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「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」(2/23法テラス和歌山・法教育セミナー)のご案内

 2019年1月17日配信(予定)のメルマガ金原.No.3395を転載します。
 
「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」(2/23法テラス和歌山・法教育セミナー)のご案内
 
 昨日、消費者ネットワークわかやま公開学習会「無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」(2019年2月9日@和歌山県勤労福祉会館プラザホープ2階多目的室)をご案内したところですが、2日続けての「終活」企画のご案内です。
 今日ご紹介するのは、法テラス和歌山(正式名称は日本司法支援センター和歌山地方事務所)が主催する法教育セミナー「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」(2019年2月23日@和歌山県民文化会館小ホール)です。
 
 「終活のススメⅡ」ということは「終活のススメⅠ」があった訳で、それは4年前に開催した「法テラス和歌山 法教育セミナー-終活のススメ-」(2015年3月14日@和歌山市あいあいセンター6階ホール)でした。
 前回の「終活のススメ」は、第1部でドキュメンタリー映画エンディングノート』(砂田麻美監督)を上映し、第2部で、相続・遺言を主なテーマとした座談会形式の弁護士による法律講座という構成でした。事前告知した私のブログは以下のとおりです。
 
2015年2月2日
映画『エンディングノート』上映と法律講座のご案内(予告3/14法テラス和歌山法教育セミナー)
 
 前回は映画を上映した第1部、今回は林家染二(はやしや・そめじ)師匠に落語をお願いしています。
 私自身、上方落語といえば、長らく米朝事務所と提携して和歌山で落語会を開催してきている和歌山音楽愛好会フォルテに関わってきた関係から、米朝一門の皆さんの高座は何度も拝見してきましたが、染二さんの師匠である四代目林家染丸一門の噺家さんとはこれまで一度もご縁がありませんでしたので、今回の企画で初めて染二師匠の落語を聴くことができるのを非常に楽しみにしています。
 
 ちなみに、染二師匠のオフィシャルサイトに掲載されたプロフィールによると、染二さんは龍谷大学法学部のご出身、「2012年~落語家で初めて京都大学で講義(※「宇宙総合学」全学部1・2回生対象)を担当し、その他大阪電気通信大学京都造形芸術大学大阪成蹊大学にも出講している。」とか。
  もっとも、2月23日には「出講」していただくという訳ではなく、高齢者が消費者被害にあわないようにという創作落語の一席をお願いしているのですが。
 
 そして、第2部は、今回も座談会形式の法律講座で、弁護士、司法書士により、相続、遺言、成年後見などについて、分かりやすく説明します。
 
 以下に、チラシ記載情報を転記します。
 
(チラシから引用開始)
終活のススメⅡ
~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~
 
第1部 落語 林家染二(はやしや・そめじ)さん
 
第2部 座談会 林家染二さん・弁護士・司法書士
     (相続、遺言、成年後見について)
 
開催日時 平成31年2月23日(土)
     開場/14:00 開会/14:30 閉会予定/16:15
会場 和歌山県民文化会館小ホール
      和歌山市松原通一丁目1番地
定員 300名
入場無料
予約不要
手話通訳あり 手話通訳が必要な方は事前に法テラスにご連絡ください。お席を確保します。
  
参加者特典
『法テラス和歌山特製エンディングノート(冊子)』と『LEDライト付きペン』を差し上げます。(300名限定)
 
主催者・お問合せ先
日本司法支援センター和歌山地方事務所(法テラス和歌山)
 TEL:050-3383-5457(受付時間平日9:00~17:00)
 
後援
(引用終わり)

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 上掲の、4年前に書いた私のブログでもご紹介したとおり、無料でダウンロードできるエンディングノートも色々ありますが、法テラス和歌山のスタッフが独自に作成し、法教育講座などで配布して好評を博している特製エンディングノートを、普段はカラーコピーで対応しているのですが、今回の企画に合わせて特に印刷することになりました。ご期待ください。
 
 私自身、エンディングノートや終活を素材として、「法」のはたす役割についてお話する機会があり、その骨子を文章にまとめていますので、その一部を以下に引用し、今日の記事のまとめとしたいと思います。
 
「法テラス和歌山では、2015年3月に、一般市民を対象とした法教育セミナーを開催し、その中で、『エンディングノート』(砂田麻美監督作品/2011年)というドキュメンタリー映画を上映しました。
 映画は、長年ビジネスの最前線で活躍していた男性が、定年を迎えて間もなく癌の宣告を受け、自分の生と死を見つめながら、様々な思いを整理してエンディングノートを作成していく様子を実の娘さんが撮影したもので、非常に感銘深いものでした。
 セミナーでは、映画を上映した後、後半で、和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会の正副委員長を招き、法テラス和歌山法律事務所のスタッフ弁護士がコーディネーターを務めて、遺言や相続についての解説をしてもらうという構成で進行しました。
 皆さんは、エンディングノートというものを見たことがあるでしょうか?色々なものが市販されていますし、ネットで無償ダウンロードできるものもたくさん公開されています。
 自分がどんな人生を歩んできたかを振り返る「自分史」、死後に子どもや親族が困らないように、亡くなったことを連絡して欲しい人の連絡先、葬儀や墓についての希望、財産や負債のことなどが書けるようになっているものが多いようです。
  これは、どちらかと言えば「トラブルが起こらないようにするにはどうするか」という問題ですが、少し私の意見を書いてみます。
 人はみな「自分らしく生きたい」「自己実現したい」と望んでいるはずです。実は、上でご紹介したエンディングノートは、「どう死ぬか」ということ、すなわち究極の「自己実現」のためのツールなのだと思います。
  しかし、セミナーの後半で取り上げたテーマは、「相続」「遺言」でした。
  それはこういうことです。
  人は、様々な社会集団や家族の中で生活しています。彼ら、彼女たちは、朝起きてから夜眠りにつくまで、習俗、道徳、規則(校則や就業規則)、法律、条例など、様々な規範の中で生きています。
  そのような「社会的動物」である人間が、自らを取り巻く環境の中で、いかに「自分らしく」生きていくかということに、「法」が関与できる部分というのは決して多くはありません。分野にもよることですが、「ごく一部」であると言っても良いでしょう。
 しかし、「一部」だから重要性が低いということにはなりません。第1でも少し説明しましたが、裁判制度によって担保された「法」の体系が存在することにより、私たちは、最終的には「権力者による恣意」ではなく、法律を基準とした「公正な判断」が得られると社会(国)を信頼することができます。
 人類は、全能の君主による一方的な裁きではなく、衆智を集めて作った「法」を公正に適用する裁判制度こそ、信頼するに足ると選び取ったのです。近代「法治主義」とは、すなわちそのような「法」に対する信頼の体系なのです。
  もちろん、社会には、「法」は関与せず、習慣や道徳に委ねるべきと考えられる分野もたくさんありますし、そのような問題が法廷に持ち出されても裁判所は不適法として却下します。
  そして、「法」によって規律されている社会的事象をめぐってトラブルが生じないように、あらかじめ明確な「遺言書」や「契約書」を作ったりすること。万一トラブルが生じた場合に、「法」に則った公正な解決がなされるようにすること。そのような「法的」な解決のためのアクセス障害を克服するためにこそ、法テラスが設立され、民事法律扶助業務を運営しているのです。」

「無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」(2/9消費者ネットワークわかやま公開学習会)のご案内

 2019年1月16日配信(予定)のメルマガ金原.No.3394を転載します。
 
無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」(2/9消費者ネットワークわかやま公開学習会)のご案内
 
 重なるときは重なるもので・・・というのは、ここ最近、「終活」というキーワードにかかわる企画をほぼ同時期に3つも目にすることになったのです。
 
 そもそも、「終活(しゅうかつ)」とは?と言ったところで、「公的な」定義がある訳ではありません。
 インターネットで検索してみれば、一般社団法人終活ジャパン協会とか、一般社団法人終活カウンセラー協会などという団体のホームページがあったりしますが、法制度としての「終活」というものはありません。ただ、一般に言われている「「人生の終わりのための活動」の略。人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎えるに当たって執る様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉である。」(Wikipediaより)のうちのごく一部が、「遺言」などとして個別に制度化されているだけです。
 上のWikipediaの説明によると、「終活」という言葉自体の生みの親は「週刊朝日」で、2009年の連載以降広まったとされています。
 
 実際、私が「終活」という言葉を知ったのはそれほど以前のことではなく、3年前に『エンディングノート』(砂田麻美監督/2011年)という映画の上映を含む企画に関わった時が最初でした。
 その時に書いたブログが以下のものです。
 
2015年2月2日
映画『エンディングノート』上映と法律講座のご案内(予告3/14法テラス和歌山法教育セミナー)
 
 3年前の3月14日に上の企画を主催した法テラス和歌山では、今年の2月23日(土)に、その続編ともいうべき「終活のススメⅡ~心穏やかな老後と残された人の幸せを願って~」を開催するのですが(和歌山県民文化会館小ホール)、それはまた機会をあらためてご紹介します(今回の企画の第1部は、映画上映ではなく落語上演です)。
 
 以上が、「終活」関連の3つの企画の1つなのですが、あと2つのうちの1つは、私の友人で、ある障害者団体の役員をしている女性から、「終活に関する学習会を企画しているので弁護士を講師に依頼したい」という相談を受け、和歌山弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会を紹介したというものです。
 
 そして、3つめの「終活」に関わる企画というのが、今日ご紹介する消費者ネットワークわかやま公開学習会「無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~」です。
 もっとも、私自身、この企画に関わっている訳ではなく、単に主催団体の役員の方からチラシをいただいただけなので、そこに記載された以上の情報の持ち合わせはありません。
ただ、そのチラシに「最近では「終活」を狙った悪徳商法や詐欺が問題となっています。」とあるのを読み、インターネットで「終活」と検索してヒットするサイトを子細に見ていくと、そういうサイトを公開しているところ自体は「悪徳商法や詐欺」と無関係であったとしても、「終活」が、新手の消費者被害の素材になりつつあるという事情も、「そうかもしれない」と何だかうなずかれるような気がしてきます。
  
 それにしても、こう私の周辺で「終活」という言葉を頻繁に聞くようになるとは、これが「時流」というものでしょうか。
 以下に、「無縁社会と終活」のチラシ記載情報をご紹介します。
 
(チラシから引用開始)
消費者ネットワークわかやま 公開学習会
無縁社会と終活~人生のエンディングを考える~
 
 人と人とのつながりが希薄化するなか、1人で孤独に亡くなり、引き取り手もない「無縁死」が急増しています。
 2010年に放送されたNHKスペシャル『無縁社会』では、年間3万2千人が「無縁死」していると報道され、大きな話題となりました。
 
 そうした中で、人生の最期を考え、準備する「終活」への関心が高まっています。最近では「終活」を狙った悪徳商法や詐欺が問題となっています。
 
 無縁社会や終活にともなう消費者トラブルについて学び、人生のエンディングについて、一緒に考えてみませんか。
 
講師プロフィール
板垣淑子(いたがき・よしこ)さん
 NHK名古屋放送局 報道部(報道番組)チーフ・プロデューサー
 1994年NHK入局。報道局制作センター、大型企画開発センター、報道局社会番組部あどをへて、現在は名古屋放送局報道部チーフ・プロデューサー。主な担当番組は、NHKスペシャル「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない(2006年)」(ギャラクシー賞大賞)、同「無縁社会~“無縁死”3万2千人の衝撃~(2010年)」(菊池寛賞)、同「終の住家はどこに 老人漂流社会(2012年)」、などを制作。2015年、放送文化基金賞個人賞を受賞。
 
日時 2019年2月9日(土)開場13:00 講演13:30~15:30
会場 和歌山県勤労福祉会館プラザホープ 2F 多目的室
   (和歌山市北出島1丁目5-47)
お問合せ 消費者ネットワークわかやま 事務局 ☎073-474-1124
(引用終わり)

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(参考サイト)
○「無縁社会から有縁社会へ ~高齢者の孤立をなくすために~」(2018年8月)

直前情報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)

 2019年1月15日配信(予定)のメルマガ金原.No.3393を転載します。
 
直前情報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)
 
 今週末の1月19日(土)、和歌山県民文化会館で開催される「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」については、本ブログでも、既に3回にわたって取り上げてきました。
 
2018年12月3日
速報!「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)を開催します
 
2018年12月23日
詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)
 
2019年1月10日
日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め
 
 県下10団体で結成した実行委員会の事務局を担当する私としては、この「つどい」が終わって初めて新年を迎える心境です。
 今日は、本番の4日前、最後の直前情報をお伝えします。
 チラシ(12月3日に確定)には書き切れなかった情報を補足してお知らせするとともに、「つどい」への期待感を高め、1人でも多くの方に、「あと1人でも2人でも、声をかけてみようかな」と思っていただきたいという、涙ぐましい(?)願いをこめた内容になるはずです。
 
【手話通訳をお願いしています】
 本「つどい」の大体の構成は、以下のとおりとなっています。
 
開会(13時30分)
主催者挨拶 
「つどい」へのメッセージ(立憲野党6党から) 紹介
第1部 桂 文福(かつら・ぶんぶく)さん(芸人9条の会)
      相撲甚句河内音頭、そして9条新作落語
第2部 小林 節(こばやし・せつ)さん(慶應義塾大学名誉教授、弁護士)
      講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」
第3部 平和を奏でる有志たち
     ① 津軽三味線 龍絃会(りゅうげんかい)
     ② Wakayama Peace Band
「つどい」からのメッセージ 提案
閉会(16時00分予定)
※文福さんのステージは30分、小林先生の講演は60分がおおよその目安です。
 
 チラシには、「小林節さんの講演には手話通訳がつきます。」とだけ記載していますが、上記プログラムの「開会」から「第2部 小林節さん講演」の終了まで、手話通訳をお願いしています。第3部は音楽なので手話通訳はありません。また、最後の「つどい」からのメッセージについては、当日配布資料に文案を掲載する予定です。
 ということで、聴覚障害者の方にも是非ご参加いただきたいと存じます。
 
