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「辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」(2019年1月24日)を読む

  2019年1月24日配信(予定)のメルマガ金原.No.3402を転載します。
 
辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」(2019年1月24日)を読む
 
朝日新聞デジタル 2019年1月24日19時15分
憲法学者131人声明 埋め立て強行が憲法を「空洞化」
(抜粋引用開始)
 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事に対し、全国の憲法研究者有志が24日、反対声明を発表した。「(工事の)強行は、基本的人権の尊重、平和主義、民主主義、地方自治という日本国憲法の重要な原理を侵害、空洞化するもの」と批判した。24日までに131人が賛同している。
(略)
 会見した武蔵野美術大の志田陽子教授は、沖縄の民意がある一方、安倍政権も選挙で選ばれたという指摘に対し、「請願権」や「表現の自由」を保障していることから「憲法は、選挙で選んだから全権委譲したという考えをとっていない」と解説。「具体的な政策について、市民が考え直してほしいと真剣に求めているとき国政担当者は真剣に聞くべきだ。憲法上、地方と国政は上下関係ではなく、対等。国政担当者は県民投票までは工事を中止し、結果が出た後は誠実な協議を行う必要がある」と語った。
 静岡大の笹沼弘志教授は、県民投票を実施しないと表明した自治体が相次いだことに「なぜ沖縄で意見対立が生じているのか。政府の強引な姿勢が、沖縄の人びとの意思を踏みにじり、分断をもたらしている点をまず考えるべきだ」と話した。
(引用終わり)
 
琉球新報電子版 2019年1月24日 16:32
「民主主義、地方自治の侵害」「辺野古唯一は欺瞞」 憲法学者辺野古新基地建設反対の声明 131人が賛同
(抜粋引用開始)
 【東京】稲正樹(いな・まさき)・元国際基督教大教授ら憲法学者の有志一同が24日、都内の衆院議員会館で会見し、辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明を発表した。
(略)
 稲氏によると、辺野古新基地建設問題に対して憲法学者の有志が声明を出すのは初めて。国内には憲法学者は500~600人いるとみられる。賛同者は引き続き募る。
(略)
 稲氏は「辺野古の基地建設は日本国民にとっての問題だ。住民の意思を一顧だにしない基地建設は住民自治という憲法地方自治の本旨に反する」と指摘した。県民投票は「沖縄の本当の民意とは何かを明らかにする大事な機会だ」と述べた。
 笹沼弘志静岡大教授は「民主主義の根幹に関わる問題。われわれが辺野古の問題を日本国民全体の問題として議論せず、放置することで沖縄の人の人権を傷つけ踏みにじっている」と強調した。
 志田陽子武蔵野美術大教授は「県民の反対は憲法が保障する意思表明の在り方の一つで、決して軽視、黙殺してはならない。無視した土砂の一方的な投入は憲法の許容する限度を超えている」と述べた。県民投票の結果については「国政担当者は少なくとも民意がどのようになるか誠実に聞く必要がある」と求めた。
 石川裕一郎聖学院大教授は「基地建設の合理性ではなく、明らかに沖縄への嫌がらせ、ハラスメントの要素もある。性暴力にも似ている。圧倒的な力で弱い者に有無を言わせずする手法は、現政権のさまざまな局面を思い出させるもので、辺野古はその象徴的な場として表れている」と話した。
 飯島滋明名古屋学院大教授は「安倍自公政権が沖縄で行っているのはまさに『法の支配』の蹂躙で、中国などに対して法の支配を順守せよと主張する資格はない」と強調した。
 声明は内閣と防衛省、外務省、自衛隊沖縄県など公的機関に加え、全政党に送付する。さらに今後、賛同者で何らかのアピール行動も検討している。
(引用終わり)
 
 本日(1月24日)午後、衆議院第1議員会館地下1階第6会議室において、「辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」を発表する記者会見が行われました。
 今日記者会見が行われるということは、4日ほど前から事前報道もなされていましたので、注目していました。記者会見に出席されたのは、新聞各紙WEBサイトに掲載された写真や上記琉球新報電子版の記事などから、
  稲 正樹さん(元国際基督教大学教授)
  志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)
  笹沼弘志さん(静岡大学教授)
  石川裕一郎さん(聖学院大学教授)
  飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)
の5名であったようです。
 
 この記者会見が開かれるということを志田陽子先生のFacebookで知った私は、
すぐに、昨年10月26日に行政法研究者有志が「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の濫用を憂う」を発表した際、稲正樹先生がご自身のFacebookで「行政法学者が頑張っています。憲法学者も続こう!」と檄を飛ばされたことを思い出しました。
 ・・・だから声明を出すことになった、訳ではないでしょうが。
 
 本日発表された「辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」の全文をアップしたサイトがないかと探したところ、琉球新報電子版が声明全文をアップしていました。以下に、全文転載させていただきます。
 ただ、本日現在の賛同者131名のリストは引用していませんので、お知りになりたい方はリンク先の琉球新報サイトでご確認ください。
 
 ところで、「 賛同者で何らかのアピール行動も検討している」って何だろう?気になりますね。
 
(引用開始)
                辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明
 
 2018年9月30日、沖縄県知事選挙において辺野古新基地建設に反対する沖縄県民の圧倒的な民意が示されたにもかかわらず、現在も安倍政権は辺野古新基地建設を強行している。安倍政権による辺野古新基地建設強行は「基本的人権の尊重」「平和主義」「民主主義」「地方自治」という、日本国憲法の重要な原理を侵害、空洞化するものである。私たち憲法研究者有志一同は、辺野古新基地建設に関わる憲法違反の実態及び法的問題を社会に提起することが憲法研究者の社会的役割であると考え、辺野古新基地建設に反対する声明を出すものである。
 辺野古新基地建設問題は、憲法9条や日本の安全保障の問題であると同時に、なによりもまず、沖縄の人々の人権問題である。また、選挙で示された沖縄県民の民意に反して政府が強引に建設を推し進めることができるのか、民主主義や地方自治のあり方が問われているという点においては日本国民全体の問題である。政府が新基地建設をこのまま強行し続ければ、日本の立憲民主主義に大きな傷を残すことになる。こうした事態をわれわれ憲法研究者は断じて容認できない。直ちに辺野古埋立ての中止を求める。
 
1 「民主主義」「地方自治」を侵害する安倍政権
 沖縄では多くの市民が在沖米軍等による犯罪や軍事訓練、騒音などの環境破壊により、言語に絶する苦しみを味わってきた。だからこそ2014年、2018年の沖縄県知事選挙では、沖縄の市民にとってさらなる基地負担となる「辺野古新基地建設」問題が大きな争点となった。そして辺野古新基地建設に反対の立場を明確にした翁長雄志氏が県知事に大差で当選し、翁長氏の死後、玉城デニー氏もやはり大差で当選した。沖縄の民意は「新基地建設反対」という形で選挙のたびごとに示されてきた。ところが安倍政権はこうした民意を無視し、新基地建設を強行している。こうした安倍政権の対応は日本国憲法の原理たる「民主主義」や「基本的人権の尊重」、「平和主義」、そして「民主主義」を支える「地方自治」を蹂躙する行為である。「外交は国の専属事項」などと発言し、新基地建設問題については沖縄が口をはさむべきではない旨の主張がなされることもある。しかし自治体にも「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)があり、市民の生命や健康、安全を守る責任が課されている以上、市民の生命や健康に大きな影響を及ぼす辺野古新基地建設に対して沖縄県が発言するのは当然である。安倍政権の辺野古新基地建設の強行は、「地方自治」はもちろん、日本の「民主主義」そのものを侵害するものである。
 
2 沖縄県民が辺野古新基地建設に反対する歴史的背景
 そもそも沖縄の市民がなぜここまで辺野古新基地建設に強く反対するのか、私たちはその事情に深く思いを寄せる必要がある。
 アジア・太平洋戦争末期、沖縄では悲惨な地上戦が行われた。日本の権力者は沖縄の市民に徹底抗戦を命じた。ところがそのような徹底抗戦は、本土決戦を遅らせるための「時間稼ぎ」「捨て石」にすぎなかった。沖縄に派兵された日本の軍隊及び兵士の中には、沖縄の市民から食料を強奪したり、「スパイ」とみなして虐殺したり、「強制集団死」を強要するなどの行為に及んだ者もいた。「鉄の暴風」と言われるアメリカ軍の激しい攻撃や、日本軍の一連の行為により、犠牲となった沖縄の市民は9万4千人以上、実に県民の4人に一人にも及ぶ。アジア・太平洋戦争での日本軍の行動は、沖縄の市民に「軍隊は国民を守らない」という現実を深く印象付けることになった。
 その後、アジア・太平洋戦争終結し、沖縄が米軍に占領された時代でも、「軍隊は国民を守らない」という現実は変わらなかった。朝鮮戦争や冷戦など、悪化する国際情勢の中、日本に新しい基地が必要だと判断した米軍は、いわゆる「銃剣とブルドーザー」により沖縄の市民から土地や田畑を強奪し、家屋を壊して次々と新しい基地を建設した。現在、歴代日本政府が危険だと主張する「普天間基地」も、米軍による土地強奪で建設されたという歴史的経緯を正確に認識する必要がある。さらには米軍統治下でも、度重なる米兵犯罪、事故、環境破壊等により、沖縄の市民は耐えがたい苦痛を受け続けてきた。
 
3 沖縄における「基本的人権」の侵害
 米軍や米軍人等により、沖縄の市民が耐えがたい苦しみを受けている状況は現在も変わらない。在沖米軍や軍人たちの存在により、憲法で保障されたさまざまな権利、とりわけ「平和的生存権」や「環境権」が著しく侵害、脅かされてきた。
 
 ①平和的生存権憲法前文等)の侵害
 「平和的生存権」とは、例えば「いかなる戦争及び軍隊によっても自らの生命その他の人権を侵害されない権利」として理解され、豊富な内容を有するものだが、沖縄ではこうした権利が米軍人等による凶悪犯罪、米軍機の墜落事故や部品などの落下事故、住民の生活を顧みない軍事訓練により侵害され、脅かされ続けている。その上、いざ米軍が戦争などをする事態に至れば、沖縄が攻撃対象となる危険性がある。2001年のアメリ同時多発テロの際、沖縄への観光客や修学旅行者は大幅に減少した。こうした事実は、有事となれば沖縄が米軍の戦争に巻き込まれて攻撃対象となると多くの人々が認識していることを示すものである。
 
 ②「環境権」(憲法13条、25条)の侵害
 次に在沖米軍により、「良好な環境を享受し、これを支配する権利」である「環境権」が侵害されてきた。たとえば米軍の軍事訓練が原因となって生じる「米軍山火事」は1972年の沖縄復帰後から2018年10月末までに620件も存在する。沖縄県の資料によれば、嘉手納基地や普天間基地周辺の騒音は、最大ピークレベルでは飛行機のエンジン近くと同程度、平均ピークレベルでも騒々しい工場内と同程度の騒音とされている。こうした騒音のため、学校での授業にも悪影響が生じるなどの事態も生じている。米軍基地内からの度重なる燃料流出事故の結果、土壌や河川が汚染され、沖縄の市民の生活や健康への悪影響も懸念されている。沖縄にはあらゆる種類の「基地公害」があり、沖縄の市民は「環境権」侵害行為にも苦しめられてきた。
 
4 「平和主義」の侵害
 歴代日本政府は、「沖縄の基地負担の軽減」「抑止力の維持」を理由に辺野古新基地建設を進めてきた。しかし辺野古に建設が予定されている新基地には、航空機に弾薬を搭載する「弾薬搭載エリア」、航空機専用の燃料を運搬するタンカーが接岸できる「燃料桟橋」、佐世保強襲揚陸艦「ワスプ」などの接岸できる、全長272mの「護岸」など、普天間基地にはない新機能が付与されようとしている。普天間基地には現在、「空飛ぶ棺桶」「未亡人製造機」と言われるほど墜落事故が多い「オスプレイ」が24機配備されているが、辺野古新基地には100機のオスプレイが配備されるとの情報もある。以上のような辺野古新基地の建設は、「沖縄の基地負担の軽減」どころか「基地負担の増大」「基地機能の強化」であり、米軍の「出撃拠点基地」「後方支援基地」「軍事訓練基地」としての機能が一層強化される。辺野古新基地建設は基地機能の強化となるものであり、憲法の基本原理である「平和主義」とは決して相いれない。
 
