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「カジノあかん3・25大阪集会」動画のご紹介と12/12参議院内閣委員会での新里宏二弁護士と鳥畑与一静岡大教授の反カジノ意見陳述

 今晩(2017年3月26日)配信した「メルマガ金原No.2763」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「カジノあかん3・25大阪集会」動画のご紹介と12/12参議院内閣委員会での新里宏二弁護士と鳥畑与静岡大教授の反カジノ意見陳述

 昨日(3月25日・土曜日)、和歌山市大阪市で気になる企画がいくつかあったものの、どうしても
外せない用事が和歌山県白浜町であったため(パンダを見に行ったわけではありません。もっとも、会場はアドベンチャーワールドのすぐ隣りでしたが)、いずれも参加できませんでした。
 
 和歌山市では、午後2時から、和歌山市あいあいセンターで、和歌山県平和フォーラムなどが主催する映画『高江―森が泣いている 2』(藤本幸久・影山あさ子共同監督)上映と大嶺克志氏(自治労沖縄県本部書記長)講演の集いが開かれました。多くの方が参加してくださったものと思いますが(※チラシ)。
 
 大阪市で気になった企画は2つあり、1つは、若い人たちが中心になって企画した「3.25安倍政権に反対するデモ」であり、大阪うつぼ公園を16時00分に出発するものでした。
 このデモを企画した実行委員会のメンバーである服部涼平さんからFacebookを通じて誘われており、他用がなければ大阪まで出かけ、まず、以下に紹介する「カジノあかん3・25大阪集会」に13時30分から参加し(エルおおさか2Fホール)、その後、デモに(途中からでも)参加したかもしれません。
 このデモの雰囲気をよく伝えてくれるダイジェスト動画がYouTubeにアップされています。
 
3.25安倍政権に反対するデモ(4分15秒)


 また、デモの途中からですが、IWJによるTwitcasting動画がアップされています(IWJによる中継が途中からになったのは、もしかしたら、「カジノあかん3・25大阪集会」を撮影してからデモに駆け付けたからかもしれません)。
 
 
 そして、大阪市で気になったもう1つの企画というのが、エルシアターで13時30分から開催された「カジノあかん3・25大阪集会」(実行委員会主催)です。

 昨年12月以降、私がメルマガ(ブログ)に書いた記事は、巻末リストにあるとおり4本あるのですが、昨年12月26日に施行された、いわゆるカジノ解禁推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)第五条にが、「政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。」と規定していることから、遅くとも今秋の臨時国会には、おそらく閣法(内閣提出法案)として、「必要となる法制上の措置」を定める法律案が国会に提出されるものと思わなければなりませんので、私がカジノについて取り上げる機会はまだまだありそうです。
 
 昨日の大阪集会のチラシから、その内容を一部引用しましょう。
 
(引用開始)
パチンコ、パチスロ、競馬、競輪・・・、現在でも日本は世界にまれなギャンブル大国で、依存症問題も深刻です。それなのに、さらにカジノをつくる!?大阪では、知事も市長もカジノ誘致に躍起で、あの危険な埋め立て地・夢洲に鉄道を通し、巨大な遊戯施設をつくるとか。そんなもんより、今あるギャンブル依存症をゼロにし、大阪の貧困、地場産業の衰退をなんとかしなあかんのと違いますか?私らはカジノ誘
致に反対です。
プログラム
お話 なぜ今、カジノ解禁か~賭博解禁法を運動でつぶそう
 新里宏二さん(弁護士・全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会代表)
映像 カジノあかんやんか(仮)
リレースピーチ 住民投票でカジノ誘致を否決した台湾・澎湖等からのゲスト/ギャンブル依存症被害者
/カジノ合法化反対で国会で奮闘された国会議員のみなさん/中小企業家/教育の現場から/若者、女性
などさまざまな分野のみなさん
(引用終わり)
 