【磁気ループを設置します】
 補聴器を使用する方が、音声を聴き取りやすくする磁気ループを、和歌山市からお借りし(無料です)、当日設置すべく手配しています。
 猫の手も借りたい実行委員会の窮状を見かねて、ボランティアで設置を引き受けてくださる方が見つかりました。ありがたいことです。
 なお、和歌山市役所のホームページによると、「利用するには磁気ループに対応した補聴器等が必要です。」ということですが、講演会の際に、いつも市役所から磁気ループを借り出している「守ろう9条 紀の川 市民の会」のチラシを読むと、「使用できるのは「Tモード」「MTモード」がある補聴器です。」とあります。
 
【開場は12時30分~開会前にも様々な楽しみがお待ちしています】
 開会は13時30分ですが、その1時間前の12時30分に開場します。開会まで1時間の時間をとっているのは、開会前にロビーにおいて、様々なブース、コーナーを設け、親子連れでも楽しんでいただけるよう、特に「安保関連法に反対するママの会@わかやま」の皆さんが準備を重ねてくださっているからです。
 子どもコーナーでは、紙芝居、折り紙、絵本、カルタなどが用意されている他、インスタフレーム、みんなで作る年表、シール投票などもあるとか。
 少し早めに入場して、楽しんでくださいね。
 
 それから、当日は、ロビーでピースグッズ販売コーナーなども設けられるのですが、私の一押しは、広島の楾大樹(はんどう・たいき)弁護士考案になる「檻の中のライオン・日本国憲法全条文クリアファイル」(200円)ですね。数に限りがありますので、お買い求めはお早めに。
 
 また、県下各地で行われている様々な活動の模様を伝える写真が集められ、スライドショーにして開会前に場内で映写されることになっています。上映時の背景音楽として、中川敬さんのご了解を得て、ソウル・フラワー・ユニオンの音楽が使用されるとか。どんな曲が使われるのか(私も聞いていません)楽しみです。
 
紀州九条せんべい復活!】
 皆さんは、12枚ワンセットになった煎餅に憲法9条の条文が焼き付けられた「紀州九条せんべい」を食べたことがありますか?一時は、和歌山に於ける憲法関連のめぼしい行事の際にはよく売られていたもので、「食べ飽きた」という人もいるかもしれません。何しろ、出資者を募って「紀州九条せんべいの会」というのが設立された位で、そういえば、私も1口出資したのだった。
 けれども、ここ何年かはお見かけすることもなく、忘れるともなく忘れていたのですが、何と「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」に結集するため、「紀州九条せんべい」も再び立ち上がることになりました。つまり、12枚の焼き印(出資金で製作したもの)を提供して煎餅屋さんに新たに焼いてもらうことになったそうです。食べたことのある人もない人も、是非ご家族、ご近所へのお土産に「紀州九条せんべい」をお買い求めください。
 なお、「紀州九条せんべい」の成り立ちについて、発案者である中北幸次さんが法学館憲法研究所の「今週の一言」コーナーに寄稿された「『紀州九条せんべい』誕生物語」を是非お読みください。
 
【みんなで歌おう『あの青い空のように』】
 第3部「平和を奏でる有志たち」では、三木久美夫さん率いる龍絃会(「つどい」では3人編成とか)による津軽三味線の妙技に引き続き、素和歌(そわか)のお2人、Crowfield(クロウフィールド)のご家族4人、それに第3部全体のコーディネーター、なかむらいづみさんが加わって臨時結成される「Wakayama Peace Band」による演奏が行われるのですが、最後に、『あの青い空のように』(作詞作曲:丹羽謙次)を会場の皆さんと一緒に歌おうと計画されています。
 「ママの会」からの提案による選曲ですが、短くて歌詞も憶えやすいし、とても良い曲ですよ。
 以下の動画などで馴染んでいただいた上で、是非当日ご一緒に歌いましょう。
いちごくらぶ「あの青い空のように」(2分26秒)
 
桂文福さん&小林節さん】
 メインゲストのお2人、桂文福さんと小林節さんについては、既にこれまでのブログで詳しくご紹介しています。特に、桂文福さんについては「詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)」を、
小林節先生については、「日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め」を是非お読みください。
 文福さんにしても、小林先生にしても、実行委員会を代表して交渉・連絡の窓口となった私から見て、この「つどい」への出演を非常に意欲的に受け止めてくださっており、必ずや参加者の皆さまにご満足いただけるものと確信しています。
 
 南北に長く、県庁所在地の和歌山市が県域の北西端に偏っている地理的特性のため、紀南地方の市町村からの参加はハードルが高いのですが、バスをチャーターして来てくださる地域もあると聞いており、感謝に堪えません。
 是非、集会のタイトルにあるとおり、危険な安倍改憲を絶対に阻止するという県民の意思を広くアピールする「つどい」となるよう、もう一段の周りへの参加の呼びかけをよろしくお願い致します。

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神戸から勇気と力を!~森松明希子さんのお話と川口真由美さんのライブから(〈生きる権利を求めて〉阪神淡路大震災24周年集会)

 2019年1月14日配信(予定)のメルマガ金原.No.3392を転載します。
 
神戸から勇気と力を!~森松明希子さんのお話と川口真由美さんのライブから(〈生きる権利を求めて〉阪神淡路大震災24周年集会)
 
 もうすぐあの阪神淡路大震災(1995年1月17日)からちょうど24年が経過します。その間には、東日本大震災(2011年3月11日)なども発生し、次にどこに大規模災害が発生してもおかしくない列島に私たちは住んでいるのだということを実感します。
 
 ところで、近時、新聞報道の見出しなどで、「借り上げ復興住宅からの退去強制」などという文字を見かけたことはありませんか?
 最初にこれを見た時。私はてっきり、東日本大震災(特に原発災害)からの避難者のための借り上げ住宅からの退去強制のことかと思いましたが、実は阪神淡路大震災の被災者の問題だったのですね。
 一例として、1月11日付の神戸新聞の記事を引用します。
 
神戸新聞NEXT 2019/1/11 07:00
借り上げ復興住宅問題 80代で不本意転居「命縮む」
(抜粋引用開始)
(略)
 「年を取って引っ越しなんてするもんじゃない」
 持病を抱えつつ転居したという男性(84)は嘆く。
 転居先は神戸市東灘区の市営住宅の高層階。1人暮らしで、引っ越しの荷物を詰めた段ボール箱の多くは、半年以上たった今も積み上がったままだ。
(略)
 男性は震災で東灘区の自宅が全壊。1997年に同区の借り上げ復興住宅に入った。趣味の観葉植物を並べ、2005年に病死した妻と過ごした思い出の場所でもある。
 17年10月に借り上げ期間が終了。各自治体で借り上げ復興住宅の継続入居要件は異なり、同世代の被災者でも明暗が分かれ、男性は転居対象になった。「迷惑はかけられん」と市営住宅に申し込んだが、「本当は残りたかった」。
 18年6月に移った市営住宅は約300メートルの距離だが、居住環境は一変。数日後、大阪府北部地震で戸棚のガラスが割れ、エレベーターに乗るのが怖くなった。転居前は2階で暮らし、買い物や通院にさっと外出できたが、今はおっくうに思う。
 「引っ越してから心臓に違和感があって、少しでも動いたらこたえる」。脳梗塞の後遺症もあり「うまく眠れない」と漏らす。
 訴訟も辞さない市の姿勢に、やむを得ず転居する高齢者が相次ぐ。男性は「みんなしんどい目をしてると思うよ。無理はさせんといてほしいなあ」と気遣った。
【借り上げ復興住宅】兵庫県と県内5市が、都市再生機構(UR)や民間などから住宅を借り上げ、最多時は7千戸超を提供。1月の取材時点では、計約2千世帯が暮らす。前年比で約250世帯減。神戸市では2019年度以降に18団地で借り上げ期間が終了する。期間後も暮らす住民に対し、神戸市は12世帯、西宮市は7世帯に退去を求めて提訴。神戸地裁は3世帯に退去を命じ、1世帯が明け渡す内容で和解した。訴訟を継続する住民らは「入居時に期間終了時の明け渡しの説明は受けていない」などと主張している。
(引用終わり)
 
 被災者の高齢化などから、発災時刻(夜明け前)に行う追悼行事が相次いで中止のやむなきに至っているという報道なども目にしますが、復興借り上げ住宅からの(多くは高齢者でしょうね)退去問題も、もっと当事者の事情に細やかに配慮した対応が出来るはずではないのか、という思いが去来したりします。
 
 そのような状況の下、昨日(1月13日)午後、神戸市の新長田勤労市民センター(大会議室)において、被災地反失業総行動参加団体連絡会が主催する「〈生きる権利を求めて〉1・13阪神淡路大震災24周年集会」が開催されました。
 様々な方が発言されたようですが、メインゲストはお2人。
 まずはじめに、原発賠償関西訴訟原告団代表で東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表の森松明希子さんが、「原発事故と私たちの人権~原発賠償関西訴訟で訴えていること~」と題して講演されました。
 そして、2人目のゲスト、シンガーソングライターの川口真由美さんによるミニコンサートが行われました。
 
 この集会の企画会議に出た訳ではありませんが、集会の趣旨に相応しいゲストを、ということは当然のことながら、終わった後、「自分もまだまだ頑張らねば」という元気が出てくるようなゲストがいいなあ、と話し合ったのではないか?と勝手に想像しています。
 私は、かけ違って川口真由美さんにお目にかかったことはなく、ネットでその演奏をお聴きしているだけですが、森松さんと川口さんというお2人に出演交渉をしようと決めた企画者は「目が高い!」と感心します。
 熱くパワフルな講演とライブ演奏の2本立てがこうして実現した訳です。
 
 まず、IWJ兵庫によるTwitcasting録画をご紹介します。固定された引きの映像ですが、音声はクリアに収録されています。
 
〈生きる権利を求めて〉阪神淡路大震災24周年集会(神戸市) —「原発事故と私たちの人権」〜原発賠償関西訴訟で訴えていること~話 森松明希子氏(福島からの避難者、原発賠償関西訴訟原告団代表) 2019.1.13 記事公開日:2019.1.13 取材地:兵庫県
 
 ただし、「※著作権保護のため講演中一部中断があります。ご了承ください。」という断りがあります。
 
 もう1つ、挨拶、会場発言などはカットし、森松さんの講演部分と川口さんのライブのみ、YouTubeにアップしている方があります。「絵」はこちらの方が断然きれいに見られます。
 
20190113 森松明希子 〈生きる権利を求めて〉(53分)
 
 いつも元気な森松さんも、講演の最初はしおらしい様子(?)でそろそろとスタートしていますね。徐々にエンジンがかかってきますけど。
 それから、IWJが途中でカットした部分も、今のところこちらの動画ではカットされていません。仮にこの動画が削除されたら、IWJの方で視聴してください。
 
 それから、川口真由美さんによるライブの動画です。この「amanakuni」というYouTubeチャンネルは、「主に祭りや友人のライブ、脱原発憲法・平和などの集会・講演会を撮っています。」と説明されており、過去のアーカイブ動画を見てみると、なかなか他ではお目にかかれないアーティストの演奏やパフォーマンスがいっぱいアップされています。
 
 なお、上記アーカイブ一覧でお分かりのように、川口さんのライブについては、1曲ごとに切り分けてアップした動画もありますが、以下では「通し」の動画をご紹介します。ただ、メインカメラとは別カメラによって撮影された『真実は沈まない』だけは、別にご紹介します。
 
20190113 川口真由美 〈生きる権利を求めて〉 通し(26分)
冒頭~『pray』 
4分~『花はどこへ行った』
7分~『NO WAR』
11分~『人間の歌』(作詞作曲:山ノ木竹志)
16分~『真実は沈まない』
21分~『ぺんぺん草』
 
2019 01 13 川口真由美 「真実は沈まない」진실은 가라앉지 않는다(3分41秒)
 ※原曲(韓国語)の歌詞と動画
  ※日本語詞
   闇は 光に勝てない
   嘘は 真(まこと)に勝てない
   真実は 沈まない
   私たち あきらめない
 
 いかがでしたでしょうか?自ずから力がわいてくる素晴らしい講演とライブだったと思います。願わくは、今週末(1月19日)に和歌山で開催する「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」が、同じように、参加された皆さまの力と勇気をかき立てるものでありますように。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/森松明希子さん関連)
2013年9月1日
8/31シンポ「区域外避難者は今 放射能汚染に安全の境はありますか」(大阪弁護士会)に参加して
2013年12月21日
森松明希子さんが語る原発避難者の思い(12/19大阪市立大学にて)
2014年2月8日
母子避難者の思いを通して考える「いのち」(「母と女性教職員の会」に参加して)
2014年9月12日
原発賠償関西訴訟と森松明希子さん『母子避難、福島から大阪へ』
2014年9月16日
9/18原発賠償関西訴訟第1回口頭弁論に注目を!~原告団代表・森松明希子さん語る
2014年11月29日
東日本大震災避難者の会「Thanks & Dream」(略称「サンドリ」)の活動に期待します
2015年4月11日
原発賠償関西訴訟(第1回、第2回)を模擬法廷・報告会の動画で振り返る(付・森松明希子原告団代表が陳述した意見)
2015年10月30日
「避難の権利」を求める全国避難者の会が設立されました
2015年12月1日
11/23世界核被害者フォーラム「広島宣言」&「世界核被害者の権利憲章要綱草案」(付・森松明希子さんの会場発言「避難の権利と平和的生存権」)
2015年12月14日
避難者の声を届けたい~森松明希子さんのお話@12/13東京都文京区(放射線被ばくを学習する会)
2016年1月11日
「避難者あるある五七五」東日本大震災避難者の会Thanks&Dream(サンドリ))の挑戦~五七五だから語れる避難者の思い
2016年9月17日
UPLAN【原発事故避難者インタビュー】に注目しよう~まずは松本徳子さんと森松明希子さん
2016年11月30日
「避難の権利」を訴える総理大臣と福島県知事への手紙~森松明希子さんから
2017年3月5日
『3.11避難者の声~当事者自身がアーカイブ~』(東日本大震災避難者の会Thanks&Dream(サンドリ))を是非お読みください
2017年9月19日
「ともに生きる未来を!さようなら原発さようなら戦争全国集会」(2017年9月18日@代々木公園)の動画を視聴する
2017年9月20日
平和のうちに生きる権利を求めて~森松明希子さんの「ともに生きる未来を!さようなら原発さようなら戦争全国集会」(2017年9月18日@代々木公園)での訴え
2018年3月9日
院内勉強会「国連人権理事会、福島原発事故関連の勧告の意義とは?」を視聴し、3/16国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチに声援を送る
2018年3月21日
国連人権理事会での森松明希子さんのスピーチ紹介~付・4か国からのUPR福島勧告と日本政府による返答
2018年5月29日
森松明希子さんらによる「国連人権理事会発言者による報告会~東電福島原発事故と私たちの人権~」(2018年5月27日@スペースたんぽぽ)を視聴する
2018年7月5日
院内勉強会「国連人権理事会に福島原発事故被災者が参加~国連国内避難民に関する指導原則を政策に生かす~」(2018年7月4日)を視聴する
2018年7月12日
森松明希子さん「原発事故による被ばくからの自由・避難の権利とは」(2018年8月26日@和歌山ビッグ愛)へのお誘い
2018年8月26日
森松明希子さん 和歌山で語る!

