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国立国会図書館・調査及び立法考査局の刊行物から学ぶ

 2019年1月4日配信(予定)のメルマガ金原.No.3382を転載します。
 
国立国会図書館・調査及び立法考査局の刊行物から学ぶ
 
 国立国会図書館は、日本で最も多くの出版物、具体的には、
 
一 図書
二 小冊子
三 逐次刊行物
四 楽譜
五 地図
六 映画フィルム
七 前各号に掲げるもののほか、印刷その他の方法により複製した文書又は図画
八 蓄音機用レコード
九 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつては認識することができない方法により文字、映像、音又はプログラムを記録した物
 
が集積されている図書館です(のはずです)。
 上記「一~九」は、国立国会図書館法24条1項に規定された「出版物」のリストですが、同項において、これらの出版物が、「国の諸機関により又は国の諸機関のため」に発行されたときは、「当該機関は、公用又は外国政府出版物との交換その他の国際的交換の用に供するために、館長の定めるところにより、三十部以下の部数を直ちに国立国会図書館に納入しなければならない。」と定められており、このことは、独立行政法人国立大学法人特殊法人地方公共団体、港務局、地方住宅供給公社地方道路公社土地開発公社地方独立行政法人等(地方機関の納入冊数は少なくなりますが)にも適用されますし、それ以外の者が「第二十四条第一項に規定する出版物を発行したときは、前二条の規定に該当する場合を除いて、文化財の蓄積及びその利用に資するため、発行の日から三十日以内に、最良版の完全なもの一部を国立国会図書館に納入しなければならない。」(同法25条1項)と定められているからです。
 実際、私も亡母の法事に際し、まことにささやかな句集を印刷して、親戚・知人に貰っていただいたのですが、その際、忘れずに1冊国立国会図書館に送ったのは、上記献本制度についての知識があったからです。
 ですから、「国立国会図書館サーチ」で検索すると、「雀の庭:金原壽美子句集」(2003年12月出版/非売品/55頁/肖像あり)のデータにお目にかかることができます。
 皆さんも、自費出版されることがありましたら、忘れずに国立国会図書館に1冊(美本を)送りましょうね。
 
 余談ながら、私が国立国会図書館に「図書」を送ったことがもう一度ありました。それは、2006年6月に発行した「平和のうちに生きるために:憲法9条を守る和歌山弁護士の会創立1周年記念誌」であり、当時、私は同会の事務局長でしたので、忘れず献本したのでした。
 
 実は、今日は、国立国会図書館に置かれた「調査及び立法考査局」(国立国会図書館法 第六章)が発行する刊行物をご紹介しようと思って書き始めたのですが、つい献本制度についての説明と思い出に時間をとられ、本論は走り書きで終わらざるを得なくなりました(私のブログではよくあることです)。
 
 同図書館・調査及び立法考査局は、「一 要求に応じ、両議院の委員会に懸案中の法案又は内閣から国会に送付せられた案件を、分析又は評価して、両議院の委員会に進言し補佐するとともに、妥当な決定のための根拠を提供して援助すること。」「二 要求に応じ、又は要求を予測して自発的に、立法資料又はその関連資料の蒐集、分類、分析、飜訳、索引、摘録、編集、報告及びその他の準備をし、その資料の選択又は提出には党派的、官僚的偏見に捉われることなく、両議院、委員会及び議員に役立ち得る資料を提供すること。」「三 立法の準備に際し、両議院、委員会及び議員を補佐して、議案起草の奉仕を提供すること。但し、この補佐は委員会又は議員の要求ある場合に限つて提供され、調査及び立法考査局職員はいかなる場合にも立法の発議又は督促をしてはならない。」(同法15条)とされ、以下のような刊行物を発行(多くはWEBサイトでも公開)しています。
 
調査と情報-Issue Brief-:時々の国政上の課題に関する簡潔な解説シリーズです。ひとつの号にひとつのテーマを取り上げ、原則として10ページ以内にまとめています。
 
レファレンス:各分野の国政課題の分析、内外の制度の紹介、国政課題の歴史的考察等、国政の中長期的課題に関する本格的な論説を掲載した月刊の調査論文集です。
 
外国の立法:外国の法令の翻訳紹介、制定経緯の解説、外国の立法情報を収録しています。法案の立案や審議に際し、主要国の立法例を参照したいとの要望に応えています。諸外国の立法動向の解説、関係法令の翻訳等を内容とする季刊版と、諸外国の立法動向を簡潔にまとめた月刊版(平成20(2008)年4月以降)があります。
 
調査資料:特定のテーマに関する調査報告・資料集です。
 
 これらの目次を眺めるだけでも、「読んでみたい」と思う論文が目白押しですが、とてもそれらを全部読んでいるだけの時間を作れそうもないのが残念です。
 例えば、「外国の立法 No.278」(2018年12月:季刊版)に掲載された「【アメリカ】アメリカの2017年女性、平和及び安全保障法」って何だろう?と思いませんか?
 ざっと、要旨を読んでみると、2000年10月31日に国連・安全保障理事会が採択した「女性・平和・安全保障に関する安全保障理事会決議第1325号」を具体化するための法律ということでした。
 法律の全文翻訳も掲載されていますが、概要を引用してみましょう。
 