 この集会についても、IWJによるTwitcasting動画が視聴できます。
 
カジノあかん3・25大阪集会 2017.3.25
0分~ 開会
1分~ 主催挨拶 桜田照雄氏(阪南大学教授)
5分~ お話 新里宏二氏(弁護士・全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会代表)
      「なぜ今、カジノ解禁か~賭博解禁法を運動でつぶそう」
25分~ ギャンブル依存症被害者から
33分~ リレースピーチ
1時間35分~ 台湾・膨湖島から
1時間46分~ アピール・行動提起
 
 カジノ誘致の先陣を隣接する和歌山県和歌山市と争う勢いの大阪府大阪市。来たるべき衆議院総選挙の重要争点化する必要がある、少なくとも大阪と和歌山では、というのが私の意見です。ということで、今後も、カジノ問題については、しつこく取り上げていきたいと思います。
 
 ところで、昨日の集会でお話された新里宏二(にいさと・こうじ)さんは、仙台の弁護士さんであり、多重債務問題に長年取り組まれ、2011年度には日本弁護士連合会の副会長を務めておられます(※経歴)。

 昨日のミニ講演(約20分)の動画は、Twitcastingなので、画質が朦朧としているのは仕方がありませんが、音声は(音量レベルがもう少しあればとは思うものの)、耳を澄ませば聴き取れる範囲だと思います。
 
 ただ、もう少し明瞭な動画はないだろうか、と探したところ、昨年12月12日に開催された参議院閣委員会に新里さんが参考人として出席し、意見を述べている動画がありました。
 この日は、推進派2人、反対派2人の参考人が意見を述べています。
【推進派】
 美原 融氏(大阪商業大学総合経営学部教授)
 渡邉雅之氏(弁護士)
【反対派】
 新里宏二氏(日本弁護士連合会多重債務問題検討WG座長)
 鳥畑与一氏(静岡大学人文社会科学部教授)49:20 
 
2016 12 12 参議院内閣委員会「IR法案参考人質疑」(4時間08分)

参考人意見】
 2分~ 美原 融氏(大阪商業大学総合経営学部教授)
 14分~ 渡邉雅之氏(弁護士)
 33分~ 新里宏二氏(日本弁護士連合会多重債務問題検討WG座長)
 49分~ 鳥畑与一氏(静岡大学人文社会科学部教授)
【質疑】
 1時間04分~ 和田政宗氏(自民)
 1時間32分~ 神本美恵子氏(民進)
 2時間04分~ 里見隆治氏(公明)
 2時間35分~ 田村智子氏(共産)
 3時間05分~ 浅田 均氏(維新)
 3時間37分~ 山本太郎氏(自由)
 
 民進党が本気で止めようとしなかったため、あっさりと昨年12月14日に成立したカジノ解禁推進法。その2日前の参考人質疑です。
 様々な論点について、4時間にわたって質疑が行われており、成立してしまった今から言うのもなんですが、おおいに勉強になります。
 とはいえ、4時間の動画を視聴するのはつらい、という人も多いと思いますので(私もそうです)、会
議録をご紹介します。
 
 
 ここから、新里宏二弁護士と鳥畑与一教授の基調発言をご紹介したいと思います。少し長くなりますが全部引用します。いずれも、説得力豊かにカジノ推進に「理」も「利」もないことを説明されていますが、特に鳥畑教授の意見陳述から、多くのことを学ばせていただきました。皆さまも是非、動画もしくは会議録で、推進・反対両派の論客の主張に耳を傾け、カジノ問題についての認識を深めていただければと思います。
 
