の中から、印象に残ったもの5つを選ぶ形で実施。208人の弁護士から回答が得られた。
●岡口氏とゴーン氏の共通性
岡口氏の懲戒処分(戒告)は、表現の自由についての議論を巻き起こしたほか、決定の補足意見に「the last straw(最後のわら)」との表現が登場し、過去の言動を実質的に問題視する裁判所の姿勢が話題となった。
ゴーン氏は1999年に最高執行責任者(COO)として日産に入り、経営を立て直した。海外でも著名な企業家であったことから、役員報酬の未記載という逮捕容疑以外にも、日本の刑事司法における逮捕や勾留の運用が注目を集めた。
岡口氏とゴーン氏の話題は、日本の司法や裁判所のあり方にスポットライトを当てた点で、共通性がある。
(略)
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/岡口基一裁判官分限裁判関連)
2018年10月2日
「裁判官にも「つぶやく自由」はある 裁判官の表現の自由の尊重を求める弁護士共同アピール」への賛同のお願い~弁護士限定ですが
2018年10月17日
日本ペンクラブ言論表現委員会シンポジウム「『憲法表現の自由』の現在と未来」(2018年10月16日)動画のご紹介
2018年10月18日
岡口基一裁判官に対する分限裁判・最高裁大法廷「決定」を読む
2018年10月29日
岡口分限裁判弁護団による「声明」(2018年10月24日)を読む

新外交イニシアティブ(ND)シンポ「東アジアの”平和”を問う―北朝鮮の非核化と移り変わる米中関係―」を視聴する

 2018年12月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3361を転載します。
 
新外交イニシアティブ(ND)シンポ「東アジアの”平和”を問う―北朝鮮の非核化と移り変わる米中関係―」を視聴する
 
 注目すべきシンポジウムや講演会、それが遠方でとても参加できそうもないものであっても、後日動画が公開されれば是非見てみたいと思うものも少なくありません。
 私にとって、そのような企画を多く手掛けてくれている団体の1つが新外交イニシアティブ(ND)です。
 
 その新外交イニシアティブの「東アジアの”平和”を問う―北朝鮮の非核化と移り変わる米中関係―」というシンポジウムが、昨日(12月13日)夜、東京の弁護士会館で開かれました。
 NDの事務局長の猿田佐世さんは弁護士ですし、弁護士会館の講堂を借りてシンポを開いても、そのこと自体は別に驚かないのですが、「12階講堂」というのがあったのですね。2階のホール(「クレオ」と言います)には何度も行ったことがありますし、上層階で日弁連の委員会などが開催される会議室にもかつては結構通ったりしていたのですが、「12階講堂」は・・・。もっとも、ここ数年、日弁連委員になっていても、いつもTV会議システムを接続してもらって、和歌山弁護士会館から参加するだけなので、東京の弁護士会館の中身にはさっぱり疎くなってしまっていますけど。
 
 それはさておき、昨日のシンポの中身です。東アジアにおける安全保障を考える上で、その焦点の1つが北朝鮮の非核化であることは間違いありません。米朝協議は一進一退が続くでしょうが、それをただ眺めているだけの日本で良いのだろうか?と思いますよね。今は、バイプレイヤーですらなく、単なる通行人か背景ですから。
 4人の識者の皆さんのお話は、それぞれに教えられるところがあるのですが、中でも、私は、慶應義塾大学の礒﨑敦仁准教授のお話がとても分かりやすかったです。まあ、他の方よりも滑舌良く明晰な話しぶりであるという要素も大きいのですが。
 
 以下に、新外交イニシアティブWEBサイトに掲載されていたシンポジウムの案内記事を引用した上で、UPLANさんによる動画をご紹介します。
 
新外交イニシアティブ(ND)主催 シンポジウム
東アジアの”平和”を問う―北朝鮮の非核化と移り変わる米中関係―
(引用開始)
 北朝鮮と米国の間では、今年6月に行われた首脳会談を皮切りに、非核化交渉が進められています。しかし、11月8日に予定されていた高官クラスの会談も延期され、主張の対立が深まるなど、交渉の先行きには不透明さが増してきています。一方、歴史的に北朝鮮と近い関係にある中国は、朝鮮半島の段階的な非核化や、北朝鮮に対する制裁緩和を主張するなど、米国とは異なる姿勢を示しています。
 米中両国の関係は、貿易摩擦南シナ海の領有権をめぐり対立を深めており、「新冷戦」の様相を呈してきたとの見方が広がっています。米国の覇権が揺らぎ、中国が軍事・経済両面で急成長を続ける今、東アジアの平和をいかに構築するかについての検討がなされねばなりません。
 今回のシンポジウムでは、緊迫する米中関係や対北朝鮮外交の行方について、軍事・安全保障の視点から議論を行います。
 