沖縄弁護士会「「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」に基づく県民投票が全県下で実施されることを強く求める会長声明」を読む

 2019年1月13日配信(予定)のメルマガ金原.No.3391を転載します。
 
沖縄弁護士会「「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」に基づく県民投票が全県下で実施されることを強く求める会長声明」を読む
 
 昨年10月26日に沖縄県議会で可決成立し、同月31日に公布(同日施行)された「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」に基づく県民投票が、来る2月24日に実施が予定されているところ、同条例13条で「投票資格者名簿の調製、投票及び開票の実施その他の規則で定めるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17の2の規定により、市町村が処理することとする。」とされているにもかかわらず、沖縄市宜野湾市宮古島市石垣市などが、「議会の意向を尊重する」などとして、県民投票への不参加を表明している問題に心を痛めている人も多いことと思います。
 
 正直に言って、同条例13条や、その規定が根拠を置く地方自治法252条の17の2の規定をどう読んだら、市町村に事務処理を拒否する権限があると解釈できるのか、さっぱり分かりませんでした。
 
 どうやらその理論的扇動元(?)はこれらしいという情報を沖縄タイムスがキャッチし、報道してくれたことを沖縄弁護士会の小口幸人さんのFacebookで知りました。
 
沖縄タイムス+プラス ニュース 2019年1月13日 05:00
自民系衆院議員の作成資料に県民投票「否決」への道筋 勉強会で配布
(抜粋引用開始)
 名護市辺野古の新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票について、沖縄タイムスは12日までに、自民系衆院議員が作成し、保守系議員を対象にした勉強会などで配布された複数の資料を入手した。地方自治法(地自法)の解釈を示し、県の見解を否定する部分もある。住民から議員個人への損害賠償請求には「『門前払い』になる」と想定し、関連予算を否決することに対する議員の不安を払しょくする内容になっている。資料は予算案を否決する根拠となった可能性がある。
 自民党関係者によると、弁護士資格を持つ宮崎政久衆院議員が作成した。宮崎氏は12日、取材に「内容は後日紹介したい。レジュメはごく一部で、勉強会の中では義務的経費か、そうでないかなど、いくつかの考え方を説明した。それを聞いて、決めるのは当然、議員個人である」と答えた。
(略)
 資料では、関連予算を議会が否決した場合、地自法では市町村長が予算案を「執行できる」のであって、必ずやらなければならないわけではなく、「これに反して市町村長が予算案を執行することは議会軽視であり、不適切である」と展開している。
 実際に市議会が予算案を否決したことで、県民投票に不参加を表明した市長は一様に「議会の意向を尊重する」と理由に挙げており、この意見が反映された可能性がある。
 一方、昨年12月作成の別の資料では、議会が関連予算を否決した場合、「住民に対して損害賠償の責任を負うか」との項目では、「県民投票の結果に法的拘束力がない」「地自法で長と議会の『二元代表制』が採用されている」「県と市町村は対等な立場だ」と強調。「原告の法的利益、当事者適格を考えれば住民訴訟うんぬんは法的にあり得ない。たとえ提訴されても『門前払い』になると思慮する」と説明している。
(略)
(引用終わり)
 
 ちなみに、宮崎政久衆議院議員は、衆院沖縄2区に2012年以来3回連続して自民党公認で立候補したものの、社民党照屋寛徳氏(こちらも弁護士ですね)に3連敗を喫しながら、いずれも比例復活したという方です(一番最近の比例復活は、昨年11月に園田博之氏が死去したことにともなう繰り上げ当選)。
 そういえば、1月の通常国会召集までまだ間があるので、議員も地元で活動する時間が確保しやすく、沖縄で頑張って活動していたということなのでしょうね。
 
 ところで、昨年12月10日、日本政府が辺野古沿岸への土砂投入を始める4日前、「辺野古新基地建設が、沖縄県民にのみ過重な負担を強い、その尊厳を踏みにじるものであることに鑑み、解決に向けた主体的な取り組みを日本国民全体に呼びかけるとともに、政府に対し、沖縄県民の民意を尊重することを求める決議」という、なかなかこれ以上長い表題の決議はないだろうという渾身の総会決議を採択した沖縄弁護士会が、去る1月9日、県民投票問題についても会長声明を出してくれていましたので、以下に全文をご紹介します。
 
(引用開始)
          「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」
          に基づく県民投票が全県下で実施されることを強く求める会長声明
 
 2018(平成30)年10月26日、沖縄県議会において、「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」(以下「辺野古県民投票条例」という。)が可決・成立した。辺野古県民投票条例は、条例制定請求者らからの地方自治法第74条第1項の規定による条例制定請求を受け、沖縄県議会において修正議決されたものである。同条例に基づく投票(以下「県民投票」という。)は、本年2月24日に実施されることが予定されている。  
 辺野古県民投票条例は、普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに関し、県民の意思を的確に反映させることを目的とするものであるところ(同条例1条)、同条例に基づく県民投票は、個々の県民が自らの政治的意思を表明するとともに、直接、県の意思形成に参加する機会を提供するものであり、表現の自由及び民主主義の見地から、極めて重要な意義を有している。また、地方自治体の意思決定がその構成員である住民の参加と同意に基づいて行われることが重要であるとする住民自治の観点からも、その意義は大きい。  
 ところで、県民投票に関する事務は知事が執行するものであり(同条例3条)、投票資格者名簿の調製、投票及び開票の実施等(以下「投票事務」という。)は、地方自治法252条の17の2の規定により、市町村が処理することとされているところ(同条例13条)、近時、複数の県内市町村の首長が、県民投票への不参加、つまり投票事務を実施しないことを表明する事態が相次いでいる。  
 しかしながら、前述のような県民投票の意義に照らせば、辺野古県民投票条例により投票資格を有する者(同条例第5条。以下「投票資格者」という。)には、全て等しく投票の機会が保障されなければならず、一部市町村首長の判断を受け、当該市町村において投票事務が行われないことにより、当該市町村に居住する投票資格者の投票の機会が失われることがあれば、それは、当該投票資格者の政治的意思を表明する権利をないがしろにし、直接民主主義の意義を没却する、由々しき事態といわなければならない。
 
 辺野古県民投票条例は、有効署名数9万2848筆にのぼる県民の条例制定請求に基づき、県民の負託を受けた沖縄県議会において可決・成立した法令である。市町村首長の判断で同法令に基づく投票事務が行われないことは、このような民主的プロセスを経て制定された法令を市町村首長の判断で無力化し、その結果、一部の県民から県の意思形成に参加する機会を奪うものであって、決して許されるものではない。また、同じ投票資格者でありながら、たまたま居住している地域によって投票できる者とできない者が生じることは、法の下の平等の見地からも、極めて不合理というべきである。  
 
 県民投票の実施に賛成しない県民は、県民投票を棄権する、白票を投ずるなどの方法により、その意思を的確に表明することが可能である。そのため、かような県民の意思をおもんばかり、投票を望む県民の政治的表現及び民主主義的参加の機会を損なってまで投票事務を実施しないとする判断は、その意味においても正しいものということはできない。
 
 以上のことから、当会は、この度の県民投票において、県内の全ての市町村に居住する投票資格者に投票の機会が保障されるよう、沖縄県及び県内各市町村が協力して、全県下で投票事務が実施されることを強く求めるものである。
 
                   2019年(平成31年)1月9日     
                      沖縄弁護士会         
                       会 長  天 方   徹
(引用終わり)
 
 どうでしょうか?読み通してみてどこか引っかかるところがありますか?私は「ない」と思いました。ということは、論理の筋道がしっかり通っている証です。
 
 これを、さらに憲法の視点から、投票不参加を表明した首長の判断を批判する論考が、1月10日に沖縄タイムス+に掲載されました。
 同紙に「憲法の新手(しんて)」という連載を続けている木村草太氏(首都大学教授・憲法学)による緊急寄稿「県民投票不参加は憲法違反」です。
 その主要部分を引用しましょう(全文ネットで公開されていますので、是非リンク先で全文をお読みください)。
 
沖縄タイムス+ 2019年1月10日 11:57
木村草太氏が緊急寄稿 「県民投票不参加は憲法違反」 2019年1月10日 11:57
(抜粋引用開始)
(略)
 しかし、宜野湾市宮古島市で、県民投票の事務処理を拒否する動きが進んでいる。この動きには、地方自治法・県条例のみならず、憲法の観点からも問題がある。
 一番の問題は、憲法14条1項が定める「法の下の平等」に反することだ。一部の市町村で事務執行がなされないと、住んでいる場所によって「投票できる県民」と「投票できない県民」の区別が生じる。「たまたま特定の市や町に住んでいた」という事実は、県条例で与えられた意見表明の権利を否定するだけの「合理的な根拠」とは言えない。したがって、この区別は不合理な区別として、憲法14条1項違反だ。
(略)
 この点については、昭和33年(1958年)の最高裁判決が、「憲法が各地方公共団体条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところ」との判断を示していることから、自治体間の差異は許されるのではないか、との疑問を持つ人もいるかもしれない。
 しかし、この判決は、各自治体の条例内容の差異に基づく区別についての判断だ。今回は、各市町村が自らの事務について独自の条例を定める場面ではなく、県条例で与えられた県民の権利を実現する責任を負う場面だ。最高裁判例の考え方からも、地域による差別は許容されない。
 さらに、平等権以外にも、問題となる権利がある。県民投票は、県民全てに開かれた意見表明の公的な場である。県民の投票へのアクセスを否定することは、憲法21条1項で保障された「表現の自由」の侵害と認定される可能性もある。さらに、憲法92条の規定する住民自治の理念からすれば、「県政の決定に参加する権利」は、新しい権利として憲法13条によって保護されるという解釈も成り立ちうる。
 このように考えると、各市町村の長や議会には、県民の憲法上の権利を実現するために、「県民投票に関わる事務を遂行する義務」がある。議会が関連する予算案を否決したり、長が地方自治法177条の原案執行を拒否したりするのは、この義務に反する。訴訟を検討する住民もいると報道されているが、市町村が事務執行を拒否した場合、裁判所も厳しい判断をする可能性がある。
(略)
 ちなみに、県条例は棄権の自由を認めているから、県民投票反対の県民は、市長や市議会議員に代表してもらわなくても、棄権という形で抗議の意思を表明できる。市民全員に棄権を強制することは不合理だ。
(略)
 県民投票は、県民の重要な意見表明の機会だ。沖縄県内の市町村長・議会議員の方々には、ぜひ、県民の権利を実現する憲法上の義務のことも考えてほしい。(首都大学東京教授、憲法学者
(引用終わり)
 
 以下に、参考のため、辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例の全文、それから地方自治法日本国憲法の関連条文を引用しておきますので、是非ご自分でも考えてみていただければと思います。
 