(引用開始)
参考人(新里宏二君) 弁護士の新里でございます。
 本日、参考人としてお呼びいただいて発言の機会をいただいて、本当に感謝申し上げるところでござい
ます。
 私は、このいわゆるIR法案、又はカジノ解禁推進法案と言いますけれども、反対の立場から御意を
述べさせていただきたいと思います。
 まず、カジノの経済効果ということでございます。統合型リゾート、IRは、投資、雇用が期待でき、経済を活性化させる切り札になるだろうとも言われております。アメリカの投資銀行は、日本のカジノの経済効果を四兆円などとも試算しております。その中で、その狙いが日本人の金融資産であることも明ら
かにしております。
 日本ゲーミング学会の谷岡一郎氏は、カジノの推進について、海外からの投資が盛んになり、高齢者の
たんす預金など世の中に出てきにくい金が回り始めると紙上で明言されております。
 平成二十六年五月、アメリカのカジノ運営会社であるサンズ社の会長は、日本のカジノに五千億ないし一兆円を投資するとも述べております。それだけ短期的に巨利を上げることができるということでしょう
か。
 日本にはカジノ産業についての蓄積はなく、海外からの資金及びノウハウに頼らざるを得ません。日本
人の金融資産がカジノを通じて海外に散逸することの危惧の念を抱くのは私だけでしょうか。
 カジノ賭博は業者がもうかり、事業者のもうけはカジノでの負けの総体でございます。私自身、多重債務問題に取り組み、ギャンブルで借金をつくり、仕事、家族を失い、自分の命まで失う悲劇をつぶさに見てまいりました。カジノ賭博は、多くの者が財産を失い、依存症へと追い込まれる。カジノは不幸をまき散らすビジネスではないのでしょうか。人の不幸を前提とした成長戦略に大きな疑問を感じざるを得ませ
ん。
 次に、日弁連の意見書についてでございます。
 平成二十六年五月九日、日弁連は、カジノ解禁推進法案に反対し、その廃案を求める意見書を採択しております。今日の資料一、二で付けておきました。カジノ解禁推進法案の問題点について、カジノ経済効果への疑問、暴力団対策上の問題、マネーロンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響、民間企業の設置、運営によることの問題を指摘して
おります。
 本日は、その中でギャンブル依存症の問題及び民間企業の設置、運営によることの問題について触れた
いと思っております。
 まず、ギャンブル依存症でございます。ギャンブル依存症の問題は極めて深刻です。ギャンブル依存症
は、慢性、進行性、難治性で、放置すると自殺にも至ることもある極めて重篤な疾患でございます。
 我が国において、平成二十六年三月の厚生労働省研究班による調査結果、資料三で付けておりますけれども、成人男性八・七%、成人女性一・八%、全体四・八%で、推計数は五百三十六万人に達すると言われております。他方、アメリカでは、ルイジアナでは一・五八%、オーストラリア、男性二・四%、女性
一・七%、フランス一・二四%などと比べると極めて高い数値となっております。
 日本には、公営ギャンブルがあるほかにパチンコが地方の隅々にも存在しています。世界のスロットな
どの遊技機械の六割以上が日本にあることがギャンブル依存症問題を深刻化させております。
 カジノは、利益を上げるために多数の賭博客を得ようとするのは当然であり、カジノの設置によってギ
ャンブル依存症の患者が増加することは明白でございます。カジノの売上げによってギャンブル依存症対策を推進するとの見解もありますが、ギャンブル依存症問題の深刻さからすれば、ギャンブル依存症対策はカジノ解禁の問題とは別個にその対策を強力に推進すべきものと考えます。
 本年九月、九州の弁護士と弁護士会の集まりであります九州弁護士会連合会で、ギャンブル依存症のない社会をめざしてと題するシンポジウムを開催しました。弁護士会側から、ギャンブル依存症問題の解決