日時 2018/12/13 Thu.17:30開場 18:00〜20:00
会場:弁護士会館 12階講堂(東京都千代田区霞が関1-1-3)
参加費 1500円(ND会員・学生は無料)
 
マイク・モチヅキ(米ジョージ・ワシントン大学准教授・ND評議員)
 ジョージ・ワシントン大学准教授。ハーバード大学にて博士号取得。専門は日本政治および外交政策、日米関係、東アジア安全保障。南カリフォルニア大学およびイェール大学で教鞭をとり、ブルッキングス研究所シニア・フェロー、ランド研究所アジア太平洋政策センター共同部長などを歴任。2001年から2005年、ジョージ・ワシントン大学エリオットスクール(国際関係学)のAsian Studies(アジア学)のためのガストン・シグール記念センター所長。現在は、同センター日米関係部長を務め、また同センターの「アジア太平洋における記憶と和解」研究・政策プロジェクトの共同責任者も務める。
 
柳澤協二(ND評議員/元内閣官房副長官補)
 1970年東京大学法学部卒とともに防衛庁入庁、運用局長、人事教育局長、官房長、防衛研究所長を歴任。2004年から2009年まで、小泉・安倍・福田・麻生政権のもとで内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当。現在、NPO国際地政学研究所理事長。著書に『検証 官邸のイラク戦争』(岩波書店)、『亡国の安保政策』(岩波書店)など。
 
礒﨑敦仁(慶應義塾大学准教授)
 慶應義塾大学商学部中退。ソウル大学大学院博士課程に留学後、在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、ウッドロウ・ウィルソンセンター客員研究員などを歴任。専門は北朝鮮政治。共著に『新版 北朝鮮入門』など。
 
鈴木達治郎(長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授)
 東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。原子力工学を専攻後、エネルギー環境政策、技術と政策の関係を中心に研究。MITエネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、(財)電力中央研究所社会経済研究所などを経て、2010年1月から2014年3月まで原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月RECNA副センター長に就任。2015年4月より現職。国際核物質専門家パネル(IPFM)共同議長、核廃絶を目的とする科学者グループ「パグウォッシュ会議評議員
(引用終わり)
 
20181213 UPLAN 東アジアの”平和”を問う―北朝鮮の非核化と移り変わる米中関係―(1時間54分)
冒頭~ 司会 猿田佐世氏
4分~ マイク・モチヅキ氏
26分~ 礒﨑敦仁氏
41分~ 鈴木達治郎氏
55分~ 柳澤協二氏
1時間09分 パネルディスカッション

山本太郎参議院議員の中野駅頭街頭宣伝(2018年12月10日)~12月8日未明の「叫び」の内容をご説明しましょう

 2018年12月13日配信(予定)のメルマガ金原No.3360を転載します。
 
山本太郎参議院議員中野駅頭街頭宣伝(2018年12月10日)~12月8日未明の「叫び」の内容をご説明しましょう
 
 今日は、正直言って、長目のブログを書いている時間がないので(最近はそういう日が多い)、目に付いた動画を備忘のために取り上げておこうと思います。
 それは、山本太郎参議院議員による、東京の中野駅頭での街頭宣伝を伝える動画です。
 
 私は、参議院東京選挙区の有権者ではないものの、来年夏の参議院議員通常選挙では、何としても山本太郎さんに再選を果たしてもらいたいと願っている、おそらく全国にたくさんいるはずの応援者の1人です。もちろん、同じ選挙区の吉良よし子議員をはじめ、私が是非当選して欲しいと思っている議員は他にもたくさんいますけどね。
 
 ところで、ここ3週間ほどの間に、山本太郎議員の行動や発言を私のブログで紹介したことが、以下のとおり3度もありました。
 
2018年11月22日
山本太郎参議院議員による街頭記者会見を視聴する(11/20@赤羽、11/2@落合、10/22@なんば、10/11@藤沢)
 
2018年12月2日
「市民と野党の勝利をめざそう!in 参議院選東京選挙区」(2018年11月28日)を視聴する
 
2018年12月9日
12月8日未明の参議院本会議場で山本太郎議員(自由党)が叫んだ言葉を記録する~会議録には載らないだろうから
 
 今日は、直接的には11月22日の「山本太郎参議院議員による街頭記者会見を視聴する(11/20@赤羽、11/2@落合、10/22@なんば、10/11@藤沢)」の「続き」なのですが、12月8日未明に与党席に向かって「賛成する者は二度と保守と名乗るな。保守と名乗るな。官邸の下請け。経団連の下請け。竹中平蔵の下請け。」「この国に生きる人々を低賃金競争に巻き込むのか。世界中の低賃金競争に。恥を知れ。二度と保守と名乗るな。保身と名乗れ。保身だ。」と叫んでから2日余り後の12月10日(国会が閉会した日)夜に行った街頭宣伝ということで、興味を惹かれたということもあります。
 まず、その動画(なにぬねノンちゃんねる)をご紹介します。
 
