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少年法適用年齢の18歳への引き下げに反対する日本弁護士連合会の意見書、パンフレットのご紹介

 2019年1月11日配信(予定)のメルマガ金原.No.3389を転載します。
 
少年法適用年齢の18歳への引き下げに反対する日本弁護士連合会の意見書、パンフレットのご紹介
 
 日本弁護士連合会は、弁護士法第1条(弁護士の使命)に基づき、様々な課題についての研究、実践、提言等を行っていますが、とりわけ重点的に取り組んでいる課題については、WEBサイトのトップページに目立つバナーを設け、特設コーナーに誘導するようにしており、その6つある「日弁連が取り組む重要課題」のうちの1つが、「少年法適用年齢の引き下げに反対します」です。
 
 この「少年法の適用年齢引き下げ(20歳→18歳)には反対です!」コーナーでは、日弁連が発表した意見書や会長声明にリンクしている他、一般市民向けに作成したパンフレットのPDF版にもリンクされ、誰でもダウンロードできるようになっています。
 
 同じ日弁連WEBサイトの特設コーナーでも、これまでたびたびご紹介してきた「憲法を考える」などとは異なり、
少年法適用年齢を20歳から18歳に引き下げることの是非については、いまひとつ、市民の理解を得るのが難しいテーマかもしれません。
 第一、「少年法って何?」「選挙権も18歳からになったし、民法成人年齢もいずれ18歳になるらしいから、別にいいんじゃないの?」という素朴な疑問に、分かりやすい言葉で説得しなければならないのですから、これはなかなか大変です。
 もっとも、司法修習生の給費制復活に比べれば、まだしも主張しやすいかもしれませんが。
 
 なぜ、日弁連をはじめ、全国全ての弁護士会弁護士会連合会が、少年法適用年齢の20歳(現行)から18歳への引き下げに反対しているかについては、巻末に、昨年11月21日付で日弁連が発表した「少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書」を引用しておきますので、是非お読みください。
 ただ、相当な分量となりますので、「意見の理由」の内、
  第1 はじめに
  第2 少年犯罪の動向と現行少年法制に対する評価
     第3 少年法の適用年齢引下げ論の根拠について
  第6 結論
は全文引用し、
  第4 年齢の引下げに伴う刑事政策的懸念と検討されている犯罪者処遇策
  第5 少年法の適用年齢を引き下げた場合に生じる未検討の問題
については、基本的に項目のみご紹介しています。
 
 なお、このような「意見書」を多くの人に読んでいただくことは難しいだろうということで、日弁連では、2種類のパンフレットを発行し、WEBサイトからダウンロードできるようにしています。
 
パンフレット「少年法の適用年齢引下げを語る前に~なぜ私たちは引下げに反対するのか~」(2017年6月改定版)
 
 以上が、主要な論点に目配りし、現場の声も取り入れた全般的な理解を求める内容になっているのに対し、このたび発行された(実は今日1月11日にWEBサイトにアップされたばかりです)新しいパンフレットは、「日弁連が2018年11月6日に開催したシンポジウムで、少年院出身者や少年事件被害者、元家庭裁判所調査官、元少年院長、研究者など様々な方が、それぞれの立場から、少年法適用年齢引下げの問題を語りました。その発言をベースに」作成されたのが以下のパンフレットです。
 
パンフレット「リレートーク 私も少年法適用年齢引下げに反対します」(2019年1月11日)
 
 やはり、長年現場に身を置いた方々のご意見にはとても説得力があると思います。一々引用はしませんが、是非お読みいただければと思います。
 
 引用はしないと書きましたが、これだけはどうしても引用させてください。
 
龍谷大学矯正・保護課程講師、元浪速少年院長 菱田 律子さん
少年法適用年齢の引下げは18歳・19歳の立ち直りのチャンスを奪う
(抜粋引用開始)
 今、少年院は、収容減に直面しています。「はやらない店」はコックさんの腕が鈍る。少年院の場合は教官の処遇力が鈍ることになります。
 少年法適用年齢が引き下げられると、少年院は整理削減され、広域収容が拡大し、保護者との関係改善にも悪影響を及ぼすことになります。ますます「はやらない店」状態になり、何もいいところがありません。危機感をひしひしと感じています。
 少年院を必要とする少年たちのために、これからの日本のために、少年法適用年齢の引下げに反対します。
(引用終わり)
 