のために必要な基本法の制定を提案をしております。資料四でございます。
 次に、民間企業の設置、運営によるところの問題でございます。
 日本では、賭博は太古の昔から厳罰をもって禁止され、記録上確認できるのが持統天皇によるすごろく禁止令であることは、国会の議論でもなされているところでございます。現行刑法は、賭博及び富くじに関する規定、刑法百八十五条以下を設けております。他方、特別法、競馬法自転車競技法等により賭博罪、富くじ罪に該当する行為を正当化する規定が置かれており、実際上は、これらの公認された賭博、富くじの枠外で行われ、違法行為を惹起し、暴力団等の資金源となるような賭博、富くじが処罰の対象とさ
れております。
 カジノについて違法性阻却を求めるかどうかについては、本年十二月七日、法務省のペーパー、資料五
を付けておりますけれども、八項目が示されております。
 それによりますと、「これまで刑法を所管する法務省の立場からは、例えば、目的の公益性(収益の使途を公益性のあるものに限ることも含む。)、運営主体等の性格(官又はそれに準じる団体に限るなど)、収益の扱い(業務委託を受けた民間団体が不当に利潤を得ないようにするなど)、射幸性の程度、運営主体の廉潔性(前科者の排除等)、運営主体への公的監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害(青少年への不当な影響等)の防止等に着目し、意見を申し述べてきたところであり、カジノ規制の在り方につ
いても、同様である。」とされております。
 この括弧書きにつきましては、これまで明らかにされていないことが今般明らかになってきております。この八項目につきましては、日弁連の意見書でも指摘したところでございます。括弧内の指摘を前提といたしますと、民営カジノでは、従来の法務省の見解からすると合法の余地はないのではないかと考えて
いるところでございます。
 次に、韓国の江原ランドの問題について指摘したいと思います。
 韓国では、二〇〇〇年、国内十七番目のカジノとして、自国民が入れる江原ランドがオープンします。ソウルから二百キロほど離れた旌善郡に位置します。かつては炭鉱でしたが、二〇〇〇年、カジノリゾートとして、江原ランドとしてオープンし、当初はカジノの単体でしたが、二〇〇三年に、四百七十七の客室を有するホテルカジノとして全面リニューアルし、周囲にはスキー場やゴルフ場も併設した複合型観光
施設となっております。
 中毒管理センターも併設され、十三年間で利用者は五万人、ランド内で自殺した人は四十八人を数えているということでした。ランド側も、当初は二十四時間営業だったものを二十時間に短縮、客は入場記録
が管理され、一か月の利用は十五回に制限されているとも言われています。
 私は、平成二十六年八月に江原ランドにも訪問しております。二〇一二年の入場者数は約三百万人、国へ納める税金は年間四百七十五億円、三千人いる従業員の六割は地元採用と聞いております。それでも、カジノが開業した年から人口が減少し、子育て世代が出てしまい、人口減少に歯止めが掛からないと言わ
れています。
 実は、江原ランド最寄り駅であります舎北駅のバス停、電話ボックスには名刺大のおびただしいサチェ、日本の闇金の広告が出されております。これについては資料六を見ていただければと思います。昔の日本の風俗産業が電話機に名刺大の広告を出したものと同様でございます。明らかに闇金がばっこしている
ことが予想されます。
 駅へ上がる、駅に小型バスが止まっておりました。カジノホームレス宣教会の相談所のようでした。担
当者は不在でしたけれども、バスの後ろには少女がポスターを掲げている写真が貼ってありました。これがその写真でございます。お父さん、お母さん、自殺しないでくださいと書かれています。江原ランドの自殺者が急増し、このポスターになったのではないかと思っているところでございます。江原ランド周辺の質屋街については、その異様な雰囲気がNHKのニュースでも取り上げられております。