5 「辺野古が唯一の選択肢」という安倍政権の主張の欺瞞
 安倍政権は、東アジアにおける抑止力として在沖米軍基地が不可欠と説明する。しかし、沖縄に駐留している海兵隊は今後、大幅に削減されることになっている。しかも第31海兵遠征隊(31MEW)は半年以上も沖縄を留守にする、ほとんど沖縄にいない部隊である。実際に東アジア有事を想定した場合、兵力は少なすぎる。第31海兵遠征隊に組み込まれるオスプレイやヘリコプター運用のための航空基地が必要とされるために普天間から辺野古に移転されるが、第31海兵遠征隊は自己完結性を持たず、長崎県佐世保強襲揚陸艦が沖縄に寄港し、海兵隊を積載して任務にあたる。安倍政権による「辺野古が唯一の選択肢」との主張は欺瞞といわざるを得ない。
 
6 おわりに
 日本本土の約0.6%しかない沖縄県に全国の米軍専用施設の約70.6%が集中するなど、沖縄には米軍基地の負担が押し付けられてきた。そこで多くの沖縄の市民は、これ以上の基地負担には耐えられないとの思いで辺野古新基地建設に反対してきた。ところが安倍政権は沖縄の民意を無視して基地建設を強行してきた。2018年12月14日には辺野古湾岸部で土砂投入を強行した。ここで埋め立てられているのは辺野古・大浦湾周辺の美しい海、絶滅危惧種262種類を含む5800種類以上の生物だけではない。「基本的人権の尊重」「民主主義」「平和主義」「地方自治」といった、日本国憲法の重要な基本原理も埋め立てられているのである。辺野古新基地建設に反対する人たちに対しては、「普天間の危険性を放置するのか」といった批判が向けられることがある。しかし「普天間基地」の危険性を除去するというのであれば、普天間基地の即時返還を求めれば良いのである。そもそも日本が「主権国家」だというのであれば、外国の軍隊が常時、日本に駐留すること自体が極めて異常な事態であることを認識する必要がある。「平和」や「安全」が重要なことはいうまでもないが、それらは「軍事力」や「基地」では決して守ることができないことを、私たちは悲惨な戦争を通じて歴史的に学んだ。アメリカと朝鮮民主主義人民共和国の最近の関係改善にもみられるように、紛争回避のための真摯な外交努力こそ、平和実現には極めて重要である。日本国憲法の国際協調主義も、武力による威嚇や武力行使などによる紛争解決を放棄し、積極的な外交努力などを通じて国際社会の平和創造に寄与することを日本政府に求めている。東アジアの平和は「抑止力」などという、軍事的脅迫によって達成されるものではない。辺野古新基地建設は、平和的な外交努力などによる平和構築を目指す日本国憲法の精神にも逆行し、むしろ軍事攻撃を呼び込む危険な政治的対応である。私たち憲法研究者有志一同は、平和で安全な日本、自然豊かな日本を子どもや孫などの将来の世代に残すためにも、辺野古新基地建設に対して強く反対する。
                                                                             以上
 
※2019年1月24日段階131名が賛同(リストはリンク先をご覧ください)
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/最近の辺野古をめぐる声明等)
2018年10月27日
行政法研究者有志による声明「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の濫用を憂う」(2018年10月26日)を読む
2018年12月12日
沖縄弁護士会辺野古新基地建設が、沖縄県民にのみ過重な負担を強い、その尊厳を踏みにじるものであることに鑑み、解決に向けた主体的な取り組みを日本国民全体に呼びかけるとともに、政府に対し、沖縄県民の民意を尊重することを求める決議」を読む
2019年1月13日
沖縄弁護士会「「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」に基づく県民投票が全県下で実施されることを強く求める会長声明」を読む

情報の真偽は自分の目で確認しなければならない~平成26年度東京大学教養学部学位記伝達式における石井洋二郎学部長の式辞から

  2019年1月23日配信(予定)のメルマガ金原.No.3401を転載します。
 
情報の真偽は自分の目で確認しなければならない~平成26年度東京大学教養学部学位記伝達式における石井洋二郎学部長の式辞から
 
 皆さんは、「レファレンス協同データベース」をご存知でしょうか?同データベースWEBサイトによると、以下のように説明されています。
 
レファレンス協同データベースとは?
(引用開始)
レファレンス協同データベースは、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している、調べ物のためのデータベースです。
事業概要
目的
レファレンス協同データベース事業は、公共図書館大学図書館学校図書館専門図書館等におけるレファレンス事例、調べ方マニュアル、特別コレクション及び参加館プロファイルに係るデータを蓄積し、並びにデータをインターネットを通じて提供することにより、図書館等におけるレファレンスサービス及び一般利用者の調査研究活動を支援することを目的とする事業です。
実施要項及び参加規定 (略)
データ概要 (略)
レファレンス事例   
参加館で行われたレファレンスサービス(質問回答サービス)の記録です。利用者の方々からの質問に、どのように回答したのかが記載されています。
(後略)
(引用終わり)
 
 本を貸し出すだけが図書館の役割ではない、ということが、以上の記載を読むだけでも分かりますが、実は、レファレンス協同データベースに掲載された1つのレファレンス事例をご紹介したくて、以上の説明をまずしたのでした。その事例というのは、以下のとおりです。
 
レファレンス事例詳細
(引用開始)
提供館 国士舘大学図書館・情報メディアセンター
事例作成日 2007年04月14日
登録日時 2007年04月14日 11時40分
更新日時 2015年04月11日 11時22分
質問 
 東大総長のいった「太った豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ」の出典を知りたい。
回答 
 J.S.Mill ”Utilitarianism”より。(J.S.ミル「功利主義論」、「世界の名著38」収録)
 chapter II "What Utilitarianism Is"(第2章「功利主義とは何か」)
"It better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied." 
 訳は「満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。」(関義彦訳,世界の名著38,中央公論社,1967)
 大河内の式辞はこの言葉の意訳であると思われる。
回答プロセス
 60年安保の頃、東京大学の卒業式で総長の言った言葉とわかっていたので、1950年代末より1960年代の東京大学総長を調査した。「東京大学百年史」 資料三.東京大学出版会,1986.に歴代総長一覧があり、1957-1963茅誠司、1963-1968大河内一男とわかった。昭和史全記録.毎日新聞社,1986.で調べると大河内一男のみの記載あり、p.736 1964.3.28 「東大卒業式で大河内一男総長はJ.S.ミルの言葉「ふとった豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ」と告辞」とあった。さらに東京大学歴代総長式辞告辞集.東京大学出版会,1997.にて確認すると第十八代総長大河内一男 卒業式昭和39年3月28日の項があり、「・・・昔J.S.ミルは「肥つた豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい」と言つたことがあります。・・・」とわかった。
 J.S.ミルの著作を確認するため、百科事典、人名辞典等のミルの項を捜すが、本事項の記載は全くなかった。そこでネットにて「痩せたソクラテス」「ミル」で検索すると個人のブログに「功利主義」からの出典という書き込みを発見した。ベンサム、J.S.ミル(世界の名著38).中央公論社,1967.に収録されている「功利主義論」を確認した。訳文の記載位置から原典の文章を探し原文も確認。
備考
 平成26年教養学部学位記伝達式(卒業式)式辞 において当時の東京大学教養学部石井洋二郎氏がこのことについて触れている。
 東京大学として公式の席におりてこの事例につき、初めての発言と思われる。詳細は上記調査と同じである。
 東京大学大学院総合文化研究科・教養部HP 平成26年教養学部学位記伝達式 式辞
(引用終わり)
 
 以上の事例をご紹介したのは、その「備考」でも触れられている、東京大学教養学部平成26年度学位記伝達式における石井洋二郎学部長(当時)の式辞を、いつかはご紹介したいと思っていたところ、たまたま「レファレンス協同データベース」の事例に気がついたので、まずはこちらをご紹介しようと思ったのです。
 ちなみに、「備考」欄の引用先URLは、現在では以下に変更となっています。
 
 石井学部長の式辞は、まずその前段で、「1964年の3月、当時の総長であった経済学者の大河内一男先生が語ったとされる有名な言葉」である「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」を例示し、今はやりの言葉で言えば「ファクトチェック」を試みます。そこでは、上記「レファレンス事例」でも紹介されている出典を掲げた上で、①この言葉は、大河内総長が自ら思いついた表現ではなく、J.S.ミルの「功利主義論」における表現を引用したものであること、②その引用も、「下手をすると、これは「資料の恣意的な改竄」と言われても仕方がないケース」であることを明らかにします。ここまでは、上記の「レファレンス協同データベース」を読んでも大体分かりますよね。
 しかし、石井学部長の式辞にはまだ続きがあるのです。その部分を引用してみましょう。
 
(引用開始)
 ところが、間違いはこれだけではないんですね。じつは、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていないのだそうです。原稿には確かに書き込まれていたのだけれども、あとで自分の記憶違いに気づいて意図的に落としたのか、あるいは単にうっかりしただけなのか、とにかく本番では省略してしまった。ところがもとの草稿のほうがマスコミに出回って報道されたため、本当は言っていないのに言ったことになってしまった、というのが真相のようです。これが第三の間違いです。
 つまり、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけです。まず「大河内総長は」という主語が違うし、目的語になっている「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」というフレーズはミルの言葉のまったく不正確な引用だし、おまけに「言った」という動詞まで事実ではなかった。というわけで、早い話がこの命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね。にもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているという次第です。
(引用終わり)
 
 ここまで読むと、「レファレンス協同データベース」の事例(国士舘大学図書館・情報メディアセンター)が「備考」欄で石井洋二郎学部長による式辞をフォローしてくれたのですから、そこで述べられた第3の間違いも紹介しておいて欲しかったと思いますよね。
 それでも、このデータベースまでたどり着き、備考欄でリンクされている東大教養学部の学部長式辞コーナーに掲載された式辞を全部読んだ人は、石井学部長が卒業生に語りかけた内容を理解することができたのですが、やがて、リンク先頁に掲載される式辞が、後年のものに差し替えられてしまった後に閲覧した人は、自分で「東京大学平成26年教養学部学位記伝達式(卒業式)式辞/石井洋二郎」というキーワードを入力して検索し直さない限り、大河内総長が、実は原稿に書いていた「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」という部分を飛ばして読まなかったという逸話には気がつきません。
 
 ところで、石井洋二郎学部長が以上の例を挙げた上で、卒業生に伝えたかった後段もご紹介しておきましょう。
 
(引用開始)
 さて、そこで何が言いたいかと申しますと、まず、皆さんが毎日触れている情報、特にネットに流れている雑多な情報は、大半がこの種のものであると思った方がいいということです。そうした情報の発信者たちも、別に悪意をもって虚偽を流しているわけではなく、ただ無意識のうちに伝言ゲームを反復しているだけなのだと思いますが、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります。
 情報が何重にも媒介されていくにつれて、最初の事実からは加速度的に遠ざかっていき、誰もがそれを鵜呑みにしてしまう。そしてその結果、本来作動しなければならないはずの批判精神が、知らず知らずのうちに機能不全に陥ってしまう。ネットの普及につれて、こうした事態が昨今ますます顕著になっているというのが、私の偽らざる実感です。
 しかし、こうした悪弊は断ち切らなければなりません。あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。
(略)
 さて、かく言う私も、この3月で教養学部長の任期は終了いたします。また、それと同時に、駒場の教員としても退職いたします。いささか恥ずかしげもなく月並みな言い方をすれば、今日は皆さんの卒業式であると同時に、私自身の卒業式でもあるわけです。人生のひとつの区切りを皆さんと一緒に迎えることができたというのは、何かのご縁かもしれませんが、ともあれこの壇上から式辞を述べるのも、これが最後の機会となりますので、私は大河内総長の「痩せたソクラテス」でもなく、濱田総長の「タフでグローバル」でもなく、自分自身が本当に好きな言葉を皆さんに贈って、この式辞を終えたいと思います。
 それはドイツの思想家、ニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくる言葉です。
 
きみは、きみ自身の炎のなかで、自分を焼きつくそうと欲しなくてはならない。きみがまず灰になっていなかったら、どうしてきみは新しくなることができよう!
 