 以下の日弁連「意見書」にもあるとおり、少年犯罪は減少しています。あるいは「激減している」と言ってもよいほどです。
 少年院に収容される少年が減少しているということは、審判前の一定期間(原則として4週間以内)少年を収容する少年鑑別所の収容人数も減少しているということです。それは、少年人口の減少のペースをはるかに超えた減少であることを、私たち法曹実務家は実感しています。
 この上、年長少年(18歳・19歳)を少年法の適用対象から外した時にどんな事態を迎えるのか、とても「明るい未来」が開けようとは思えません。
 皆さんも、上記のパンフレットなどをお読みいただき、この問題に関心を持っていただければ幸いです。
 
 それでは、以下に日弁連少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書」をご紹介します。
 
(抜粋引用開始)
       少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書
 
                                              2018年(平成30年)11月21日
                                                                  日本弁護士連合会
 
                              意 見 の 趣 旨
 少年法の適用年齢を18歳未満とした上で,18歳及び19歳の者について,少年法の果たす機能を代替するためのいかなる刑事政策的な配慮をしたとしても,現行少年法制の果たしてきた機能や効果には遠く及ばない。
 改めて,少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する。
                                       
                              意 見 の 理 由
第1 はじめに
 当連合会は,2015年2月20日,公職選挙法の選挙権年齢と民法の成年年齢の引下げが議論される状況を踏まえ,「少年法の『成人』年齢引下げに関する意見書」(以下「2015年意見書」という。)を公表し,仮に民法の成年年齢を18歳に引き下げた場合であっても,少年法2条の「成人」年齢を引き下げることには反対である旨を表明した。
 その後,2017年2月には,法務大臣が法制審議会に対し,「非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方」とともに「少年法における『少年』の年齢を18歳未満とすること」を諮問するに至った。
 これを受け,法制審議会に少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「部会」という。)が設置され,仮に少年法の適用年齢を18歳未満とした場合に採り得る刑事政策的対応を含めた犯罪者処遇策が検討されており,また,それらも踏まえた上で少年法の適用年齢引下げの是非が議論されている。
 さらに,この間,2018年6月には,飲酒・喫煙,公営ギャンブル等に関する各法律については20歳を基準として現行の適用年齢を維持する一方で,民法の成年年齢を18歳に引き下げる内容の民法の一部改正法が,様々な意見がなおある中で成立した(2022年4月施行予定)。
 そこで,当連合会は,このような2015年意見書公表後における状況の進捗を踏まえ,改めて,少年法2条の「成人」及び「少年」の年齢引下げに関して意見を述べるものである。
 
第2 少年犯罪の動向と現行少年法制に対する評価
 まず,少年法の適用年齢引下げについて議論するに当たっては,その前提として,以下のことが確認される必要がある。
1 少年犯罪は増加も凶悪化もしていないこと
 少年法の年齢引下げに関する世論調査によると,反対よりも賛成が多い傾向にあるが,その背景には,「少年非行が増加している。少年犯罪は凶悪化している。」という誤解があると思われる。
 実際には,少年の検挙者数は近年14年連続で減少し,2017年には,1983年のピーク時の13.6%にまで減少(86.4%減)している(少年人口当たりの発生数で比べても2016年においてピーク時の23.9%にまで減少(76.1%減))。また,少年による殺人・強盗・放火・強姦の「凶悪事件」についても,2017年には,1960年のピーク時の3.6%にまで減少(96.4%減)(少年人口比ではピーク時の5.4%にまで減少(94.6%減))している。このように,少年非行は増加しておらず,それどころか重大事案を含め大きく減少しているのであり,このような傾向は18歳,
19歳の少年についても同様である。
2 現行の少年法制は有効に機能していること
 旧少年法(大正11年法律第42号)は,少年の年齢を18歳未満としていたが,1948年に制定された現行少年法(昭和23年法律第168号)は,これを20歳未満に引き上げた。改正法案の国会審議では,政府委員は,20歳くらいまでの者の犯罪の増加と悪質化が顕著であることを指摘した上で,「この程度の年齢の者は,未だ心身の発達が十分でなく環境その他外部的条件の影響を受け易いことを示しているのでありますが,このことは,彼等の犯罪が深い悪性に根ざしたものではなく,従ってこれに対して刑罰を科するよりは,むしろ保護処分によってその教化を図る方が適切である場合の極めて多いことを意味している」と説明している。そして現行少年法により採用された全件送致主義,調査官調査を中核とした審判手続及び少年院教育等の保護処分は,70年にわたり,極めて有効に機能している。上記のような少年犯罪の著しい減少という状況も,現行少年法が有効に機能していることの一つの表れである。
 この点については,法制審議会の部会においても,「今回の議論というのは,現行少年法の下で18歳,19歳の年長少年に対して行われている手続や保護処分が有効に機能していないので,少年法の適用年齢を下げることを検討しようとするものではないのだということについては,意見の一致がある。」「現行法の下での年長少年に対する手続や処遇の有効性という観点からは,少年法の適用年齢を引き下げる必要性はない。」と整理されており,これに対する異論は出ていない。
 つまり,部会における現在の議論も,現行少年法制の機能に問題があるという問題意識によるものではなく,逆に,現行少年法制が有効に機能していることを前提にした上で,その中で適用年齢を18歳未満とすることができるかという問題設定がなされているのである。
 