 他方、韓国でも、依存症対策としてカジノへの入場規制がなされております。家族要請、本人要請、一般入場規制もなされていると言われております。韓国では、カジノに関わる賭博中毒などが大きな社会問
題となっております。
 韓国では、ギャンブル産業の売上高が二〇〇九年に十六・五兆ウォンとなっております。他方、国家ゲーミング産業統合監視委員会のホームページの賭博問題の社会・経済的費用研究によると、経済と財政、雇用、犯罪及び法律、及び健康及び福祉、それぞれについての金額を推計し、賭博中毒者らの年間総社会
・経済的費用として七十八兆ウォンと指摘しております。資料七で付けているところでございます。
 負の影響が経済効果を大きく上回ることは、日本においてカジノを解禁するかの議論をする上では極め
て実証的なデータだと考えるところでございます。
 さらに、江原ランド依存症管理センターからいただいた資料の最後の記載が示唆に富むものでしたから
御紹介させていただきます。資料八でございます。
 どれだけ徹底した依存症管理システムを備えても、ギャンブル産業の副作用、家産の蕩尽、自殺、地域共同体の崩壊などを根本的に防ぐことはできないので、地域再生戦略としてカジノなどのギャンブル産業を誘致することは非常に慎重を期すべきであり、誘致の前には徹底した準備が必要であると記載されてお
るところでございます。
 次に、日弁連の平成二十六年八月のシンガポール調査についても少し触れたいと思います。
 シンガポール調査の目的は、日本のカジノが観光目的で解禁したシンガポールを参考に企画されていること、シンガポールではカジノの利用は自国民に許されていますが、百シンガポール・ドル、約八千円でしょうかの入場料を課し、家族、本人、政府からの入場規制を掛ける仕組みがあること、これについても日本で参考にするとされていること、シンガポールはカジノの負の影響を抑えることができているのだろ
うかということを依存症支援の現場から確認しようとしたものでございます。
 シンガポールは、御承知のとおり、カジノを解禁したのは二〇一〇年であり、カジノは二か所、MIC
Eを充実させたマリーナ・ベイ・サンズ、家族向けアミューズメントを充実させたワールド・リゾート・セントーサでございます。人口は約五百万人、都市国家でございます。
 依存症の支援組織であるワンホープセンターではギャンブル依存の相談が急増し、五年前には二百から三百件であったものが五百件台に急増しているということでございました。まさしくカジノが影響しているということでございます。自国民に入場料を取ることについては、入場料分を取り戻そうとすること、時間いっぱいゲームをすることから依存症対策として機能していないとのこと、さらに、入場制限につい
ても、ここへの相談者は制限者であり、それも機能していないとの認識でございました。
 平成二十五年秋から新しいガイドライン、ビジット・リミット・ガイドラインによって、賭博依存国家評議会、NCPGから月六回以上の利用者には通知を出し、銀行口座などを自己申告させること、カウンセリングを受けることを通知するというような仕組みとなっていることでございました。協力的でない者
に対しては、標準的な基準を基に個別ケースで調整をして、一か月のカジノへの入場回数の制限ができることになっているということも報告を受けました。
 調査結果からすると、自国民への入場料、入場制限は、依存症対策としては機能していないのではない
かと言わざるを得ません。
 また、支援団体二か所での聞き取りで、ローンシャークがばっこしていることも確認されました。依存
症と借金、ローンシャーク問題はほぼ重なっているとの認識でございました。
 最後になります。
 新聞各紙の世論調査では反対が賛成を大幅に上回り、各社説も拙速な審議に疑問を呈しております。特に、本日述べた賭博の違法性阻却が民間カジノで可能かどうか、十分御審議お願いし、意見陳述を終わり
ます。
 御清聴ありがとうございました。
 