(引用開始)
 全9条からなる同法の概要は、次のとおりである。
(1)認定(第2条)
 世界中で、紛争予防や解決、紛争後の平和構築において、女性が過少代表にとどまっていることや、その一方で、女性がこれまでこれらの分野で顕著な成功を収めてきたこと等を、連邦議会として認定した。
(2)連邦議会の意思(第3条)
 紛争予防や解決への女性の意義ある参加は、より包括的で、民主的な社会の促進に役立ち、国や地域の長期的な安定に決定的に重要であること、また、合衆国が紛争予防等の取組において、女性の意義ある参加を促進する世界的なリーダーでなければならないことは、連邦議会の意思であるとした。
(3)政策の表明(第4条)
 具体的に列挙された各種の外交的努力やプログラムにより強化される海外における紛争の予防、管理や解決、紛争後の支援及び復興の取組のあらゆる側面への女性の意義ある参加を促進することが、合衆国の政策であるとした。
(4)戦略(第5条)
 この法律が制定されてから1年以内に、またその4年後に、大統領は、第4条で表明された政策目的をどのように実現してゆくのかを記述した、「女性、平和及び安全保障戦略」を策定し、連邦議会に提出しなければならないとし、この戦略に盛り込む内容が詳細に規定された。
 また、大統領が、平和構築等に関わる女性に対して、技術的支援や研修等を実施するべきことや、必要に応じてジェンダー分析を適用すること等が、連邦議会の意思として表明された。
(5)研修(第6条)
 国務長官、合衆国国際開発庁長官及び国防長官が、紛争予防及び平和構築への女性の参加に関する研修を関係する要員に確実に受けさせなければならないことと、研修の分野が規定された。
(6)協議及び協力(第7条)
 国務長官と合衆国国際開発庁長官が、安全保障及び平和構築の分野への女性の参加について、海外にいる合衆国の要員が適切な関係者と協議するようガイドラインを策定するか、あるいは、他の手段を講じることができるとした。 
 また、国際的な平和維持活動において、女性の意義ある参加を促進するために、国務長官は、国際組織や国、地方の組織と協力しなければならないとした。
(7)連邦議会への報告(第8条)
 第5条に規定する戦略の提出後2年以内に、大統領は、同戦略の実施の概要等に関する報告書を連邦議会に提出しなければならないとした。
(引用終わり)
 
 この法律は、トランプ政権になってから成立したものですが、本論文の末尾「おわりに」で筆者(廣瀬淳子氏、原田久義氏)が以下のように述べていることに注意すべきでしょう。
 
(引用開始)
 1989年から2011年にかけて行われた和平交渉において、女性が参加した場合に、和平合意が2年持続する確率が20% 増加し、更に15年持続する確率が35% 増加するという分析結果がある。一方、1992年から2011年にかけて行われた和平交渉において、女性が交渉責任者であった割合は2%、交渉者であった割合は9% にすぎない。
 こうした状況を改善するため、アメリカの果たす役割は大きい。2017年法が成立したことにより、これまでの行政命令を根拠とする取組よりは、政権が交代したとしても政策変更がされにくくなることが予想される。また、大統領や政府の戦略策定等が法定されたことから、女性の参加が実質的に促進され、世界の安全保障の推進に貢献することも期待されている。
 一方、2017年5月に連邦議会へ提出した予算において、トランプ(Donald Trump)政権が女性、平和及び安全保障に係る予算を半額以下に削減したことから、法の実効性を確保するための適正な予算措置を課題として指摘する報道もなされている。
(引用終わり)
 
 私は、巻末リストのとおり、これまで月刊「レファレンス」に掲載される論文ついては、特に安全保障法制との関連で注目してきたのですが、その他の刊行物について、あまり注目していませんでした(そこまでの余裕がなかった)。
 けれども、これらの研究成果は、国会議員やそのスタッフのためだけに提供されている訳ではありません。広く国民全体の共有知とするためにWEBサイトで公開されているのですから、活用しなければ勿体ないですよね。
 ということで、今日のところは、自らを戒める備忘録として書き留めました。
 
 それにしても、調査資料の冒頭に掲載されている「EUにおける外国人労働者をめぐる現状と課題―ドイツを中心に―平成29年度国際政策セミナー報告書」(2018年2月23日に行われたセミナーの記録)は興味深い内容のようです。パネリストとして、広渡清吾先生(東京大学名誉教授)も参加されていますし。
 外国人労働者を受け入れるというのであれば、「ドイツに学ぶ」ということは必須の手順ですものね。
 
 皆さんも、以上の刊行物のインデックスを折りに触れて閲覧され、関心を持たれる分野についての最新の研究成果を学んでみませんか。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「レファレンス」関連)
2013年11月28日
「レファレンス」掲載論文で学ぶ「集団的自衛権 政府公権解釈の変遷」
2014年4月27日
集団的自衛権の行使事例を学ぼう(「レファレンス」掲載論文から)
2015年9月10日
月刊レファレンス(2015年3月号)の小特集「集団的自衛権」掲載論文4点のご紹介
2016年8月5日
月刊レファレンス(2016年4月号)の小特集「新安保法制の今後の課題」掲載論文のご紹介
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む