沖縄県条例第62号
辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例
 (目的)
第1条 この条例は、普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立て(以下「本件埋立て」という。)に対し、県民の意思を的確に反映させることを目的とする。
 (県民投票)
第2条 前条の目的を達成するため、本件埋立てに対する賛否についての県民による投票(以下「県民投票」という。)を実施する。
 (県民投票事務の執行)
第3条 県民投票に関する事務は、知事が執行する。
(県民投票の実施等)
第4条 県民投票は、この条例の公布の日から起算して6月以内に実施しなければならない。
2 県民投票の期日(以下「投票日」という。)は、知事が定め、投票日の10日前までにこれを告示しなければならない。
 (投票資格者等)
第5条 県民投票において投票を行う資格を有する者(以下「投票資格者」という。)は、前条第2項の規定による告示の日の前日において、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第9条の規定により、沖縄県の議会の議員及び知事の選挙権を有する者(同法第11条第1項若しくは第252条又は政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第28条の規定により選挙権を有しない者を除く。)とする。
2 知事は、投票資格者名簿を調製しなければならない。
 (投票の方法)
第6条 投票は、1人1票に限る。
2 投票資格者は、投票日に自ら投票所に行き、投票資格者名簿又はその抄本の対照を経て、投票をしなければならない。
3 投票資格者は、本件埋立てに賛成するときは投票用紙の賛成の記載欄に○の記号を、これに反対するときは反対の記載欄に○の記号を自ら記載しなければならない。この場合において、投票資格者は、投票用紙を自ら投票箱に入れなければならない。
4 投票用紙には、投票資格者の氏名を記載してはならない。
 (点字投票等)
第7条 前条第3項前段の規定にかかわらず、投票資格者は、点字による投票を行う場合においては、投票用紙に、本件埋立てに賛成するときは賛成と、反対するときは反対と自ら記載するものとする。この場合において、規則で定める点字は文字とみなし、投票用紙の様式その他必要な事項は、規則で定める。
2 前条第3項並びに第9条第2項及び第3項の規定にかかわらず、心身の故障その他の事由により、自ら○の記号を記載することができない投票資格者は、規則で定めるところにより代理投票をさせることができる。
3 前条第2項及び第3項後段の規定にかかわらず、規則で定める事由により、投票日に自ら投票することができないと見込まれる投票資格者は、規則で定めるところにより投票をすることができる。
 (投票の秘密保持)
第8条 何人も、投票資格者の投票した内容を陳述する義務はない。
 (投票の効力)
第9条 投票の効力の決定に当たっては、次項又は第3項の規定に反しない限りにおいて、投票した投票資格者の意思が明白であれば、その投票を有効とする。
2 点字投票以外の投票については、次の各号のいずれかに該当する投票は、無効とする。
(1) 所定の投票用紙を用いないもの
(2) ○の記号を賛成の記載欄及び反対の記載欄のいずれにも記載したもの
(3) ○の記号以外の事項を記載したもの
(4) ○の記号を自ら記載しないもの
(5) ○の記号を賛成の記載欄又は反対の記載欄のいずれに対して記載したかを確認し難いもの
3 点字投票(第7条第3項の規定による投票であって、点字により行われるものを含む。)については、次の各号のいずれかに該当する投票は、無効とする。
(1) 所定の投票用紙を用いないもの
(2) 賛成の文字及び反対の文字をともに記載したもの
(3) 賛成の文字又は反対の文字のほか、他事を記載したもの
(4) 賛成の文字又は反対の文字を自ら記載しないもの
(5) 賛成の文字又は反対の文字のいずれを記載したかを確認し難いもの
 (投票結果の尊重等)
第10条 知事は、県民投票の結果が判明したときは、速やかにこれを告示しなければならない。
2 県民投票において、本件埋立てに対する賛成の投票の数又は反対の投票の数のいずれか多い数が投票資格者の総数の4分の1に達したときは、知事はその結果を尊重しなければならない。
3 前項に規定する場合において、知事は、内閣総理大臣及びアメリカ合衆国大統領に対し、速やかに県民投票の結果を通知するものとする。
 (情報の提供)
第11条 知事は、県民が賛否を判断するために必要な広報活動を行うとともに、情報の提供に努めなければならない。
2 前項の広報活動及び情報の提供は、客観的かつ中立的に行うものとする。 
 (投票運動)
第12条 県民投票に関する投票運動は、自由とする。ただし、買収、脅迫等により県民の自由な意思が制約され、又は不当に干渉されるものであってはならない。
 (事務処理の特例)
第13条 第3条に規定する知事の事務のうち、投票資格者名簿の調製、投票及び開票の実施その他の規則で定めるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17の2の規定により、市町村が処理することとする。
 (委任)
第14条 この条例の施行に関して必要な事項は、規則で定める。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。
 
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)抜粋
 (条例による事務処理の特例)
第二百五十二条の十七の二 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。
2 前項の条例(同項の規定により都道府県の規則に基づく事務を市町村が処理することとする場合で、同項の条例の定めるところにより、規則に委任して当該事務の範囲を定めるときは、当該規則を含む。以下本節において同じ。)を制定し又は改廃する場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することとなる市町村の長に協議しなければならない。
3 市町村の長は、その議会の議決を経て、都道府県知事に対し、第一項の規定によりその権限に属する事務の一部を当該市町村が処理することとするよう要請することができる。
4 前項の規定による要請があつたときは、都道府県知事は、速やかに、当該市町村の長と協議しなければならない。
 
日本国憲法(昭和二十一年憲法)抜粋
十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

改憲阻止の闘いを展望する!和歌山障害者・患者九条の会学習会(2019年2月11日)のご案内

 2019年1月12日配信(予定)のメルマガ金原.No.3390を転載します。
 
改憲阻止の闘いを展望する!和歌山障害者・患者九条の会学習会(2019年2月11日)のご案内
 
 2006年6月4日に「結成のつどい」を開いた和歌山障害者・患者九条の会は、それから12年以上の間、たゆみなく様々な活動に取り組んできた、和歌山県下の「9条の会」の中でも最も活発な会の1つであることは、誰もが認めるところだと思います。
 私は、「結成のつどい」で記念講演をさせていただいて以降も、何度か学習会の講師にお招きいただいた上に、単なる一参加者としてお邪魔したことも何度かあるなど、非常に親しくお付き合いさせていただいてきました。
 
 和歌山障害者・患者九条の会では、6月の総会の他、2月にも学習会を行うのが恒例になっているようで、昨年2月18日には、由良登信弁護士が講師を務めておられます。
 そして、今年2月の学習会については、私が担当させていただくことになりました。
 現在の憲法をめぐる状況から、主催者としては、どうしても「情勢論」「運動論」を語れる講師を、というご希望になるのはやむを得ないところではあるのですが、講師を送り出す「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」としても、若手講師陣のさらなる育成が急務ですね。とはいえ、依頼がないと派遣する機会もなく、若手に経験を積んでもらうこともできませんので、是非、県下諸団体の皆さま、積極的に学習会を企画してください。
 
 それでは、以下にチラシ記載情報を転記します。
 
(チラシから引用開始)
和歌山障害者・患者九条の会学習会
 
日時 2019年2月11日(月・祝) 13時~15時
会場 和歌山市ふれ愛センター 3階 研修室1
     (和歌山市木広町5-1-9 ℡073-433-8866)
 
プログラム
開場 12時30分
開会  13時00分
記念講演 13時10分~14時40分
 演題 「改憲4項目の危険性を知り 改憲阻止の闘いを展望する」
  講師 金原 徹雄(きんばら てつお)弁護士
質疑 14時40分~
閉会 15時00分
 
※参加協力費300円
点字資料、手話通訳あります
 
平成は戦争のない時代でした。次の時代も私たちの手によって、戦争で命を落とすことのない世の中にしていかなければなりません。なぜなら、「障害者は平和でなければ生きられない」からです。勝負の2019年を切り開きましょう!
 
講師プロフィール
金原徹雄先生
1954年 和歌山市出身。
和歌山県立桐蔭高校、大阪市立大学法学部を経て、
1989年 和歌山弁護士会に所属。
2006年1月から2012年1月まで6年間「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の二代目事務局長。
2011年3月から「メルマガ金原」の配信を開始し、2013年1月からは「弁護士・金原徹雄のブログ」も開設。現在まで「毎日配信」を続ける。
和歌山障害者・患者九条の会では、2006年6月4日の「結成のつどい」での記念講演をはじめ、度々学習会の講師をしていただいています。
 
問い合わせ先 和歌山障害者・患者九条の会事務局
℡ 073-460-1833(東本)
(引用終わり)
 
 チラシに特に記載はありませんが、和歌山障害者・患者九条の会の会員でなくても、志を共有して参加したいという方は歓迎されるはずです(参加協力費300円はご負担ください)。
 
 これまでも何度かご紹介していますが、上のチラシにも書かれている「障害者は平和でなければ生きられない」と共に、「守れ9条世界の宝」と書かれた横断幕を持って、会員の方がデモ行進される写真を掲載します(撮影:金原)。

f:id:wakaben6888:20190112213839j:plain

 これは、2013年5月3日の憲法記念日に、憲法9条を守る和歌山弁護士の会が呼びかけて実施した第1回「憲法9条を守り生かそう わかやまアピール行進」に参加してくださった和歌山障害者・患者九条の会の皆さんです。
 もっとも、第1回と言いつつ、翌年の憲法記念日からは、和歌山城西の丸広場を会場として、“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”を開催することになったため、この「憲法9条を守り生かそう わかやまアピール行進」の2回目を行う機会がなかなかないのですが(「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」を2014年6月以来毎月実施しているという事情もあります)、また折を見て企画してみてもいいかもしれませんね。
 
 最後に、この横断幕に書かれた文字を正確に転記しておきます。
 
   守れ9条世界の宝
   障害者は平和でなければ生きられない
   和歌山障害者・患者九条の会
 
(追記)
 まだ、私自身、2月11日のためのレジュメは作れていませんが、おそらく、昨年の10月21日に、かつらぎ体育センターで開かれた第10回「伊都・橋本9条まつり」においてお話させていただいた内容に、時間の都合で(50分という持ち時間でした)不十分であった点を補充し、さらに開会後の通常国会での動きをフォローする、ということになるだろうと思います。 
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/和歌山障害者・患者九条の会関連)
2013年2月22日
予告3/31「憲法第9条をもう一度抱きしめて 2013年 春の憲法学習会」(和歌山障害者・患者九条の会
2013年9月21日
予告11/10「憲法しゃべり場」に集いませんか(和歌山障害者・患者九条の会
2013年11月10日
伊藤真さんのDVDを視聴する前に私が話したこと(憲法しゃべり場@和歌山障害者・患者九条の会
2014年10月14日
和歌山障害者・患者九条の会の活動を讃える~11/1秋の学習会の案内を兼ねて
2016年4月30日
祝!「和歌山障害者・患者九条の会」10周年~結成のつどいで「平和のうちに生きるために」をお話してから10年が経った
2018年2月5日
和歌山障害者・患者九条の会学習会「ストップ!安倍「壊」憲!~9条と25条を私たちの手に~」(2018年2月18日)のご案内
2018年5月28日
和歌山障害者・患者九条の会 第12回総会と記念講演会~沖縄から我が国の平和を考える(2018年6月10日@和歌山市ふれ愛センター)のご案内

少年法適用年齢の18歳への引き下げに反対する日本弁護士連合会の意見書、パンフレットのご紹介

 2019年1月11日配信(予定)のメルマガ金原.No.3389を転載します。
 
少年法適用年齢の18歳への引き下げに反対する日本弁護士連合会の意見書、パンフレットのご紹介
 
 日本弁護士連合会は、弁護士法第1条(弁護士の使命)に基づき、様々な課題についての研究、実践、提言等を行っていますが、とりわけ重点的に取り組んでいる課題については、WEBサイトのトップページに目立つバナーを設け、特設コーナーに誘導するようにしており、その6つある「日弁連が取り組む重要課題」のうちの1つが、「少年法適用年齢の引き下げに反対します」です。
 
 この「少年法の適用年齢引き下げ(20歳→18歳)には反対です!」コーナーでは、日弁連が発表した意見書や会長声明にリンクしている他、一般市民向けに作成したパンフレットのPDF版にもリンクされ、誰でもダウンロードできるようになっています。
 
 同じ日弁連WEBサイトの特設コーナーでも、これまでたびたびご紹介してきた「憲法を考える」などとは異なり、
少年法適用年齢を20歳から18歳に引き下げることの是非については、いまひとつ、市民の理解を得るのが難しいテーマかもしれません。
 第一、「少年法って何?」「選挙権も18歳からになったし、民法成人年齢もいずれ18歳になるらしいから、別にいいんじゃないの?」という素朴な疑問に、分かりやすい言葉で説得しなければならないのですから、これはなかなか大変です。
 もっとも、司法修習生の給費制復活に比べれば、まだしも主張しやすいかもしれませんが。
 
 なぜ、日弁連をはじめ、全国全ての弁護士会弁護士会連合会が、少年法適用年齢の20歳(現行)から18歳への引き下げに反対しているかについては、巻末に、昨年11月21日付で日弁連が発表した「少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書」を引用しておきますので、是非お読みください。
 ただ、相当な分量となりますので、「意見の理由」の内、
  第1 はじめに
  第2 少年犯罪の動向と現行少年法制に対する評価
     第3 少年法の適用年齢引下げ論の根拠について
  第6 結論
は全文引用し、
  第4 年齢の引下げに伴う刑事政策的懸念と検討されている犯罪者処遇策
  第5 少年法の適用年齢を引き下げた場合に生じる未検討の問題
については、基本的に項目のみご紹介しています。
 
 なお、このような「意見書」を多くの人に読んでいただくことは難しいだろうということで、日弁連では、2種類のパンフレットを発行し、WEBサイトからダウンロードできるようにしています。
 
パンフレット「少年法の適用年齢引下げを語る前に~なぜ私たちは引下げに反対するのか~」(2017年6月改定版)
 
 以上が、主要な論点に目配りし、現場の声も取り入れた全般的な理解を求める内容になっているのに対し、このたび発行された(実は今日1月11日にWEBサイトにアップされたばかりです)新しいパンフレットは、「日弁連が2018年11月6日に開催したシンポジウムで、少年院出身者や少年事件被害者、元家庭裁判所調査官、元少年院長、研究者など様々な方が、それぞれの立場から、少年法適用年齢引下げの問題を語りました。その発言をベースに」作成されたのが以下のパンフレットです。
 
パンフレット「リレートーク 私も少年法適用年齢引下げに反対します」(2019年1月11日)
 
 やはり、長年現場に身を置いた方々のご意見にはとても説得力があると思います。一々引用はしませんが、是非お読みいただければと思います。
 
 引用はしないと書きましたが、これだけはどうしても引用させてください。
 
龍谷大学矯正・保護課程講師、元浪速少年院長 菱田 律子さん
少年法適用年齢の引下げは18歳・19歳の立ち直りのチャンスを奪う
(抜粋引用開始)
 今、少年院は、収容減に直面しています。「はやらない店」はコックさんの腕が鈍る。少年院の場合は教官の処遇力が鈍ることになります。
 少年法適用年齢が引き下げられると、少年院は整理削減され、広域収容が拡大し、保護者との関係改善にも悪影響を及ぼすことになります。ますます「はやらない店」状態になり、何もいいところがありません。危機感をひしひしと感じています。
 少年院を必要とする少年たちのために、これからの日本のために、少年法適用年齢の引下げに反対します。
(引用終わり)
 