参考人(鳥畑与一君) 静岡大学の鳥畑です。よろしくお願いいたします。
 お手元の資料、全部で三枚ありますが、文書を読ませていただきます。中の資料等については一つ一つ
説明をいたしませんので、御容赦をお願いいたします。
 この度は、参考人として本法案に対する意見発言の機会をいただき、ありがとうございます。
 衆議院内閣委員会等での質疑では、刑法百八十五条等で禁じられた賭博の違法性の阻却要件として八要件が議論されました。そこでは、国際観光や地域振興、そして財政に資することが統合型リゾート、IR
の公共性を担保するものとして答弁されていました。
 私は、IRの収益エンジンとして組み込まれたカジノをIR型カジノと呼んでおりますが、このIR型カジノの経済的効果なるものが刑法の違法性を阻却するものであるかという観点から、甚だ浅学ではあり
ますが意見を述べさせていただきます。
 現在、IR型カジノについて、投資額や収益からの経済効果のみが一面的に強調されています。しかし、米国議会国家ギャンブル影響度調査以降、ギャンブル収益は代替効果、共食いを伴うものであり、かつ
、多くの社会的コストを発生させることが共通認識として確立されています。
 ギャンブルの経済的特質については、ノーベル経済学賞受賞者であるポール・サミュエルソンは「経済学」で、新しい価値を生み出さない所得の移転でしかなく、所得格差を拡大すると指摘しています。フィラデルフィア連銀のアラン・マラハは「カジノ・ギャンブル導入の経済的・社会的影響」で、カジノの経済的効果としては、地域外からギャンブル収益をもたらす目的地効果、それから州外に流れているギャンブル収益を取り戻す奪還効果、そして地域内での消費を奪う、単なる置き換えであるという代替効果、それから地域外の資本によることによって利益が地域外に流出する効果を指摘しつつ、純粋な経済的効果や財政に与える影響は、これらを総合的に評価するほか、社会的コストを加味する必要があるとしています

