2018年1月28日配信(予定)のメルマガ金原.No.3061を転載します。
昨日のブログで、大阪弁護士会が3月10日(土)に開催するシンポジウム「3.11福島第一原発事故 被害者救済の現状と課題」を紹介するにあたり、シンポで基調講演をされる除本理史(よけもと・まさふみ)さん(大阪市立大学大学院経営学研究科教授)の、インターネットで簡単にアクセスできる講演動画や論文も一緒にご紹介しようと思い立って情報を集め始めたのですが、それだけで、メインのシンポジウム紹介部分と同じくらいの分量になりそうだったので、シンポ紹介記事の「付録」として紹介することは断念し、本日の記事として独立させることにしました。
従って、この記事は、昨日のブログ「あれから7年 被害者救済の現在とこれから~大阪弁護士会シンポジウム「3.11福島第一原発事故 被害者救済の現状と課題」のご紹介(2018年3月10日)」と一体として読んでいただければ幸いです。
ところで、除本先生が、前任校の東京経済大学から大阪市立大学に転じられたのが2011年度から。ということは、関東から関西への転居準備のまっただ中で3.11福島第一原発事故に遭遇したということになるわけで、たしかしばらくの間、大島堅一先生(当時立命館大学国際関係学部教授/現龍谷大学政策学部教授)のところに避難されていたとか。だから、という訳ではなく、その後の福島原発事故による被害の救済と復興にかかわる除本先生の調査研究の成果にはめざましいものがあります。
今回、大阪弁護士会のシンポジウムをブログで紹介するにあたり、除本先生が本務校である大阪市立大学商学部、大学院経営学研究科の(だと思うのですが)紀要「経営研究」に発表された論文をご紹介しようと思い、除本先生の大阪市大への着任以降に発行された「経営研究」のバックナンバーを同大学のホームページで調べてみたところ、第62巻第4号(2012年2月)から最新の第68巻第3号(2017年11月)まで、全部で12編の論文(内共著論文4編)が掲載されていました。
私は大学研究者の世界には全くの門外漢なのでよく分かりませんが、除本先生の紀要論文執筆ペースは、控え目に言っても相当に精力的ではないでしょうか。
除本先生からは、私も代理人として関わっている原発賠償関西訴訟に対して様々な助言や情報提供をいただいており、法的構成の検討や準備書面の起案などは、全て大阪弁護士会などの弁護団中心メンバーに任せきっている私としても、かねがね、除本先生の研究成果の一端になりと触れなければと思っていましたので、大阪弁護士会のシンポジウム「3.11福島第一原発事故 被害者救済の現状と課題」で基調講演されるのを良い機会として、ブログに先生の講演動画や論文などをまとめておこうと思い立った次第です。
もちろん、講演動画にしても、網羅的に紹介している訳ではありませんし、論文にしても、本務校の紀要論文以外は、インターネット検索で目に付いたものを5編挙げただけの不十分なものです。
さらに詳細に除本先生の業績を調べたいと思ったら、とりあえず、日本学術振興会が運営する「KAKEN」サイトの「除本理史」の頁を開いた上で、その中の「研究成果」をクリックし(118件掲載されています)、[図書]、[雑誌論文]、[学会発表]のそれぞれの書誌情報(タイトル名をクリックしたら出てきます)を調べ、読みたい本や論文が見つかれば、図書館であたってみるという方法をお勧めします。
ちなみに、紀要「経営研究」発表論文のリストまで作ろうと思い立ったのは、私が大阪市立大学の出身(法学部ですが)であることも、少しは影響しているかもしれません。
それでは、除本理史先生の、インターネットで視聴できる講演動画と、同じくネットで読める論文をご紹介します。ご活用いただければ幸いです。
【参考動画1】
IWJ:「自分が国を相手に裁判をするなど、考えたこともなかった」原発避難者講演会 第2弾 森松明希子氏 2013.12.19
【参考動画2】
除本理史先生ご自身による最近の講演動画としては、2017年4月19日、原発・エネルギー・地域経済研究会主催によるNER原発カフェで行った講演「福島の事故賠償と復興の課題 公害の教訓を踏まえて」が充実しています。もっとも、動画が6本に別れているのはやや煩わしいというべきか、それとも、内容的なまとまりごとに分割されているので、視聴しやすいというべきか(音声レベルはやや低いです)。