 皆さんも、自分自身の燃えさかる炎のなかで、まずは後先考えずに、灰になるまで自分を焼きつくしてください。そしてその後で、灰の中から新しい自分を発見してください。自分を焼きつくすことができない人間は、新しく生まれ変わることもできません。私くらいの年齢になると、炎に身を投じればそのまま灰になって終わりですが、皆さんはまだまだ何度も生まれ変われるはずです。これからどのような道に進むにしても、どうぞ常に自分を燃やし続け、新しい自分と出会い続けてください。
 もちろん、いま私が紹介した言葉が本当にニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくるのかどうか、必ず自分の目で確かめることもけっして忘れないように。もしかすると、これは私が仕掛けた最後の冗談なのかもしれません。
 皆さんの前に、輝かしい未来が開けますように。そして皆さんが教養学部で、この駒場の地で培った教養の力、健全な批判精神に裏打ちされた教養の力が、ますます混迷の度を深めつつあるこの世界に、やがて新しい叡智の光をもたらしますように。
 万感の思いを込めて、もう一度申し上げます。皆さん、卒業おめでとう。
  平成二十七年三月二十五日
                                                  東京大学教養学部長 石井洋二郎
(引用終わり)
 
 私が石井洋二郎先生の東京大学教養学部平成26年度学位記伝達式における式辞を知ったのは、半年ほど前のことだったでしょうか。いずれブログで紹介したいと思いつつ、つい機会を逸して今まで来てしまったのですが、今日、是非この式辞を取り上げたいと思ったについては理由があります。
 それは、昨日のブログ(放送予告「変貌する自衛隊」(NNNドキュメント@2019年1月27日)とブログ素材2件のご紹介/2019年1月22日)の後半でご紹介した、もしかしたら今後のブログの素材にするかもしれないと思って昨日Facebookでシェアした投稿のうちの1つに関わる問題です。  http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52946742.html
 その投稿につき、後に付記した部分も含めて再度リンクします。
 
【素材1 竹中平蔵を批判する看板を立ててビラを配った東洋大学4年生】
金原コメント「たった1人でも「やるべきだ」と思ったことをやるのが「勇気」というものだということを思い出させてくれます。自分が東洋大学の学生だったとして「できるだろうか?」と自問しています。
※ちなみにこの行動は昨日(21日)行われたようです。学生ご本人のFBでも公開設定で投稿されています。
 
 この投稿は、内海信彦さんという方が、船橋秀人さんという東洋大学4年生が、「大学キャンパスで東洋大学教授竹中平蔵の講義と、竹中平蔵が行って来た犯罪的な行いに抗議して、単身で立て看を立て、ビラ撒きを行いました。学生の反応はいまひとつ、立て看は10分で撤去されたそうです。大学当局は、彼を呼び出して二時間半も尋問して、「学則に違反する行動」として、「学生の本分」から外れ、「大学の秩序」を乱したと決めつけて、卒論審査も済んでいる彼に「退学処分」を警告したそうです。」と記述した上で、船橋さんから貰ったビラの文章を転記して紹介するというもので(投稿日:1月21日23:04)、写真も5枚付いていました。
 昨日(22日)、私のFacebook友達の1人がシェアしていたために気がつき、内海さんとも船橋さんともFacebook友達でも何でもありませんでしたが、基本的に「フェイクではない」と判断しましたので、私も以上の文章を付けてシェアしました。
 その判断の根拠の1つは、掲載された写真の1枚が、配布されたビラとおぼしく、内海氏が転記した文章がその写真のとおりであり、おそらくは起案者からデータの提供を受けている可能性が高いと考えたこと、大学当局が看板を撤去する写真をタイミング良く撮影するためには、立て看板やビラを作った学生本人と事前の打ち合わせがあったと考えるのが自然であること、などによります。
 
 さて、その後、この内海信彦さんの投稿は瞬く間にシェアを広げ、この稿を書いている1月23日(水)21時20分現在、「3,755」件のシェアが行われており、さらにこの件を取り上げるネット上の記事も散見されるようになってきました。
 
藤田孝典「東洋大学生の竹中平蔵氏批判の背景にある若者の貧困とワーキングプア
 
 それだけであれば、私が石井洋二郎先生の式辞を取り上げようということにはならなかったと思いますが、問題は、この「投稿」をシェアしたり、コメントしたりした人たちの姿勢にとても違和感を感じたということにあります。
 
 勇気をもって抗議に立ち上がった学生を賞賛・支持するコメントにはそう違和感は感じませんが(実際、私が書いた文章もそういうトーンのものでした)、中には、この投稿をシェアすることを利用して、ここぞとばかりに竹中平蔵批判を行う人も多く、これはどうなんだ?それをやりたければまず自分が行動したら?という印象は否めません。
 さらに、慎重にシェア元の投稿を読んでいれば、そういういことになるはずはないと思うのですが、問題の学生が退学処分になる、と断定する投稿まで出回っており、さらにそれを無自覚にシェアする人多数という状況を目の当たりにすると、これはいけない、と思わざるを得ません。
 まさに、石井洋二郎先生が言われた「そうした情報の発信者たちも、別に悪意をもって虚偽を流しているわけではなく、ただ無意識のうちに伝言ゲームを反復しているだけなのだと思いますが、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります。」という言葉通りの状況が目の前で進展していると思いましたので、今日のブログは石井先生の4年前の式辞をご紹介しようと決めたという次第です。
 
 ちなみに、立て看板を立て、チラシを配布した当事者である船橋秀人さん本人のFacebookを閲覧すると、「公開」設定で、「私船橋秀人が、立て看&ビラ撒きへの取り調べに対して、東洋大学の学生部の人間から退学勧告されたのは本当です。この青線の表現に該当するとの指摘を受けました。」という投稿(おそらく学生部の職員から渡されたとおぼしいラインマーカーが引かれた学則写しの写真付き)がなされていました。
 
 今日のブログは、単なる他人に対する批判ではなく、自らを戒めるためにこそ書いたものであると申し上げて、この稿を終えることにします。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/大学式辞関連)
2014年3月27日
山本健慈和歌山大学学長の「平成25年度卒業式式辞」
2014年5月27日
岡村吉隆和歌山県立医科大学学長の「平成26年度 入学式式辞」
2015年2月6日
退任前にもう一度読み返す山本健慈和歌山大学学長の「平成25年度卒業式式辞」(付・予告3/3退任記念シンポジウム)
2015年3月25日
山本健慈和歌山大学学長 最後の卒業式式辞(付・予告4/29山本健慈氏講演会「学び続ける自由と民主主義~不安の時代に抗して」)
2015年4月6日
3人の大学人からのメッセージ(大谷實同志社総長、田中優子法政大学総長、山本健慈和歌山大学(前)学長)

放送予告「変貌する自衛隊」(NNNドキュメント@2019年1月27日)とブログ素材2件のご紹介

  2019年1月22日配信(予定)のメルマガ金原.No.3400を転載します。
 
放送予告「変貌する自衛隊」(NNNドキュメント@2019年1月27日)とブログ素材2件のご紹介
 
 この番組「変貌する自衛隊」の放送予告を取り上げようかどうしようか、少し躊躇しました。
 大いに興味を覚える内容ではあるのですが、「NNNのカメラは、南シナ海における海自艦と中国海軍の息詰まる神経戦や、東シナ海における日米共同での実戦さながらの上陸訓練をとらえた。」とあるとおり、取材受け入れ側である自衛隊によるアレンジの枠内での「密着取材」である訳で、「自衛隊、そして日本の国防はどこへ向かうのか」という番組の意図がどこまで実現できたのか、わずか20秒の予告映像を眺めながら、かなりの懸念を抱いたというのが正直なところです。
 
 とはいうものの、やはり見てみたいという誘惑に勝てず、取り上げることにしました。予告映像の冒頭に出てくるのは空母化が取り沙汰されている「いずも型護衛艦」なのでしょうね。
 
日本テレビ系列 2019年1月28日(月)午前0時55分~(日曜深夜)
NNNドキュメント'19「変貌する自衛隊
(番組案内から引用開始)
発足から60年あまり。自衛隊は今、その姿を大きく変えつつある。
戦後タブーとされてきた「空母」の保有、そして「米海兵隊」を模した精鋭部隊の創設。
戦力の増強がはかられる一方で任務にも変化が。
NNNのカメラは、南シナ海における海自艦と中国海軍の息詰まる神経戦や、東シナ海における日米共同での実戦さながらの上陸訓練をとらえた。
超大国の新たな世界戦略も影を落とす中、自衛隊、そして日本の国防はどこへ向かうのか。
ナレーター/國井千聖  制作/日本テレビ  放送枠/30分
再放送   
2019年2月3日(日)11:00~ BS日テレ
2019年2月3日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24
(引用終わり)
 
NNNドキュメント 2019/1/27「変貌する自衛隊」(20秒)
 
 ただ、30分枠(正味は25分もないでしょう)で伝えられることには限りがあるはずで、この次には、自衛隊を「外から」取材する番組も観てみたいですね。
 
(追記)
 結局、今日のブログは、次回のNNNドキュメントのご紹介ということに落ち着いたのですが、「ブログ毎日配信」のための素材探しの段階で、気になったものを、とりあえずFacebookでシェアしておくということがよくあります。
 今日、そのようにしてシェアした素材を2つご紹介しておきます。これらの素材を発展させてブログを書くことになるかどうかは分かりませんが、注目したいと思っています。
 
【素材1 竹中平蔵を批判する看板を立ててビラを配った東洋大学4年生】
金原コメント「たった1人でも「やるべきだ」と思ったことをやるのが「勇気」というものだということを思い出させてくれます。自分が東洋大学の学生だったとして「できるだろうか?」と自問しています。」
 
【素材2 アフガニスタン大干ばつと大水害~中村哲医師からの報告】
金原コメント「何ヶ月か毎に西日本新聞に掲載される中村哲医師のアフガニスタンからの報告、2018年12月3日に掲載されたものです。実は、ペシャワール会のホームページに掲載される中村医師からの写真レポートでは、アフガニスタン全土で進行する大干ばつの状況に加え、洪水による被害の報告も散発的にあったりしたのですが、現地報告の最新版(昨年11月1日時点)に「11月1日夜半から午前中にけて、ケシュマンド山脈南麓の各地で再び集中豪雨が発生した。数十分から数時間の短期大量降雨で断続的。雨量は前回(10月)をはるかに上回り、かつ広範囲に及んだ。一回の集中豪雨としてはPMSが2003年に観察し始めてから、最大規模。マルワリード用水路は全線にわたって再度寸断された。復旧には長時日を要すると思われ、現在調査中である。」として、大きな被害を受けた用水路の写真が掲載されていたので、とても心配していました。  
ペシャワール会への寄付・入会について⇒

日本弁護士連合会「長期低排出発展戦略の策定に関する意見書」(2019年1月18日)を読む

  2019年1月21日配信(予定)のメルマガ金原.No.3399を転載します。
 
日本弁護士連合会「長期低排出発展戦略の策定に関する意見書」(2019年1月18日)を読む
 
 私のブログでは、日本弁護士連合会が公表する様々な意見書をご紹介する機会が多いのですが、その中でも、よくご紹介する分野とそうでない分野、有り体に言えば、得意分野と不得意分野があることは避けられません。
 
 今日ご紹介するのは、1月18日に採択された「長期低排出発展戦略の策定に関する意見書」であり、COP21で採択されたパリ協定(2015年12月12日)が「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに,1.5℃に抑えるよう努力するとの長期目標を掲げ(同協定第2条第1項(a)),全ての締約国に対し,その達成に向けた「温室効果ガス低排出型の発展のための長期的戦略」を2020年までに作成し,提出することを求めて」おり、さらに「2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言において,G7諸国は,2020年よりも十分先立って「長期的な温室効果ガス低排出発展戦略」(以下「長期低排出発展戦略」という。)を策定・提出することを約束しており,アメリカ,カナダ,ドイツ,フランス,イギリスは既に提出しているが,日本はいまだ策定・提出に至っていない。」という状況を踏まえ、「これまでの国における議論を踏まえ,長期低排出発展戦略に盛り込むべき内容について,意見を述べるものであ」り(意見書の前文から)、「環境問題ど真ん中」に属する意見書です。
 
 一応、私のブログ(弁護士・金原徹雄のブログ)にも「環境」というカテゴリーは設けているものの、2013年1月のブログ開設以来、「憲法」カテゴリー837件、「原発」カテゴリー480件などに比べ、「環境」カテゴリー41件というのは、明らかに見劣りしますよね。「経済」カテゴリー15件、「技術」カテゴリー13件に比べればましですが。
 
 私自身、「環境」は不得意分野です、などとは言えない立場であったりもするので、せめて日弁連の主張くらいはフォローしなければ、ということで、この最新の意見書を全文ご紹介することにしました(脚注は引用していませんので、リンク先でご確認ください)。
私自身の勉強のために取り上げたという面もあるブログですが、関心を持たれる方の目に留まれば幸いです。
 
日本弁護士連合会 2019年1月18日
長期低排出発展戦略の策定に関する意見書
※1月21日付けで内閣総理大臣経済産業大臣及び環境大臣宛てに提出。
(引用開始)
                     長期低排出発展戦略の策定に関する意見書
 
                                                2019年(平成31年)1月18日
                                                                  日本弁護士連合会
 