 現在、米国各州では、新たにカジノを合法化する際にはカジノ設置に伴う経済的効果と社会的コストの総合的評価を行うことが一般化していますが、そこでは、カジノは経済的効果のみをもたらすものではな
いことが明らかになっています。
 例えば、カジノ推進派のダグラス・ウォーカーですら、「カジノ産業の本質」で、住民がギャンブルにより多く支出するようになれば他の財やサービスの支出が減る可能性もあるとして全米各州の調査を行っ
たところ、カジノが州の税収にプラスの影響を及ぼすことは確認できなかった、どうやらカジノは州の税収に対して何の影響も与えないか、ややマイナスの影響を与えるようだ、ギャンブル産業を合法化したり拡大したりすれば州政府収入にプラスの効果があるという言い分は成り立たないと述べています。
 カジノの純粋な経済効果はその立地や規模に左右されるため、一般論として結論できませんが、ニューハンプシャー州では、カジノ合法化するか否かの議論に当たって、超党派の調査委員会で地域別の経済効果と社会的コストの計量的評価を試みた結果、地域によっては経済的効果を社会的コストが上回ると結論
しました。この結果、ニューハンプシャー州ではカジノ合法化の議会での否決が続いています。
 IR型カジノでは、一兆円規模の投資と巨大なIR施設運営を支える数千億規模の収益が実現するとされています。例えば、関西経済同友会の構想では、毎年約五千数百億円、約五十億ドルの収益が想定されています。かつてカジノ単体の構想が基本であったお台場カジノの収益予想は約三百億円、これと比較して、IR型カジノに衣替えすることで桁違いのカジノ収益が実現するとされるわけですが、それは現実的
な推計なのでしょうか。
 IR型カジノのモデルでもあるラスベガス・ストリップ地区の大型二十三カジノのカジノ収益合計は約
五十三億ドルで、平均二・三億ドルでしかありません。アメリカ大手カジノ企業MGMのラスベガスを中心とする米国内十二カジノの収益合計は約二十七億ドル、平均二・二億ドルです。
 ところが、マカオのMGMチャイナだけで最盛期三十三億ドルの収益となります。なぜ一桁多いカジノ収益が実現するのか。その秘密は、二十一億ドルを占める中国富裕層、VIPからの収益です。スロットマシンを中心にミドルクラスや高齢者をマーケットとする限り、数百億円のカジノ収益というのが米国の
現実です。そして、ラスベガスですら赤字なのです。
 ところが、日本では中国富裕層を相手に荒稼ぎをしているマカオやシンガポールよりも高収益を上げることができるというその根拠は何なのでしょうか。普通の外国人観光客にちょっとカジノに寄ってもらう
だけでマカオ、シンガポールよりも更に大きなカジノ収益を実現できると想定するのは極めて困難ではないでしょうか。
 提案者は、日本国内ではIR型カジノ数を制限するので過当競争にはならないとしますが、肝腎のアジアのVIP市場におけるIR型カジノ数を日本はコントロールできません。マカオのカジノ収益がVIP収益減少によって最盛期から四割減少したように、アジアのVIP市場が縮小局面に突入している中、韓国のリゾートワールド済州を始め複数のIR型カジノの参入が予定されています。そこに周回遅れの日本が日本にしかないIRの魅力を強調しても、肝腎のカジノは世界中どこでも同じカジノです。米国アトランティックシティーのカジノ産業は、周辺州のカジノ合法化によって最盛期の収益六十五億ドルから一五年には三十五億ドルにほぼ半減し、十二カジノ中五軒が経営破綻に追い込まれていますが、日本も同じ運
命をたどる危険性が高いと考えます。
 提案者は、シンガポールにおけるギャンブル依存症対策の成功を大前提にして、日本でIR型カジノをオープンさせてもギャンブル依存症の発生を最小限に抑制できるとしています。カジノ収益を基にパチン
コ等の既存ギャンブル依存症対策を講じることでギャンブル依存者の総数も減少できるとしています。
 確かに、シンガポールのNCPGの二〇一四年調査によれば、ギャンブル依存症率は、一一年調査時の二・六%から〇・七%に大きく低下しています。しかし、データを子細に見れば、カジノ参加率が七%から二%に大きく減少しています。住民数に置き換えると、二十六・五万人から七・七万人への減少となります。一方で、自己排除制度でカジノ入場禁止措置を講じた人数は三十二万人へと大きく増大しています。入場回数を基準にした規制を行っているとも仄聞しております。実際、カジノの入場料収入も大きく減
少しています。
 NCPGは、ギャンブルは決して豊かにしてくれない、莫大な借金だけが残るだけだといった啓蒙ビデ
オの制作など、ギャンブルの危険性を徹底的に教育する活動も行っています。シンガポールギャンブル依存症対策は市民にカジノをさせない政策であり、市民がカジノに行かなくなったから依存症率が低下しているのではないでしょうか。
 さらに、上記調査の回答率が大きく減少しており、隠す病気と言われるギャンブル依存者が回答していない可能性も考えられます。ギャンブル依存症は時間を掛けて顕在化してくるとされており、二〇一〇年
オープンのカジノの負の影響を現時点で評価するのは早過ぎます。
 それでも、自己破産数が二〇一一年の五千二百三十二件から一四年には七千八百九十一件へ、そして犯罪件数も二〇一三年以降増加傾向に転じ、とりわけ詐欺、横領、コマーシャルクライムが二〇一二年の三千五百七件から一五年には八千三百二十九件に異常な増大を示しています。現に、NCPG自身が現時点で成功したと結論できないこと、カジノに通う十名のうち四名が依存症になる可能性があると言われてい