 以下の日弁連「意見書」にもあるとおり、少年犯罪は減少しています。あるいは「激減している」と言ってもよいほどです。
 少年院に収容される少年が減少しているということは、審判前の一定期間(原則として4週間以内)少年を収容する少年鑑別所の収容人数も減少しているということです。それは、少年人口の減少のペースをはるかに超えた減少であることを、私たち法曹実務家は実感しています。
 この上、年長少年(18歳・19歳)を少年法の適用対象から外した時にどんな事態を迎えるのか、とても「明るい未来」が開けようとは思えません。
 皆さんも、上記のパンフレットなどをお読みいただき、この問題に関心を持っていただければ幸いです。
 
 それでは、以下に日弁連少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書」をご紹介します。
 
(抜粋引用開始)
       少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書
 
                                              2018年(平成30年)11月21日
                                                                  日本弁護士連合会
 
                              意 見 の 趣 旨
 少年法の適用年齢を18歳未満とした上で,18歳及び19歳の者について,少年法の果たす機能を代替するためのいかなる刑事政策的な配慮をしたとしても,現行少年法制の果たしてきた機能や効果には遠く及ばない。
 改めて,少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する。
                                       
                              意 見 の 理 由
第1 はじめに
 当連合会は,2015年2月20日,公職選挙法の選挙権年齢と民法の成年年齢の引下げが議論される状況を踏まえ,「少年法の『成人』年齢引下げに関する意見書」(以下「2015年意見書」という。)を公表し,仮に民法の成年年齢を18歳に引き下げた場合であっても,少年法2条の「成人」年齢を引き下げることには反対である旨を表明した。
 その後,2017年2月には,法務大臣が法制審議会に対し,「非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方」とともに「少年法における『少年』の年齢を18歳未満とすること」を諮問するに至った。
 これを受け,法制審議会に少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「部会」という。)が設置され,仮に少年法の適用年齢を18歳未満とした場合に採り得る刑事政策的対応を含めた犯罪者処遇策が検討されており,また,それらも踏まえた上で少年法の適用年齢引下げの是非が議論されている。
 さらに,この間,2018年6月には,飲酒・喫煙,公営ギャンブル等に関する各法律については20歳を基準として現行の適用年齢を維持する一方で,民法の成年年齢を18歳に引き下げる内容の民法の一部改正法が,様々な意見がなおある中で成立した(2022年4月施行予定)。
 そこで,当連合会は,このような2015年意見書公表後における状況の進捗を踏まえ,改めて,少年法2条の「成人」及び「少年」の年齢引下げに関して意見を述べるものである。
 
第2 少年犯罪の動向と現行少年法制に対する評価
 まず,少年法の適用年齢引下げについて議論するに当たっては,その前提として,以下のことが確認される必要がある。
1 少年犯罪は増加も凶悪化もしていないこと
 少年法の年齢引下げに関する世論調査によると,反対よりも賛成が多い傾向にあるが,その背景には,「少年非行が増加している。少年犯罪は凶悪化している。」という誤解があると思われる。
 実際には,少年の検挙者数は近年14年連続で減少し,2017年には,1983年のピーク時の13.6%にまで減少(86.4%減)している(少年人口当たりの発生数で比べても2016年においてピーク時の23.9%にまで減少(76.1%減))。また,少年による殺人・強盗・放火・強姦の「凶悪事件」についても,2017年には,1960年のピーク時の3.6%にまで減少(96.4%減)(少年人口比ではピーク時の5.4%にまで減少(94.6%減))している。このように,少年非行は増加しておらず,それどころか重大事案を含め大きく減少しているのであり,このような傾向は18歳,
19歳の少年についても同様である。
2 現行の少年法制は有効に機能していること
 旧少年法(大正11年法律第42号)は,少年の年齢を18歳未満としていたが,1948年に制定された現行少年法(昭和23年法律第168号)は,これを20歳未満に引き上げた。改正法案の国会審議では,政府委員は,20歳くらいまでの者の犯罪の増加と悪質化が顕著であることを指摘した上で,「この程度の年齢の者は,未だ心身の発達が十分でなく環境その他外部的条件の影響を受け易いことを示しているのでありますが,このことは,彼等の犯罪が深い悪性に根ざしたものではなく,従ってこれに対して刑罰を科するよりは,むしろ保護処分によってその教化を図る方が適切である場合の極めて多いことを意味している」と説明している。そして現行少年法により採用された全件送致主義,調査官調査を中核とした審判手続及び少年院教育等の保護処分は,70年にわたり,極めて有効に機能している。上記のような少年犯罪の著しい減少という状況も,現行少年法が有効に機能していることの一つの表れである。
 この点については,法制審議会の部会においても,「今回の議論というのは,現行少年法の下で18歳,19歳の年長少年に対して行われている手続や保護処分が有効に機能していないので,少年法の適用年齢を下げることを検討しようとするものではないのだということについては,意見の一致がある。」「現行法の下での年長少年に対する手続や処遇の有効性という観点からは,少年法の適用年齢を引き下げる必要性はない。」と整理されており,これに対する異論は出ていない。
 つまり,部会における現在の議論も,現行少年法制の機能に問題があるという問題意識によるものではなく,逆に,現行少年法制が有効に機能していることを前提にした上で,その中で適用年齢を18歳未満とすることができるかという問題設定がなされているのである。
 
第3 少年法の適用年齢引下げ論の根拠について
 少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるべきとする立場からは,いくつかの根拠が挙げられている。そこで,それらの根拠について,特に民法の成年年齢引下げとの関係を中心に検討を加えることとする。
1 適用年齢は法律ごとに個別具体的に検討すべきであること
 まず,法律の適用年齢については,それぞれの立法趣旨や目的に照らして,法律ごとに個別具体的に検討すべきである。この点については,政府も,民法の成年年齢引下げに関する国会審議において,「法律で定められている年齢要件は,それぞれの法律の趣旨や立法目的に基づいて定められていることから,その変更の可否を検討するに当たっても,それぞれの法律の立法目的等を考慮する必要がある」との立場を明らかにしている。
 そして,現行少年法は,旧少年法の適用実践とその成果を踏まえ,若年犯罪者については刑罰より保護処分の方が更生にとって適切かつ効果的であるとの立法政策に基づいて,適用年齢を18歳未満から20歳未満に引き上げたものである。それ以来現在に至るまで,現行少年法の運用は現実にその効果を挙げているのであるから,民法の成年年齢が引き下げられても,それに伴って少年法の適用年齢を引き下げるべきではない(2015年意見書)。
2 「国法上の統一」「分かりやすさ」は根拠となり得ないこと
 これに対し,「一般的な法律において『大人』として取り扱われることとなる年齢は,一致する方が国民にとって分かりやす」いとの意見や,「大人と子供の分水嶺を示す各種法令には国法上の統一性が必要である。」との意見があるようである。
 しかし,政府も,法律の適用年齢について,それぞれの法律の趣旨や立法目的等を考慮する必要があるとしているのは,前述したとおりである。
 そして,飲酒に関しては,未成年者飲酒禁止法の趣旨が健康被害防止と非行防止という二点にあり,民法の成年年齢の定めとはその趣旨を異にしていることから,民法の成年年齢と一致させる必要がないとし,さらに,競馬法勝馬投票券購入制限年齢についても,青少年保護の観点から定められたものであるから,やはり民法の成年年齢と一致させる必要がないとしており,その結果,民法の成年年齢は18歳に引き下げられることとなった一方で,飲酒・喫煙,公営ギャンブル等については,20歳以上とする適用年齢が維持されたのである。
 以上からも明らかなとおり,法律で定められている年齢要件は,それぞれの法律の趣旨や立法目的に基づいて定められているべきであって,民法の成年年齢の引下げがなされたからといって,あらゆる法律において「大人」として取り扱われるべき年齢が変わったということはできない。また,実際にも,各種法令における適用年齢は統一されていないのであるから,「国法上の統一」等は少年法について適用年齢を下げる根拠とはなり得ない。
3 「民法上の成年者への保護主義に基づく介入は過剰」とは言えないこと
 また,少年法の保護処分は,少年が類型的に未成熟であって判断能力が不十分であることから,国家が後見的に介入するという保護主義パターナリズム)によって正当化されている側面があるところ,親権に服さず取引に関する行為能力も認められる民法上の「成年者」を,類型的に保護主義に基づく保護処分の対象とすることは過剰な介入である,との意見もある。
 しかし,パターナリズムによる国家の介入が許容される年齢は,一律に決定されるものではなく,その介入の必要性や介入の内容・性質によって異なる。
 上記の飲酒・喫煙・ギャンブルの禁止も,「健康被害防止」「非行誘発の防止」「青少年保護」など,本人の利益を護るという観点からのパターナリズムによる国家の介入であって,民法上の「成年者」に対する介入を許容することとしている。そして,少年法による介入は,身体拘束も含むものであって,その程度は大きいとは言えるが,他方で,未成熟で可塑性の高い少年に対して更生や社会復帰の効果は大きく,当該少年にとって利益になるから,民法上の「成年者」であっても,これを保護処分の対象とすることが「過剰な介入」になるものではない。
 現行法においても,婚姻により「成年者」とみなされる者(民法753条)も,なお少年法の対象とされており,また,審判時に20歳未満であれば,その後民法の成年年齢に達してもなお少年院での収容を継続できるが(少年院法137条~139条,更生保護法66条,68条,71条,72条),これらについて「過剰な介入」であるとの批判は見受けられない。
 また,「親権」は,民法上,親の子どもに対する権利ではなく,むしろ親の社会的責務や親の配慮と整理されており,国家が保護主義によって後見的に介入し得る期間が親権の対象となる期間と一致しなければならない理由もない。
 さらに,現実に保護処分の対象となる者は,18歳・19歳の者全てではなく,資質上のハンディキャップや厳しい生育環境の中で親や周囲からの適切な教育・援助が受けられなかったことから非行に至った者がほとんどである。すなわち,少年法が実際に適用されるのは,20歳未満の者の中で成長発達のために特別の支援が必要とされる者なのであるから,少年法による国の介入の根拠を民法上の未成年であることと直結させることは相当でない。
4 「各制約の根拠は,未成熟・判断能力不十分で共通であり,整合性をはかるべき」とも言えないこと
 さらには,各法律の制度の根拠に共通する部分があるのであれば整合性が図られるべきであり,少年法民法は,共に本人が未成熟であって判断能力が不十分であることに鑑み,本人のためにその自由を制約するものであるから,民法上成年として扱われ,そのような保護の対象とならない18歳・19歳の者について,少年法上類型的に少年と扱って国家が後見的に介入することは整合的でない,との意見もあるが,以下に述べるとおり相当ではない。
 まず,今回の民法の成年年齢引下げの国会審議においても,「18歳・19歳の若年者が大人として完成されたことを意味するのではなく,いまだ成長の過程にある」などとされており,18歳・19歳の者は未成熟であるという認識が共有されていることが重要である。
 今回の民法の成年年齢引下げは,その認識を前提にしつつ,主として経済取引に着目した社会的,経済的成熟度を基準にすべきとの立場に立ってされたものであり,さらに踏み込んで,18歳の者の中の自立心を持ち経済活動に意欲を有する者に対して積極的な社会参加を促し,社会の活性化を図るという目的が挙げられる場合もある。
 他方,少年法は,18歳・19歳になっても生育環境や資質上のハンディキャップを抱えて非行を犯した者に対し,国が教育・指導を施して社会人として行動できるようにすることを目的としているのであり,今回の民法の成年年齢引下げとは,その目的及び想定する場面を異にしている。
 以上のとおり,民法少年法とは,そもそも適用年齢を検討すべき視点が全く異質なのであり,制度の根拠が共通していると評価することもできない。むしろ,少年法の適用年齢は,「非行防止」を目的とする未成年飲酒禁止法や,「青少年保護」の観点から定められた競馬法勝馬投票券購入制限年齢と趣旨・目的が共通しており,20歳を維持すべきである。
 
第4 年齢の引下げに伴う刑事政策的懸念と検討されている犯罪者処遇策
 次に,少年法の適用年齢引下げに伴って生じると懸念されている問題とその対応策について検討を加える。
 この点,少年法の適用年齢を18歳未満にすべきとする立場からも,罪を犯した者の社会復帰や再犯防止といった刑事政策的観点からは,現行少年法の保護処分が果たしている機能には大きなものがあり,年齢引下げに伴い,18歳・19歳の者が従来の保護処分による働き掛けや,その前提となる家庭裁判所における調査を受けられないことになれば,改善更生・再犯防止という観点から問題が生じる,との懸念が示されている。単なる年齢引下げだけでは18歳・19歳の者の改善更生や社会復帰に問題が生じるという懸念については,年齢引下げに賛成・反対いずれの立場においても共通の認識となっていると言ってよい。
 このような刑事政策的懸念を受け,部会では,まず,仮に少年法の年齢を引き下げた場合に採り得る措置を含めた犯罪者処遇策を検討し,その上で少年法の年齢引下げの是非について議論する,との進行予定の下で審議が進められている。
 そして,部会内に設置された3つの分科会において検討された犯罪者処遇策の結果が2018年7月の部会第8回会議で報告され,以降,部会において議論が重ねられている。
 そこで以下,部会で議論されている犯罪者処遇策について検討する。
1 検討されている犯罪者処遇策の概要
 部会では,18歳・19歳の者を少年法の対象から外して「成人」として扱う場合には,現在20歳以上に適用されている刑事訴訟法が18歳・19歳に適用されることを前提として,①自由刑のいわゆる実刑,②自由刑の執行猶予,③罰金刑,④起訴猶予,などの各場面でどのような「処遇」を行うことが可能か,が検討されている。
2 公訴が提起され刑事裁判手続で処遇が決せられる場合の問題点
(1) 刑事裁判手続全般における問題-家庭裁判所調査官による調査の欠如
ア 想定される問題状況
イ 検討されている対応策について
(2) 比較的重い罪を犯した18歳・19歳の処遇に関する問題
ア 収容される場合でも少年院ではなく刑務所に収容されてしまうこと
(ア) 想定される問題状況
(イ) 検討されている対応策について
(ウ) 小括
イ 刑の全部執行猶予となる場合の問題
(ア) 想定される問題状況
(イ) 検討されている対応策について
(ウ) 小括
(3) 比較的軽微な罪を犯した18歳・19歳の者が罰金刑となる場合の問題点
ア 想定される問題状況
イ 検討されている対応策について
ウ 小括
3 起訴猶予となる場合の問題点
(1) 想定される問題状況
(2) 検討されている対応策について
ア 検察官による「起訴猶予に伴う再犯防止措置」
イ「若年者に対する新たな処分」
(ア) 処分の位置付けと概要
(イ) 審判手続・調査の実効性
(ウ) 他の成人との公平性の問題
(エ) 検察審査会制度との関係
4 まとめ
 以上のとおり,現在検討されている犯罪者処遇策でも,少年法の適用年齢引下げに伴う問題点は解消されない。
 そもそも,18歳・19歳の者を保護主義の対象外とし,行為責任主義の下で扱うとしながら,保護主義に基づく現行少年法と同様に有効性ある刑事政策的措置を講じようとすること自体に矛盾・無理があるというべきであり,理論的に整合する範囲で実効性ある制度設計は不可能と言うほかない。
 既に述べたとおり,現行少年法は極めて有効に機能しているのであるから,その実効性を損なうような適用年齢の引下げを行うべきではない。
 