 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は,2015年12月12日,気候変動の脅威に対する世界的な対応を強化することを目的として,パリ協定を採択した。同協定は,世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに,1.5℃に抑えるよう努力するとの長期目標を掲げ(同協定第2条第1項(a)),全ての締約国に対し,その達成に向けた「温室効果ガス低排出型の発展のための長期的戦略」を2020年までに作成し,提出することを求めている(同協定第4条第19項及びCOP21決定第36項)。
 2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言において,G7諸国は,2020年よりも十分先立って「長期的な温室効果ガス低排出発展戦略」(以下「長期低排出発展戦略」という。)を策定・提出することを約束しており,アメリカ,カナダ,ドイツ,フランス,イギリスは既に提出しているが,日本はいまだ策定・提出に至っていない。
 これについて,国は,2018年7月31日に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」を設置し,長期低排出発展戦略の策定に向け,検討を進めている。
 本意見書は,これまでの国における議論を踏まえ,長期低排出発展戦略に盛り込むべき内容について,意見を述べるものである。
 
第1 意見の趣旨
 国は,長期低排出発展戦略の策定に当たっては,1のとおり温室効果ガスの排出削減目標を改め,その目標の達成のために2~5を踏まえた政策措置を盛り込んだ上で,同戦略を速やかに気候変動枠組条約の事務局に提出すべきである。
1 IPCC特別報告書「1.5℃の地球温暖化」(2018年10月8日公表)を踏まえ,世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えることを明記し,「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」とするこれまでの国の長期目標を引き上げ,温室効果ガスの排出を実質ゼロに近づけたものとすべきである。
 また,同目標に至る経路として,2030年の削減目標を2013年度比26%削減(1990年度比では18%削減)とする現行の目標を,1990年度比40%以上削減に引き上げ,2040年には1990年度比60%以上の削減とすることを明記すべきである。
2 建物の断熱性能規制を強化するなど,エネルギー消費の削減及びエネルギー需給における高効率化を誘導する仕組みを導入すべきである。
3 石炭火力発電所の新設は計画中及び工事中のものを含めて認めず,既設の石炭火力発電所についても早期に廃止させる方針を明確にし,その実現のための措置を導入すべきである。
4 再生可能エネルギーの主力電源化を明確に示し,2050年における再生可能エネルギーの導入目標を設定するとともに,現行では22~24%とされている2030年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を少なくとも30%まで引き上げ,その実現に向けた送電網の整備などの政策措置を盛り込むべきである。
 また,再生可能エネルギーの導入によって環境に悪影響を及ぼす事態とならないよう適切な法制度の整備を行うなど,再生可能エネルギーの拡大が地域の環境に悪影響をもたらさないための措置を導入すべきである。
5 低コストで排出量の削減を可能にするために,効果的なカーボンプライシング(炭素の価格付け)を導入・強化すべきである。
 
第2 意見の理由
1 気候変動による影響と対策の緊急性
 既に世界の平均気温は産業革命以前に比べて1℃上昇しており,広範囲にわたるサンゴ等の生態系の消失,極端な気象現象の増加,風水害や熱波による死傷者の増加,感染症リスクの地域的拡大,食糧安全保障への悪影響などが生じているが,そのような悪影響は気温上昇とともに更に増加することが,国連気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)の第5次評価報告書(2014年3月発表)などから明らかになっている。
 また,2018年10月8日に公表されたIPCC特別報告書「1.5℃の地球温暖化」(以下「1.5℃特別報告書」という。)は,産業革命以前からの気温上昇を1.5℃にとどめたとしても温暖化の悪影響によるリスクは現在よりも高まり,自然災害が多発,激甚化する上,2℃の上昇になればその影響は更に拡大し,とりわけ生態系に深刻なダメージを与えると指摘した。その上で,近年の度合いで気温上昇が続けば,2040年頃に1.5℃の気温上昇に達する可能性が高く,1.5℃の気温上昇にとどめ,安定化させるためには,現在の各国の削減目標では大幅に足りず,2030年までに世界全体で温室効果
スの排出量を2010年のレベルに比べて40%~50%削減し,2050年前後に実質排出ゼロにする必要があること,とりわけ今後10年の削減が重要とした。
 気候変動による現在及び将来世代への深刻な影響のリスクを最小化するためには,各国が2030年の削減目標を引き上げ,対策を強化し,パリ協定の目標を確実に達成することが急務である。
2 持続可能な発展に向けて
 世界では,1990年代から,エネルギー転換や高効率化によってエネルギー使用量及び二酸化炭素排出量を削減しつつ経済成長を実現する流れが生じており,近年,日本でもその傾向が見られるようになってきている。
 さらに,パリ協定の採択・発効を受けて,2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにし,全てのエネルギーを再生可能な自然エネルギーでまかなうようにすることを宣言する大企業も現れ,その部品・原材料等の供給や流通網の全体にわたる脱炭素化への取組を求める流れが加速している。
 また,2015年9月の国連サミットでは,気候変動対策を含む17の持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成することを目指す行動計画(持続可能な開発のための2030アジェンダ)が採択され,広く企業や自治体などの行動指針となりつつある。
 長期低排出発展戦略においては,脱炭素化に向けたこうした社会全体のゴールを明確にして広く社会に共有し,企業を始めとした全ての部門でSDGsの実現と併せて取り組み,持続可能な社会へと転換を図る好機とすべきである。
 同時に,脱炭素社会に向けての変革の取組は,全ての部門・関係者の理解と支持の下,社会全体で取り組むことが不可欠であり,雇用機会の確保等に留意すべきことは言うまでもない。国際労働機関が2018年5月14日に発刊した「世界の雇用及び社会の見通し2018年版-仕事でグリーン化」によれば,世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つことを目指すことで,2030年までに化石燃料関連事業を中心とした600万人分の雇用の消失があるものの,再生可能エネルギー関連事業やリサイクル等関連事業などで2400万人分の雇用が創出され,1800万人分の純増が見込まれると試算されている。ポーランドのカトヴィツェで2018年12月に開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)では,脱炭素化の過程で生じる産業構造や雇用機会の変化に対し,新たな雇用の創出,教育訓練,社会的支援策など公正な移行を実現する取組の重要性を確認した「連帯と公正な移行のためのシレジア宣言」が採択されたところである。
3 長期低排出発展戦略に盛り込むべき事項
 以上のような観点から,長期低排出発展戦略においては,少なくとも以下の内容を盛り込んだものとし,速やかに策定・提出するべきである。
(1) 2050年削減目標の引上げ及び同目標に至る道筋の明示(意見の趣旨第1項)
 パリ協定と科学の要請に基づく脱炭素化への道筋を明確にし,これを国内外に示していくことは,持続可能な経済社会へと転換していくために不可欠である。
 国は,「第4次環境基本計画」(2012年4月閣議決定)において2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す(以下「2050年目標」という。)とし,パリ協定の目標を受けて策定された「地球温暖化対策計画」(2016年5月閣議決定)においても,基準年を示さないまま,2050年目標を維持した。
 一方で,欧州委員会はCOP24を前にEUとしての長期低排出発展戦略案をまとめ,2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指すとするなど,先述した1.5℃特別報告書の警告を真摯に受け止める声が世界的に高まっている。
 このような世界の流れを踏まえ,日本においても,2050年までに温室効果ガスの排出を80%削減するとの目標を引き上げ,実質排出ゼロに近づけたものとすべきである。
 これは,産業革命以降,先進国の一員として世界に先駆けて豊かさを享受するために大気中の二酸化炭素を大量に排出してきた日本の責務でもある。
 また,2016年5月に策定された「地球温暖化対策計画」においても,2050年目標に向けた具体的な道筋はいまだ描かれていない。
 二酸化炭素は長期にわたり大気中にとどまり蓄積し続け,その累積量と気温上昇が比例関係にあることから,当連合会は,2050年に至るまで直線的に排出量を削減する必要性を指摘してきたところである。
 2030年の削減目標は,現行では2013年度比26%削減(1990年度比では18%削減)とされている。これは,経済産業省が公表した「長期エネルギー需給見通し」(2015年7月16日公表)及びこれに基づく「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月3日閣議決定)で示された電源構成を前提とするもので,不十分である。
 
 今般,長期低排出発展戦略を策定するに当たっては,長期目標に向けた具体的な道筋として,京都議定書以来,削減目標の基準年とされてきた1990年を基準年とした上で,パリ協定の目標と整合するよう,2050年までの過程にある2030年の削減目標を少なくとも1990年度比40%以上削減に引き上げ,2040年の削減目標についても1990年度比60%以上削減とすべきである。
(2) エネルギー消費量の削減と高効率化(意見の趣旨第2項)
 日本における温室効果ガス排出のうち,約9割をエネルギー起源二酸化炭素が占めているところ,エネルギー利用の高効率化やエネルギー消費の少ない製品への転換等によってエネルギー消費量を削減することが二酸化炭素排出削減に不可欠である。
 特に,建物の断熱性能規制の強化,並びに自動車や,工場・事業所及び家庭の設備・機器におけるエネルギー効率の向上を促す仕組みの導入が必要である。
 また,廃熱利用の徹底等による熱利用の促進等,エネルギー供給におけるエネルギー消費量の削減を誘導する仕組みも導入すべきである。
(3) 石炭火力発電からの速やかな脱却(意見の趣旨第3項)
 事業用石炭火力発電からの二酸化炭素排出は,日本の二酸化炭素排出量全体の約22%を占めている。
 石炭は安価であるが,化石燃料の中でも深刻な健康被害をもたらす大気汚染物質を多く含み,発電量当たりの二酸化炭素の排出量が最も多く,高効率石炭火力発電でも天然ガス火力の約2倍の二酸化炭素を排出する。1.5℃特別報告書は,2050年にも二酸化炭素の排出を実質ゼロとするよう求めるものであり,発電部門における石炭火力からの脱却がまず求められる。
 2017年11月に開催された国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)では,カナダ政府とイギリス政府の主導で,欧州11か国及び米ワシントン州を含む25か国及び3つの自治体が「脱石炭連盟」を発足し,石炭火力からの段階的な撤退を訴えた。同連盟に加盟する国や自治体はその後も増えており,脱石炭火力の流れは世界的に拡大している。
 しかるに,日本では,100基を越える石炭火力発電所が稼働する中,東日本大震災による原子力発電所事故後の2012年以降,新たに50基を超える新設計画が出現し,現時点でも,工事中のものを含め,多くの石炭火力発電所の新設計画が進行中であり,パリ協定の要請に逆行する状態となっている。
 長期低排出発展戦略においては,計画中・工事中にかかわらず,石炭火力発電所の新設は認めず,既設の石炭火力発電所についても早期に廃止させる方針を明確にし,石炭火力発電からの脱却を明確に位置付けるべきである。
 また,「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月3日閣議決定)においても途上国への高効率石炭火力発電を「低炭素型インフラ輸出」と位置付けて導入を支援するとしているが,今世紀半ばに世界全体での脱炭素化が求められているのであるから,途上国への輸出も認めるべきでない。
(4) 再生可能エネルギーの主力電源化のための政策の推進(意見の趣旨第4項)
 当連合会は,「パリ協定の実施のための国内法制度の整備に関する意見書」(2017年2月16日),「パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書」(2018年6月15日)などで,パリ協定の下でのエネルギー・環境政策は,化石燃料からの脱却とともに,原子力発電所の稼働,新増設を前提とするのではなく,原子力からの脱却を前提とすべきことを指摘してきたところである。このような化石燃料原子力に代わる真に持続可能なエネルギー源は再生可能エネルギーをおいて他にない。近年,世界では,
再生可能エネルギーによる発電の設置コストが大きく低減しており,今後も更に低減が見込めることから,投資が急速に拡大している。
 しかし,「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月3日閣議決定)では再生可能エネルギーの主力電源化が盛り込まれたものの,その具体的内容は明らかでなく,主力電源化に不可欠の送電網の有効活用と拡充,送配電事業における電力システム改革など,再生可能エネルギーの大幅導入のために解決すべき課題は先送りされたままである。
 2012年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が導入されて以降,太陽光発電を中心に普及が進んでいるが,現状では世界の潮流に大きく後れをとっている上,原子力発電と石炭火力発電をベースロード発電と位置付け,これらの送電網への接続を優先し,再生可能エネルギーの接続枠の空き容量不足を理由とする接続拒否や出力抑制措置が行われている。こうした状況の下では,再生可能エネルギー事業者の収支予測が困難になり,再生可能エネルギー拡大の動きが失速しかねない状況にある。
 よって,2050年における再生可能エネルギーの導入目標を設定するとともに,2030年の導入目標を30%以上に引き上げ,2050年に至る拡大の経路を定めて再生可能エネルギーの主力電源化の意思を明確に示し,電力自由化を進め,送配電網の整備,再生可能エネルギーの送電網への優先接続及びそれに伴う需給管理システムの整備など,その実現のための措置を推進すべきである。
 同時に,再生可能エネルギーの拡大が地域の環境に悪影響をもたらすものであってはならず,自然保護や健全な環境の維持に相反するような事業(大規模な森林伐採による太陽光パネルの設置や環境破壊行為を伴うような方法で生成された一部の輸入バイオマスなど)を抑止するための規制(適切な環境アセスメントや土地利用に関する規制など)を速やかに整備すべきである。
(5) 脱炭素化を促進する効果的なカーボンプライシング(炭素の価格付け)の導入・強化(意見の趣旨第5項)
 カーボンプライシング(炭素の価格付け)とは,二酸化炭素に価格を付け,企業や個人が二酸化炭素の排出にコストを負うことで,二酸化炭素の排出削減を促す施策を指し,主な施策としては化石燃料の使用に伴う二酸化炭素に応じて課税する「環境税(炭素税)」,大規模排出事業者やその事業所ごとに二酸化炭素の排出量に上限を設け,超過分及び不足分を取引する「国内排出量取引制度」がある。このようなカーボンプライシングの導入・強化は,脱炭素とエネルギー消費の高効率化のための積極的な経済的インセンティブとして有効である。カーボンプライシングを積極的に導入してきた国では,炭素生産性(二酸化炭素のトン量当たりのGDP)を高め,脱炭素経済へと移行させる役割が確認されている。さらに,脱炭素に向かうESG投資を活性化させる役割もある。
 発電所や一定規模を超える排出量を有する大規模工場等を対象とする「国内排出量取引制度」は,排出削減のための経済的インセンティブとしての有効性が確認されており,EUや米国東西部の州に加え,中国や韓国でも導入されているが,日本ではいまだ導入されていない。
 また,日本は,従来の石油石炭税に上乗せする形で二酸化炭素排出量に応じた「地球温暖化対策のための税」を2012年に導入したが,これらの税の合計を,燃料別に二酸化炭素排出1トン当たりに換算して比較した場合,石炭が最も安く,地球温暖化対策のための税は税率が1トン当たり289円で,国際的にも税率は低いなど,温室効果ガスの排出を実質ゼロに近づける社会への移行を促すカーボンプライシングがなされているとは言えず,不十分である。
 したがって,日本でも実効性のある制度設計の下に,早急にカーボンプライシングの導入・強化を図るべきである。
                                                                             以上
 