ると、常習者における依存症の危険性を述べていることは重要です。
 米国の一九九九年と二〇一三年のギャンブル依存症率の比較を行ったウェルテ等による研究によれば、責任あるギャンブルに基づく様々な取組にもかかわらず依存症率は減少していません。カジノに通いやすい環境にある住民の依存症率が高いことも改めて確認されています。カジノのギャンブルが他の既存のギャンブルよりも依存症率を誘発する危険性が高いことが明らかにされており、カジノ収益でギャンブル依
存症対策を取れば問題ないという姿勢は、日本のギャンブル依存症問題を一層深刻化させると考えます。
 提案者は、IRの中でカジノの占める面積はほんの一部でしかなく、あくまで家族みんなが楽しめる統合型リゾートであると言います。しかし、それは家族ぐるみでギャンブルに誘引する仕組みとも言えます。例えばラスベガスでは、ギャンブル目的の初訪問客は一%ですが、リピーターでは一二%に増大します。平均三泊四日の滞在中に七三%がギャンブルを経験することで、より多くの客がギャンブル常習者への道をたどることになります。IR型カジノは、家族ぐるみで来訪させ、お父さんもお母さんもギャンブル
を経験させることで、ギャンブル依存症になる可能性を国民全体に広げる施設だと考えます。
 しかも、シンガポールのIRで収益の八割をカジノ収益が占めるように、巨額投資の回収と他部門の赤字の補填を行いつつ二〇%以上とも言われる高い投資収益率を実現するために、毎年数千億円のカジノ収益実現が求められる収益エンジンとしてのカジノなのです。シンガポール政府は市民のカジノ参加率を二%に減少させましたが、大阪の夢洲構想では八二%が国内客とされるように、国内収益中心のIR型カジノではシンガポール型規制は不可能であり、逆に国民全体をギャンブル漬けにしていく極めて強い経済的
衝動を持つカジノというのがIR型カジノの本質だと考えます。
 外国観光客、とりわけ中国富裕層が獲得できず、国内客比率が高まるほど、国内における購買力の移転でしかなくなり、日本経済におけるマクロ的プラスは期待できません。ましてや、二〇一二年以来百四十八億ドルを株主に利益還元したと誇るラスベガス・サンズ等の外資がIR型カジノの運営を担った場合は、漏出効果、利益流出でマクロ経済的にもマイナスとなります。その上、ギャンブルで所得や貯蓄を失うことによる経済的困難者の増大等を通じた貧困格差を一層促進することになります。また、周辺地域のマネーがIRに吸い込まれることで、地域間の経済的格差や地域経済社会の破壊が進んでいくことになりま
す。
 IR型カジノの本質は、ギャンブル収益による他部門の赤字補填に見るように、コンプと呼ばれる価格
サービスを行う点にあります。ギャンブル収益のない既存の商店街やレストラン、ホテルなどは、不平等な競争を強いられ、淘汰されていく危険性が高まります。犯罪誘発などの社会的被害が地域社会に負わされていく危険性も高まっていきます。
 さらに、高齢者がギャンブルを通じて老後の生活資金を失う危険性が高まります。米国では、カジノ収益の六割前後がギャンブル依存症者によると言われるように、客を依存症状態に誘導することで高収益を上げるカジノビジネスにおいて、賭けに負けたあなたが悪いという自己責任論で片付けることは許されま
せん。IR型カジノは、通常のカジノよりも地域経済を破壊する危険性の高い施設と考えます。
 かつてチュニカの奇跡と呼ばれたミシシッピ州のチュニカも、地元カジノの破綻でチュニカの奇跡は終
わったとされています。アトランティックシティーも衰退が進んでいます。米国アトランティック誌、二〇一四年八月七日付けですが、地域経済を破綻させるいい方法、それはカジノを造ることと表現したような事例が顕在化しています。巨額投資のみが先行し、期待される収益が実現しないことで経営破綻に追い込まれたリゾート開発の繰り返しになる危険性が高いと考えます。国際観光数等も、IRなしでもシンガポール以上に増大しています。IR型カジノに刑法の賭博罪の罪を阻却する公益性があるとは思えません
 本法案では、シンガポールのNCPGのようなギャンブル依存症対策の専門機関設置を義務付ける条文がありません。また、カジノ設置の経済的効果のみならず社会的コストの調査や、最終的には住民投票などで受入れ地域の意思を尊重させる条文もありません。基本法と実施法を分離することで重要な欠陥を先送りすることは、国会の国民の未来に対する責任放棄であると訴えて、私の意見を終わらせていただきま
す。
 ありがとうございました。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判

2016年12月13日
カジノ解禁推進法案の廃案を求める大阪弁護士会・会長声明(2016年12月12日)のご紹介~付・2014年10月の和歌山弁護士会・会長声明
2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
「カジノで観光・まちづくり!?ちょっと、おかしいんとちゃうか!緊急トーク集会」3/13@プラザホープのご案内と4月・5月の「予告編」

カジノあかん大阪集会チラシ