第5 少年法の適用年齢を引き下げた場合に生じる未検討の問題
 他にも,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合には,以下に述べるような,未検討・未解決の問題が生じる。
1 年齢の基準時の問題
2 資格制限の問題
3 保護者への働き掛けに関する問題
4 ぐ犯に関する問題
5 推知報道禁止の問題
 
第6 結論
 以上に述べたとおり,現在,部会で検討されている犯罪者処遇策によっても,少年法の適用年齢引下げに伴う刑事政策的な懸念や問題は解消されない。また,民法の成年年齢が引き下げられたことを踏まえても,少年法の適用年齢を引き下げる必要性は全く認められず,むしろ引下げの弊害が極めて大きいのであって,これを行うべきではない。
 したがって,当連合会は,少年法における「少年」の年齢を18歳未満へ引き下げることには改めて反対する。、
(引用終わり)

日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め

 2019年1月10日配信(予定)のメルマガ金原.No.3388を転載します。
 
日刊ゲンダイのコラムで読む小林 節さん(慶應義塾大学名誉教授・憲法学)の「安倍壊憲」批判と「真の野党共闘」の勧め
 
 来る1月19日(土)午後1時30分から、和歌山県民文化会館大ホール(キャパ2,000!)において、県下10団体が結成した実行委員会の主催により、「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」が行われることは、このブログでも2度にわたってお伝えしてきました。
 
2018年12月3日
速報!「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)を開催します
 
2018年12月23日
詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)
 
 本番まであと9日、そろそろ、先日(1月7日付)お送りしたプレス・リリースの効果が出てきたようで、まず今日(1月10日)の「わかやま新報」1面に以下のような記事が載りました。
 
桂文福小林節氏ら出演 19日 改憲反対の県民集
(引用開始)
 憲法9条自衛隊を明記するなど安倍晋三首相が意欲を示す改憲に反対する市民団体などが企画する「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」が19日午後1時半から、和歌山市松原通の県民文化会館大ホールで開かれる。
 安全保障法制の廃止や改憲反対の運動をしている県内10団体による実行委員会が主催。入場無料。
 第1部は、紀の川市出身の落語家で「芸人9条の会」の桂文福さんによる相撲甚句河内音頭、9条新作落語。第2部は憲法学者、弁護士で慶應義塾大学名誉教授の小林節さんの講演「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」。第3部は有田川町出身の津軽三味線奏者、三木久美夫さんらによる「ワカヤマピースバンド」のライブ演奏となっている。
 申し込み不要。1・2部は手話通訳つき。ロビーでは紙芝居や絵本、折り紙など子どもが楽しめるブースも設ける。
 問い合わせは事務局の金原法律事務所(℡073・427・0852)。
(引用終わり)
 
 掲載していただいてまことにありがたいのですが、ただ1点、「三木久美夫さんらによる「ワカヤマピースバンド」のライブ演奏」とある部分は訂正を要します。
 三木さんは、ご自身の率いる「龍絃会(りゅうげんかい)」の一員として津軽三味線の妙技を披露され、その後、「Wakayama Peace Band」(臨時結成の7人編成)によるライブ演奏が行われます。
 
 さて、今日は、第2部で講演される小林節先生の「安倍壊憲」批判を、先生が連載されている日刊ゲンダイのコラム「ここがおかしい 小林節が斬る!」で跡付けようと考えました。
 けれども、ここ1年間(2018年1月10日~2019年1月5日)に発表されただけでも、全部で50本もあるのですから、これを分類するだけでも大変です。
 そこで、「安倍壊憲」批判の観点から4つに論点を絞り、それにちょうど符合する小林先生のコラムを探すという、まことにささやかな方針に変更しました。
 それでも、「その論点にはもっとふさわしい別の記事があるではないか」ということになりそうですが、力不足につき何卒ご寛恕いただければと思います。
 要するに、来る1月19日のご講演の予習教材を提供しようという試みです。
 
【論点1 内閣総理大臣改憲の提案をすることができるのか】
首相にも改憲の提案権はある しかしその「内容」が悪い(2018/11/07)
(抜粋引用開始)
 憲法改正が使命だと自任する安倍首相が改憲を唱道する機会が増えてきた。
 それに対して、護憲派の人士から、「首相が改憲を主張することは憲法尊重擁護義務(99条)に違反する」とか、「改憲の発議は国会の専権(96条)で、首相の提案は越権で三権分立に反する」といった批判が返ってくることが多い。
 しかし、改憲を唱道する限りでは、首相はいささかも憲法に違反していない。
 まず、憲法自体が96条で改憲を予定しその手続きを明記している。だから、改憲を主張すること自体は憲法を軽んじることにはならない。つまり、制定時の予測を超えた新しい時代状況の中で改憲を考えること自体は憲法が予定したことである。
 また、首相は、憲法上「内閣を代表して(改憲案を含む)議案を国会に提出する職責を担っている(72条)」以上、政治家として改憲の提案を唱道する権限を有している。
(略)
 護憲派の人士が自らを真に「護憲」派だと思っているならば、今、安倍政権が公然と企図している9条に「必要な自衛を行う組織」を加筆する改憲案が、法的にも政治的にも憲法「改悪」であることを論証すべきである。
(引用終わり)
 
【論点2 立憲的(護憲的)改憲論を今主張することの意味】
たとえ正論ではあっても…いま場違いな「立憲的改憲論」(2018/05/11)
(抜粋引用開始)
 もう20年以上も前であるが、改憲提案などは夢物語であった頃に、私は、白紙の上に新しい憲法を書く感覚で改憲論を提案していた。その中で、9条については、あの「どうにでも読める」または「難解な」現行9条の文言が、結局、規範力を生まず、政府による恣意的な解釈・運用を許していると気づいた。そこで、もっと明確に、できること(専守防衛)とできないこと(海外派兵)が読み取れるように、9条の文言を明確に「改正」することを提案した。私は、それを「護憲的改憲」と呼んで最近まで一貫して主張してきた。
 数年前に枝野幸男代議士(立憲民主党代表)が同様の立場を表明し、今井一氏(「国民投票」に詳しいジャーナリスト)などもその論陣に加わった。最近は、それと同じ観点を「立憲的改憲」と称して、伊勢崎賢治氏(東京外国語大教授)らが強く唱道している。
 もちろん、それはひとつの正論である。だが、今の政治情勢の中で、その主張を続けることを、私は、「場違い」「時知らず」だと思うに至り、今は自らに禁じている。
 今は、改憲が自らの「使命」だと信じる安倍首相が、衆参各院の3分の2以上の支持を背景に9条の具体的な改憲案を示して政治日程が進行している状況にある。
 だから今は、改憲派護憲派も、向かい合って自説の正当性を論じ合っている場合ではない。安倍首相の改憲案の1点に焦点を合わせて、それが是であるか非であるか?について各自の立場を決め、国民投票に備えるべき時である。
(略)
(引用終わり)
 
【論点3 自衛隊憲法に明記するとどうなるのか】
安倍「改憲」の焦点はただ一つ 少数説で争う時ではない(2018/10/11)
(抜粋引用開始)
(略)
 時間が限られているし、首相の意向は既に明らかになっている以上、近い将来に提案されてくる改憲案も分かり切っている。
 つまり、「現行の9条1項2項およびその解釈(専守防衛の原則)を維持した上で、自衛隊とその権能を憲法に明記するもの」である。条文素案としては、「国の平和と独立を守り国及び国民の安全を保つために『必要な自衛の措置をとり』そのための実力組織として『自衛隊を保持する』」である。
 しかし、これは嘘と矛盾に満ちている。
 第1に、専守防衛を維持する……と言うが、既に、2015年の新安保法制(戦争法)で、わが国の「存立危機事態」か、わが国の安全保障に対する「重要影響事態」だと政府が認定した場合には海外派兵を解禁してしまっている。この矛盾をどう説明するのか?
 第2に、これまでは「必要・最小限」の自衛措置なら合憲だとしてきたものを、ここで「最小限」という条件を外してしまいながら、「これまでの解釈を維持している」とは言えないはずで、ここに大きな嘘がある。
 第3に、「戦力の不保持」と「交戦権の不行使」を明記した2項の下で海外派兵はできないとしてきた政府解釈の下で海外派兵を解禁した2014年の解釈変更に加え、新たに、「必要な自衛措置は(何でも)できる」という3項が加えられた場合には、『新法(3項)は旧法(2項)を改廃する』という法の一般原則に従って2項は自動的に失効するはずである。となると、「今までと何も変わらない」と度々強調してきた首相の言葉は明白な嘘以外の何ものでもない。
 そして、普通の軍事大国となって米軍の友軍としてわが国の自衛隊が世界に出動することの是非が問われることになる。実は、この一点の賛否だけが問われているのである。
(引用終わり)
 
【論点4 安倍壊憲を阻止するために~真の野党共闘の必要性】
根拠はあるのか 不可解な「共産党抜き」野党共闘の主張(2018/09/02)
(抜粋引用開始)
 月刊日本9月号の中で、「共産党抜きの野党共闘」について正鵠を得た発言が目についた。
 まず、元参院自民党議員会長・村上正邦氏は「野党は……『共産党とは組めない』とか内輪もめばかりしていますが、本気で政権交代を目指しているならば、そんな甘っちょろいことは言えないはずですよ」と語っている。
 さらに、経済学者の植草一秀氏は「1人しか当選者が出ない選挙で、反自公陣営が複数候補を擁立すれば自公が勝利するのは当たり前だ。『共産党とは共闘しない』とする勢力は『隠れ自公応援団』である疑いが濃厚なのだ」とまで断言している。
 確かに、1選挙区で1人しか当選できない「小選挙区制」(知事選、衆院小選挙区参院地方区等)において、常に自公共同推薦候補が立っている以上、野党側は1人の野党統一候補に絞れない限り、もとより勝ち目はない。
(略)
 だから、私には、この期に及んで「共産党抜きの野党共闘を」などと言っている人の気が知れない。私がそのような人々に何回その「根拠」を尋ねてもまともな答えが返ってきたためしがない。
 この際、野党各党の責任ある人士により、「野党共闘共産党を加えることの是非」というテーマで公開シンポジウムを至急開催することを、提案しておきたい。
(引用終わり)
 
「人心一新」は野党共闘の立派な大義 総選挙の統一方針に(2018/12/26)
(抜粋引用開始)
(略)
 今の選挙制度の立法趣旨は、2大グループの対決を前提に、まず、相対的多数派に絶対的多数の議席を与え、激動の時代に政策の決定・執行を迅速化することにある。加えて、「絶対的権力は絶対に堕落する」という歴史の教訓に学び、政権交代(つまり権力の大掃除)が起こりやすい制度でもある。つまり、民意がわずかに移動しただけで簡単に政変が起きる制度である。このメカニズムは、参院選1人区でねじれ国会を実現する場合も全く同じである。
 今、安倍長期政権の下で、権力の一元化と私物化が露骨に進行している。それに対して、国民の中の2割ほどの熱烈な「信者」のごとき政権支持者は別にして、国民の多数がしらけ、政治に倦んでいることは各種世論調査で明らかである。
 過去の国政選挙でも、与野党それぞれの合計得票はいずれも40%台で大差はない。しかし、野党が分裂しているために、上述のような選挙制度に助けられて、自・公与党は、40%台の得票で70%台の議席を得て、絶対的権力を享受してきた。
 そこで「野党共闘」を提案すると、必ず「政策の一致が必要だ」という声が上がってくる。しかし、社会が複雑になり財政が逼迫した現状において、与党内においても初めから政策が一致していることなどない。政策は、議会での討論を経て詰めていくものである。
 その点で、「人心一新」が総選挙の際の統一方針になることを忘れないでほしい。「もうこの政権の顔触れには飽き飽きした」という民意も正当な民意である。
 だから、野党は、「人心一新」で選挙共闘を組み、まずは政権交代を図るべきである。
(引用終わり)
 
 最後に、これまでも何度かご紹介していますが、最後に、2018年3月19日、「安倍政治を終わらせよう!3.19院内集会」(主催:戦争をさせない1000人委員会、立憲フォーラム)での小林節先生のミニ講演の動画をご紹介しておきます。
 