第3 少年法の適用年齢引下げ論の根拠について
 少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるべきとする立場からは,いくつかの根拠が挙げられている。そこで,それらの根拠について,特に民法の成年年齢引下げとの関係を中心に検討を加えることとする。
1 適用年齢は法律ごとに個別具体的に検討すべきであること
 まず,法律の適用年齢については,それぞれの立法趣旨や目的に照らして,法律ごとに個別具体的に検討すべきである。この点については,政府も,民法の成年年齢引下げに関する国会審議において,「法律で定められている年齢要件は,それぞれの法律の趣旨や立法目的に基づいて定められていることから,その変更の可否を検討するに当たっても,それぞれの法律の立法目的等を考慮する必要がある」との立場を明らかにしている。
 そして,現行少年法は,旧少年法の適用実践とその成果を踏まえ,若年犯罪者については刑罰より保護処分の方が更生にとって適切かつ効果的であるとの立法政策に基づいて,適用年齢を18歳未満から20歳未満に引き上げたものである。それ以来現在に至るまで,現行少年法の運用は現実にその効果を挙げているのであるから,民法の成年年齢が引き下げられても,それに伴って少年法の適用年齢を引き下げるべきではない(2015年意見書)。
2 「国法上の統一」「分かりやすさ」は根拠となり得ないこと
 これに対し,「一般的な法律において『大人』として取り扱われることとなる年齢は,一致する方が国民にとって分かりやす」いとの意見や,「大人と子供の分水嶺を示す各種法令には国法上の統一性が必要である。」との意見があるようである。
 しかし,政府も,法律の適用年齢について,それぞれの法律の趣旨や立法目的等を考慮する必要があるとしているのは,前述したとおりである。
 そして,飲酒に関しては,未成年者飲酒禁止法の趣旨が健康被害防止と非行防止という二点にあり,民法の成年年齢の定めとはその趣旨を異にしていることから,民法の成年年齢と一致させる必要がないとし,さらに,競馬法勝馬投票券購入制限年齢についても,青少年保護の観点から定められたものであるから,やはり民法の成年年齢と一致させる必要がないとしており,その結果,民法の成年年齢は18歳に引き下げられることとなった一方で,飲酒・喫煙,公営ギャンブル等については,20歳以上とする適用年齢が維持されたのである。
 以上からも明らかなとおり,法律で定められている年齢要件は,それぞれの法律の趣旨や立法目的に基づいて定められているべきであって,民法の成年年齢の引下げがなされたからといって,あらゆる法律において「大人」として取り扱われるべき年齢が変わったということはできない。また,実際にも,各種法令における適用年齢は統一されていないのであるから,「国法上の統一」等は少年法について適用年齢を下げる根拠とはなり得ない。
3 「民法上の成年者への保護主義に基づく介入は過剰」とは言えないこと
 また,少年法の保護処分は,少年が類型的に未成熟であって判断能力が不十分であることから,国家が後見的に介入するという保護主義パターナリズム)によって正当化されている側面があるところ,親権に服さず取引に関する行為能力も認められる民法上の「成年者」を,類型的に保護主義に基づく保護処分の対象とすることは過剰な介入である,との意見もある。
 しかし,パターナリズムによる国家の介入が許容される年齢は,一律に決定されるものではなく,その介入の必要性や介入の内容・性質によって異なる。