(参考サイト)
〇パリ協定(2015年12月12日)
〇パリ協定長期成長戦略懇談会(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会)
IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約を 締約国が承認(国際連合広報センター)
IPCC 第5次評価報告書(気象庁
〇世界の雇用及び社会の見通し2018年版-仕事でグリーン化(エグゼクティブ・サマリー、日本語訳)(ILO)
〇環境基本計画(環境省
地球温暖化対策計画(環境省
〇パリ協定の実施のための国内法制度の整備に関する意見書(日本弁護士連合会・2017年2月16日)
〇パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書(日本弁護士連合会・2018年6月15日)
〇長期エネルギー需給見通し(経済産業省
〇エネルギー基本計画について(資源エネルギー庁

志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)公演「歌でつなぐ憲法の話~憲法に託された夢と希求」(2019年1月14日@新宿区角筈区民ホール)を視聴する

  2019年1月20日配信(予定)のメルマガ金原.No.3398を転載します。
 
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)公演「歌でつなぐ憲法の話~憲法に託された夢と希求」(2019年1月14日@新宿区角筈区民ホール)を視聴する
 
 ここ何か月かの間、常に意識続けていた企画、「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」が、多くの方々のご協力により、盛会裡に終了しました。取り急ぎ、昨日のうちにブログに報告をアップすべく頑張ったおかげで、事務所を出たのはほぼ午前1時でした。
 こういう翌日というのは、やらねばならないことはまだまだたくさんありながら、なかなか意識と身体が動かないもので、夕方になって、ようやく「今日のブログ、どうしよう」ということに頭がいくようになりました。
 
 実は、「この動画がアップされたら、それを視聴した上でブログで紹介しよう」と目星をつけていた企画があり、ツイキャス生放送を担当していた「なにぬねノンちゃんねる」をチェックしたところ、昨日(1月19日)アップされていました!その企画というのは、去る1月14日に新宿区角筈区民ホールで開催された、志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)による「歌でつなぐ憲法の話 憲法に託された夢と希求(「歌でつなく憲法の話-第一集-」リリース記念、「あたらしい表現活動と法」、「教職のための憲法」出版記念公演)」(主催:歌でつなぐ憲法の話実行委員会、後援:九条の会・小平、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める西東京市民連合、科学者九条の会)というものです。
 
 巻末の私のブログへのリンク一覧にあるとおり、私は、インターネットで視聴できる志田先生の憲法をめぐる「歌と講演」のいくつかをご紹介してきましたが、おそらくは、この1月14日に行われた公演が、志田先生のイメージに最も近い、本来の「歌でつなぐ憲法の話」なのだろうと想像していました。
 そして、1時間38分に編集された「なにぬねノンちゃんねる」による動画の全編を視聴して、私の想像は間違っていなかったことが確認できたと思います。
 まず、歌が多い!1曲歌われるごとに、その曲と憲法との関わりをお話されるスタイル(歌唱と講話が半々くらい)だと、どうしても演奏できる曲の数は少なくならざるを得ません。
 今回は、お話は短めに凝縮し、曲と憲法との関わりについての説明は、演奏中に上映されるスライド(写真や文章)に多くを譲っておられました。
 その上、1曲、1曲演奏してもおかしくない数曲をメドレーにしている箇所もあったりします(公演時間の問題かもしれませんが)。
 
 志田先生のFacebookを拝見していると、公演直後には「今、燃え尽きた灰になっておりまして、気の効いた言葉を思い付きません(笑)。ともかくこの2年ほどの活動の集大成というか、こういうふうにやりたかったんだ、と思ってきたことが、ようやく、形になったと思っています。」と「公開」で書かれていたのが、
一昨日(1月18日)には、早くも「友達限定」ではありますが、半年後の再チャレンジを予告するという意欲を示しておられます。
 
 私も、燃え尽き症候群のなりかけでしたが、夕刻から志田先生のコンサート(ですよね)を視聴して、また憲法問題に自分なりの取組を続けて行こうという元気が回復してきました。是非皆さんも視聴してください。
 なお、14日の公演では、ゲストスピーカーとして、東京新聞記者の望月衣塑子さんがお話されましたが、その部分は動画には含まれていないことをお断りします。
 
20190114 志田陽子「歌でつなぐ憲法の話」(1時間38分07秒)
5分20秒~ お話
6分57秒~ 『オールド・ブラック・ジョー』
9分41秒~  お話(伴奏者紹介)
         ピアノ:沼館千佳子さん
         ギター:須藤 祐
         ブルースハープ:小林トモカズさん
13分15秒~ 『マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム』
19分36秒~ お話
21分05秒~ 『HOUSE OF THE RISING SUN』
23分52秒~ お話(ヤサグレ調で)
26分14秒~ 『朝日のあたる家』(日本語詞)
32分16秒~ ハナミズキ
38分20秒~ お話
39分42秒~ ゲスト:小川佳代子さん(安保法制違憲訴訟原告)のスピーチ
50分11秒~ お話
52分20秒~ メドレー
        ①『禁じられた遊び』(ギターソロ)
        ②『やさしいキスをして』
        ③『童神(わらびがみ)』
        ④『ダニーボーイ』
1時間04分15秒~ お話
1時間05分53秒~ ノーサイド
1時間12分10秒~ お話
1時間13分25秒~ 『蛍(「ラストゲーム・最後の早慶戦」主題歌)』
1時間17分50秒~ お話
1時間18分57秒~ 『夢の話』(作詞作曲:志田陽子)
1時間23分35秒~ 終演
-アンコールを求める拍手-
1時間24分45秒~ 再登場してお話
1時間26分05秒~ 贈る言葉
1時間30分25秒~ お話
1時間32分45秒~ 『ヘイ・ジュード』
1時間37分30秒~ 最後のご挨拶
 
(参考)
 そもそもこの公演は、「歌でつなく憲法の話-第一集-」リリース記念、「あたらしい表現活動と法」、「教職のための憲法」出版記念と銘打たれていました。後半の2冊は分かりますよね。この2著にリンクしておきます。
志田陽子編、志田陽子・比良友佳理著『あたらしい表現活動と法』(2018年4月・武蔵野美術大学出版局刊)
志田陽子編著『合格水準 教職のための憲法』(2017年11月・法律文化社刊)
 ただ、「歌でつなく憲法の話-第一集-」は、AMAZONで検索しても出てこないですね。ライブ会場(?)での手売りで入手するしかないのだろうか?
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/志田陽子氏関連)
2016年8月21日
響け!歌声 自由のために 歌と映画と憲法と~予告8/28志田陽子教授(武蔵野美術大学憲法学)がおくる歌と講演(平和を育てる大泉9条の会)
2017年6月9日
九条の会・小平12周年の集い」(星美智子さんの歌と志田陽子さんの講演)を視聴する
2018年7月11日
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)が歌い、語る「楽しく聴いて知るコンサート」を視聴しましょう
2018年12月20日
志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)講演「安保法制違憲訴訟における平和的生存権・人格権」と『虚空(そら)の名前』など3曲の演奏を聴く

「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)からのメッセージ

  2019年1月19日配信(予定)のメルマガ金原.No.3397を転載します。
 
「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)からのメッセージ
 
 これまで4回にわたり、事前告知を繰り返してきた「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」が、今日(1月19日)の午後4時過ぎ(ほぼ予定通りの時刻です)に無事終了しました。
 和歌山県下各地をはじめ、一部は県外からも参加してくださった方は約900名にのぼりました。実行委員会を代表して(と言えるような立場かどうかの詮索はさておき)、参加してくださった皆さまに、心からお礼申し上げます。

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 ということで、今日は、その「つどい」の詳細レポートを書きたいのはやまやまながら、「それは無理だろう」ということは、事前に覚悟していました。
 私の立場は、10団体で構成する実行委員会の事務局というものであり、もちろん、ロビー企画は「安保関連法に反対するママの会@わかやま」のBさん、音楽部門は「9条ネットわかやま」のNさん、舞台・楽屋まわりは「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」のMさん、という具合に、それぞれ中心になって担当していただいている方はいるのですが、桂文福さんや小林節先生との交渉窓口は私がやっていましたし、どうしても、ロビーに設置した本部席、舞台袖、楽屋などにいる時間が(開会後も)長くならざるを得ず、実際、今日私は客席に一瞬たりとも座ることはありませんでしたので、レポートをお届けするのは断念しました。
 
 そこで、今日のブログをどういうものにしようとしているかというと、後日、この「つどい」がどういうものであったかを振り返った際、その概略を知ることができるようにしたいということで、本日来場者に受付で配布したA4・4枚分をA3裏表に印刷した資料をまるごとご紹介しようというものです。正直、大半が引用なので、私が「楽ができる」ということも、もちろんあります。
 
 まずは、その配付資料のPDFを掲げておきます。
 
 その1頁目は、プログラムのご紹介、その他です。
 
(配付資料1頁から引用開始)
                      危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲
                           1・19和歌山県民のつどい
                                 プ ロ グ ラ ム
 
2019年1月19日(土) 和歌山県民文化会館大ホール
 
開場 12時30分 
 様々なロビー企画がお待ちしています。子どもコーナー(紙芝居、絵本、折り紙)、 インスタフレーム、みんなで作る年表 など
 開会前に場内で、県内での様々な取組を紹介するスライドショーも上映します。
 
開会 13時30分
 主催者挨拶 柏原 卓さん(九条の会・わかやま)
「つどい」へのメッセージ(立憲野党から) 紹介
 第1部 相撲甚句河内音頭、そして9条新作落語
       桂 文福(かつら・ぶんぶく)さん(芸人9条の会) 
 第2部 講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」
       小林 節(こばやし・せつ)さん(慶應義塾大学名誉教授・弁護士)
 第3部 平和を奏でる有志たち
       津軽三味線 龍絃会(りゅうげんかい)
             Wakayama Peace Band
「つどい」からのメッセージ 提案
閉会 16時00分(予定) 
 
「あの青い空のように」の歌詞(第3部で一緒に歌いましょう)
 1 よろこび ひろげよう
   ※小さなぼくたちだけど
     あの青い空のように
        すみきった心になるように
 2 力を合わせよう
   ※くりかえし
 3 心をつなげよう
   ※くりかえし
 4 あかるさ いつまでも
   ※くりかえし
   あの青い空のように
      すみきった心になるように
     作詞作曲:丹羽謙次 ※2番・3番の冒頭は替え歌
 
※主催者からのお願い
  会場内での子どもたちの撮影について、個人が特定される状態の写真や動画をネット上にアップされることはご遠慮ください。
(引用終わり)
 