小林節氏 (慶應義塾大学名誉教授)スピーチ『ようやく見えて来た安倍壊憲案の異常性』「安倍政治を終わらせよう!3.19院内集会」[2/5]2018.3.19 @参議院議員会館講堂(28分)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/小林節氏関連)
2013年5月13日
小林節氏らの「96条“改正”絶対阻止」の主張に連帯するために
2013年5月27日
小林節教授の「立憲フォーラム」勉強会での講演
2013年6月9日
6/8小林節氏講演会「改憲派が斬る!96条改悪に異議あり!」(in神戸市)
2013年7月3日
6/17小林節慶應義塾大学教授記者会見(日本記者クラブ
2013年7月13日
この7年間、私たちは何をしていたのか?~「小林節さんに聞いた」(2006年/マガジン9条)を読んで~
2013年7月31日
小林節氏×伊藤真氏~憲法改正を議論するために~
2013年12月20日
小林節さんの“集団的自衛権についての意見”が知りたい
2014年4月15日
集団的自衛権でも小林節さんに頑張ってもらおう(付・立正佼成会集団的自衛権についての見解)
2014年9月7日
立憲主義は8年前から危機的状況だった~2006年5月18日衆議院憲法調査特別委員会での小林節参考人の意見から
2014年9月13日
対談「小林節氏vs山中光茂松阪市長」で楽しく学ぶ集団的自衛権
2015年5月2日
樋口陽一氏、小林節氏、小沢一郎氏による憲法をめぐる鼎談を視聴する
2015年6月7日
憲法学者の矜恃~衆議院憲法審査会(6/4)における参考人質疑をじっくりと味わいたい
2015年6月16日
憲法学者の矜恃~長谷部恭男氏と小林節氏の記者会見を視聴して(6/15)
2015年9月17日
参議院安保特別委員会の強行採決を目に焼き付ける(付・小林節弁護団長が違憲訴訟の出訴時期を明言~9/15中央公聴会
2015年9月27日
安保法制違憲訴訟を考える(1)~小林節タスクフォースへの期待と2008年名古屋高裁判決
2015年10月12日
今こそ「運動としての学習会」が必要だ
2015年10月16日
11/21小林節さんが田辺市和歌山県)で講演されます
2015年12月2日
安保法制違憲訴訟を考える(4)~伊藤真弁護士(安保法制違憲訴訟の会)による決意表明(11/19@国会前)と小林節氏の現時点(11/21@和歌山県田辺市)での見解
2016年1月20日
小林節(ブシ)で貰った元気の使い道~「さぁ、安倍政治を終らそう 1・19集会」を視聴して
2016年3月22日
速報・小林節氏講演会(5/14@和歌山市民会館大ホール)に結集を!
2016年4月14日
詳報・小林節氏講演会(5/14@和歌山市民会館大ホール)~小林先生の“性根”を理解した上で結集を!
2016年5月14日
小林節氏講演会「政治の暴走を止めるために」@和歌山市(5/14)のご紹介と見えてきた課題
2018年12月23日
詳報「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」(2019年1月19日@和歌山県民文化会館大ホール)

市民連合「2019年頭所感」を読む

 2019年1月9日配信(予定)のメルマガ金原.No.3387を転載します。
 
市民連合「2019年頭所感」を読む
 
 「年頭所感」という言葉に接してまず私の脳裏に浮かぶのは、4年前に自分自身が書いた以下のブログです。
 
2015年1月1日
3人の年頭所感を読んで2015年の日本を思う~今上陛下、安倍首相、内田樹
 
 自分で読み返して言うのも何ですが、元旦早々、我ながらよく気合いを入れて書いたものだと感心します。
 そのように気合いが入る大きな要因であった今上陛下(明仁天皇)の、即位依頼ずっと発表され続けていた「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」も、平成28年(2016年)元日が最後となりました。
 以来、「年頭所感」読み比べの意欲もなくなり、私のブログに「年頭所感」の話題が登場することもなくなったという次第です。
 
 それが、1月も9日になってから「年頭所感」を取り上げるというのは、たまたま市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)のホームページを閲覧したところ、トップページのNewsの冒頭に、「2019年頭所感」というのが載っていたからです。天皇でも首相でもなく、市民団体が「所感」というのも語感的にどうなのか?と思わないでもありませんが、「年頭声明」でもおかしいし、「年頭談話」というのも何だかなあ、ということで、「年頭所感」に落ち着いたのかもしれません。
 
 内容は、以下に全文引用しますので、是非お読み戴きたいのですが、いよいよ夏には参院選を控える2019年を迎え、野党共闘の重要性をいま一度確認し、全国の志を共有する人々に発信する必要があると、市民連合の呼びかけ人の皆さんは考えられたのでしょう。
 
 従って、以下の「年頭所感」の最も重要な部分は多分ここでしょう。
 
「それでも市民連合が、国民民主党を含めた立憲野党の本格的な選挙協力をめざす理由は以下の通りです。(1)安倍政権下での改憲発議への反対、違憲の安保法制の廃止、立憲主義の回復など共闘の大原則についての一致が、玉木代表や平野幹事長と確認できたこと、(2)旧民主党民進党議員として特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法など一貫してともに反対をしてきた実績があること、(3)オール沖縄の成功が示すように、穏健保守層までウイングを広げた野党共闘が勝利には不可欠であること、(4)一緒に組めるはずの政治勢力を排除することは、改憲発議に協力する政権補完勢力をつくり、参議院選挙での候補者乱立と共倒れを招くことにほかならないこと、などです。」
 
 時あたかも、私の地元和歌山でも、参院選に向けて大きな動きがありました。
 
わかやま新報 19年01月09日 06時59分
夏の参院選出馬表明 元弁護士会長の藤井氏
(引用開始)
今夏に行われる参院選和歌山選挙区(改選数1)に、元和歌山弁護士会会長の藤井幹雄氏(58)が無所属で立候補することを正式に表明し、7日に和歌山県和歌山市友田町のホテルグランヴィア和歌山で記者会見した。安倍政権を「憲法そのものを破壊し、わが国を再び戦争へと導こうとしている」と厳しく批判し、対決姿勢を鮮明にした。
 
藤井氏はかつらぎ町出身。1985年に東京大学法学部を卒業後、司法試験に合格。95年に和歌山弁護士会に登録し、2016年度には会長を務めた。9条ネットわかやまの世話人代表も務め、98年に発生した毒物カレー事件では林真須美死刑囚の一、二審の弁護を担当した。
 
藤井氏には、擁立を主導した連合和歌山が同日の執行委員会で推薦を決め、国民民主党も推薦を発表。立憲民主党社民党の各県組織は推薦に向けて党本部と調整している。
 
藤井氏は記者会見で、安倍政権について「強行採決を繰り返し、議論のないまま自衛隊憲法9条に明記するという改憲案を打ち出し、憲法を私物化している」と述べ、「厳しい戦いになるが、精いっぱい頑張りたい。県民の中には『このままでいいのか?』と思う人もいるはず。そんな人の選択肢になれたら。政治の暴走を止めるために今戦わなくてはいけない」と決意を示した。
 
同選挙区には、自民党現職で経済産業大臣世耕弘成氏(56)、共産党新人の前久氏(62)が立候補を表明しており、藤井氏を「野党統一候補」とできるのかが一つの焦点となるが、連合和歌山の池田祐輔会長は共産党との共闘について、「政党としては難しい」と否定的な見解を示している。
(引用終わり)
 
 1987年の4月はじめ、当時は2年間の修習の最初に司法修習生としての辞令を配属先の地方裁判所で受け取ることになっており、和歌山では、その辞令交付式の前日に、1年先輩の司法修習生から歓迎会を開いてもらう慣例になっていて、その歓迎会の席上で、私は藤井さんと(6人しかいない和歌山修習の同期生として)初めて会ったのでした。
 それから、あっという間に32年近くが経ってしまいました。
 1989年4月の弁護士登録時に、私は和歌山弁護士会に、藤井さんは沖縄弁護士会に入会することになりましたが、夏になると、藤井さんをコンダクターとした和歌山修習同期会沖縄ツアーを満喫したりという関係が続くうちに、1995年に藤井さんは郷里の和歌山弁護士会に登録換えし、今に至るという訳です。
 この他、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」や「9条ネットわかやま」での活動など、語り出せばきりがありません。
 そのような個人的な感慨とは別に、今回の藤井さんの決断は、以下の市民連合の「年頭所感」と基本的な問題意識を共有した末のものであったと私は確信します。
 
 上の新聞報道にもあるとおり、日本共産党からは、前ひさしさんが立候補を表明しており、野党系の2人の候補者の間の調整という微妙な問題があるので、今のところこれ以上は述べません。
 ただ、私個人としては、市民連合「2019年頭所感」に賛意を示したいと思っています。
 
 それでは、市民連合が今年の元旦に発表した「2019年頭所感」をお読みください。
 
(引用開始)
January 01 2019
2019年頭所感
 
公文書改竄、虚偽答弁、隠蔽工作、データ捏造など前代未聞の蛮行が政府により繰り返された2018年、主権者たる国民の代表が会する国会がこれほどまでにないがしろにされたことはありませんでした。また、女性に対する許しがたいセクシュアル・ハラスメントや性暴力、医大・医学部入試におけるあからさまな女性差別、旧優生保護法に基づく強制不妊手術や国・地方自治体における雇用水増しなどで明るみに出た障がい者差別、入国管理局による非人道的な長期収容や著しい人権侵害が横行する外国人研修生・技能実習生制度の実態が浮き彫りにした外国人差別、「生産性がない」というヘイト発言など右派政治家やメディアによるLGBT差別、そして辺野古での土砂投入に象徴される沖縄差別など、今日もなお日本の政治、社会、経済にはびこるさまざまな差別が一気に白日の下にさらされた年でもありました。
 
2019年はいったいどのような年になるのでしょうか。
 
春の統一地方選挙と沖縄・大阪衆院補選から夏の参議院選挙へとつづく2019年は重要な「選挙イヤー」にあたり、主権者自らがこのような政治のあり方に終止符を打つチャンスと言えます。しかし、追い詰められるたびになりふりかまわぬ強行突破を繰り返してきた安倍政権は、解散権をまた濫用して衆参同日選を仕掛けてくる可能性をちらつかせており、さらに憲法破壊の総仕上げとして改憲発議を強行する姿勢を崩していません。私たちは、2019年、大きな正念場を迎えることになります。
 
自民党は、2012年12月に政権復帰を遂げて以来、2014年12月、2017年10月と衆議院選挙において公明党と合わせて3分の2を超える議席を得る圧勝をつづけてきましたが、実は、2009年8月に民主党に惨敗し下野した際に獲得した得票数に一度たりとも達していません。安倍自民党の言いなりとなってしまった公明党も、近年得票数を減らしつづけています。それでも自公連立与党が圧勝をつづけるのは、衆議院における小選挙区参議院の地方一人区などで野党候補が共倒れを繰り返し、また、野党の分裂により有効な選択肢(オルタナティブ)を失ったと考える有権者の多くが政治をあきらめ棄権するようになってしまったからです。
 
私たち市民連合は、2015年12月以来、誰もが尊厳ある暮らしをおくることができる「あたりまえの政治」を取り戻すため、全国各地の市民の皆さんと連携し、野党の共闘態勢を構築することを目指してきました。2016年7月の参議院選挙では、32の一人区すべてで野党統一候補の擁立が実現し、11選挙区において勝利をおさめるなど、これまで一定の成果をあげることができました。しかし、2017年10月の衆議院選挙では、希望の党への合流をめぐり民進党が分裂し、またしても野党の分断が自公連立与党を利する結果をもたらしてしまいました。
 
野党がバラバラに戦った2013年7月の参議院選挙では、31あった一人区のうち29議席までも自民党に取られています。これらの議席が改選となる2019年、野党共闘の成否で選挙結果とその後の政治状況は大きく変わってきます。野党間の政策合意と候補者調整を進め、改憲発議に必要な3分の2の議席を大きく割り込ませることができれば、安倍政権を退陣に追い込むことも十分可能です。他方、野党候補が乱立するようなことになれば、政権の延命を許すばかりか、改憲への動きが加速する事態につながりかねません。言い換えれば、自公連立与党にとって、野党の分断と投票率の低迷こそが政権存続のカギを握っているのです。
 
また、現在すでに連立与党や維新などの改憲勢力が衆参両院で3分の2を有していると言っても、安倍改憲を成し遂げるためには単に発議を強行するだけではなく、国民投票過半数の賛成を確保しなくてはならず、そのために野党の一部を取り込み、大義も民意もない改憲発議に見せかけの正当性を付与することを狙っています。だからこそ、安倍政権は国民民主党への働きかけを強めるなど、野党の分断を執拗に画策しています。
 
安倍政権の打倒と安倍改憲の阻止を目指す私たち市民連合は、立憲民主党日本共産党社会民主党自由党無所属の会と意見交換や政策協議を重ねると同時に、立憲主義の擁護、安保法制の廃止、9条改悪の阻止、個人の尊厳を擁護する政治の実現という大原則の共有を前提に、国民民主党とも連携の可能性を模索してきました。これら立憲野党5党1会派は、働き方改革入管法改正案などの重要法案を巡って国会でも共闘を進め、2018年9月に行われた沖縄県知事選挙においてともに玉城デニー候補を支援しそれぞれ勝利に貢献してきました。
 
こうしたなか、11月6日市民連合は国民民主党玉木雄一郎代表と平野博文幹事長と意見交換を行い、安倍政権下での改憲発議の阻止、違憲の安保法制の廃止、立憲主義の回復といった基本的な方向性の共有を確認し、11月16日の「立憲野党と市民連合意見交換会」には平野幹事長と小宮山泰子衆議院議員が国民民主党から初めて参加し、11月26日のシンポジウムにも立憲野党5党1会派の幹事長・書記局長が一堂に会し「安倍政権にかわる新しい選択肢」を主題に議論を深めました。政策合意の更新や候補者調整など喫緊の課題はまだ山積みですが、市民連合は、分断を乗り越え、旧無所属の会や国民民主党を含めた大きく力強い共闘態勢によって「選挙イヤー」における立憲勢力の躍進をめざす方針です。
 
希望の党の流れをくむ国民民主党を共闘の枠組みに入れるべきではない、という声も市民連合に少なからず寄せられています。2017年10月の衆議院選挙の際、市民連合希望の党との共闘は行いませんでしたので、国民民主党との連携について疑問や批判が呈されるのは無理からぬことと私たちも承知しています。
 
