再掲「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」~安保法制をめぐる3年前の国会論戦を振り返る
2018年8月24日配信(予定)のメルマガ金原No.3249を転載します。
先の通常国会(第196回国会・常会)の事実上の最終日(2018年7月20日・金曜日)、衆議院本会議で行われた枝野幸男立憲民主党代表による安倍内閣不信任決議案の趣旨を説明する2時間43分に及ぶ演説を、衆議院会議録をもとに、7回に分載してご紹介したところですが、このような「国会可視化」の試みを、私のブログで、3年前にもやっていたことを思い出しました。
それが、2015年5月27日・28日の両日、衆議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、首相以下の閣僚を追及した志位和夫日本共産党委員長の質疑に感銘を受けて始めた「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」シリーズでした。
この時は、単に質疑をご紹介するだけではなく、私の拙い注釈や意見を付け加えていたところがミソです。既に成立してしまった安保法制ですが、何が問題なのかをしっかりと認識するために、今でも十分に振り返る価値のある質疑だったと思います。
ということで、以下に連載の全部にリンクしておきます。お時間のある時にでもお読みいただければ幸いです。
「質疑を読み解く」シリーズは全6回の連載となりました。
その中身は、当時、まだ公式の会議録は公開されていませんでしたので、しんぶん赤旗WEBサイトに掲載された文字起こし(会議録公表前に関係者に届けられる速記録の未定稿が基になっているのかもしれません)をテキストとして引用しつつ、必要な補注を私が書き足すというスタイルで書いていきました。連載の(1)~(3)が5月27日の、(4)~(6)が5月28日の質疑です。
この歴史に残る質疑を振り返るため、2015年5月27日・28日の衆議院平和安全法制特別委員会における「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」(1)~(6)を、「動画」、「しんぶん赤旗(文字起こし)」と共にリンクしてご紹介します。
併せて、この連載をスタートさせるきっかけとなった「国会論戦はこうありたい~志位和夫日本共産党委員長による安倍首相追及を多くの人に視聴して欲しい」という、2015年5月28日に書いた私のブログにもリンクしておきます。
これは、同年5月20日の党首討論、5月26日の衆議院本会議での代表質問、そして、5月27日、28日の衆議院特別委員会における質疑という、志位和夫委員長が連続登壇して安倍首相を追い詰める動画に感銘を受け、是非多くの方に視聴して欲しいと思って書いたもので、当時、私のブログにしては驚異的な数千というアクセスを記録しました。
2018年5月28日
2015年5月27日 衆議院 安保法制(平和安全)特別委員会 動画(57分)
しんぶん赤旗 2015年5月30日
衆院特別委 志位委員長の質問〈上〉
2015年6月1日
2015年6月2日
2015年6月3日
2015年5月28日 衆議院 安保法制(平和安全)特別委員会 動画(57分)
しんぶん赤旗 2015年5月31日
米国の戦争にノーといえない政府 侵略国の仲間入りは許されない
衆院特別委 志位委員長の質問〈下〉
2015年6月4日
2015年6月5日
2015年6月6日
私が、なぜこれほどの手間暇をかけて、志位和夫日本共産党委員長による質疑を多くの方に読んで欲しいと考えたかについては、連載の最終回(6)にまとめておきました。既に安保法制が成立してしまった現在読み返してみると、「いまさら」というところはあるのですが、間もなく安保法制成立から丸3年(9月19日)を迎え、さらに、その違憲の安保法制を違憲でなくそうとする「安倍9条改憲」が目前に迫っている今、これらの質疑が、あらためて安保法制の何が問題なのか、どこが憲法違反なのかについて再認識するための恰好の資料であると確信しますので、ご紹介することとしたものです。
(引用開始)
昨年7月1日の閣議決定(国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)や今次の戦争法案(政府は「平和安全法制整備法」及び「国際平和支援法」と呼称)について、それがいかに憲法に違反するとんでもないものであるかを訴えても(それ自体はとても大事なことですが)、なかなか多くの国民にその訴えが届いているという手応えが得られない、という焦燥感を抱いていたのは私だけではないと思います。
そのような中で行われた志位委員長による特別委員会質疑は、重要な歴史的資料の収集を含めた周到な事前準備、限られた時間を有効に使うための論点の絞り込み、まともに質問に答えないであろう首相らの答弁内容を予測し切った上での質問の組み立て、常に冷静さと礼節を失わない毅然とした態度などが渾然一体となって、戦争法案の問題点をえぐり出すことに成功したもので、普段、国会論戦を熱心にフォローなどしていない、また、共産党の支持者という訳でもない多くの人々に、まさにこれが真の「国民の代表」に期待される国会論戦というものだ、という確信と感動を与えたのだろうと思います。