 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の重藤雅之(しげとう・まさゆき)弁護士の司会で始まった「つどい」は、実行委員会構成団体の1つ、「九条の会・わかやま」事務局の柏原卓(かしわばら・すぐる)さんによる主催者挨拶に続き、立憲野党6党からいただいたメッセージを披露しました。
 その一々をご紹介することは致しませんが、メッセージを頂戴した政党と県組織の代表者のお名前(組織名は全ていただいたメッセージに記載されていたとおりに表記)のみご紹介します(メッセージ本文はPDFファイルをご覧ください)。
 
こくみん民主党 和歌山県連 代表
 衆議院議員 岸本周平(きしもと・しゅうへい)様
 委員長 下角 力(しもかど・つとむ)様
 代表 谷口和樹(たにぐち・かずき)様
 代表 内海洋一(うつみ・よういち)様
 代表 野見山 海(のみやま・あつみ)様
 委員長 小谷英治(こたに・えいじ)様
 
 続いて、第1部は地元和歌山県(桃山町)ご出身で、芸人9条の会の創立以来のメンバーである落語家・桂文福(かつら・ぶんぶく)さんによる約30分の楽しいステージでした。
 ただ、何を言うにも、この第1部と、それに引き続く第2部の小林節先生による講演については、場内で(立ち見で)拝聴している時間よりも、場外にいる時間の方が長かったので、その全体の内容についてあれこれ書くだけの材料がありません。
 そこで、この第1部については、後ほど、小谷英治さんによってYouTubeにアップされる予定の動画をご覧いただきたいと思います(私も楽しみに拝見します)。
 ちなみに、この動画は、桂文福さん、小林節先生のお二人から、「自由に動画サイトにアップしてくださって結構です」というご了解が得られたため、公開できることになったものです。
 なお、文福師匠は、ご自身の出番が終わった後も、第2部の小林節先生の講演、第3部の龍絃会やWakayama Peace Bandの演奏を、ずっと舞台下手の袖で聴いておられました。
 
 桂文福さんの後、第2部は小林節(こばやし・せつ)先生(慶應義塾大学名誉教授・弁護士)による講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」でした。講演の内容は、以下の動画で聴講していただくとして、その概略を頭に入れていただくために、配付資料の2頁目に掲載した小林先生のレジュメをご紹介します。
 
(配付資料2頁から引用開始)
第2部 講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」レジュメ
 
                                                              憲法学者 小林  節
 
1.安倍政権による憲法破壊
 :特定秘密保護法(⇔知る権利)
  戦争法(⇔専守防衛、海外派兵の禁止)
  共謀罪(⇔プライバシー)
  労働法制改悪(⇔生存権(人間らしい生活))
  LGBT批判(⇔個人の尊厳、法の下の平等
  入管法改正(⇔立法権の空洞化)
  モリ・カケ問題、山口(「強姦」)不逮捕、メディア支配、官僚(含、司法?)  
  支配(権力の私物化(人治主義)(⇔法治主義、法の支配、民主主義、法の下の平等
 
2.安倍政権の改憲提案
  本命:9条に加憲:「必要な自衛を行う自衛隊を保持する」:9条2項(専守防衛、海外派兵の禁止)を否定:米軍の二軍化:愚か!
  その他:緊急事態条項(首相独裁)、参院選合区解消(「1人1票原則」を否定)、教育の充実(法律・予算で可能:憲法事項ではない)
  評価:要するに憲法改悪以外の何ものでもない
 
3.衆参同日選+国民投票の可能性
 :運動方法・費用が無制限(強者有利)になってしまう
 
4.護憲の唯一・完全な方法
 :国民投票での否決と政権交代
 
5.政権交代の方法
 :1人区における真の野党共闘の実現、これに尽きる
 
[小林 節(こばやし・せつ)氏 プロフィール]
  1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義!日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著)
                                          (以上「日刊ゲンダイDIGITAL」より)
 なお、小林先生は、和歌山県では、2015年11月21日に田辺市(紀南文化会館小ホール)で、2016年5月14日に和歌山市和歌山市民会館大ホール)で講演されています。
(引用終わり)
 
 小林先生のご見解は、日刊ゲンダイ連載のコラム「ここがおかしい 小林節が斬る!」に随時掲載されますので、是非注目していただければと思います。
 
 小林先生の講演終了後は第3部「平和を奏でる有志たち」となります。
 この部分は動画のアップはありませんので、私が書いた司会者用台本(第3部だけは私が書きました)を引用しておきます。
 
龍絃会のご紹介
「ここからは、「第3部 平和を奏でる有志たち」でお楽しみください。まずはじめは、津軽三味線奏者の三木久美夫(みき・くみお)さん率いる「龍絃会(りゅうげんかい)」の皆さまによる演奏です。三木さんは、2017年、2018年と2度にわたり、「ラブ&ピースライブ和歌山~平和を祈るコンサート」の開催を多くのミュージシャンに呼びかけて成功させるなど、音楽を通じて平和を訴える活動に積極的に取り組んでこられました。
 なお、龍絃会の演奏につきましては、写真撮影、録音録画は禁止とさせていただきますので、よろしくお願いします。
 それでは、龍絃会の皆さまによる津軽三味線の妙技をご堪能ください。」
 
Wakayama Peace Bandのご紹介
「平和を奏でる有志たち、続いての出演はWakayama Peace Bandの皆さんです。これまで、三木さんたちと共に、音楽で平和を訴えてきた素和歌(そわかか)と Crowfield(クロウフィールド)という2つのユニットに、第3部のコーディネーター、なかむらいづみさんが加わった7人編成による、この「つどい」のために結成されたスーパーバンドです。それでは、Wakayama Peace Bandの皆さんによる演奏をお楽しみください。」

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 なお、Wakayama Peace Bandが演奏した4曲は以下のとおりです。
 
1 イマジン(ジョン・レノン/英語詞)
2 この島~日本国憲法の歌(Crowfield/オリジナル)
3 Heal the World(マイケル・ジャクソン/英語詞)
4 風に吹かれて(ボブ・ディラン/日本語詞)
 
 この第3部の最後を締めくくるのは、配付資料1頁目に掲載されていた曲「あの青い空のように」(作詞作曲:丹羽謙次)であり、Wakayama Peace Bandのなかむらいづみさんからの呼びかけをきっかけに、客席に待機していた子どもたちやママ・パパたちがステージに上がり、客席と一緒に歌ってフィナーレを迎えました。
 
 そして、ステージで一緒に歌っていたうちのお1人、田辺市から参加してくださった「9条ママnetキュッと」の笠松美奈さんが、「つどい」からのメッセージを朗読(提案)してくださいました。
 実は、笠松さんがこのメッセージの朗読(提案)を担当することが正式に決まったのは、何と今日の開会前(!)というドタバタであり、笠松さんにはまことに申し訳ない次第でした。けれども、今日会場で美奈さんが読み上げるメッセージを聴いた方は、誰もそんなことには気がつかず、とても心に染みる立派な提案であったと感動したことと思います。さすがは、あの名曲『スナメリ泳ぐ海』の作者だけのことはある、とうなずいた方も少しはいたかな?
 このメッセージの原案自体、公表がはばかられるドタバタの末に生み出されたのですが、会場で聴かれた方、そして以下に掲載するメッセージを読まれた方はどう受け止められたでしょうか?
 事前に十分な打合せが出来なかったために、会場に拍手による賛同を求める段取りがもたついてしまったのは、美奈さんや、第3部の最後で「あの青い空のように」を歌った後、ステージに残ってメッセージを聴いていた子どもたち、ママ・パパたち、Wakayama Peace Bandの皆さんにも申し訳なかったな、と反省しきりです。
 まあ、それはそれとして、少なくとも私が感じた会場の反応は、普通の「集会アピール」で賛同の拍手を送る時の反応とは明らかに違うもので、とても大きな共感を持っての拍手をいただけたのではないか(手前味噌ではありますが)というものでした。
 それでは、配付資料の最終頁(4頁)に掲載されていた「つどい」からのメッセージをご紹介します。
笠松美奈さんについての参考ブログ(弁護士・金原徹雄のブログ)
2013年11月16日
『スナメリ泳ぐ海』から世界を見たら
『スナメリ泳ぐ海』を演奏する「なつおmeets南風」(笠松美奈さんはキーボード)
 
(配付資料4頁から引用開始)
                             「つどい」からのメッセージ
 
 私たちは、この「つどい」で、子どもたちや会場の皆さんと一緒に歌うために、「あの青い空のように」という曲を選びました。この曲の歌詞の1行目は、歌う者が自由に替え歌にして、自分たちの思いを歌い上げることが広く行われています。今日私たちが選んだことばは、「力を合わせよう」と「心をつなげよう」でした。
 
 今、私たちが大事にしてきた日本国憲法が、何だかよく分からない理由で変えられようとしています。私たちが、戦争のない平和な暮らしを子どもたちに手渡すことができるのか、その瀬戸際にあるということも学びました。
 私たち1人1人の力はとても小さいけれど、力を合わせれば、きっとできる。必ず子どもたちに私たちの宝物をひきつぐことができる。そのために「力を合わせよう」というメッセージを送ります。
 
 今は幼い子どもたちも、やがては自分で周りを見わたし、自分で考え、自分の足で歩き出します。
 私たちがみんなで力を合わせるためにも、お互いを理解し合い、心を通わせること、世代を超えて心をつなぐことがとても大切です。
 私たちの思いを子どもたちにつなぎ、成長した子どもたちが、平和を願い、そのために自ら行動する人となるように、「心をつなげよう」というメッセージを送ります。
 
 この「つどい」に集まった私たちは、老いも若きも、女性も男性も、互いに1人1人の人格を尊重し、平和を願い、公正を尊ぶという日本国憲法の理念を守り、より良い世界の実現のために全力を尽くすことを誓います。
 
  2019年1月19日 
 
      「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 
       1・19和歌山県民のつどい」 参加者一同
(引用終わり)  
 
 以上で、本日の「つどい」(開会~閉会)の流れをご紹介しました。もちろん、開会前には、様々なロビー企画が「ママの会」を中心に行われましたし、開会前には、県下各地の様々な平和に関する取組の写真を上映するスライドショーなども行われましたが、それらをご紹介するだけの余力はありませんので、写真を中心にブログに先だってFacebookに投稿した記事にリンクしておきます。
 
Facebookへの投稿1(タペストリー、横断幕)
Facebookへの投稿2(シール投票、みんなで作る年表、絵手紙)
Facebookへの投稿3(3000万人署名、紀州九条せんべい)
Facebookへの投稿4(桂文福さん)
Facebookへの投稿5(Wakayama Peace Band)
Facebookへの投稿6(「つどい」からのメッセージ)
 
 最後に、配付資料3頁目の「賛同団体一覧表」を掲載します。ここで一言お断りしておくべきは、今日の「つどい」で「きび9条の会」から賛同書をいただいたということで、本日用意して配布した資料には当然同会の記載は間に合いませんでしたが、以下の「引用」分には、「きび9条の会」を追加しておきました。ちなみに、有田川町にある「きび9条の会」には、私も去る2016年3月に、同会の学習会の講師にお招きいただいたのでした。
 
(配付資料3頁から引用開始)
            私たちはこの「つどい」に賛同します!(賛同団体一覧表)
 
安倍9条改憲NO!かつらぎ町民アクション/安倍9条改憲NO!「3000万署名」和歌山市民アクション/「安倍9条改憲を許さない」那賀連絡会/安保条約をなくし、平和と民主主義、生活向上をめざす和歌山県民会議/岩出市九条の会/うたごえオールスターズ/輝け9条!芳養の会/きび9条の会/紀宝9条の会(三重県紀宝町)/紀南9条の会/くしもと9条の会/くまの平和ネットワーク/九条の会いなみ/9条の会・うちた/9条の会・かつらぎ/九条の会・きし/9条の会・高野口/九条の会ゆら/9条ママnetキュッと/キリスト者9条ネット和歌山/憲法9条を守る有田共同センター/憲法9条を守る伊都・橋本連絡会/憲法9条を守る和歌山市共同センター/古座川九条の会/雑賀9条の会/四箇郷9条の会(準)/市役所・水道局退職者九条の会/白浜9条の会/新日本婦人の会有田川支部新日本婦人の会紀の川支部新日本婦人の会西牟婁支部新日本婦人の会広川準備支部新日本婦人の会みなべ町支部新日本婦人の会龍神支部新日本婦人の会和歌山県本部/新日本婦人の会和歌山市支部/田辺・9条の会/治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟和歌山県本部/はしもと9条の会/はしもと9条の会西部/ピース9の会・パープル/広川憲法9条の会/平和と憲法を守りたい市民の声/平和・民主・革新の日本をめざす和歌山県の会/守ろう9条 紀の川 市民の会/守ろう9条 有功・直川の会/みなべ「九条の会」/和歌山うたごえ九条の会和歌山県医療労働組合連合会/和歌山県職員組合牟婁地方支部和歌山県農業協同組合・農業関連団体労働組合連合会/和歌山県母親大会連絡会/和歌山県民主医療機関連合会/和歌山市ひがし9条の会/和歌山司法9条の会/和歌山障害者・患者九条の会/和歌山中央医療生活協同組合(五十音順)
 