山本太郎街宣 中野(1時間38分)
 
 山本太郎さんの街頭宣伝では、まず聴衆の中から、苦言・提言・質問などを求め、それがあれば、そのテーマについて語っていくというスタイルがとられています。
 ただ、12月8日の入管法「改正」案採決時の「叫び」を(動画なりで)聴いた者としては、その訴えの根拠、背景を詳しく聴いてみたいですよね。
 ということで、動画を探してみると、ありました。「経団連の下請け。竹中平蔵の下請け。」「この国に生きる人々を低賃金競争に巻き込むのか。世界中の低賃金競争に。恥を知れ。」という「叫び」をさらに詳しく知りたいという方は、動画の以下の部分をご覧ください(主にパワーポイントのボード見出しを引用しています)。
 
59分~ 
 経団連提言「今後の労働者派遣制度のあり方について」(2013年7月)
 経団連提言「外国人受け入れ問題に関する提言」(2004年4月14日)
1時間02分~
 日本の「外国人技能実習生制度」世界から批判
  失踪技能実習生の失踪動機
 外国人技能実習生の受入れ企業、法令違反は過去最多を更新中
 失踪した技能実習生の聴取票によると
 外国人技能実習生が2015年~17年の3年間に計69人が亡くなっていた
 なぜそこまで急ぐのか?「半年遅れれば、それらの方は帰ってしまう」と山下法務大臣が答弁
 国際的な「移民」の定義
 移民流入により国内労働者の雇用が減少-英・政府諮問機関レポート(2012年)
 ジョージ・ボージャス教授(米・ハーヴァード大学教授)の研究
1時間10分~
 「外国人労働者受け入れ」、経団連だけではなくまたしても「あの方」の影が・・・
 外国人の雇用促進団体の顧問にも・・「あの方」の名前が
 入管法改正案成立直後にパソナ研究所が意識調査を発表
 特定技能は「派遣労働者」形態でも可能
 外国人労働者の受入れに係る最近の主な取組(法務省
1時間13分~
 外国人人材を受け入れに関して 経団連 中西会長の発言
 経団連は政治に対して「提言」という名の命令を行い叶えている
 派遣法改正
 消費税
 武器輸出
 憲法改正(発議用件緩和など)
 カジノ
 TPP
 原発再稼働
1時間16分~
 ではどうするか?
 
 最後に、私が山本太郎議員のオフィシャルサイトを閲覧しても、積極的に行っているはずの街頭演説の予定が全然掲載されていないのは何故だろう?とかねて疑問に思っていたことについて、山本議員自身がブログで説明されている文章を発見しましたのでご紹介しておきます。
 
山本太郎オフィシャルブログ 2018年11月2日
お詫び
(引用開始)
 最近、事務所に、 「なぜ街頭宣伝の事前告知をやらないのか」、 とのお問い合わせを多く戴くようです。
 ターミナル駅など大きな街宣現場が廻らない場合に限って、ボランティア登録下さっている方々と、 ネットワーク会員の方々には事前にお知らせはしていますが、一般的には SNS などでの事前告知は秋からの街宣では、ほぼ行っていません。
 理由は、たまたま通りがかった人々が、どれくらい足を止めて聞いてくれるかの、リアルを把握するためです。
 そのためには、ゲリラ街宣しかないのです。(行政に許可が必要なものに関しては当然申請は行っています)
 大々的に事前告知をするやり方もありますが、おなじみの聴衆を多く集めても、世の中は変わりません。
 偶然通りかかった人々が、足を止め、手を上げて、直接質問して下さったり、マイクは握らなくとも、耳を傾けて下さる。
 支持者以外でどれ位の方々が興味を持って戴けるかを知る重要性を考え、現在は無告知街宣の期間です。
 そうやって、自分たちの置かれた立場を理解し、伝え方や考え方などにも工夫が生まれる大切な機会です。
 これほど勉強になることはありません。
 生で聴きたい、と思って下さっている方々や、直接聞きたい、言いたい、とお考えの皆様には、ご不便をおかけいたしますが、また事前告知をするヴァージョンでの街宣も行いますので、それまでお待ち戴ければ幸いです。
(引用終わり)