とりわけ、私が重要だと考えたのは論点の絞り込みです。
実は、2日間にわたって志位委員長が追及した論点は、そう多くはありません。
5月27日には、周辺事態法(あらため重要影響事態法)と国際平和支援法の2つの法案について、周辺事態法における「我が国周辺の地域」や個別の特措法での活動地域の限定を取り払い(世界中どこへでも)、「非戦闘地域」という要件を外してしまい、活動範囲も拡げられた後方支援(協力支援)という名の危険な兵站業務に自衛隊を従事させるという内容であることを明らかにしました(ここまでが連載の(1)~(3))。
そして28日には、まずPKO協力法改定法案によって、国連が統括しない国際連携平和安全活動なるものに参加できることとし、さらに、(PKOも含めて)「監視、駐留、巡回、検問及び警護」や駆け付け警護など、著しく危険な任務が追加されていることを指摘した上で、アフガニスタンのISAFに派兵して数十人の犠牲者を出したドイツの例を詳細に紹介し、この法案が成立したあかつきに自衛隊員や日本人がどのような事態に直面することになるのかを具体的に明らかにしました(連載(4))。
そして、いよいよ28日の後半で集団的自衛権の問題を追及するのですが、ここでは細かな法律論には立ち入らず、日本が国際連合に加盟して以降、ただの一度も“アメリカの戦争”に反対したことがないという事実を実証的に明らかにした上で(連載(5))、ベトナム戦争とイラク戦争に対する日本政府の対応を取り上げ、「アメリカが行う戦争は、いつでも、どこでも、常に正義だと信じて疑わない。米国政府の発表は、いつでも、どこでも、事実だと信じて疑わない。ねつ造と分かっても説明も求めず、反省もしない。」とだめ押しをし、日本の自衛隊が“米国の戦争”に参戦させられる運命が確実であることを、誰の目にも明らかにして質疑を締めくくります(本日の連載(6))。
どうでしょうか、このように振り返ってみると、志位委員長は、実はそんなに多くの論点について追及しているのではないことがお分かりいただけたでしょう。
私が理解したポイントは以下のように要約できると思います。
(2)さらに、重要影響事態での後方支援、国際平和共同事態での協力支援、国際平和協力法に基づく拡大された業務のいずれにあっても、従来とは比較にならない危険な現場に自衛隊を投入し、自衛隊員に「殺し、殺される」任務を押しつけることになることを具体的に明らかにします。、
(3)最後に、上記の各事態においてもそうですが、とりわけ存立危機事態について、米国からの出兵要請を、日本政府が自立的な判断に基づいて拒否することなど到底想定できず、結果として、自衛隊員を“米国の戦争”の尖兵として差し出すことになることを明らかにします。
もちろん、今次の戦争法案については様々な論点(突っ込みどころと言っても良いでしょう)があり、特別委員会での他の野党議員による質疑にも注目が必要です。
たとえば、岸田文雄外相の答弁が原因で審議が中断するきっかけをとなった後藤祐一議員(民主党)による周辺事態(重要影響事態)と軍事的波及についての質問(5月29日)など、掘り下げていく価値は十分にあると思います(維新の党の柿沢未途幹事長によるtweetまとめが分かりやすくて参考になります)。
とはいえ、「戦争法案」反対への世論の結集のために残された時間は限られています。多くの言葉を費やしても、それに耳を傾けてもらい、さらに理解してもらうことは容易ではありません。
その意味からも、私は、多くの法案(形式上は2つですが)の中から周辺事態法(重要影響事態法)を取り上げたことは正しいと思います。以前にも書きましたが、戦争法案の全貌を一挙に理解しようとするのは無理であり、鍵となる法案をしっかりと理解し、そこから押し及ぼしていくのが理解のための早道です。
そして、上記ポイントの(2)と(3)です。今、最も国民に訴えるべきことは、戦争法案が成立したあかつきに自衛隊員やそれ以外の国民にどういう運命が降りかかるのかについて具体的なイメージを持ってもらうこと、それも単純なキャッチフレーズの連呼によってではなく、事実を踏まえ、あくまで論理的な筋道を通しながら、聞く人の心情に直接訴える、情理を尽くした誰もが納得せざるを得ない議論によって得心してもらうこと、これが最も重要であると思います。
志位委員長による質疑が多くの人の心をゆさぶったのは、戦後の日本に訪れた最大の危機に際し、最も聞きたい議論を聞けたという感動が得られたからでしょう。
私が、6回にわたって「志位和夫日本共産党委員長による質疑を読み解く」を連載することにしたのも、この質疑を1人でも多くの方に、視聴していただきたい、お読みいただきたい、そして、より深く理解していただくための一助にでもなればと思ってのことです。
そして、その副産物として、私自身の戦争法案に対する理解が、この連載に取り組むことによって深まったことは間違いなく、近いうちに行う学習会のための非常に有益な準備となりました。
(引用終わり)