 上記の飲酒・喫煙・ギャンブルの禁止も,「健康被害防止」「非行誘発の防止」「青少年保護」など,本人の利益を護るという観点からのパターナリズムによる国家の介入であって,民法上の「成年者」に対する介入を許容することとしている。そして,少年法による介入は,身体拘束も含むものであって,その程度は大きいとは言えるが,他方で,未成熟で可塑性の高い少年に対して更生や社会復帰の効果は大きく,当該少年にとって利益になるから,民法上の「成年者」であっても,これを保護処分の対象とすることが「過剰な介入」になるものではない。
 現行法においても,婚姻により「成年者」とみなされる者(民法753条)も,なお少年法の対象とされており,また,審判時に20歳未満であれば,その後民法の成年年齢に達してもなお少年院での収容を継続できるが(少年院法137条~139条,更生保護法66条,68条,71条,72条),これらについて「過剰な介入」であるとの批判は見受けられない。
 また,「親権」は,民法上,親の子どもに対する権利ではなく,むしろ親の社会的責務や親の配慮と整理されており,国家が保護主義によって後見的に介入し得る期間が親権の対象となる期間と一致しなければならない理由もない。
 さらに,現実に保護処分の対象となる者は,18歳・19歳の者全てではなく,資質上のハンディキャップや厳しい生育環境の中で親や周囲からの適切な教育・援助が受けられなかったことから非行に至った者がほとんどである。すなわち,少年法が実際に適用されるのは,20歳未満の者の中で成長発達のために特別の支援が必要とされる者なのであるから,少年法による国の介入の根拠を民法上の未成年であることと直結させることは相当でない。
4 「各制約の根拠は,未成熟・判断能力不十分で共通であり,整合性をはかるべき」とも言えないこと
 さらには,各法律の制度の根拠に共通する部分があるのであれば整合性が図られるべきであり,少年法民法は,共に本人が未成熟であって判断能力が不十分であることに鑑み,本人のためにその自由を制約するものであるから,民法上成年として扱われ,そのような保護の対象とならない18歳・19歳の者について,少年法上類型的に少年と扱って国家が後見的に介入することは整合的でない,との意見もあるが,以下に述べるとおり相当ではない。
 まず,今回の民法の成年年齢引下げの国会審議においても,「18歳・19歳の若年者が大人として完成されたことを意味するのではなく,いまだ成長の過程にある」などとされており,18歳・19歳の者は未成熟であるという認識が共有されていることが重要である。
 今回の民法の成年年齢引下げは,その認識を前提にしつつ,主として経済取引に着目した社会的,経済的成熟度を基準にすべきとの立場に立ってされたものであり,さらに踏み込んで,18歳の者の中の自立心を持ち経済活動に意欲を有する者に対して積極的な社会参加を促し,社会の活性化を図るという目的が挙げられる場合もある。
 他方,少年法は,18歳・19歳になっても生育環境や資質上のハンディキャップを抱えて非行を犯した者に対し,国が教育・指導を施して社会人として行動できるようにすることを目的としているのであり,今回の民法の成年年齢引下げとは,その目的及び想定する場面を異にしている。
 以上のとおり,民法少年法とは,そもそも適用年齢を検討すべき視点が全く異質なのであり,制度の根拠が共通していると評価することもできない。むしろ,少年法の適用年齢は,「非行防止」を目的とする未成年飲酒禁止法や,「青少年保護」の観点から定められた競馬法勝馬投票券購入制限年齢と趣旨・目的が共通しており,20歳を維持すべきである。
 