危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい実行委員会
構成団体
安全保障関連法制の廃止を求める和歌山大学有志の会/安保関連法に反対するママの会@わかやま/安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま/9条ネットわかやま/九条の会・わかやま/憲法九条を守るわかやま県民の会/憲法9条を守る和歌山弁護士の会/戦争をさせない和歌山委員会/和歌山県地方労働組合評議会/和歌山県平和フォーラム
(引用終わり)
f:id:wakaben6888:20181203110334j:plain
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」関連)
2018年12月3日
速報!「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)を開催します
2018年12月23日
詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)
2019年1月10日
日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め
2019年1月15日
直前情報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)

番組予告「ベイリーとゆいちゃん」(NHKスペシャル@2019年1月27日)

 2019年1月18日配信(予定)のメルマガ金原.No.3396を転載します。
 
番組予告「ベイリーとゆいちゃん」(NHKスペシャル@2019年1月27日)
 
 世の中には、[猫派」と「犬派」と「どちらも嫌い派」の3種類の人がいるらしいのですが、どう考えても、私は「猫派」の家系でした。けれども、6年前に満20歳で家猫を喪ってからは、自分の年齢も考えて、新しいペットは迎えていません。
 とはいえ、我が家に犬がいた時期も、わずかながらにあり、私の小学生から中学生にかけての頃だったでしょうか、紀州犬を2代続けて(母犬と娘犬)飼ったことがありましたが、惜しいことに、いずれも短命でした。
 
 そんな「猫派」の私でも、以下のような番組告知を読むと、「見てみたいな」という気になったりします。
 
NHK総合テレビ 2019年1月27日(日)午後9時00分~9時49分
NHKスペシャル「ベイリーとゆいちゃん」
(番組案内から引用開始)
神奈川県立こども医療センターには、医療現場に常駐するセラピー犬、ベイリーがいる。長期入院で気分が沈みがちな子どもに寄り添い心をいやしたり、手術室に行くのを嫌がる子どもに付き添ったり。ベイリーが関わった患者は9年間で実に3000人以上。ベイリーに始まった医療現場へのセラピー犬の本格的な導入は、今、全国の医療機関へと広がりを見せている。リハビリの現場にセラピー犬が参加すると、患者の回復が早まったり、自閉症児のコミュニケーション能力が向上したりするケースがあることが注目されている。今回、番組では、重い病と決別するため、大手術を受ける少女、ゆいちゃん(10歳)とセラピー犬ベイリーが、心を通わせながら様々な苦難を乗り越えていく日々を追う。さらに、最新科学は『なぜ犬が人間の心を癒やすのか?』その理由を解き明かしつつある。人と犬の間には、種が違うにもかかわらず『互いに愛情を感じ、心を癒やし合う仕組み』が確かに存在することが分かってきたのだ。それは、人と犬が共に歩んだ3万年の“共進化”が生みだした奇跡の絆だった。犬好きの方!必見です。
(引用終わり)
 
 このベイリーが所属する(というのかな)特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズのホームページに、昨年の10月、「“名誉ファシリティドッグ”ベイリーの引退セレモニーを行います」というプレスリリースが掲載されていましたので、引用してみます。
 
(抜粋引用開始)
 ファシリティドッグのベイリー(10歳・オス)は、国内初のファシリティドッグとして、平成22年1月より静岡県立こども病院で活動を開始。その後、平成24年7月に神奈川県立こども医療センター(総長:山下純正氏 http://kcmc.kanagawa-pho.jp)に着任し、病院スタッフの一員として、ハンドラー森田優子と一緒に大勢の子どもたちを笑顔にしてきました。
 ベイリーは10歳の誕生日を機に徐々に病棟業務を後任犬のアニー(2歳・メス)に引き継ぎ、最近は“名誉ファシリティドッグ”として病院内ボランティア団体での活動に移行。この度ひとつの節目として引退セレモニーを執り行います。
【日時】10月16日(火)14:00スタート (13:30受付開始)
【場所】神奈川県立こども医療センター体育館 http://kcmc.kanagawa-pho.jp/
 特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ( http://sokids.org/ja/ )が派遣するファシリティドッグは、1年半から2年にわたる特別なトレーニングを積み、治療行為に関わる「動物介在療法」を主体として活動します。今回の引退セレモニーには育成元の「アシスタンスドッグス・オブ・ハワイ」(アメリカ・ハワイ州)の創設者モーリーン・マウラー氏とトレーナーでベイリーのパピーレイザーだったシャロン・ダーキスト氏も、シャイン・オン!キッズ理事長のキンバリー・フォーサイスと共に参加します。
 今までベイリーが病院で出会った子どもの数は、のべ2万人以上。「苦しかった入院生活に彩りを与えてくれた」、「ベイリーが来てくれることが楽しみで乗り越えられた」、「リハビリを頑張れたのはベイリーのおかげ」等、たくさんの声が寄せられています。当日は、お子さんからの感謝のスピーチや、お手紙や絵のご紹介もいたします。
 今後は後任犬のアニー(メス・2歳)にバトンを渡し、ボランティア犬として第二の人生を歩みます。
【ファシリティドッグとは】
 病院に常勤して医療チームの一員として働けるように、専門的なトレーニングを受けた犬です。 ハンドラーとペアになって活動し、単なる患者との触れ合いにとどまらず、小児がんや重い病気の治療にも関わっています。
 日本ではまだ、シャイン・オン!キッズが派遣する静岡県立こども病院と神奈川県立こども医療センターにしか存在しません。(都内公的病院に新規導入準備中)
 ファシリティドッグの大きな特徴は、毎日同じ病院に勤務し、個々のニーズに合わせた活動を行うことです。痛い検査や手術室への付き添い、リハビリ支援なども行います。いろいろな病院や施設を巡回訪問することはありません。
 ときどき訪れて短い時間だけふれ合うのではなく、同じ犬がいつもそこにいて多くの時間を繰り返し過ごせることが、入院治療している子どもたちの心の励みになります。ファシリティドッグプログラムは、歯の妖精「TOOTH FAIRY」プロジェクト(日本歯科医師会協賛・日本財団実施)をはじめ、多くの企業、団体、個人のご支援により運営しています。
(引用終わり)
 
 実は、ベイリーのことは本にもなっているのですね。2011年11月に、岩貞るみ子さんの文、澤井秀夫さんの写真で、小学館から刊行されています。思わずAMAZONマーケットプレイスで注文してしまいました。
 
『ベイリー、大好き セラピードッグと小児病院のこどもたち』
 
 27日の放送までに本も届いているでしょうから、ざっと目を通した上で、番組を視聴できればと思います。

「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」(2/23法テラス和歌山・法教育セミナー)のご案内

 2019年1月17日配信(予定)のメルマガ金原.No.3395を転載します。
 
「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」(2/23法テラス和歌山・法教育セミナー)のご案内
 
 昨日、消費者ネットワークわかやま公開学習会「無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」(2019年2月9日@和歌山県勤労福祉会館プラザホープ2階多目的室)をご案内したところですが、2日続けての「終活」企画のご案内です。
 今日ご紹介するのは、法テラス和歌山(正式名称は日本司法支援センター和歌山地方事務所)が主催する法教育セミナー「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」(2019年2月23日@和歌山県民文化会館小ホール)です。
 
 「終活のススメⅡ」ということは「終活のススメⅠ」があった訳で、それは4年前に開催した「法テラス和歌山 法教育セミナー-終活のススメ-」(2015年3月14日@和歌山市あいあいセンター6階ホール)でした。
 前回の「終活のススメ」は、第1部でドキュメンタリー映画エンディングノート』(砂田麻美監督)を上映し、第2部で、相続・遺言を主なテーマとした座談会形式の弁護士による法律講座という構成でした。事前告知した私のブログは以下のとおりです。
 
2015年2月2日
映画『エンディングノート』上映と法律講座のご案内(予告3/14法テラス和歌山法教育セミナー)
 
 前回は映画を上映した第1部、今回は林家染二(はやしや・そめじ)師匠に落語をお願いしています。
 私自身、上方落語といえば、長らく米朝事務所と提携して和歌山で落語会を開催してきている和歌山音楽愛好会フォルテに関わってきた関係から、米朝一門の皆さんの高座は何度も拝見してきましたが、染二さんの師匠である四代目林家染丸一門の噺家さんとはこれまで一度もご縁がありませんでしたので、今回の企画で初めて染二師匠の落語を聴くことができるのを非常に楽しみにしています。
 
 ちなみに、染二師匠のオフィシャルサイトに掲載されたプロフィールによると、染二さんは龍谷大学法学部のご出身、「2012年~落語家で初めて京都大学で講義(※「宇宙総合学」全学部1・2回生対象)を担当し、その他大阪電気通信大学京都造形芸術大学大阪成蹊大学にも出講している。」とか。
  もっとも、2月23日には「出講」していただくという訳ではなく、高齢者が消費者被害にあわないようにという創作落語の一席をお願いしているのですが。
 
 そして、第2部は、今回も座談会形式の法律講座で、弁護士、司法書士により、相続、遺言、成年後見などについて、分かりやすく説明します。
 
 以下に、チラシ記載情報を転記します。
 
(チラシから引用開始)
終活のススメⅡ
~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~
 
第1部 落語 林家染二(はやしや・そめじ)さん
 
第2部 座談会 林家染二さん・弁護士・司法書士
     (相続、遺言、成年後見について)
 
開催日時 平成31年2月23日(土)
     開場/14:00 開会/14:30 閉会予定/16:15
会場 和歌山県民文化会館小ホール
      和歌山市松原通一丁目1番地
定員 300名
入場無料
予約不要
手話通訳あり 手話通訳が必要な方は事前に法テラスにご連絡ください。お席を確保します。
  
参加者特典
『法テラス和歌山特製エンディングノート(冊子)』と『LEDライト付きペン』を差し上げます。(300名限定)
 
主催者・お問合せ先
日本司法支援センター和歌山地方事務所(法テラス和歌山)
 TEL:050-3383-5457(受付時間平日9:00~17:00)
 
後援
(引用終わり)

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 上掲の、4年前に書いた私のブログでもご紹介したとおり、無料でダウンロードできるエンディングノートも色々ありますが、法テラス和歌山のスタッフが独自に作成し、法教育講座などで配布して好評を博している特製エンディングノートを、普段はカラーコピーで対応しているのですが、今回の企画に合わせて特に印刷することになりました。ご期待ください。
 
 私自身、エンディングノートや終活を素材として、「法」のはたす役割についてお話する機会があり、その骨子を文章にまとめていますので、その一部を以下に引用し、今日の記事のまとめとしたいと思います。
 
「法テラス和歌山では、2015年3月に、一般市民を対象とした法教育セミナーを開催し、その中で、『エンディングノート』(砂田麻美監督作品/2011年)というドキュメンタリー映画を上映しました。
 映画は、長年ビジネスの最前線で活躍していた男性が、定年を迎えて間もなく癌の宣告を受け、自分の生と死を見つめながら、様々な思いを整理してエンディングノートを作成していく様子を実の娘さんが撮影したもので、非常に感銘深いものでした。
 セミナーでは、映画を上映した後、後半で、和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会の正副委員長を招き、法テラス和歌山法律事務所のスタッフ弁護士がコーディネーターを務めて、遺言や相続についての解説をしてもらうという構成で進行しました。
 皆さんは、エンディングノートというものを見たことがあるでしょうか?色々なものが市販されていますし、ネットで無償ダウンロードできるものもたくさん公開されています。
 自分がどんな人生を歩んできたかを振り返る「自分史」、死後に子どもや親族が困らないように、亡くなったことを連絡して欲しい人の連絡先、葬儀や墓についての希望、財産や負債のことなどが書けるようになっているものが多いようです。
  これは、どちらかと言えば「トラブルが起こらないようにするにはどうするか」という問題ですが、少し私の意見を書いてみます。
 人はみな「自分らしく生きたい」「自己実現したい」と望んでいるはずです。実は、上でご紹介したエンディングノートは、「どう死ぬか」ということ、すなわち究極の「自己実現」のためのツールなのだと思います。
  しかし、セミナーの後半で取り上げたテーマは、「相続」「遺言」でした。
  それはこういうことです。
  人は、様々な社会集団や家族の中で生活しています。彼ら、彼女たちは、朝起きてから夜眠りにつくまで、習俗、道徳、規則(校則や就業規則)、法律、条例など、様々な規範の中で生きています。
  そのような「社会的動物」である人間が、自らを取り巻く環境の中で、いかに「自分らしく」生きていくかということに、「法」が関与できる部分というのは決して多くはありません。分野にもよることですが、「ごく一部」であると言っても良いでしょう。
 しかし、「一部」だから重要性が低いということにはなりません。第1でも少し説明しましたが、裁判制度によって担保された「法」の体系が存在することにより、私たちは、最終的には「権力者による恣意」ではなく、法律を基準とした「公正な判断」が得られると社会(国)を信頼することができます。
 人類は、全能の君主による一方的な裁きではなく、衆智を集めて作った「法」を公正に適用する裁判制度こそ、信頼するに足ると選び取ったのです。近代「法治主義」とは、すなわちそのような「法」に対する信頼の体系なのです。
  もちろん、社会には、「法」は関与せず、習慣や道徳に委ねるべきと考えられる分野もたくさんありますし、そのような問題が法廷に持ち出されても裁判所は不適法として却下します。
  そして、「法」によって規律されている社会的事象をめぐってトラブルが生じないように、あらかじめ明確な「遺言書」や「契約書」を作ったりすること。万一トラブルが生じた場合に、「法」に則った公正な解決がなされるようにすること。そのような「法的」な解決のためのアクセス障害を克服するためにこそ、法テラスが設立され、民事法律扶助業務を運営しているのです。」