それでも市民連合が、国民民主党を含めた立憲野党の本格的な選挙協力をめざす理由は以下の通りです。(1)安倍政権下での改憲発議への反対、違憲の安保法制の廃止、立憲主義の回復など共闘の大原則についての一致が、玉木代表や平野幹事長と確認できたこと、(2)旧民主党民進党議員として特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法など一貫してともに反対をしてきた実績があること、(3)オール沖縄の成功が示すように、穏健保守層までウイングを広げた野党共闘が勝利には不可欠であること、(4)一緒に組めるはずの政治勢力を排除することは、改憲発議に協力する政権補完勢力をつくり、参議院選挙での候補者乱立と共倒れを招くことにほかならないこと、などです。
 
理屈はどうであれわかりにくい共闘は有権者のさらなる離反を招くだけ、というご批判はとりわけ深刻に受け止めざるを得ない、と私たちも考えています。そもそも複数政党間の共闘は、政党合併ではない以上、小さいとは言えない違いが残らざるを得ず、相互不信を完全に解消することも困難かもしれません。しかし、「安倍一色」に染まる連立与党に対して、意見の多様性を互いに尊重し、話し合いを通じて合意点を探っていく政治手法は、立憲野党の強みでもあるはずです。立憲主義の回復、安保法制の廃止、安倍改憲の阻止などの一致点を土台に、誰もが自分らしく暮らせる社会や経済をつくるための政策を今後どれだけ具体的に構想し、発信していくことができるか、そうして、政治をあきらめてしまった有権者たちを今一度呼び戻すことができるかが私たちに問われていると考えます。
 
2019年、差別のない「あたりまえの政治」をつくるために、市民連合は、市民と立憲野党の大きく力強い共闘を呼びかけます。
 
2019年1月1日
 
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
(引用終わり)
 
(付録)
通販生活の意見広告「9条球場」(50秒)
通販生活 Published on Dec 31, 2018
日本民間放送連盟の「憲法改正国民投票のテレビCM量に関しては一切、自主規制しません」という理事会決議がとても気になります。
国民投票のテレビCMはイギリスやフランスのように「有料CM禁止」が公平でしょう。
今だって「意見広告」はどの局も禁止ですし。」

日本弁護士連合会「公文書管理法制の改正及び運用の改善を求める意見書」を読む

 2019年1月8日配信(予定)のメルマガ金原.No.3386を転載します。
 
日本弁護士連合会「公文書管理法制の改正及び運用の改善を求める意見書」を読む
 
 昨年の12月20日付で採択された日本弁護士連合会の意見書としては、既に「旧優生保護法下における優生手術及び人工妊娠中絶等に対する補償立法措置に関する意見書」をご紹介していますが(「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する立法措置について(基本方針案)」に対する弁護団コメント、朝日社説、日弁連意見書のご紹介/2018年12月28日)、
同日の日弁連理事会で承認された意見書は他にも4本あり、今日はそのうちの「公文書管理法制の改正及び運用の改善を求める意見書」をご紹介します。
 
 この問題に関して日弁連は、夙に2015年12月18日、「施行後5年を目途とする公文書管理法の見直しに向けた意見書」を発表し、様々な提言を行っていました。
 ところが、その後、後に引用する意見書で言及しているとおり、① 防衛省における南スーダンPKO派遣部隊の日報廃棄問題(自衛隊日報問題)、② 財務省における学校法人森友学園への国有地売却の経緯に関する書類廃棄、決裁文書の改ざん問題(森友問題)、③ 文部科学省における学校法人加計学園愛媛県今治市での獣医学部新設計画に関する文書の問題(加計問題)などの目を疑うばかりの問題事例が続出しました。
 その後、「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正されはしたものの、かえって、残すべき文書を残さない運用が増加するという事態が明らかになってきました。
 そこで、以下の意見書が公表されるに至ったということでしょう。
 PDFファイルで16頁もあり、全文引用するには長過ぎますので、
  第1 意見の趣旨
  第2 意見の理由
   1 公文書管理法施行後の経過と問題事例
のみ引用し、具体的な提言部分の詳細な理由については、リンク先の日弁連サイトでお読みいただければと思います。
 
 なお、その前提として、公文書管理法とガイドラインにリンクしておきますので、適宜参照しながら意見書をお読みいただければと思います。
 
公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)
 
行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定、最終改正平成29年12月26日)
 
改正「行政文書の管理に関するガイドライン」(平成29年12月26日一部改正)に関する解説集(平成30年1月31日内閣府大臣官房公文書管理課)
 
 それでは、日弁連「公文書管理法制の改正及び運用の改善を求める意見書」をお読みください。
 
(抜粋引用開始)
                公文書管理法制の改正及び運用の改善を求める意見書
 
                                             2018年(平成30年)12月20日
                                                                 日本弁護士連合会
 
第1 意見の趣旨
1 政府が行政機関の職員に対し,公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)4条が定める意思形成過程文書に関する文書作成義務について,行政文書の管理に関するガイドライン(以下「ガイドライン」という。)の規定する文書主義の原則を徹底させることを求める。
2 公文書管理法制の制度設計に関し,
(1) 公文書の恣意的な廃棄等が行われないように監視するため,独立した第三者機関としての公文書管理庁を設置すること
(2) 公文書管理法を,行政文書の作成段階から徹底して電子記録管理を行う法制度に変更すること
を政府及び国会に対して求める。
3 現行の公文書管理法,ガイドラインの改正及び運用の改善に際しては,
(1) 事後的検証に必要な文書が,情報公開及び公文書管理の対象から外れない運用をすること(公文書管理法2条4項,ガイドライン第1関係)
(2) 行政文書ファイルにおける文書整理に関する「保存期間を同じくすることが適当であるものに限る」(公文書管理法5条2項)との文言を削除すること
(3) 文書の保存期間を1年未満とすることを原則禁止すること(公文書管理法8条2項を受けての内閣総理大臣決定,ガイドライン第4,3関係)
(4) ガイドラインから「可能な限り,当該打合せ等の相手方(以下「相手方」という。)の発言部分等についても,相手方による確認等により,正確性の確保を期するものとする。」との規定を削除すること(ガイドライン第3,3関係)
(5) 罰則について新たな故意犯を導入するのであれば,慎重に検討すること
(6) 公文書管理に関する法令違反等の不適切行為に関する内部通報専用の窓口を,各府省及び新設する公文書管理庁に整備すること
(7) 長期間利用制限をすべき秘匿性の高い文書であっても利用制限は30年を超えないとするいわゆる「30年原則」を制度化すること(公文書管理法16条関係)
を政府に対して求める。
 
第2 意見の理由
1 公文書管理法施行後の経過と問題事例
(1) 公文書管理法施行5年後の見直しはなされなかった
 2011年(平成23年)4月1日に施行された公文書管理法附則13条は,「政府は,この法律の施行後五年を目途として,この法律の施行の状況を勘案しつつ,行政文書及び法人文書の範囲その他の事項について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と規定する。
 これを受けて当連合会は,2015年(平成27年)12月18日,「施行後5年を目途とする公文書管理法の見直しに向けた意見書」(以下「2015年意見書」という。)を発表し,ⅰ)公文書管理庁の設置,ⅱ)徹底した電子記録管理を行う法制度への移行,ⅲ)目的規定への「知る権利」の明記,ⅳ)公文書管理法3条を削除して公文書管理法の適用除外をなくす,ⅴ)いわゆる「30年原則」の採用,ⅵ)地方自治体における公文書管理体制の促進を提案した。
 しかし,公文書管理委員会が,2016年(平成28年)3月23日に発表した,「公文書管理法施行5年後見直しに関する検討報告書」では,公文書管理法の改正に関する指摘はなされなかった。
(2) 2015年意見書発表後に明らかになった問題事案
防衛省における,南スーダンPKO派遣部隊の日報廃棄問題(以下「自衛隊日報問題」という。)
 2016年(平成28年)7月上旬,陸上自衛隊が派遣されている南スーダンの首都で大規模な戦闘が発生した。この件に関し,ジャーナリストが,防衛省に対して,「同月6日(日本時間)~15日の期間に中央即応集団指令部と南スーダン派遣施設隊との間でやり取りした文書全て(電子記録含む)」を開示請求した。
 開示請求当時,派遣部隊が作成した日報が陸上自衛隊の指揮システムの掲示板にアップロードされ,同システムの利用者が閲覧及びダウンロード可能な状態にあった。しかし,日報を開示対象から外す意図の下に,中央即応集団指令部の職員が陸上幕僚監部関係職員に対し,日報は個人資料であると説明し,開示対象に含めないこととなった。その後なされた日報の開示請求に対しても,防衛省は,文書不存在を理由に不開示決定を行った。しかし,実際には,陸上自衛隊が日報を一貫して所持していたことが後に明らかとなった。
 派遣部隊自身が作成した貴重な一次資料である日報は,派遣活動の成果や問題点を検証し,今後のPKO活動の可否・内容を考えるために必要であり,長期間にわたり保管されなければならない文書である。それにもかかわらず,文書不存在を理由に不開示決定を行った防衛省の対応は,2018年(平成30年)4月27日付け与党・公文書管理の改革に関するワーキングチーム作成「公文書管理の改革に関する中間報告」(以下「与党中間報告書」という。)も指摘するように,「戦闘」という用語を用いたことを国民から隠すためであると見られても仕方のない行為であって,国民主権の理念にのっとり公文書等の管理を規定する公文書管理法の精神に反している。
財務省における,学校法人森友学園への国有地売却の経緯に関する書類廃棄,決裁文書の改ざん問題(以下「森友問題」という。)
 2017年(平成29年)2月,大阪市の学校法人森友学園に対して,同学園が設立する小学校の建設を予定している国有地が,近隣の土地評価額に比べて著しく低い価格で財務省近畿財務局から払い下げられていたことが発覚した。国有地の売却手続については,国の事業の実績を合理的に跡付け,検証することができるよう文書を作成しなければならず,少なくとも会計検査院による検査期間が終了するまでは,経緯を含めた説明責任を果たすために保管されなければならない。 
 しかし,同月24日の衆議院予算委員会で,当時の財務省理財局長は,本件土地の払下げに関する交渉記録が財務省行政文書管理規則によって保存期間が1年未満とされており,森友学園との売買契約成立により事案が終了したため廃棄したと答弁した。
 ところが,2018年(平成30年)3月2日,財務省森友学園との本件土地の売却契約に関する決裁文書を書き換えていたとの新聞報道がなされ,同月12日,財務省の内部調査により,前年の2月下旬から4月にかけて14件の決裁文書が改ざんされていたことが判明した。同年6月4日に同省が公表した,「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」によれば,交渉記録の廃棄や決裁文書の改ざんが,「国会審議が相当程度紛糾することを懸念し,それを回避する目的」でなされたものと結論付けている(同報告書36頁)。これらの行為は,公文書管理法が定める公文書の作成,管理,保存又は廃棄の規定上,想定外の行為である。
文部科学省(以下「文科省」という。)における,学校法人加計学園愛媛県今治市での獣医学部新設計画に関する文書の問題(以下「加計問題」という。)
 2017年(平成29年)5月17日,政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人加計学園の,愛媛県今治市での獣医学部新設計画について,文科省が,内閣府から,「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っている」と言われたことを記録した文書を作成していたことが報道された。
 問題となった文書は,政府の国家戦略特区制度を活用した学部新設の認可プロセスという,まさに,国が説明責任を負う政府及び文科省の意思決定に至る過程に関するものであり,文書を作成し保管しなければならないことは言うまでもない。
 それにもかかわらず,当初,内閣官房長官は,「怪文書のようなもの」である等と述べ,文科省も「文書の存在は確認できなかった」と発表した。
 ところが,文科省の元事務次官が,当該文書は本物であると話し,その後当該文書が省内の複数の部署で電子データとして共有されていたことが報道された。これに対し,文科省が,「個人のメモや備忘録は公開しないこととしているが,今回の件は,国民の声を真摯に受け止めて徹底した調査を行うという特例的な調査である」として再調査したところ,同年6月,問題の文書と同内容あるいは同じ文書の存在が確認された。
 省内の複数の部署で電子データとして共有され,事務次官も閲覧できた文書を,「個人のメモ」として取り扱う文科省の行政文書に関する解釈は,公文書管理,情報公開に対する信頼を揺るがすものであると言わざるを得ない。
(3) ガイドラインが改正されたがなお問題は解消していない
 自衛隊日報問題,森友問題,加計問題は,公文書管理及び情報公開法制が本来求めている記録に基づいた説明責任を行政が果たしていないことを示している。しかし,そのことへの対応として公文書管理法の改正は行われず,2017年(平成29年)12月に,公文書管理委員会がガイドラインを改正するにとどまった。
 確かに,このガイドラインの改正により,保存期間1年未満の文書の取扱い等,公文書管理の運用の改善に一定の効果が期待できる。しかし,他方で文書の正確性を確保する方策等においては,文書を残さない方向への後退を招く危険性があり,実際に,ガイドライン改正後に以下の事象が発生している。
経済産業省(以下「経産省」という。)における内部文書問題
 2018年(平成30年)3月,経産省が,ガイドラインの改正内容を職員に説明するに当たって同省職員に配布した内部文書の中で,省内外での打合せなどの記録について,「打合せ等の記録」は「いつ,誰と,何の打合せ」を行ったかが分かればよく,「議事録のように,発言の詳述は必要ない」等と記載していたことが同年8月に判明した。
防衛省海上幕僚監部における内部文書問題
 2018年(平成30年)11月,防衛省が,職員用の行政文書管理マニュアルで,ガイドラインの改正により作成が義務付けられた打合せ記録の対象を,課長級以上の会議に限定すると受け取れる記載をしていることが判明した。これに対し,防衛省はマニュアルの記載は例示に過ぎないと説明したが,その後,海上幕僚監部が幹部研修で使っていた資料に,打合せ記録の「作成範囲の統一基準」として課長級以上の会議と明示していることが判明した。 
 これらの事象に照らすならば,もはやガイドラインの改正というレベルだけでは国民の行政への信頼回復は不可能であり,公文書管理法制の運用改善のみならず,公文書管理法制の見直しを含めた法改正が必要である。
~以下、省略~
(引用終わり)