第4 年齢の引下げに伴う刑事政策的懸念と検討されている犯罪者処遇策
 次に,少年法の適用年齢引下げに伴って生じると懸念されている問題とその対応策について検討を加える。
 この点,少年法の適用年齢を18歳未満にすべきとする立場からも,罪を犯した者の社会復帰や再犯防止といった刑事政策的観点からは,現行少年法の保護処分が果たしている機能には大きなものがあり,年齢引下げに伴い,18歳・19歳の者が従来の保護処分による働き掛けや,その前提となる家庭裁判所における調査を受けられないことになれば,改善更生・再犯防止という観点から問題が生じる,との懸念が示されている。単なる年齢引下げだけでは18歳・19歳の者の改善更生や社会復帰に問題が生じるという懸念については,年齢引下げに賛成・反対いずれの立場においても共通の認識となっていると言ってよい。
 このような刑事政策的懸念を受け,部会では,まず,仮に少年法の年齢を引き下げた場合に採り得る措置を含めた犯罪者処遇策を検討し,その上で少年法の年齢引下げの是非について議論する,との進行予定の下で審議が進められている。
 そして,部会内に設置された3つの分科会において検討された犯罪者処遇策の結果が2018年7月の部会第8回会議で報告され,以降,部会において議論が重ねられている。
 そこで以下,部会で議論されている犯罪者処遇策について検討する。
1 検討されている犯罪者処遇策の概要
 部会では,18歳・19歳の者を少年法の対象から外して「成人」として扱う場合には,現在20歳以上に適用されている刑事訴訟法が18歳・19歳に適用されることを前提として,①自由刑のいわゆる実刑,②自由刑の執行猶予,③罰金刑,④起訴猶予,などの各場面でどのような「処遇」を行うことが可能か,が検討されている。
2 公訴が提起され刑事裁判手続で処遇が決せられる場合の問題点
(1) 刑事裁判手続全般における問題-家庭裁判所調査官による調査の欠如
ア 想定される問題状況
イ 検討されている対応策について
(2) 比較的重い罪を犯した18歳・19歳の処遇に関する問題
ア 収容される場合でも少年院ではなく刑務所に収容されてしまうこと
(ア) 想定される問題状況
(イ) 検討されている対応策について
(ウ) 小括
イ 刑の全部執行猶予となる場合の問題
(ア) 想定される問題状況
(イ) 検討されている対応策について
(ウ) 小括
(3) 比較的軽微な罪を犯した18歳・19歳の者が罰金刑となる場合の問題点
ア 想定される問題状況
イ 検討されている対応策について
ウ 小括
3 起訴猶予となる場合の問題点
(1) 想定される問題状況
(2) 検討されている対応策について
ア 検察官による「起訴猶予に伴う再犯防止措置」
イ「若年者に対する新たな処分」
(ア) 処分の位置付けと概要
(イ) 審判手続・調査の実効性
(ウ) 他の成人との公平性の問題
(エ) 検察審査会制度との関係
4 まとめ
 以上のとおり,現在検討されている犯罪者処遇策でも,少年法の適用年齢引下げに伴う問題点は解消されない。
 そもそも,18歳・19歳の者を保護主義の対象外とし,行為責任主義の下で扱うとしながら,保護主義に基づく現行少年法と同様に有効性ある刑事政策的措置を講じようとすること自体に矛盾・無理があるというべきであり,理論的に整合する範囲で実効性ある制度設計は不可能と言うほかない。
 既に述べたとおり,現行少年法は極めて有効に機能しているのであるから,その実効性を損なうような適用年齢の引下げを行うべきではない。
 
第5 少年法の適用年齢を引き下げた場合に生じる未検討の問題
 他にも,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合には,以下に述べるような,未検討・未解決の問題が生じる。
1 年齢の基準時の問題
2 資格制限の問題
3 保護者への働き掛けに関する問題
4 ぐ犯に関する問題
5 推知報道禁止の問題
 
第6 結論
 以上に述べたとおり,現在,部会で検討されている犯罪者処遇策によっても,少年法の適用年齢引下げに伴う刑事政策的な懸念や問題は解消されない。また,民法の成年年齢が引き下げられたことを踏まえても,少年法の適用年齢を引き下げる必要性は全く認められず,むしろ引下げの弊害が極めて大きいのであって,これを行うべきではない。
 したがって,当連合会は,少年法における「少年」の年齢を18歳未満へ引き下げることには改めて反対する。、
(引用終わり)