「無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」(2/9消費者ネットワークわかやま公開学習会)のご案内

 2019年1月16日配信(予定)のメルマガ金原.No.3394を転載します。
 
無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」(2/9消費者ネットワークわかやま公開学習会)のご案内
 
 重なるときは重なるもので・・・というのは、ここ最近、「終活」というキーワードにかかわる企画をほぼ同時期に3つも目にすることになったのです。
 
 そもそも、「終活(しゅうかつ)」とは?と言ったところで、「公的な」定義がある訳ではありません。
 インターネットで検索してみれば、一般社団法人終活ジャパン協会とか、一般社団法人終活カウンセラー協会などという団体のホームページがあったりしますが、法制度としての「終活」というものはありません。ただ、一般に言われている「「人生の終わりのための活動」の略。人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎えるに当たって執る様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉である。」(Wikipediaより)のうちのごく一部が、「遺言」などとして個別に制度化されているだけです。
 上のWikipediaの説明によると、「終活」という言葉自体の生みの親は「週刊朝日」で、2009年の連載以降広まったとされています。
 
 実際、私が「終活」という言葉を知ったのはそれほど以前のことではなく、3年前に『エンディングノート』(砂田麻美監督/2011年)という映画の上映を含む企画に関わった時が最初でした。
 その時に書いたブログが以下のものです。
 
2015年2月2日
映画『エンディングノート』上映と法律講座のご案内(予告3/14法テラス和歌山法教育セミナー)
 
 3年前の3月14日に上の企画を主催した法テラス和歌山では、今年の2月23日(土)に、その続編ともいうべき「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」を開催するのですが(和歌山県民文化会館小ホール)、それはまた機会をあらためてご紹介します(今回の企画の第1部は、映画上映ではなく落語上演です)。
 
 以上が、「終活」関連の3つの企画の1つなのですが、あと2つのうちの1つは、私の友人で、ある障害者団体の役員をしている女性から、「終活に関する学習会を企画しているので弁護士を講師に依頼したい」という相談を受け、和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会を紹介したというものです。
 
 そして、3つめの「終活」に関わる企画というのが、今日ご紹介する消費者ネットワークわかやま公開学習会「無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」です。
 もっとも、私自身、この企画に関わっている訳ではなく、単に主催団体の役員の方からチラシをいただいただけなので、そこに記載された以上の情報の持ち合わせはありません。
ただ、そのチラシに「最近では「終活」を狙った悪徳商法や詐欺が問題となっています。」とあるのを読み、インターネットで「終活」と検索してヒットするサイトを子細に見ていくと、そういうサイトを公開しているところ自体は「悪徳商法や詐欺」と無関係であったとしても、「終活」が、新手の消費者被害の素材になりつつあるという事情も、「そうかもしれない」と何だかうなずかれるような気がしてきます。
  
 それにしても、こう私の周辺で「終活」という言葉を頻繁に聞くようになるとは、これが「時流」というものでしょうか。
 以下に、「無縁社会と終活」のチラシ記載情報をご紹介します。
 
(チラシから引用開始)
消費者ネットワークわかやま 公開学習会
無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~
 
 人と人とのつながりが希薄化するなか、1人で孤独に亡くなり、引き取り手もない「無縁死」が急増しています。
 2010年に放送されたNHKスペシャル『無縁社会』では、年間3万2千人が「無縁死」していると報道され、大きな話題となりました。
 
 そうした中で、人生の最期を考え、準備する「終活」への関心が高まっています。最近では「終活」を狙った悪徳商法や詐欺が問題となっています。
 
 無縁社会や終活にともなう消費者トラブルについて学び、人生のエンディングについて、一緒に考えてみませんか。
 
講師プロフィール
板垣淑子(いたがき・よしこ)さん
 NHK名古屋放送局 報道部(報道番組)チーフ・プロデューサー
 1994年NHK入局。報道局制作センター、大型企画開発センター、報道局社会番組部あどをへて、現在は名古屋放送局報道部チーフ・プロデューサー。主な担当番組は、NHKスペシャル「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない(2006年)」(ギャラクシー賞大賞)、同「無縁社会~“無縁死”3万2千人の衝撃~(2010年)」(菊池寛賞)、同「終の住家はどこに 老人漂流社会(2012年)」、などを制作。2015年、放送文化基金賞個人賞を受賞。
 
日時 2019年2月9日(土)開場13:00 講演13:30~15:30
会場 和歌山県勤労福祉会館プラザホープ 2F 多目的室
   (和歌山市北出島1丁目5-47)
お問合せ 消費者ネットワークわかやま 事務局 ☎073-474-1124
(引用終わり)

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(参考サイト)
○「無縁社会から有縁社会へ ~高齢者の孤立をなくすために~」(2018年8月)

直前情報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)

 2019年1月15日配信(予定)のメルマガ金原.No.3393を転載します。
 
直前情報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)
 
 今週末の1月19日(土)、和歌山県民文化会館で開催される「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」については、本ブログでも、既に3回にわたって取り上げてきました。
 
2018年12月3日
速報!「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)を開催します
 
2018年12月23日
詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)
 
2019年1月10日
日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め
 
 県下10団体で結成した実行委員会の事務局を担当する私としては、この「つどい」が終わって初めて新年を迎える心境です。
 今日は、本番の4日前、最後の直前情報をお伝えします。
 チラシ(12月3日に確定)には書き切れなかった情報を補足してお知らせするとともに、「つどい」への期待感を高め、1人でも多くの方に、「あと1人でも2人でも、声をかけてみようかな」と思っていただきたいという、涙ぐましい(?)願いをこめた内容になるはずです。
 
【手話通訳をお願いしています】
 本「つどい」の大体の構成は、以下のとおりとなっています。
 
開会(13時30分)
主催者挨拶 
「つどい」へのメッセージ(立憲野党6党から) 紹介
第1部 桂 文福(かつら・ぶんぶく)さん(芸人9条の会)
      相撲甚句河内音頭、そして9条新作落語
第2部 小林 節(こばやし・せつ)さん(慶應義塾大学名誉教授、弁護士)
      講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」
第3部 平和を奏でる有志たち
     ① 津軽三味線 龍絃会(りゅうげんかい)
     ② Wakayama Peace Band
「つどい」からのメッセージ 提案
閉会(16時00分予定)
※文福さんのステージは30分、小林先生の講演は60分がおおよその目安です。
 
 チラシには、「小林節さんの講演には手話通訳がつきます。」とだけ記載していますが、上記プログラムの「開会」から「第2部 小林節さん講演」の終了まで、手話通訳をお願いしています。第3部は音楽なので手話通訳はありません。また、最後の「つどい」からのメッセージについては、当日配布資料に文案を掲載する予定です。
 ということで、聴覚障害者の方にも是非ご参加いただきたいと存じます。
 
【磁気ループを設置します】
 補聴器を使用する方が、音声を聴き取りやすくする磁気ループを、和歌山市からお借りし(無料です)、当日設置すべく手配しています。
 猫の手も借りたい実行委員会の窮状を見かねて、ボランティアで設置を引き受けてくださる方が見つかりました。ありがたいことです。
 なお、和歌山市役所のホームページによると、「利用するには磁気ループに対応した補聴器等が必要です。」ということですが、講演会の際に、いつも市役所から磁気ループを借り出している「守ろう9条 紀の川 市民の会」のチラシを読むと、「使用できるのは「Tモード」「MTモード」がある補聴器です。」とあります。
 
【開場は12時30分~開会前にも様々な楽しみがお待ちしています】
 開会は13時30分ですが、その1時間前の12時30分に開場します。開会まで1時間の時間をとっているのは、開会前にロビーにおいて、様々なブース、コーナーを設け、親子連れでも楽しんでいただけるよう、特に「安保関連法に反対するママの会@わかやま」の皆さんが準備を重ねてくださっているからです。
 子どもコーナーでは、紙芝居、折り紙、絵本、カルタなどが用意されている他、インスタフレーム、みんなで作る年表、シール投票などもあるとか。
 少し早めに入場して、楽しんでくださいね。
 
 それから、当日は、ロビーでピースグッズ販売コーナーなども設けられるのですが、私の一押しは、広島の楾大樹(はんどう・たいき)弁護士考案になる「檻の中のライオン・日本国憲法全条文クリアファイル」(200円)ですね。数に限りがありますので、お買い求めはお早めに。
 
 また、県下各地で行われている様々な活動の模様を伝える写真が集められ、スライドショーにして開会前に場内で映写されることになっています。上映時の背景音楽として、中川敬さんのご了解を得て、ソウル・フラワー・ユニオンの音楽が使用されるとか。どんな曲が使われるのか(私も聞いていません)楽しみです。
 
紀州九条せんべい復活!】
 皆さんは、12枚ワンセットになった煎餅に憲法9条の条文が焼き付けられた「紀州九条せんべい」を食べたことがありますか?一時は、和歌山に於ける憲法関連のめぼしい行事の際にはよく売られていたもので、「食べ飽きた」という人もいるかもしれません。何しろ、出資者を募って「紀州九条せんべいの会」というのが設立された位で、そういえば、私も1口出資したのだった。
 けれども、ここ何年かはお見かけすることもなく、忘れるともなく忘れていたのですが、何と「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」に結集するため、「紀州九条せんべい」も再び立ち上がることになりました。つまり、12枚の焼き印(出資金で製作したもの)を提供して煎餅屋さんに新たに焼いてもらうことになったそうです。食べたことのある人もない人も、是非ご家族、ご近所へのお土産に「紀州九条せんべい」をお買い求めください。
 なお、「紀州九条せんべい」の成り立ちについて、発案者である中北幸次さんが法学館憲法研究所の「今週の一言」コーナーに寄稿された「『紀州九条せんべい』誕生物語」を是非お読みください。
 
【みんなで歌おう『あの青い空のように』】
 第3部「平和を奏でる有志たち」では、三木久美夫さん率いる龍絃会(「つどい」では3人編成とか)による津軽三味線の妙技に引き続き、素和歌(そわか)のお2人、Crowfield(クロウフィールド)のご家族4人、それに第3部全体のコーディネーター、なかむらいづみさんが加わって臨時結成される「Wakayama Peace Band」による演奏が行われるのですが、最後に、『あの青い空のように』(作詞作曲:丹羽謙次)を会場の皆さんと一緒に歌おうと計画されています。
 「ママの会」からの提案による選曲ですが、短くて歌詞も憶えやすいし、とても良い曲ですよ。
 以下の動画などで馴染んでいただいた上で、是非当日ご一緒に歌いましょう。
いちごくらぶ「あの青い空のように」(2分26秒)
 
桂文福さん&小林節さん】
 メインゲストのお2人、桂文福さんと小林節さんについては、既にこれまでのブログで詳しくご紹介しています。特に、桂文福さんについては「詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)」を、
小林節先生については、「日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め」を是非お読みください。
 文福さんにしても、小林先生にしても、実行委員会を代表して交渉・連絡の窓口となった私から見て、この「つどい」への出演を非常に意欲的に受け止めてくださっており、必ずや参加者の皆さまにご満足いただけるものと確信しています。
 
 南北に長く、県庁所在地の和歌山市が県域の北西端に偏っている地理的特性のため、紀南地方の市町村からの参加はハードルが高いのですが、バスをチャーターして来てくださる地域もあると聞いており、感謝に堪えません。
 是非、集会のタイトルにあるとおり、危険な安倍改憲を絶対に阻止するという県民の意思を広くアピールする「つどい」となるよう、もう一段の周りへの参加の呼びかけをよろしくお願い致します。

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