除本理史さん講演①被害者への賠償・支援を打ち切る政府(11分56秒)
除本理史さん講演②避難指示解除区域の問題(11分13秒)
除本理史さん講演③東電の負担は軽減、住民補償は国費で(16分08秒)
除本理史さん講演④公害から福島を考える(西淀川区の例)(19分41秒)
除本理史さん講演⑤水俣は分断をどう乗りこえたか(6分16秒)
【参考論文1】
除本先生が、本務校の大阪市立大学が発行する紀要や、その他の様々な雑誌に発表した論文のうち、いくつかはインターネットで読むことができます。
大阪市立大学「経営研究」第62巻第4号 2012年2月
「福島原発事故による被害構造-避難対象区域等の諸類型に留意して-」(土井妙子氏との共著論文)
大阪市立大学「経営研究」第63巻第2号 2012年8月
大阪市立大学「経営研究」第63巻第3号 2012年11月
大阪市立大学「経営研究」第64巻第3号 2013年11月
「福島原発事故における絶対的損失と被害補償・回復の課題 -「ふるさとの喪失」と不動産賠償を中心に-」
大阪市立大学「経営研究」第65巻第1号 2014年5月
「原子力損害賠償紛争審査会の指針で取り残された被害は何か-避難者・滞在者の慰謝料に関する一考察-」
大阪市立大学「経営研究」第65巻第1号 2014年8月
「福島原発事故のコストと国民・電力消費者への負担転嫁の拡大」(大島堅一氏との共著論文)
大阪市立大学「経営研究」第65巻第1号 2014年11月
「電力システム改革と原子力事業救済策-事業環境整備論に関する検討-」(大島堅一氏との共著論文)
大阪市立大学「経営研究」第66巻第2号 2015年8月
「原発事故被害の包括的把握と福島復興政策-「不均等な復興」と被害者の「分断」をめぐって-」
大阪市立大学「経営研究」第66巻第3号 2015年11月
「公害被害地域の再生に関する一試論-水俣「もやい直し」再考-」
大阪市立大学「経営研究」第66巻第4号 2016年2月
「原発事故賠償と福島復興政策の5年間を振り返る-避難者に対する住まいの保障に着目して-」
大阪市立大学「経営研究」第67巻第1号 2016年5月
「福島原発事故による商工業等の営業損害の継続性と広範性-賠償「終期」に関する一考察-」
大阪市立大学「経営研究」第68巻第3号 2017年11月
【参考論文2】
以下には、本務校の紀要論文以外で目に付いた論考・論文を掲げます。
北海道大学「経済学研究」第63巻第2号 2014年1月
「戦後日本の公害問題と福島原発事故」
SYNODOS(シノドス) 2014年2月19日
「原発事故による「ふるさとの喪失」は償えるのか」
法政大学「サステイナビリティ研究」Vol.5 2015年15日
「原発賠償の問題点と分断の拡大-復興の不均等性をめぐる一考察-」(19~36頁)
一橋大学「一橋経済学」第11巻第1号 2017年7月31日
「福島原発事故における被害の包括的把握と補償問題-社会的費用論の視角から-」
WEB版「建築討論」(日本建築学会建築討論委員会)14号 2017年冬
【参考文献】
除本先生の著書は、共著、共編著も含めれば相当な数にのぼりますが、ここでは、単著に限定してご紹介します(出版元の紹介文を引用しておきます)。
『環境被害の責任と費用負担』
有斐閣/2007年12月刊/3300円+税
「環境被害への事後的対策(被害補償や原状回復など)をめぐり,包括的・根源的な理論検討を行い,経済学的視点から,望ましい責任と費用負担の考え方を提示する。東京大気汚染訴訟の和解など代表的事例を組み入れ,理論と実証を統合し,環境責任の原理を探究。」
『原発賠償を問う-曖昧な責任、翻弄される避難者 』
岩波ブックレット/2013年3月刊/500円+税
「福島原発事故を引き起こした東京電力はなぜ破産しないのか.国策として原発を推進してきた政府の責任とは.故郷や仕事を奪われ,苦悩する避難者たちの実態を追いながら,現在進められている賠償の仕組み,その問題点をわかりやすく解説.水俣問題など,過去の公害事件の教訓を生かし,あるべき補償のかたちを具体的に提言する.」
『公害から福島を考える-地域の再生をめざして』
岩波書店/2016年4月刊/2600円+税